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一度で何倍も楽しめる! コレクション展「高橋コレクション展 ミラー・ニューロン」

2015.04.12 Vol.640

 日本の現代美術を語るうえで決して外すことのできない作家たちの作品を鑑賞できる、おすすめのコレクション展。

 精神科医・高橋龍太郎氏の収集による現代アートのコレクション〈高橋コレクション〉は、1990年代以降の日本のアートシーンを俯瞰するうえで欠かせない存在として、高い評価を得ている。1990年代に収集を本格化させた高橋氏は、奈良美智、村上隆、会田誠、ヤノベケンジといった、今、日本の現代アートを代表する作家たちにごく早い時期から注目し、彼らの重要作品を収集。一躍、現代アートのコレクターとして名を馳せた。草間彌生や横尾忠則らキャリアの長い作家なども積極的に収集しており、近年では、菅木志雄や李禹煥ら“もの派”など、より幅広い作品を集めたコレクションとなっている。

 本展のタイトルにある〈ミラー・ニューロン〉とは模倣行動に反応する神経細胞。人間は模倣行動によって他者の行動を理解し共感すると考えられている。本展では、その〈ミラー・ニューロン〉を、日本のアートと文化を考えるためのキーワードとして、歴史的な視野から作品をセレクト。52作家、約140点の作品を通して、日本の現代アートの流れを読み解いていく。

歩き続けた、天才たち『グエルチーノ展 よみがえるバロックの画家』

2015.03.22 Vol.639

 イタリア・バロック美術を代表する画家、グエルチーノ(1591-1666年) の、日本国内では初めてとなる展覧会。

 グエルチーノはボローニャ近郊の小都市・チェントに生まれ、ほぼ独学で絵画を学びながら“ボローニャ派”を代表する存在として名声を博した画家。ときの王侯貴族や、教皇、枢機卿などから多くの支持を得、没した後もゲーテやスタンダールといった後世の文化人らから高く評価されていた。19世紀半ばごろになると近代美術の隆盛とともに忘れられていたが、20世紀半ば以降は再評価の試みが続けられ、近年ではイタリアを中心に大きな展覧会が開催されている。

 今回は、国立西洋美術館がグエルチーノの油彩画を1点所蔵していたこともあり、日本で初めての大規模展が実現。2012年に地震の被害を受けて以来閉館しているチェント市立絵画館の協力で、グエルチーノ作品など44点を展示。本展の収益の一部は同館の復興に充てられる。

 ボローニャ・チェントを活動の拠点としながらも、ローマ滞在を機に画風を大きく変えるなど、新たな表現を模索していたグエルチーノ。当時のイタリア美術の変遷を知る上でも、興味深い作品となっている。

歩き続けた、天才たち『「生誕三百年 同い年の天才絵師 若冲と蕪村」展』

2015.03.21 Vol.639

 琳派を築いた尾形光琳が没した正徳6年(1716年)、2人の天才絵師が誕生した。1人は、彩色鮮やかな花鳥図や動物を描いた水墨画で知られる伊藤若冲(いとうじゃくちゅう/享年85、1800年没)。もう一人は、中国の文人画の技法による山水図などを得意とした与謝蕪村(よさぶそん/享年68、1783年没)。伊藤若冲と与謝蕪村の生誕300年を記念して、同じ年に生まれ、ともに日本の美術史に名を残した2人の天才に迫る。

 本展では、若冲と蕪村の代表作品から新出作品までを揃えるとともに、同時代の関連作品を加え、人物、山水、花鳥などの共通するモチーフによって対比させながら展示。それぞれ、直接交流したという記録は残されていないものの、ともに中国・朝鮮絵画からの影響が見られたり、同じ人物から評価されていたりと、ほぼ同時期に日本の文化界で活躍していた2人。その存在を通して、18世紀の京都の活気あふれる文化を感じ取ることができる。

現代アートの登竜門で若手作家をいち早くチェック!
VOCA展2015 現代美術の展望─新しい平面の作家たち

2015.03.08 Vol.638

 全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などが、40歳以下の若手作家を推薦し、その作家が平面作品の新作を出品するという方式により、全国各地から未知の優れた才能を紹介してきたVOCA展。これまでにも、福田美蘭(1994年VOCA賞)、やなぎみわ(1999年VOCA賞)、蜷川実花(2006年大原美術館賞)、清川あさみ(2010年佳作賞)など、現在多方面で活躍している作家たちが出品。「平面」という一貫した切り口で、その時代の若手作家たちの感性を紹介してきた。

 今回は、34人の推薦者により34人の作家が出品。グランプリとなるVOCA賞に輝いたのは、シルクスクリーンで数十から百回ほどインクを重ねるという独自のスタイルで作品を制作する小野耕石の『Hundred Layers of Colors』。他、VOCA奨励賞に岸幸太、水野里奈、佳作賞に松岡学、松平莉奈、大原美術館賞には川久保ジョイが選ばれた。

