新たな日本のイチゴに海外バイヤーも熱視線!? 開発に7年かけた佐賀の「いちごさん」そのお味は?

生産者の高齢化や減少、品種競争の激化…“イチゴ戦国時代”

 イチゴのシーズン真っ只中。イチゴを使ったスイーツブッフェや、人気パティスリーのイチゴスイーツ、市販のお菓子にも期間限定のイチゴフレーバーが勢ぞろい。そんなイチゴづくしの中で人目を引くのはやはり、有名ブランドイチゴを使用した商品だ。

 農林水産省の「品種登録/出願データ」によると2018年度現在、全国で登録されている品種は298種。そのうち生産維持されているのは165種とのこと。全国の作付け面積トップスリーは「とちおとめ」「あまおう」「さがほのか」だが、近年「スカイベリー」や「きらぴ香」といった新顔ブランドの勢いも増している。そんな“イチゴ戦国時代”に昨年秋、また新たな注目のブランドが登場した。その名も「いちごさん」。佐賀県から「さがほのか」以来20年ぶりに生まれた期待の星だ。昨年の大阪市場では贈答用の「いちごさん」が15万3000円=1粒1万円という高値で落札されたり、東京でも「いちごさん」を使ったスイーツを提供する期間限定イベントが開催され、早くも話題を呼んでいる。

普通サイズは爽やかさが、大粒はより甘みが際立つ

 佐賀県の新品種開発プロジェクトが始動したのは2000年。県内のイチゴ生産において97%もの割合を占める「さがほのか」は全国の作付け面積が3位、東京での流通量は4位と、主要ブランドの地位を確立していたものの、生産者の高齢化、生産者・作付け面積の減少、そして品種競走の激化という課題に直面しており「さがほのか」自体も厳寒期の食味・色の低下や収穫量といった課題を抱えていた。その課題解決に向け、佐賀県・JAグループ・イチゴ生産者による「いちご次世代品種緊急開発プロジェクトチーム」が発足。改めて新品種選抜手法の見直しから着手し、2度の選抜試験、農業試験場での栽培適応性試験、委託農家での現地適応性試験、そして有望株系統個別試験などを経て、1万5000株の中から選び抜かれた「佐賀i9号」が2018年8月15日に品種登録。同24日に「いちごさん」として商標登録された。

今年1月に南青山で開催された「いちごさん」の期間限定カフェ

開発7年、試食は5万個! そして生まれた「ひと口食べて違いが分かるイチゴ」

 開発で生まれた「佐系14号」と群馬の「やよいひめ」の交配で生まれた「いちごさん」は見た目よし味よし、さらに収穫量は「さがほのか」と比較して20%も多いという理想的な品種。果皮はくっきりと濃い鮮やかな赤色で発色が良く、果肉もほぼ赤色。糖度と酸味のバランスも良く、果実らしい甘みとベリーならではの爽やかさが絶妙。何より、口に含むと果汁があふれ出るかのようなジューシーさは特筆すべきポイントだ。

 栽培を手がけた生産者から市場関係者、飲食店や菓子メーカー、消費者まで反応は上々。「イチゴ作りに関わっていない人でも“これはひと味違う”と分かるイチゴ」と、佐賀県の新品種振興モデル地区農家らイチゴのプロたちからも驚きの声が上がっている。「食味の良し悪しはやはり食べないと分からない。総じて5万個近くを試食したが、中には吐き出したくなるようなものもあって、胃薬が手放せませんでした」という県職員らの苦労のかいもあったというもの。

 現在は佐賀県内のみで、166戸約18ヘクタールで栽培。およそ900トンの生産を見込む。今後3年をかけて普及拡大し2021年度までに日本を代表するトップブランドをめざす。全国に販売店を広げているほか、すでに「さがほのか」が流通し人気を博している香港のバイヤーも注目しているとのことで、さらなる市場の広がりも期待できそうだ。