清澄白河から渋谷区千駄ヶ谷に拠点を移した小山登美夫ギャラリー。新スペースのオープニングを飾るのは、日本で初めてとなるアメリカの作家ジェイムズ・キャッスル(1899-1977)の展覧会。
ジェイムズ・キャッスルは、ドローイング、コラージュの立体作品、ハンドメイドの本などを独学で、生涯を通じて制作した作家。生まれた時から耳が聞こえなかった彼は、通常のコミュニケーションの方法を持たず、また正式な美術教育も受けなかったが、70年近くもの作家人生で他に類を見ない、さまざまな作品群を残している。使用する素材も独特。ドローイング作品は、暖炉のすすと唾液を混ぜた独自の“インク”を、尖った棒や丸めた綿などを使って描いている。彼はまた、彼の家族が営んでいた商店と郵便局で手に入った、食べ物や製品の包装、マッチ箱、手紙を使って、コート、人物、動物などのコラージュの立体作品も制作した。モチーフとなるのは彼のごく身の回りにある、日常のもの。それゆえ時代や国を超え、見る者もノスタルジックな切なさを感じ取る。
本展ではモノクローム、カラーを含む30点近くの ドローイングと、コラージュの立体作品「無題(バスケット)」を展示。