 現代アートのプロフェッショナルたちが推薦した、全国の若手作家の才能に触れてみて。

現代アートの登竜門で若手作家をいち早くチェック!
17th DOMANI・明日展 plus

2015.03.08 Vol.638

 国内外のアート作品が集結する『アートフェア東京2015』内にて、毎年多くの若手作家を輩出する『DOMANI・明日展』のブースが登場。『DOMANI・明日展 plus』と題して3作家の作品を展示する。

 文化庁では、日本の芸術界を担う才能を支援するため、若手芸術家を海外に派遣し、その専門とする分野について研修の機会を提供する「芸術家在外研修(現・新進芸術家海外研修制度)」を昭和42年度から実施している。研修に参加した作家が、その成果を発表する場である『DOMANI・明日展』では数々の有望な才能が紹介されてきた。

 今回のブースで展示されるのは、2002年度にカナダに派遣された清野耕一、2006年度にイギリスに派遣された手銭吾郎、2006年度にオランダに派遣された蛯名優子の3作家による、立体、平面、インスタレーションを展示。絵画や彫刻、写真、インスタレーション、さらにはアニメーションや工芸など、さまざまなジャンルの作家に光を当ててきた『DOMANI・明日展』ならではのセレクトとなっている。こちらのブースでは作品販売は行っていないが、有望な若手作家の作品を参考にしてみては。

不思議な”かたち”から、何が見える?

2015.02.22 Vol.637

 国内外で評価を得ている若手陶芸家・五味謙二の展覧会。近年、日本陶芸展や菊池ビエンナーレで受賞を重ね、昨年は第10回国際陶磁器展美濃の陶芸部門でグランプリを受賞。ヴィクトリア&アルバート博物館にも作品が収蔵されるなど、活躍目覚ましい陶芸家だ。

 五味は1978年生まれ。国宝土器が出土する長野県茅野市で幼少期を過ごし、早稲田大学を卒業後、沖縄県那覇市で17世紀から制作されている壺屋焼を学んだ。

 その作品制作の軸となっているのは、陶芸の焼成という工程。五味の作品の不思議な温かみを持った有機的な“かたち”は、焼成という観点から最も理に適った形態を選んだ結果だという。また、もみ殻に埋めて焼成することで、土を感じる色や肌合いを引き出している。五味いわく『彩土器』シリーズの制作を通して「“土”で作ったモノを“焼く”というよりは“焼く”ためのモノを“土”で作る」ことに思い至ったという。

 本展では「彩土器」と呼ばれるオブジェのシリーズと、蓋の付いた容器「ふた、モノ。」シリーズ、碗などを展示。
 かたちといい色合いや質感といい、大地がそのまま生み出したかのような、不思議さに感動して。

不思議な”かたち”から、何が見える?

2015.02.22 Vol.637

 1990年代前半から活躍し、国際的にも注目を集めている現代アーティスト、ガブリエル・オロスコの、日本初となる個展。
 ガブリエル・オロスコは、路上に打ち捨てられた物や、何げない風景の中から魅力的なかたちを発見したり、それらにほんの少し介入し、かたちを変えたりして作品に転換する。あるときは何かを隠喩していたり、またあるときはありふれた存在に新しい視点をもたらしたりと、見る者に読み解く楽しさを与えてくれる。

 ありふれているはずのモノが見慣れない“かたち”で存在するとき、人はそこに、万物に与えられた“変わりゆく運命”を感じ取る。オロスコの作品が表現するのは、宇宙の中で万物が流転し循環していく様なのだ。2009年から2011年にかけてニューヨーク近代美術館を皮切りにテート・モダンほか世界の主要美術館で大規模な個展を開催するなど、現代アート界を代表する作家でありながら、これまでアジア圏での展示の機会があまり無かったオロスコ。待望の国内美術館初個展となる今回は、自動車を分割して張り合わせた有名な作品『La DS』などの代表作から、最新のカンヴァス作品までを展示し、その魅力を徹底紹介。

アートの”いのち”は受け継がれていく TWS-NEXT @tobikan 「上野のクロヒョウ」

2015.02.08 Vol.636

 2001年の開館以来、若手アーティストの発掘、育成、支援を行ってきたトーキョーワンダーサイト(TWS)。TWSの事業に参加した若手アーティストを継続的に支援するプログラム『TWS-NEXT』の展覧会を東京都美術館で実施。

 本展では、リサーチをもとに作品制作を行う若手アーティストに注目。4組のアーティストが、東京都美術館がある上野の歴史に焦点を当てた新作を発表する。そのテーマとなるのが、「二・二六事件」「阿部定事件」と並んで、昭和11年の三大事件の1つとされている「上野動物園クロヒョウ脱出事件」。

