格闘家・レオナ・ペタス「“すごい”と思われる試合をしたい」

「本当に僕ですか? 弟じゃなくて?」と言いながらインタビュールームに入ってきたレオナ・ペタス。実は弟の加藤虎於奈(かとう・こおな)選手もプロの格闘家で、「僕よりはイケメン」なんだそう。そんな謙虚な姿勢とマイルドな笑顔は、リングの上とはまるで別人。

撮影・蔦野裕

「よく言われます。普段は適当な感じなんですけど、キックボクシングの部分は絶対に譲れないので、試合になると自然と切り替わりますね。だから自分の試合じゃなくて、観客として見に行っても、別人かと思って、すぐには分からなかったって言われます」と語る。また、もう一つよく言われるのが「ハーフなんですか?」という質問。「しょっちゅう聞かれますが、純粋な日本人です。“レオナ”というのは本名なんですが、小さい頃はよく女の子に間違えられていました。漢字では“玲於奈”です。4人兄弟なんですが、全員名前に何らかの動物が入っていて、“奈”で終わります。僕はレオなのでライオン、弟は虎という具合。ペタスは、空手とキックボクシングを教えていただいていた、ニコラス・ペタスさんからリングネームとしていただきました」とハーフ説を否定。

撮影・蔦野裕

 格闘技を始めたのは弟の影響とか。

「ずっとサッカーをやっていたのですが、一番下の弟が空手をやっていて、楽しそうだなと思って。それで高校1年生の時に、ジムに通うようになりました。大学生の時にプロとしてデビューしたのですが、それまでは全然プロになる気はなかった。でもアマチュアの大会などで、準優勝や優勝をするようになると、上があるなら挑戦してみようという気持ちになってきた。案外イケるんじゃない?って(笑)」

撮影・蔦野裕

 順調にキャリアを重ねてきたが、昨年9月にアクシデントに見舞われた。

「9月11日に交通事故にあったんです。しかも弟と一緒に車にひかれるという。僕が自転車で弟が原付に乗って十字路に差し掛かった時に、左側から無灯火の自動車が突っ込んできた。僕が先にひかれたんですけど、弟のほうが重傷でした。それまで、車にはね飛ばされても平気だろうなっていう根拠のない自信があったんですけど、無理でした(笑)。3分3R、9分の試合より一瞬の車のダメージのほうがデカいんだなって(笑)。基本的に僕はケガの治りは早いほうなんですけど、あの時は全然回復しなくて…。1週間経っても痛いままで、2週間経っても全然治らない。これはヤバいぞと。周りの人は大丈夫だから、焦らず治療に専念しろって言ってくれていましたが、試合の事はもちろん、このまま格闘家として復帰できないんじゃないかと思い、かなりブルーになっていました。今でも車が横を通るとすごく怖い。完全にトラウマですね」

撮影・蔦野裕

 そんな大事故にあったが、2月16日には「Krush.98」に出場。朝久泰央と復帰戦を行う。

「対戦相手の朝久君とは一度試合をしたことがあるんですけど、その時より強くなっていると思うので、こちらも気を引き締めないといけないなと思っています。僕は避けるのが得意な選手なので、顔に一発もパンチをもらわないで勝ちます。また、僕のほうが背負っているものが大きいので、どんなに劣勢でも絶対にあきらめないで戦い抜ける精神力があると思います。たとえ相手に主導権を取られても、最後には何かが起きると信じて、気持ちを折らずにいけるのが強み。今、チームを作って子どもたちに教えたりもしているんですけど、ここで負けたらその子たちががっかりしちゃう。みんなすごく信頼してくれてますし、その信頼を裏切りたくない。そういう期待も背負っているので、こんなところでコケるわけにはいかないんです」

撮影・蔦野裕

 チームの代表として、そしてずっと応援してくれるファンや家族、仲間のためにも勝つと宣言。

「2019年は絶対にベルトを巻かなければいけないと思っています。本当は2018年のうちに巻くはずでしたが、事故などアクシデントがあったので、今年は絶対に巻くと決めている。逆に今年巻けなかったら終わりだと思っています。そのぐらいの覚悟でやるつもりです。格闘技は自分の好きな事をやっているのに、周りの人が自分の事のように必死で応援してくれる素晴らしいもの。勝ったら自分の事のように喜んで、負けたら自分の事のように悲しんでくれる。そんなふうに自分を支えてくれる人がいっぱいいるというのが、格闘技の魅力じゃないでしょうか。僕は格闘技はけんかじゃなくて、芸術だと思っている。ですから、次回も芸術的に相手を避けながら、“すごい”と思われる試合をしたいと思います。痛いのが苦手なので(笑)。ぜひその辺りも楽しんで下さい」

撮影・蔦野裕
格闘家イケメンファイル Vol.96
石の拳 レオナ・ペタス


埼玉県入間市出身。1992年4月29日生まれ。高校1年から空手とキックボクシングを始め、20歳でプロデビュー。2月16日(土)に、東京・後楽園ホールで開催される「Krush.98」Krushスーパー・フェザー級で、朝久泰央との対戦が決定。これまでの戦績は28戦 22勝(9KO)5敗 1分。弟は格闘家の加藤虎於奈。2016年英雄伝説アジア−60kg級トーナメント優勝。THE SPIRIT GYM TEAM TOP ZEROS 所属。Twitterアカウント: @rerereoooo