MIYAVI Interview about “Imaginary” ーー月刊EXILE
MIYAVI待望の13thフルアルバム『Imaginary』が9月15日にリリースされる。オリジナル曲のほか、コラボやカバー楽曲も加えた全11曲を収録。MIYAVIが想像の翼を広げ、重力に縛られない新たな世界を描く!
─前作『Holy Nights』から1年5ヵ月ぶりとなる待望のニューアルバム『Imaginary』が完成しました。まずは制作過程について教えてください。
「実は2020年、オリンピックの前後に2枚アルバムを出す予定でこのアルバムを準備していたんですけど、コロナの影響でツアーが延期になり作品をステージで発表する機会がなくなってしまって。音楽に限らずこういう作品って野菜とかお肉とかと一緒で生ものだから鮮度が大事で、生まれてきたそのままの勢いで聴かせたいし、演奏したい。なので一回冷凍保存したんですよ。とはいえ、冷凍保存しても時代は変わっていくから、解凍したあとに歌詞を書き直したり、音像も変えたりしました。2020年は“MIYAVI Virtual”をはじめ、バーチャルワールドにおける表現の可能性をずっと模索していて、どんどん時代がシフトしていくそのなかで感じたことを強く描いています」
─予期せぬ出来事が起こるなかでも、制作作業を順調に進めることはできたんですか?
「いつもはロサンゼルスで制作しているんですけど、今回はロサンゼルスと東京をつなぎながら、いつもの共同制作者のレニー(・スコルニク)に加えて、Jeff(Miyahara)というプロデューサーを新たに迎えて、逆に東京だからこそできることを意識して作っていきました。時差があるのは当たり前なんですけど、やっぱり同じ部屋のなかで作るのとリモートで作るのは違うんで、その変換というのは時間もかかりましたし、やっぱりまかなえないものもありますし、逆にリモートだからこそできる進め方もありました。これまでも一度完成したものを再構築することはありましたけど、今回は特殊な作り方だったので、正直、戸惑いもありましたね」
─特に大変だった楽曲を挙げるとしたら、どの曲ですか?
「う~ん……『Imaginary』かなあ。結構二転三転したし、東京で感じる世界とアメリカにいて感じる世界とは違ってるというか。しかもこういう時代なので、何が正解という基準が曖昧で、そういう面では大変な部分もたくさんありましたね」
─まさにこの1年半で世界は大きく変わり、その影響が今作にも色濃く出ていると思いますが、前作『Holy Nights』は環境問題や難民問題など、岐路に立たされた世界へのメッセージが込められた作品だったのに対して、今作『Imaginary』は“想像力”や“新たな重力”をテーマに作られたそうですね。改めてこのテーマに至った経緯をお聞かせください。
「やっぱりここから先、いろんな価値観が変わっていく、その様子をドラスティックに感じたし、どんどん世界が非物質化していくという。決してそれは間違いじゃないと僕は思っていて。この地球と寄り添っていくなかで、どんどんアナログからデジタルになっていく。アナログのよさを知っている人間としてはもちろん寂しさもあるんですけど、そうなることが必然的だと思えた年だったと思います。僕たちがイマジネーション(想像力)から得られることってすごく大きいし、むしろ今までもその想像力でもって未来を作ってきたと言ってもいい。それこそアニメで描かれるような、『AKIRA』のような未来なのか、『ドラえもん』のような未来なのか、『鉄腕アトム』のような未来なのか、描きようがたくさんあるなかで、僕たちも少なからず影響されている。人が思い描く力というのは、人間としてのある種の特殊能力だと思うし、特にこのコロナみたいな医療崩壊が起こっているなかで、音楽とか映画とか文化の力って何だろう? って改めて考えさせられましたよね。僕たちが想像力を持って0から1のものを作り出す、そのパワーが人をまた未来に導いていく、そこをもう一度僕も感じたいなと思った。今まで自分たちが当たり前だと思っていたものが当たり前じゃなくなってしまって、こうあるべきだったということが別にそうでなくてよかった、ということもたくさんあったと思うんですけど、そういう意味では自分たちが作ってきた文化なのか文明なのか、とにかくそこからの脱却、テイクオフというのはこのアルバムのひとつのミッションかなと」
