佐藤寛太インタビュー 主演映画『いのちスケッチ』で地元・福岡の動物園で“いのち”と向き合う!
「動物福祉に特化した動物園」として国内外から注目を集める福岡県・大牟田市動物園。そこで働く飼育員の奮闘や成長を描いた映画『いのちスケッチ』で、素朴で気の優しい主人公・田中亮太を演じたのは『今日も嫌がらせ弁当』や2020年の上演を控える劇団EXILEの舞台「勇者のために鐘は鳴る」など、活躍目覚ましい佐藤寛太。地元・福岡を舞台に主演を務めた思いや、役どころについて語った。
佐藤寛太(ヘアメイク・Emiy、スタイリスト・杉本哲也、撮影・永井幸輝)
動物園で数週間、飼育員を体験!
漫画家になる夢に限界を感じ、故郷の福岡に戻ってきた青年・田中亮太は、軽い気持ちで始めた動物園飼育員の仕事を通して「動物の命」について考えるようになる。20代半ば、将来について悩み葛藤するなかで、人との出会いや動物との触れ合いを通じ、再び一歩を踏みだす勇気を取り戻していく。青年の成長とともに、「動物の生と死」という内容の濃いテーマが描かれる本作。台本を読んだ感想は。
「こうしたテーマで演じられることがうれしかったです。僕が台本を読んで感じたのは“時の流れ”です。亮太が久々に故郷に戻ったら、街の人が変わっていたり祖母が歳を取っていたり。動物園での仕事も、ずっと同じ仲良しメンバーで続けられるわけではなくて、それぞれ夢を持っていたり、旅立つ人がいたりする。そういう変わりゆくものに折り合いをつけながら、時の流れの中で一人の青年が強くなっていく姿を強く感じました」
劇中で“延命動物園”として登場する大牟田市動物園は、動物の健康と幸せを第一に考える“動物福祉に特化した動物園”として世界からも注目されている。キャスト・撮影クルーもその姿勢に寄り添い、撮影では動物たちに不要な刺激を与えないように細心の注意が払われた。撮影に入る前に、佐藤自身も実際に飼育員を経験したという。
「撮影では動物たちにストレスを与えることがないように、と常に気を配っていました。動物たちにとって、僕らは嗅ぎ慣れない匂いがするし普段の飼育員さんの行動とも違うので、興奮状態になってしまう。なので、まずは動物たちに僕らに慣れてもらうことから始まりました。撮影が始まる2〜3週間前から動物園に通って、裏で飼育や掃除をしていました」
飼育員体験では、動物とのコミュニケーションも楽しんだようで。
「キリンがすごく人懐っこくて、僕らに興味持ってくれました。園に通って清掃をしていると、“なにしてるの?”という感じで宿舎を上からのぞきにきたり、作業していると頭を低く下げて鼻でつついてくれたりして。本当に人懐っこくて、可愛らしかったですね」
動物園には小学生のときによく訪れていたという佐藤。大人になった今、現場で見た飼育員の“いのちに向き合う姿勢”からは、役づくり以上に、人として学ぶことも多かったという。
「子供のころの飼育員さんのイメージは“かっこいい”とか“優しそう”というものでしたが、今回、社会人として飼育員の仕事に触れて、彼らは“命を預かるスペシャリスト“なんだと思いました。撮影中にイヌワシが寿命で死んでしまったんですけど、そのときの飼育員さんたちの対応を見ていて、命に対する向き合い方の違いを感じました。生と死を肌で感じる職業だからこそ、命を全うしたことをありのままに受けとめていて、改めて、動物園の生きものはペットではないことや、飼育員のスペシャリストとしての姿勢を感じました」
劇中で描かれる、飼育員たちの掛け合いも印象的だ。ときにぶつかり、ときに励まし合いながら、なんでも言い合える関係性は、撮影以外のところでも築かれていた。
「飼育員メンバー6人で一緒にいることが多かったです。撮影が早く終わったら大牟田の街を観光したり、ご飯にも行きましたね。大牟田名物のお好み焼き“高専ダゴ”を一緒に食べました。林田(麻里)さんが大牟田出身なので、案内してくれました」