「バリキャリでもママでもない曖昧な人」【36歳のLOVE&SEX】#1


 あけましておめでとうございます。

 昨年は働き方をテーマに1年間試行錯誤してきましたが、部署異動や担当変更もあり、今おかれている状況とテーマにズレを感じたので、今年は自分自身として、アダルト業界に身を置いているからこそ感じたこと、考えたことを表現していきたいと考えています。

 といっても、堅苦しく何かを論じたいわけではありません。

 日常で感じるちょっとした違和感を、アダルト業界しか知らないちょっと世間知らず(アラフォーに対してこの言葉を使うことに狂気を感じますが)な人間が思ったことを書いていくことで、見える世界もあるのではないかな、と。

 連載タイトルも一新して、あえてちょっとダサい感じで手広くやっていきたいと思います。

 早速ですが、毎年年始になって思う、年賀状について。

 頂く年賀状で、毎年大きくなる子どもの写真を確認したり、家族が増えただの、家を買っただの、犬を飼っただの、目に見える資産を着実に築いている友人たちの姿を見ると、「すげえな」と思います、これは皮肉ではなく。

 だって、ひとつひとつ積み重ねたそれらのものは、簡単に手放せるものではないのですから。

 人の命を預かる責任や、家族という共同体を一緒に生きるという覚悟、また、そういった精神的なものではなくとも、家や車のローンだってあるでしょう。

 そのどれも、逃げようと思っても逃げられません。


 そういうのしかかるものを振り切って、ふわふわ逃げて生きることを選択した人間にとっては、尊敬でしかないです。

 同じ36歳でも、私のように独身で子供もおらず、楽しく孤独に趣味や仕事にいそしむ人間は、どちらかというと少数派に分類されます。

 なので私のような人間が、肩身が狭いなと感じることは仕方ないとは思います。

 とはいっても、法律や社会に邪魔されているわけでもなく、出会いや恋愛のチャンスがないというわけでもなく、ただ興味がないから結婚していないだけ。

 マジョリティでもなくマイノリティでもない自分の足元がすごく曖昧に感じることがあります。

 何か自分の生きる目標とか指標になるものはないかと、ネットの記事や雑誌を見てみると、30代後半の女性は仕事で大活躍して社会から認められている「キャリアウーマン」か、子育てや家事にと大忙しな「ママ」という扱いに分類されることが多く、自分がスコンと穴に落ちたような居場所のなさを感じるだけでした。

 でも、適度に仕事をして、生きがいがあって、仲間がいて、マイペースに生きるという生き方をしている女性は、私の周りには結構多いのです。

 もちろん類は友を呼ぶということもあるかもしれませんが、どこかの誰かに向けていろんな方向に発信されるメディアよりも、自分の身の回りの目で見て体感できることのほうがよっぽど信頼できる情報だと信じたい。

 私のような「曖昧な人」は確実に存在しているはずなのです。

 私は今35歳、今年の3月で36歳です。

 20代後半に漠然と降りかかってきた「もう自分は若くない」という恐怖と闘って数年。

 30歳を過ぎたら「アラサー」という言葉で年齢をごまかしていたものの、もう昨年からその言い訳も言えなくなってしまいました。

 だって「アラフォー」なのだもの。


 怒られるのを承知で言いますが、20代の私はアラフォーなんておばさんだと思っていました。

 おばさんだから、おしゃれしたり、騒いだり、性や愛に一喜一憂するなんて恥ずかしい、大人げないとすら思っていました。

 そういう大人にならないように、若いうちに精一杯はしゃいで、遊んで、後悔のないイケてる大人になることを目標としていた時期もありました。

 でも実際に自分が30代後半になってみて、20代の頃と大きく変わったことって、精神的にはほとんどないような気がするのです。(肌のハリとか、疲れがとれないとか、肉体的なことはありますが)

 もちろん、後輩がたくさんできて、多少は責任感とか思いやりを持ったり成長した部分もあると思うのですが、好きなものに対して我慢できない性格や、これだと思うとなりふり構わず振り切ってしまう性分は、むしろ加速しているように思います。

 性や愛についても、この仕事をしているおかげで様々な知識が増えました。

 最新グッズの情報、困りごとや悩みごとへの対処方法、性風俗についての知識、女性がどんなことで悩んでいるか、いろんな愛の形やパートナーとの関係性など、知れば知るほど世界が広がるばかりです。

 だからこそ、夫婦間の悩みはセックスレスと妊活だけではないし、恋する気持ちや性欲は年齢や立場とは関係ないということを改めて思います。

「キャリアウーマン」にも「ママ」にも程度の差こそあれ性欲はあるだろうし、でも、それがないとされている今の感じは気持ちが悪い。

 一方で、私のような「曖昧な人」は夫や子供の制約がない分自由になんでもできるかというと、別にそういうわけでもない。

 性教育は若い人だけのものではないし、性風俗は寂しい人だけのものではないし、30代後半以降の女性に向けた情報ってどこにあるの?と余計にドツボにはまってしまうのでした。


 というわけでこれからは、来た道の性でなく、これから行く道の性について、考えて書いてみようかなと、思ったり思わなかったりしているので、これを読んで一緒に考えてくれる人が一人でも増えるといいなと思います。

 今年もよろしくお願いいたします。
2007年、新卒でソフト・オン・デマンド(株)に入社。
営業、マーケティング等の部署を経て、2013年に女性向けアダルトサイト「GIRL’S CH」を立ち上げ。以来、GIRL’S CHの現場リーダーとして、サイト運営・企画・広報に携わる。
現在は新規事業の立ち上げを担当。