「不幸なふりはもうやめた」【36歳のLOVE&SEX】#6

SOD本社近くの杉山公園の桜です。中野と言えば中野通り沿いに咲く桜も見事!

 社訓というほどではないが、弊社には創業者・高橋がなりが提唱する「負け犬からの脱却十か条」というものがある。


 数年前まで毎朝全体朝礼があった頃は、日替わりで一節ずつ全員で唱和するということもしていた。


 今でも当時いた新卒メンバーにとっては、この十か条が強く印象に残っていて、思い出話として「十か条でどれが一番心に残っているか」という話をしたりすることもあるくらいだ。


 私自身、何かに悩んだり迷ったりするときは、この十か条を思い出して自分の行動を決めたりすることもある。


(十か条の内容については、高橋さんがYoutubeにてご自分でお話しされてるので、よろしければそちらをご覧ください→ https://youtu.be/jn9WhOHzaG4


 


 私が入社した頃、なのでもう15年くらい前になるのだが、先輩社員から私たち新卒社員に向けて、この十か条のうちの一節をアドバイスとして送る、ということがあった。


 私に送られた言葉は、「常識を身につけ、常識を疑え」。


 この言葉は、新しいものを生み出すには常識から外れたアイディアが必要であるとともに、非常識にならないバランスが必要だ、というような意味合いの言葉である、と私は理解している。


 だが妙に引っかかったのだ、「私には常識がない」と言われているような気がして。


 


 小中高と優等生で、大学も一応早稲田大学という名門と呼ばれるところを出たものの、私自身は学校の成績だけは良い、いわゆる空気が読めない子だった。

 

 特に大学のサークルでは空気の読み合いが大切で、空気を読めないことで周りに煙たがられているように感じることもあったし、実際に仲の良い人にそれを指摘されたこともあったが、そもそも空気を読むという言葉の意味が理解できずピンときていなかったから、どうすることもできなかった。


 


 だから新卒のときにこの言葉を送られて、「常識を身につけろ」「空気を読め」ということを会社や先輩から求められているんだろうな、そこが私の欠点なんだろうなと改めて感じたのだった。


 


 話はだいぶ昔に戻るが、今でもよく覚えている子どもの頃のエピソードがある。


 私は3月30日が誕生日なので、毎年春休みとかぶる。


 なので、自分のためにちょっとした誕生日パーティーを開き、招待状を書いて、家に友達を集めたりしていた。


 そのパーティー自体は何度かやったのだが、ある年友達の持ってくる誕生日プレゼントが例年と比べて豪華だと思った母親が、私の書いた招待状を見て、持ち物の欄に「誕生日プレゼント」の項目があるのを発見して驚愕していた。


「そういうものは、みんなが自主的に持ってきてくれるものであって、こっちが書くものでない」と言われ、どうやら自分が失礼なことをしたらしいということがわかった。


 だが、何が失礼なのか、全くわからなかったのだ。


 むしろ当時は、どうせプレゼント持ってきてくれるだろうから、忘れないように持ちものリストに入れておいてあげたほうが親切だろう、くらいに思っていた。


 


 自分では普通にしているつもりなのに、「空気が読めない」「常識がない」というようなことを周りに感じさせてしまう理由がわからずにイライラして、周りが思っている私と、本当の私は違う!と主張し続けて周囲の人と対立することばかり。


 するとそんな四苦八苦している姿やもがき苦しんでいる姿を面白がってくれる人もいて、そのまま対立し続けていたほうが好まれるのではと思うようにすらなった。


 ちなみに、TOKYO HEADLINEで最初に文章を掲載し始めたときの連載タイトルは「脱・こじらせへの道」である。


 私は、こじれているほうが面白い、不幸であることが望まれている、常に恋愛はうまくいかない、だからそんな自分であったほうが良い。


 空気が読めないくせに、変なところで空気を読もうとする、なんだか矛盾した生き方だ。


 


 私が先輩から「常識を身につけ、常識を疑え」と言われてから、新中野で迎える15回目の春が来た。


 SOD本社の近くにある杉山公園には、毎年桜の花が咲く。


 もっさりとまん丸に咲く満開の花はかわいらしく、見上げたときに青空とのコントラストがとても美しい。緑色のつぼみが入っているときも生命がみなぎるのを感じるし、なんだかよく名前も知らない鳥が枝で遊んでいる様子も良い。


 この時期はマフラーをぐるぐる巻きにしなければいけないほどの寒さもなければ、汗がダラダラ流れるような暑さもない。とにもかくにも過ごしやすい。


 晴れる日も多くて、なんていい季節なんだろうと、毎年思う。


 きっと私が生まれたのもこんなふうに幸せにあふれた日だったんだろう、そんな私が自分から不幸でいようとするのは、なんだか不毛なことのように思える。


 


 いつまで他人の望んだ(かどうかも本当はわからない)不幸を演じるつもりなのだろうか?


 本当に私のことを大切に思ってくれている人が、私の不幸など願うだろうか?


 もう、不幸なふりはもうやめようと思った春だった。


 


※かといって、特に結婚とかめでたい発表はないです。なんかすみません。



田口桃子…2007年、新卒でソフト・オン・デマンド(株)に入社。
営業、マーケティング等の部署を経て、2013年に女性向けアダルトサイト「GIRL’S CH」を立ち上げ。以来、GIRL’S CHの現場リーダーとして、サイト運営・企画・広報に携わる。
現在は新規事業の立ち上げを担当。