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アートは広がる、どこまでも!ルーヴル美術館特別展 「ルーヴルNo.9 〜漫画、9番目の芸術〜」

2016.07.14 Vol.670

 世界最大級にして最高峰の美術の殿堂ルーヴル美術館が“漫画”で、その魅力を世界に発信する!

「漫画」という表現方法を通して、より多くの人々にルーヴル美術館の魅力を伝えるために企画された「ルーヴル美術館BDプロジェクト」は、日本を含むフランス内外の漫画家たちに、ルーヴル美術館をテーマに自由に作品を描いてもらい出版するという、美術館の企画としてはかつてないユニークなもの。プロジェクトの成果を、貴重な原画や関連資料、映像などともに紹介する展覧会が日本で開催される。

 日本の「まんが」、アメリカの「コミックス」のように、フランスやベルギーなどのフランス語圏でも「バンド・デシネ(BD)」と呼ばれる漫画文化が根付いており“第9の芸術”と位置づけられているほど。

 本展では、同プロジェクトにより生まれた作品の原画や関係資料、映像などを揃え、エキサイティングな演出で展示。日本での開催にあたり、新たに4名の日本人漫画家も参加。エンターテインメントとしてアートとして、作品を楽しみながら、いろいろな視点でルーヴル美術館の魅力に触れることができる。

【時間】10〜20時(入館は閉館の30分前まで)
【休】※会期中無休
【料金】一般1800円、大高生1200円、中小生600円
【問い合わせ】03-5777-8600(ハローダイヤル)
【交通】日比谷線 六本木駅1C出口よりコンコースにて直結 六本木ヒルズ森タワー52階
【URL】 manga-9art.com

中世の風を感じる、本邦初の注目企画展!「日伊国交樹立150周年特別展 アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」

2016.07.01 Vol.669

 14世紀から18世紀にかけてのヴェネツィア絵画を中心に約2000点を超えるコレクションを誇る、イタリアのアカデミア美術館。日本とイタリアの国交樹立150周年を記念して、同館の所蔵品による展覧会を日本で初めて開催。ルネサンス期のヴェネツィア絵画をテーマに、選りすぐりの名画約60点を展示。15世紀から17世紀初頭にいたるヴェネツィア・ルネサンス絵画の展開を一望する。

 展示されるのは、ジョヴァンニ・ベッリーニからクリヴェッリ、カルパッチョ、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼら、名だたる巨匠たちの傑作。中でも、ヴェネツィア盛期ルネサンス最大の巨匠ティツィアーノが晩年に手がけた祭壇画の大作『受胎告知』(サン・サルヴァドール聖堂)が特別出品されるのは見逃せない。

 ルネサンス期に焦点を絞りヴェネツィア絵画を紹介する試みは、これまで国内ではほとんど例が無く、その意味でも本展は見ごたえある展覧会となっている。ヴェネツィア・ルネサンスの黎明期からその終焉までを、数々の傑作とともにじっくり堪能しよう。

【時間】10〜18時(金曜および8/6、13、20は20時まで。入場は閉館の30分前まで)
【休】火曜(8/16は開館)
【料金】一般1600円、大学生1200円、高校生800円
【問い合わせ】03-5770-8600(ハローダイヤル)
【交通】地下鉄 千代田線 乃木坂駅 出口6(美術館直結)
【URL】 http://www.tbs.co.jp/venice2016/

中世の風を感じる、本邦初の注目企画展!「聖なるもの、俗なるもの メッケネムとドイツ初期銅版画」

2016.06.30 Vol.669

 15世紀後半から16世紀初頭にドイツで活躍した銅板画家イスラエル・ファン・メッケネムを、日本で初めて本格的に紹介する展覧会。メッケネムは、ショーンガウアーやデューラーら、当時人気だった他の作家の作品を大量にコピーする一方で、新しい試みもいち早く取り入れるなど、銅板画の歴史において重要な役割を果たした存在でもある。

