SOD女子社員【負け犬女の働き方改革】「これからの人生下降しかしないのではと思った日」。
田口桃子
2019年の年末、私はとある忘年会に参加していた。
同じ業界の女性陣ばかりで集まった楽しい飲み会、のはずだった。
もともと内向的な性格で、自分反省会を繰り返しがちな性格の私ではあるが、この日の落ち込みようはいつもと違っていた。
アダルト業界につとめて今年で13年目。
13年もいればそれなりのポジションについて、それなりの地位を獲得できているものである。
具体的なことで言えば、「○○長」と名がつく役職があったり、ひとつの部署を任されたり、最近で言えばTwitterのフォロワーが何万人、ということもそれに含まれるかと思う。
この日私が落ち込んだ理由は明らかで、自分は13年も同じ会社で仕事をしているのに、何のポジションも何の地位も何の影響力もない、ということに気付いてしまったからだ。
VHSの登場とともにアダルトビデオが市場に出回ることになって20年以上経つが、実はユーザーの男女比は、圧倒的に男性が多い。
コンテンツを供給する「AVメーカー」の数で見ても、女性に向けて現在定期的にリリースしているメーカーはSILK LABOと、私がいるGIRL’S CHくらいで、月の新作の本数は10~20本程度。
それだけで、男性向けのコンテンツが毎月何千本とリリースされる中で、いかに市場が小さいかがわかると思う。
そういった女性向けの部門でがむしゃらに頑張ってきたつもりではあるが、会社からの評価は低い。
作品を購入してくれたり、出演者を応援してくれる女性ユーザーはこの数年で何十倍にも増えたが、男性向けの市場規模と比較されてしまうと、元も子もない。
環境を言い訳にするつもりはないが、男性向けvs女性向けのような構図で見られると圧倒的に我々は分が悪い。
そんな中で、冒頭の業界で活躍している女性たちとの飲み会があったわけだが、私以外の女性は全員、キラキラと輝いて見えた。
ある人はTwitterでファンの方から支持される広報として、ある人は子育てをしながら責任あるポジションを担当したりして、またある人は20代ながらも何万人ものフォロワーがいたりもする。
一方私はどうだろう。
結果を出せないままもう34歳になってしまった。
男性向け、女性向けがどうということではない。
単に私自身が実績を作れていないだけの話だ。
そう思いたい。
30歳になってから、急に世間の目が厳しくなったように感じた。
それまでいかに自分が「20代の女の子」というだけでチヤホヤされていたかを痛感した。
これほどまでに若い女に価値があったのかと、30歳を過ぎて初めて気づいた。
(改めて思えば、多くの女性作家がそのような文章を残してくれていて、ずっと注意喚起をされていたにも関わらず、だ。)
そしてそのチヤホヤは、異性からのアプローチという意味でももちろんそうだし、社会からの期待という意味でもそうだったのだ。
男性が若い女性を好むというのは説明する必要はないだろう。
一方、女性が活躍することを望む社会からは、結婚や妊娠・出産により仕事から離脱してしまう前に、結果や実績を出して出世コースに乗せたい。
20代の女性は、そんな正反対のアプローチを、同時に受けることになる。
だからこそ20代の女性は悩みが尽きないし、チヤホヤされているように感じるのだ。
ところが30代を過ぎるとそうではない。
男性からは「結婚を焦る女」「旬を過ぎた女」というレッテルを貼られ、急に選択肢から外される。
社会からは、一人前扱いされて手放される。
これまで熱心に勧誘に来ていた「男」「社会」という巨大な2つの営業が、急に来なくなるのである。
営業を受けていた身としては、「あれっ?」と腑抜けになっても仕方がない。
少なくとも私はそうなった。
30代を過ぎた私は、異性からも会社からも必要とされていない存在なのだ。
なぜ、20代のうちにそれに気付けなかったのか。
なぜ、20代のうちに意識的に実績を残していけなかったのか。
なぜ、20代のうちに会社から必要な存在だと思わせる行動がとれなかったのか。
きっと今生き残っている人は、それがわかって行動できている人か、無意識のうちにも行動できてしまう「デキる人」である。
そんな人と「デキない私」が一緒にいたら、それは劣等感に押しつぶされそうになっても仕方がない。
すべてが自己責任ではあるが、自己責任で済まされるには、現代社会においての人間の能力差は、あまりにも残酷すぎる。
そもそも20代の勧誘が激しすぎたのだ。
社会人としてのスタートから、いきなりたくさんの勧誘が来る状況がおかしかったのだ。
きっと今はそれがなくなっただけ。
営業がなくなった分ようやくこの30代から、自由に自分の人生を選ぶチャンスがきた。
自分の人生に何の希望も見いだせず、これから下降しかしないのではと思った夜、私は必死で自分にそう言い聞かせたのだった。
(田口桃子)
同じ業界の女性陣ばかりで集まった楽しい飲み会、のはずだった。
もともと内向的な性格で、自分反省会を繰り返しがちな性格の私ではあるが、この日の落ち込みようはいつもと違っていた。
アダルト業界につとめて今年で13年目。
