ボンダンスを追ってハワイから福島へ   写真家・岩根愛と北島敬三が語る写真集『KIPUKA』

カメラマンの岩根愛
「木村伊兵衛写真賞」受賞作品展でトークイベント開催

“写真界の芥川賞”とも呼ばれ、優れた写真作品を発表した新人写真家に贈られる「木村伊兵衛写真賞」。写真集『KIPUKA』と展示「FUKUSHIMA ONDO」で第44回木村伊兵衛賞を受賞した岩根愛が、ニコンプラザ新宿で開催した受賞作品展にて写真家の北島敬三とトークイベントを行った。

 ハワイの日系移民の間で踊り継がれる「ボンダンス」と、そこで生演奏される代表的な盆唄『フクシマオンド』のルーツである福島。受賞作『KIPUKA』は岩根が2006年から12年間にわたってハワイと福島を往復し、撮影した膨大な写真の中から99点を収めた自身初の作品集となる。話題の写真家のイベントとあって、会場には多くの来場者が詰めかけた。
©️Yusuke Yamagiwa
1930年代の貴重な回転式パノラマフィルムカメラを披露

 イベントでは、まず岩根が作品をモニターに映しながら、北島に全編の撮影エピソードを解説。中盤には本作の見どころのひとつ、ハワイ編と福島編を分けるモノクロームのパノラマ写真の解説で、撮影に使用した1930年代の貴重な回転式パノラマフィルムカメラ「コダック・サーカット」を披露した。

「ハワイでは、パノラマ状に長いお葬式の写真を撮る習慣がありました。その写真を最初に見つけてから、『これはどうやって撮ったんだろう』とずっと探していて、このカメラに行き着いたんです」(岩根)

 岩根は所有者からこのカメラの修理と使用を認められ、1年がかりで修理、さらに1年をかけて撮影・現像技術を習得して撮影に臨んでいる。

「これはスリットカメラなんですけど、レバーを回すことによってスリットが開いて、カメラが1周して1枚の連なったネガで撮影できます。持ち歩きも大変だし、撮影前から撮影後まですごく大変なカメラなんですけど(笑)、出会ってしまったのでこのカメラでも撮影するようになりました」(岩根)
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