 メッケネム作品の多くはキリスト教主題を持っており、そこからは人々の生活における信仰の重要性を伺うことができる。その一方で、像の前で祈る者が免罪される様子を描いた『聖グレゴリウスのミサ』など、当時の信仰生活の“俗”な側面が透けて見えるものもある。また当時、ドイツの版画家たちはまだ絵画では珍しかった非キリスト教的な主題にも取り組むようになっており、メッケネムも男女の駆け引きなどを、ユーモアと風刺を込めて描いている。

 本展では、ミュンヘン州立版画素描館や大英博物館などが所蔵する作品も含め、版画、絵画、工芸品など約100点を展示。聖と俗が混じり合う、中世からルネサンスへの移行期に活動したメッケネムの作品をたどりながら、初期銅版画を多角的な視点で紹介する。

【時間】9時30分〜17時30分(金曜は20時まで。入館は閉館の30分前まで)
【休】月曜(7/18、8/15、9/19は開館)、7月19日
【料金】一般1000円、大学生750円、高校生500円
【問い合わせ】03-5770-8600(ハローダイヤル)
【交通】JR上野駅より徒歩1分
【URL】 http://www.tokyo-np.co.jp/event/meckenem/

いつまでも、残り続ける瞬間がある。蜷川実花写真展「IN MY ROOM」

2016.06.14 Vol.668

 1981年渋谷パルコ パート3のオープンと同時に「スペース・パート3」として生まれ、「パルコギャラリー」、「パルコファクトリー」、「パルコミュージアム」と名称を変えながらも、ジャンルにとらわれることなくさまざまな才能を紹介してきたパルコミュージアム。渋谷宇田川町地区再開発計画による渋谷パルコ(パート1、パート3)の一時休業に合わせ、今年8月7日をもって閉館することとなった。これまで数々のアーティストやクリエイターとさまざまな発信を行ってきた同館の締めくくりとして『SHIBUYA PARCO MUSEUM FINAL EXHIBITIONS』と銘打って、渋谷パルコと縁の深いアーティストたちによる3つの展覧会を開催する。

 第1弾は写真家・蜷川実花の新作写真展。蜷川は2001年に第26回木村伊兵衛写真賞を受賞した直後、新作写真展『まろやかな毒景色』をパルコギャラリーで開催。以後も、初監督作品となる映画『さくらん』の世界観を体感する展覧会「さくらん極彩色絢爛展」など、印象的な企画を行ってきた。今回は、モードな服に包まれた色気香る“オトコたち”をプライベートな視線で撮影してきた、雑誌『EYESCREAM』の人気連載「蜷川実花のプライベートモード」の世界をパルコミュージアムで展開する。

 7月8日からは、パルコの広告クリエイションを手がけた山口はるみ展、7月29日からのラストエキシビションはパルコ縁のアーティストによる集合展を予定。

いつまでも、残り続ける瞬間がある。今野徳好写真展「垂ずる銀幕」 ー元村和彦コレクション/ロバート・フランクへの憧憬ー

2016.06.14 Vol.668

 邑元舎(ゆうげんしゃ)を設立した編集者であり、写真コレクターでもある元村和彦氏のコレクションより、写真家・今野徳好のゼラチンシルバープリントを中心に、近作のカラー作品を含めた約30点を紹介。

 今野の作品の礎となっているのが、アメリカの写真家ロバート・フランクと親交を持ち、その良き理解者でもあった元村氏との出会いだという。スイス出身のロバート・フランクは、アメリカで発表した写真集『THE AMERICANS』が当初あまり理解されず、写真界から距離を置いていたところ、元村氏のオファーにより写真集を出版。その後、アメリカをはじめ世界的に評価が高まり、現代アメリカ写真界の代表的写真家となった。今野の作品にも、市井を見つめたロバート・フランクに、重なるまなざしを感じ取ることができる。

