文化庁の支援により海外研修を行った作家を紹介する展覧会として、今回で15回目を迎える「DOMANI・明日展」。今回は、平面、立体、写真などさまざまなジャンルから、とくに近年注目を集めている12名の作家の作品を紹介する。
彼らが参加した文化庁の芸術家在外研修(新進芸術家海外研修制度)は、1967年から実施され、これまで約2900名を派遣している。研修先やジャンル、期間はさまざまだが、海外で作品を制作するという経験が、若い作家たちに刺激を与えることは間違いない。
今回の展覧会では、ロサンゼルス在住の曽根裕や、カナダ在住の池田学など、現在も海外を拠点に制作活動を続けている作家たちも多数出展。異邦人として、自らのルーツに、そして自らの作品に向き合った彼らならではの、エネルギーあふれる作品が集う。
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ヤマハの新グラフィック・コンテストのグランプリ決定
ヤマハとヤマハ発動機が総合的なグラフィック・コンテストとして今年初めて開催した『Graphic Grand Prix by Yamaha』の最終審査・表彰式が14日、都内で開催された。
このコンテストは「感動」をキーワードとした理念を持つ両社が「今の時代の感動」を広く世の中に伝え、クリエイターやアーティストの発掘・育成を視野に開催したもの。今回は「存在。」をテーマに作品を募集した。6月29日から9月30日までに1585の作品の応募があり、その中から一次審査で30作品に絞り、さらに二次審査を経て最終審査には7作品がノミネートされた。
この日はコンテストのプロデューサーで審査員長の日比野克彦氏と両社の代表取締役社長およびデザインセレクションメンバーが最終審査を行い、楠陽子さんの『触覚の視覚化』(写真)にグランプリが授与された。また、森未央子さんの『またフランジ』には「日比野克彦賞」が、松田雅史さんの『9,332km遠くの人 15.09.2012~15.08.2012""』には「オーディエンス賞」が送られた。
ART ”銀”の向こうに思いをはせる
激動のポーランドを見つめ続けた日本人写真家・塚原琢哉の写真展。1981年に銀座・和光ホールで行った展覧会「銀の日記」に続く“その後”のポーランドを写した、未発表作品を紹介する。
塚原が初めてポーランドを訪れたのは1972年。社会主義体制下で息づく芸術の数々、苦悩を生き抜いてきた人々の姿を目の当たりした塚原は「戦争のメカニズムをあらゆる角度から見つけ出さなくてはならないと思った」との思いを抱いたと語る。塚原は、戦争の傷跡がまざまざと残る風景の中で、ひたむきに生きる人々の姿をとらえ、「銀の日記」として発表。高い評価を得た。
その後、ポーランドは1989年の無血革命を経て、EUに加盟。自由社会の風がポーランドを大きく変えていく。そんな中、塚原がカメラを向けたのは豊かさと進歩を享受する人々ではなく、そこに取り残された人々だった。塚原がEU加盟後のポーランドに度々訪れては、カメラにとらえたのは、過疎化した町のたたずまい。しかしそこには、苦難を乗り越えた平穏と、子供たちの笑顔がある。本展では、未発表のシルバープリント作品28点を展示。ノスタルジーとともに、クリスマスキャンドルのような温かく小さな光を感じるはず。
ART その”くに”で、何大臣をやってみる?
『0円ハウス』や『独立国家のつくりかた』の著者・坂口恭平の作品と構想を、過去編・未来編に分けて紹介。1978年、熊本生まれの坂口は、早稲田大学理工学部建築学科を卒業しながらも“建物を建てない建築家”として、暮らし、生き方を見つめるクリエイター。隅田川で暮らしていた、ある路上生活者との出会いを機に、移動できる家「モバイルハウス」を制作するようになる。3.11後の2011年5月、『新政府』を樹立し自らを『新政府』の総理大臣と称して“独立国家”作りを開始(ちなみに文部大臣は中沢新一、厚生大臣は映画監督の鎌仲ひとみ)。3万円で借りた熊本の土地を解放し、避難所として被災者らを滞在させるなどの活動を行っている。
未来編では、過去編でも紹介したモバイルハウスなどの一部展示のほか、2012年11月現在の『新政府』の構想を可視化させた構想案をドローイングなどで展示。『新政府』の新しい貨幣や都市計画などユニークなアイデアを繰り広げ“国づくり”のワクワク感に鑑賞者を巻き込んでいく。
ART 境界線上に、溢れ出す「生命」
ロボット工学、バイオ・テクノロジー、クローン技術…今、科学の進歩によって、“人”と“テクノロジー”の境界線上で、名付けることのできない“生命”が生まれている。アノニマス(anonymous)とは、匿名の、名前のわからない、個性のないもの、を意味する言葉。本展では、そんな、名付けることのできない“生命”=「アノニマス・ライフ」という言葉を手がかりに、機械と人間の違いであったはずの“生”の意味を問い直すとともに、テクノロジーの進歩が新たな光を当てたセクシュアリティーやアイデンティティーの問題をはじめとする、境界線上の“生”を見つめた作品を紹介する。
自らの身体を使った美容整形手術をパフォーマンスとするフランスのアーティスト・オルランや、靴デザイナー・串野真也とのコラボレーションで、履いて歩くと菜の花の種が植えられる「菜の花ヒール」を制作したスプツニ子!、落語家・桂米朝をモチーフにした「米朝アンドロイド」を手掛けた石黒浩と映像アーティスト・斎藤達也など、7組が出展。生命とは、人間とは、アイデンティティーとは…そんな問いを新たな視点で見つめることができる展覧会。
ART ついに、初の美術館大規模が開催!