─まさに解放感、1曲目からとてつもないエネルギーがあふれたアルバムですよね。しかも一音一音が躍動しているから、聴いているうちに心も身体も動いていましたし、メロディがキャッチーだから、自然と口ずさんでいました。
「メロディが立つ音楽というのは常に心がけています。僕はどちらかというとリズムギターとかのほうが好きなんですけど、アメリカのプロデューサー・ジャム&ルイスと話しているときに、マイケル・ジャクソンから“Melody is a king”(=メロディこそ王様だよ)っていう言葉をテリー・ルイスがもらったと聞いて、やっぱり旋律、メロディが最終的に人の記憶とか思い出と結びついていく。そういう意味ではこのアルバムに関しても、今の時代とリンクしたメロディにしたいなというのはありましたね」
─同時に今作を聴いて、“ライヴに行きたい”という衝動に駆られました。
「バーチャルライヴでの演奏も意識してはいますけど、何より僕自身がファンのみんなの前でライヴをしたくてうずうずしていて、生のライヴをイメージして作った音像もあるので、聴いているとおのずとライヴの臨場感も感じてもらえるんじゃないかと」
─9月30日からは待望のライヴ、北米ツアーがスタート! 2019年の『NO SLEEP TILL TOKYO』以来約2年ぶりのツアー、海外公演となりますね。
「実際このツアーが実現できるかどうか、コロナの状況によってまた変わってしまうかもしれないですけど、とにかくもう一度再会できることの喜びをみんなと分かち合いたいです。何よりその場所にいられるという尊さを感じたいですね」
─以前は気軽にライヴに足を運べていたのが、ある種覚悟を持って行かなければならないという。
「今、アメリカとかでは普通にフェスとかやってますけど、傍から見ていてちょっと感覚が違うというか、なんだろう、同時にある種の虚しさも感じるというか。物の価値はどんどん変わっていく、そのなかで自分たちが人間である、アナログであるということの尊さは忘れたくないし、忘れられない。新しい時代での在り方があるなら見つけたいし、そういう意味では今回ライヴはセレブレーションであり、また新しい世界への旅立ちになればいいなと思います」
─そして、アルバムリリース前日の9月14日には40歳の誕生日を迎えられますが、40代への抱負などあればお聞かせください。
「まあ変わらずにいい作品を作って、世界中の人に届けて、家族や仲間、スタッフやファンのみんなと一緒にいい時間を過ごせればいいかなと思います。若いときと比べると、もちろんスタミナやパワーはなくなっていくけど、そのぶん知識と経験がある。上手くコントロールしていけば、よくなっていくのかなと。現状維持していくつもりはないんで」
─確かにMIYAVIさんは常に開拓者であり続けていらっしゃいますからね。では最後に『月刊EXILE』読者の皆さんにメッセージをお願いいたします。
「まだまだコロナ含め大変な世の中だけど、希望を感じられる作品になったと思います。実際に皆さんもそれぞれの人生、環境のなかで先が見えないことや不安なこともあると思いますが、僕たちは作品を通じて未来を指し示すことができると本気で思ってるし、それが僕たちの存在意義だと思っています。ただ消費されるだけの音楽ではなく、このアルバムが聴く人にとって有機的な音楽であってほしい。そして、日本でも近いうちにライヴを開催して、みんなと早く再会を果たせたらいいなと思っています」
月刊EXILE ( http://www.exilemagazine.jp/ )10月号より
月刊EXILE 10月号発売中!
最新号のカバーは劇団EXILE。メンバー総出演の連続ドラマ『JAM -the drama-』の魅力について探る。開幕が迫る舞台『ETERNAL』に出演するTHE RAMPAGE from EXILEのRIKU、陣、岩谷翔吾、藤原樹、長谷川慎、鈴木昂秀が登場するなど、豪華なラインアップ! EXILE ÜSA 、MAKIDAI、橘ケンチ、TETSUYA、NESMITH、SHOKICHI、世界、佐藤大樹、佐野玲於ら豪華メンバーによる連載も!