痛くて笑える青春を描いた、なぜか皆の心の中にいる実在の人物“佐々木”の映画「佐々木、イン、マイマイン」【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 こんにちは、黒田勇樹です。

 三栄町LIVE×黒田勇樹プロデュースvol.10「ウィルス・ブルース」が11月29日に無事終了しました。

 面白いものを作れたと実感してます。そしてたくさんの感想もいただいております。関係してくれた皆様、そして陰ながら応援してくださった皆様、ありがとうございます。

 今年は表立った活動はこれが最後になります。来年もよろしくお願いいたします。

 いや、何かお話がきましたら、全然表立った活動もやらせていただきますけど。

 今週も始めましょう。
黒田勇樹
「佐々木、イン、マイマイン」という映画を観てきました。

 売れない俳優が、学生時代のヒーロー的人物“佐々木”のことを思い出していくという、僕が審査員で、自主制作の映画祭や、少年漫画のコンペに出す読み切りで出てきたら

「絶ッッッッッ対に、落とすッッッ!」と、いう

“クリエイタールサンチマン”あるある的設定。

 知らねーよ!お前がどんなに苦労してモノを作っていようと、こっちが払う金額は一緒なんだから、面白いもんみせんかいッ!言い訳をせずに、ハリウッドの100億円と並べる映画、持ってこんかい!

 と、思うワケですが、この「佐々木~」は、分類するとすれば「キッズリターン」「桐島、部活やめるってよ」と同じ箱に入れられるような、上質な青春群像劇。

 主人公2人がそれぞれ、社会不適合な父親と2人暮らし、祖母と2人暮らしと“複雑な家庭”で、育っているのですが、その描写も「なんかこういうことあったよな」という、いわば世間的にマイノリティとして扱われているけど「実際は皆の身近にあった物語」が丁寧に描かれます。

 そこに出てくる原案であり、佐々木役を演じた俳優本人の友人をモデルにしたキャラクター“佐々木”

 多くの場面で「過程は描くけど、結果は描かない」、でも「観客には結果が想像できる」という描写をしていたことも、この物語の妙だったんではないかと思われます。

「こんなヤツ、いねーだろ!」と「いたいた!こういうヤツ!」の狭間を、見事に描写し、デフォルメした現実の世界に観客を連れて行きます。

 観劇後に心に残る「青春の残り香」こそが、この映画の本質で真実だったんじゃないでしょうか。

 ラストシーンは「考えない」が、正解かな?と思ってます。

 唯一の心残りは、ベッドシーンの直前に白いセーターの女の子をガバっと脱がせる描写があるんですが「メイク落とす前の子をそんな脱がせ方しちゃダメだろ!」と…まあ、これすらも青春と言えば青春か。文句のつけようのない傑作でした。
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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
Twitterアカウント:@yuukikuroda23

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