13年もいればそれなりのポジションについて、それなりの地位を獲得できているものである。
具体的なことで言えば、「○○長」と名がつく役職があったり、ひとつの部署を任されたり、最近で言えばTwitterのフォロワーが何万人、ということもそれに含まれるかと思う。
この日私が落ち込んだ理由は明らかで、自分は13年も同じ会社で仕事をしているのに、何のポジションも何の地位も何の影響力もない、ということに気付いてしまったからだ。
VHSの登場とともにアダルトビデオが市場に出回ることになって20年以上経つが、実はユーザーの男女比は、圧倒的に男性が多い。
コンテンツを供給する「AVメーカー」の数で見ても、女性に向けて現在定期的にリリースしているメーカーはSILK LABOと、私がいるGIRL’S CHくらいで、月の新作の本数は10~20本程度。
それだけで、男性向けのコンテンツが毎月何千本とリリースされる中で、いかに市場が小さいかがわかると思う。
そういった女性向けの部門でがむしゃらに頑張ってきたつもりではあるが、会社からの評価は低い。
作品を購入してくれたり、出演者を応援してくれる女性ユーザーはこの数年で何十倍にも増えたが、男性向けの市場規模と比較されてしまうと、元も子もない。
環境を言い訳にするつもりはないが、男性向けvs女性向けのような構図で見られると圧倒的に我々は分が悪い。
そんな中で、冒頭の業界で活躍している女性たちとの飲み会があったわけだが、私以外の女性は全員、キラキラと輝いて見えた。
ある人はTwitterでファンの方から支持される広報として、ある人は子育てをしながら責任あるポジションを担当したりして、またある人は20代ながらも何万人ものフォロワーがいたりもする。
一方私はどうだろう。
結果を出せないままもう34歳になってしまった。
男性向け、女性向けがどうということではない。
単に私自身が実績を作れていないだけの話だ。
そう思いたい。
30歳になってから、急に世間の目が厳しくなったように感じた。
それまでいかに自分が「20代の女の子」というだけでチヤホヤされていたかを痛感した。
これほどまでに若い女に価値があったのかと、30歳を過ぎて初めて気づいた。
(改めて思えば、多くの女性作家がそのような文章を残してくれていて、ずっと注意喚起をされていたにも関わらず、だ。)
そしてそのチヤホヤは、異性からのアプローチという意味でももちろんそうだし、社会からの期待という意味でもそうだったのだ。
男性が若い女性を好むというのは説明する必要はないだろう。
一方、女性が活躍することを望む社会からは、結婚や妊娠・出産により仕事から離脱してしまう前に、結果や実績を出して出世コースに乗せたい。
20代の女性は、そんな正反対のアプローチを、同時に受けることになる。
だからこそ20代の女性は悩みが尽きないし、チヤホヤされているように感じるのだ。
ところが30代を過ぎるとそうではない。
男性からは「結婚を焦る女」「旬を過ぎた女」というレッテルを貼られ、急に選択肢から外される。
社会からは、一人前扱いされて手放される。
これまで熱心に勧誘に来ていた「男」「社会」という巨大な2つの営業が、急に来なくなるのである。
営業を受けていた身としては、「あれっ?」と腑抜けになっても仕方がない。
少なくとも私はそうなった。
30代を過ぎた私は、異性からも会社からも必要とされていない存在なのだ。
なぜ、20代のうちにそれに気付けなかったのか。
なぜ、20代のうちに意識的に実績を残していけなかったのか。
なぜ、20代のうちに会社から必要な存在だと思わせる行動がとれなかったのか。
きっと今生き残っている人は、それがわかって行動できている人か、無意識のうちにも行動できてしまう「デキる人」である。
そんな人と「デキない私」が一緒にいたら、それは劣等感に押しつぶされそうになっても仕方がない。
すべてが自己責任ではあるが、自己責任で済まされるには、現代社会においての人間の能力差は、あまりにも残酷すぎる。
そもそも20代の勧誘が激しすぎたのだ。
社会人としてのスタートから、いきなりたくさんの勧誘が来る状況がおかしかったのだ。
きっと今はそれがなくなっただけ。
営業がなくなった分ようやくこの30代から、自由に自分の人生を選ぶチャンスがきた。
自分の人生に何の希望も見いだせず、これから下降しかしないのではと思った夜、私は必死で自分にそう言い聞かせたのだった。
(田口桃子)
田口桃子(たぐち・ももこ)
GIRL’S CHプロデューサー。2007年、新卒でソフト・オン・デマンド(株)に入社。
営業、マーケティング等の部署を経て、2012年よりGIRL’S CHの立ち上げに携わる。
以来現在まで、GIRL’S CHの現場リーダーとしてサイト運営をしつつ、オリジナル動画ではレポーター出演等をすることも。
GIRL’S CHプロデューサー。2007年、新卒でソフト・オン・デマンド(株)に入社。
営業、マーケティング等の部署を経て、2012年よりGIRL’S CHの立ち上げに携わる。
以来現在まで、GIRL’S CHの現場リーダーとしてサイト運営をしつつ、オリジナル動画ではレポーター出演等をすることも。