エログロやタブー的要素など、刺激的なテーマをはらんだ作品でも知られ、公立の美術館の間では“取り扱い注意作家”とも呼ばれた鬼才・会田誠。今回、美術館では初となる大規模個展が森美術館で開催される。
会田誠は、今日最も注目されている日本の現代アーティストのひとり。その作品は、グロテスクでエロティックな作風を見せたと思えば、一方では政治的、歴史的な課題への鋭い批評性を見せる。日本の現代社会を投影しながら、同時に伝統的な美術作品や様式を参照することも多い。鋭い視点ゆえか、はたまた偶然か、作品の中には制作から数年後に起こった事象を予言したかのような作品もある。
本展では、デビュー以来20年以上にわたる現代美術家・会田誠の全貌を、新作を含む約100点を通して明らかにする。“眉をひそめながらも見ずにはいられない”会田ワールドの秘密に触れることができるかも? ちなみに“刺激的な作品”は通称“18禁部屋”に展示されるとのこと。
ART 今再び、世界を見つめて
渋谷ヒカリエ:11月14日(水)〜11月26日(月)
アートフロントギャラリー:11月16日(金)〜12月2日(日)
ART 表現者デヴィッド・リンチの魅力に迫る
『エレファント・マン』『マルホランド・ドライブ』など、映画界の鬼才監督として知られるデヴィッド・リンチ。しかし彼の創作活動は多岐に渡っており、近年はアーティストとしての評価も高まっている。カルティエ現代美術財団(フランス)やマックス・エルンスト美術館(ドイツ)でも大型の個展を行い、2010年には美術界において権威ある「Goslar Kaiserring award for 2010」を受賞した。
デヴィッド・リンチ本人のサポートのもとに開催される本展は、彼の表現活動における横断的精神性を読み取り、彼の表現世界の本質へと迫る大規模企画展となる。出展されるのは、絵画、ドローイング、写真など計71点のアート作品(うち68点が日本初公開)と、実験的な短編映像11本(本展のためにリンチが編集した日本初公開映像)を展示、上映。会場は、展示スペースと仮設シアターを入れ子構造で組み入れるという迷宮のような構成をとっており「映像」「アート」という枠にとらわれずリンチワールドに迫る仕組みとなっている。
ART MOTが注目する、7組の若手アーティストたち
若手アーティストを中心としたグループ展「MOTアニュアル」。今年も注目の7組のアーティストを取り上げる。映像作品を中心に国内外で活躍している奥村雄樹、架空の物語の中に見る者を誘い込む佐々瞬、日本各地に残る戦争の痕跡を集めた写真集『戦争のかたち』で知られる下道基行、来年のヴェネツィア・ビエンナーレ日本代表に選出されている田中功起、グーグル・ストリートビューの画像をつなぎ合わせた映像作品で評価された田村友一郎、中崎透・山城大督・野田智子によるアーティストユニットNadegata Instant Party、昨年から言葉(テキスト)を用いたパフォーマンスを行っている森田浩彰。
本展では自らの手で造形を行うのではなく他者を介在させ、作品を作り上げる7組の若手アーティストたちの新作プロジェクトを紹介する。
ART 乱世に挑むネオ日本画!
ART 一瞬を永遠に変える、写真の力
1950年代後半から今日に至るまで、写真家として第一線を走りつづける篠山紀信。芸術か否かという問題の上に写真はある、と断言する篠山は、写真の本領はさまざまなメディアを通して広く社会に浸透し、時空や虚実をも越えて人々に力強く働きかけることにある、との洞察のもと、テーマやジャンルを問わず、膨大な作品を発信してきた。
本展では、篠山の代表的ジャンルである有名人のポートレートを中心に、50年間にわたり撮影されてきた写真の中から、ひときわ「写真力」のある作品約120点を選出。「GOD」(鬼籍に入られた人々)、「BODY」(裸の肉体、美とエロスと闘い)、「ACCIDENTS」(2011年3月11日、東日本大震災で被災された人々の肖像)など5つのセクションで構成し、広々とした展示空間に合わせダイナミックに引き伸ばして展示する。
今まで美術館での回顧的な展覧会を拒み続けてきたという篠山が満を持して世に問う、“写真力”とは?