 また、会場には元村氏が出版したロバート・フランクの写真集『私の手の詩』『花は…』も用意。また会期中に、作家によるトークイベントを予定している。

コレクション作品で知る、美術館の個性「みんな、うちのコレクションです」

2016.05.26 Vol.667

 2014年秋の「開館35周年記念 原美術館コレクション」展以来となる、原美術館全館を使ったコレクション展。

 1979年の創立以来、原美術館が収集してきたコレクションは、国内外の多彩な現代アーティストの絵画、彫刻、写真、映像作品など多岐にわたり、現在、収蔵数は約1000点にものぼる。今回は、その中から横尾忠則、加藤泉、クリスト&ジャンヌ=クロード、ウィリアム・ケントリッジをはじめとする作家の作品を展示。また、中国を代表するアーティストにして積極的な社会活動でも知られる艾未未(アイ ウェイウェイ)の貴重な初期作品や、日本から帰化してブラジル美術界の巨匠となったトミエ・オオタケの絵画も展示する。

 1930年代に建てられた、西洋モダニズムを取り入れた名建築としても知られる原美術館。毎回、その独特なデザインの空間を生かした展示構成も見どころとなっている。今回はコレクション展だけに、空間と作品との自然な一体感も感じられそうだ。企画展の展示作のほか、館内の森村泰昌、奈良美智、宮島達男、野外の李禹煥、杉本博司といった、常設展示も合わせて鑑賞しよう。

コレクション作品で知る、美術館の個性「近代風景〜人と景色、そのまにまに〜 奈良美智がえらぶMOMATコレクション」

2016.05.23 Vol.667

 現代アーティスト奈良美智セレクションによる、コレクション展。美術史にとらわれることなく好きな作品を選んだら自然と、1910〜50年代の人と景色を描く作品にしぼられた、という。奈良の大学時代の恩師・麻生三郎や、麻生とともに戦争の時代を生きた松本竣介。村山槐多のたくましい少女像や、奈良が「手袋とスカーフの色が大事」と語る榎本千花俊の女性像など、奈良の感性を育んだ作品の数々が一堂に会する。

 主に“人”を描くアーティストと思われがちな奈良だが、実は街や野原といった“景色”も奈良にとって重要なもの。“人”と人の外にある“景色”が合わさって“風景”になる、と奈良は語る。

 今回、展示されるのはおなじみの名作からふだんあまり展示されない作品まで、約60点。奈良が作家や作品に寄せたコメントも紹介されるので、奈良美智の目を通して作品の新たな魅力を探ってみては。それぞれの作品のどんな部分が、奈良の感性を刺激したのか、思いを巡らせながら鑑賞するのも楽しそうだ。また、会場では奈良の《Harmless Kitty》も「ハイライト」コーナーにて展示。

それだけで、アート。ナチュラルな美を見つめる写真展 W.H.フォックス・タルボット写真展「自然の鉛筆」

2016.05.10 Vol.666

 ネガ・ポジ法写真術の発明家ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット(1800〜1877)のオリジナルネガからプリント制作された作品を紹介する写真展。

 1839年、世界初の写真術としてフランスで発表されたダゲレオタイプ(銀板写真)は、金属板の表面に像を直接焼き付けるもので、複製ができない一点限りの写真。一方、ほぼ同時期にイギリスでタルボットが考案したカロタイプは、一枚のネガから複数のポジ像を得られるもので、複製技術としての近代写真の基礎となっている。本展では、1844〜46年にかけてタルボットが制作、発行した世界で最初の写真集『自然の鉛筆』から、同ギャラリーに収蔵する作品を展示。これは、1977年にイギリスのフォックス・タルボット美術館の協力のもと、同ギャラリーが日本で初めてタルボット展を開催した際に借り受け、その後コレクションとして収蔵したもの。タルボットが制作した時代の紙質ときわめて近い紙を特別に用意し、当時の処方で乳剤を作り、塗布した印画紙に、オリジナルネガから、1970年代前半にタルボット美術館にてプリントされた。

 デジタル全盛の今、改めてタルボットが示唆した、写真の本質について見つめ直してみたい。

W.H.フォックス・タルボット写真展「自然の鉛筆」
東京工芸大学 写大ギャラリー 開催中〜6月5日(日)

【時間】10〜20時
【休】会期中無休
【料金】入場無料
【問い合わせ】03-3372-1321(代)
【交通】地下鉄 中野坂上駅1番出口より徒歩7分。東京工芸大学中野キャンパス 芸術情報館2階
【URL】 https://www.t-kougei.ac.jp/arts/shadai/