 歴史は1つの事象でありながら、人の認識を通してさまざまな解釈が加えられ、記憶されていく。アーティストが加える新たな視点にふれることで、図らずも歴史を伝えることのあいまいさ、危うさに気付くはず。

 多摩美術大学出身の表現集団・オル太は、昭和初期の記憶をたどる映像とともに同時代に生きた画家・靉光の作品をモチーフにしたインスタレーションを発表。他、国内外でその場所に特化した作品を制作している佐藤未来、刺繍やパッチワークを用いる市川紗也子、自刻像やクラゲをモチーフにした彫刻を制作している平川正が参加する。

アートの”いのち”は受け継がれていく 岡本太郎の「生命体」

2015.02.08 Vol.636

 生涯にわたり“いのち”を描き続けた岡本太郎。その代表的な作品が、太陽の塔の胎内に内蔵されている〈生命の樹〉だ。1970年に行われた大阪万博の後、万博記念公園に残された太陽の塔だが、その内部は原則的に一般非公開とされてきた。〈生命の樹〉は、生命がたどった進化の道のりを表現した巨大なオブジェ。塔内部公開に向けてのプロジェクトが動き出しているが、まだ公開時期は未定だ。

 本展では制作当時の姿をかたどった〈生命の樹〉の模型をはじめ、岡本太郎作品の中でも特に生命のエネルギーあふれる作品を集め、太郎が表現し続けた“いのちの強さと尊さ”に迫る。

 また、本展覧会の会期半ばより、第17回岡本太郎現代芸術賞で太郎賞を受賞したキョンチョメ(4月上旬から下旬までを予定)と、敏子賞を受賞したサエボーグ(5月下旬から会期終了までを予定)による新作の特別展示も行われる。

 パリに留学しながらも、パリの街角や盛られた果物、横たわる裸婦といった、同世代の洋画家たちが描いたような作品を残さなかった岡本太郎。彼が描こうとしたものは何だったのか。作品の前に立った時、視覚から五感に響きわたっていく“いのち”のエネルギーを感じよう。

写真がいざなう、新たな世界「ここより北へ」石川直樹+奈良美智 展

2015.01.24 Vol.635

 七大陸最高峰登頂に成功した探検家であり、写真家の石川直樹。日本のみならず海外でも人気の高いアーティスト・奈良美智。あてもなくゴールも決めず、ただ“北へ向かう”旅に出た2人が、旅の中で出会ったものとは。

 2014年6月、どちらからともなく誘い合い、北へ向かう旅に出た2人。下北半島と津軽半島からスタートし、さらに北海道へ渡った彼らは、アイヌ語の地名を持つさまざまな地を訪ねて歩いた。アイヌ文化をたどっていくと、道はさらに北へと続き、2人はついにサハリンへ。その地で2人は、トナカイ祭りや旧日本の史跡、アイヌ部落跡など、知られざる世界との出会いを経験する…。本展では、2人が旅の中で撮った写真や持ち帰ったもの、そしてもっと昔に2人の身の回りにあった思い出の品々などを展示。2人の視点を通して“北への旅”を体感しながら、地図に書かれた世界とは違う、人々が生きる生身の世界に触れることができる。2人の芸術家の、ちょっと変わった旅の物語。彼らはどんなものに出会い、心動かされ、シャッターを切ったのか。そしてどんなラストシーンを迎えたのか。

写真がいざなう、新たな世界「蜷川実花:Self-image」

2015.01.24 Vol.635

 極彩色の鮮烈なビジュアルの作品で、国際的に知られる写真家・蜷川実花の醍醐味に迫る注目の個展。

“蜷川カラー”とも呼ばれる独特のビジュアルで、アイドルやモデル、花々の美しさを色鮮やかに表現しながらも、同時にその華やかさや幸福感と隣り合わせにある歪みや衰退の影、死の気配をもとらえ続けてきた蜷川。近年は映画やミュージックビデオなどの映像作品や、ファッションデザイナーとのコラボレーションなど活動の幅を広げながら、独自のスタイルを貫く表現者として注目を集めている。

 本展では、初期から断続的に撮影してきたモノクロームのセルフポートレイトを中心に、闇や影の部分に目を向け新境地を開いたシリーズ『noir』(2010年―)や、2010年の春に目黒川の桜が川面に散る様を一心不乱に3時間で撮影した『PLANT A TREE』(2011年)という代表的シリーズ、さらに渋谷慶一郎、evalaとコラボした新作映像のインスタレーションも展示する。

 原美術館ならではの各空間に現れる蜷川実花の世界。新たな魅力と出会えるはず。

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