それだけで、アート。ナチュラルな美を見つめる写真展『ライアン・マッギンレー BODY LOUD !』

2016.05.10 Vol.666

 アメリカの代表的美術館の一つ、ホイットニー美術館において、史上最年少となる25歳の若さで個展を開催するなど、いま最も注目を集めるフォトグラファー、ライアン・マッギンレーの全体像に触れる、注目の展覧会。最初期の〈出会い〉シリーズから、〈ロード・トリップ〉、〈モリッシー〉、〈イヤーブック〉、〈グリッド〉、〈アニマルズ〉、そして最新作の〈秋〉〈冬〉まで、各シリーズから作家自ら厳選した約50点を展示する。

 マッギンレーの作品に登場する人物たちは、そのほとんどがヌードである。広大な草原のなかを疾走し、雪原に横たわる全裸の被写体たち。彼らは皆プロのモデルではない。マッギンレーがとらえるのは、被写体の表面的な美しさというよりも、衣服を脱いだ彼らが垣間見せる一瞬の姿。そこには、日常の制約や束縛から解放された精神の自由があり、見る者はモデルの姿かたちにとらわれず、美を感じる。

 日本国内の美術館での初個展となる本展。500枚のポートレートで構成する大作〈イヤーブック〉を、展示室の壁面約30メートルを使って展示するなど、スケール感あふれる展示にも注目。マッギンレー作品ならではのインパクト、奔放さ、開放感を感じよう。

『ライアン・マッギンレー BODY LOUD !』
東京オペラシティ アートギャラリー 開催中〜 7月10日(日)

【時間】11〜19時(金・土は20時まで。最終入場は閉館30分前まで)
【休】月曜
【料金】一般1200円、大高生800円、中学生以下無料
【問い合わせ】03-5777-8600(ハローダイヤル)
【交通】京王新線 初台駅東口より徒歩5分以内。東京オペラシティビルに直結
【URL】 http://www.operacity.jp/ag/

光と影を描く。『大本幸大 個展「雑景」』

2016.04.27 Vol.665

 MASATAKA CONTEMPORARYディレクターも期待を寄せる若手作家・大本幸大の個展。

 2011年武蔵野美術大学卒業制作展において研究室賞を受賞。同大学修士課程修了後、国内外の展覧会に出展。昨年、同ギャラリーでのグループ展『100号展』に出品し、存在感を放っていた。

「ヒトを描く」という主題の下、制作を続けていると語る大本。しかし彼の作品において、ヒトは必ずしも“人間”の形を保って描かれるわけではない。人工物—廃材のようなものから高層ビルまで—と融合していたりする。その様は、自らが生み出したモノに絡め取られた現代人の閉塞感を表しているようにも、システムの一部となった人間の存在意義を問うているようにも見える。

 大本の作品の根底に横たわる「ヒトがヒトらしく生きるとは、結局どういうことなのか」という問い。作品が放つ迫力を楽しみながら、自分なりに答えを模索してみては。

光と影を描く。「大岩オスカール – 世界は光に満ちている 」

2016.04.26 Vol.665

 ブラジル出身の現代アーティスト、大岩オスカールの、日本では3年半ぶりとなる個展。大岩オスカールは、緻密なタッチや鳥瞰図的な構図を使い、日常に潜む問いや社会問題を静かなまなざしとともに描いた作品が印象的な作家。アトリエで制作に励む一方で、彼はのどかな田園、里山、水のある風景を愛し、旅をする。

 本展は、そんな旅の風景を思わせる、自然の光を感じる新作に注目だ。会場では、瀬戸内の海、隅田川、サンパウロ市内を流れるピニェイロ河を描いた作品を一同に展示。まばゆい光を反射させながら、揺らめく水面。きらめく水面は薄い金箔を使って表されており、青を基調とした光と影のグラデーションと相まって、一層の奥行感を与えている。絵画からあふれ出るような、光の存在感を感じてみては。また今回は、展覧会に合わせて最新の作品集が刊行される予定。

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