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“向こう”の景色に手を伸ばして 栗林隆 個展「Deadline」

2015.10.26 Vol.653

 海外を拠点に国際的に活動する現代アーティスト・栗林隆の個展。

 栗林隆は武蔵野美術大学を卒業後、ドイツに滞在。2002年デュッセルドルフ・クンストアカデミーをマイスターシューラーとして修了した。東西に分かれた歴史を持つドイツ滞在の影響もあり、“境界”をテーマにさまざまなメディアを使いながら作品を発表。現在はインドネシアに拠点を移し、インドネシアの現代美術シーンでも注目を集めている。

 木や水などを組み合わせ景観を作り出す大がかりなインスタレーションや、鑑賞者が非日常の光景をのぞき見ることで“境界”を演出する仕掛けなど、静ひつにして印象的な作品で知られる栗林。今回の展覧会では、東日本大震災後に東北を訪れた体験が作品の構想となっているようだ。アートフロントギャラリーの会場に、栗林がどんな光景を作り出すのか。そして見る者はどんな“境界”を見出すのか。

“向こう”の景色に手を伸ばして『24fps−JRの映像 展』

2015.10.26 Vol.653

 屋外の建物やストリートに巨大な写真を貼るというグラフィティ表現で知られるアーティスト・JR。ロバート・デニーロ主演のフィルム「エリス島のゴースト」など、若者の暴動や移民をテーマにした最新作映像と関係作品を展示する。

「エリス島のゴースト」は、昨年、エリス島の廃墟で行われ、話題を呼んだインスタレーション作品。エリス島とは、かつてアメリカ合衆国の移民局があった場所で、19世紀後半から20世紀半ばまで、移民たちにとって、ここはアメリカへの入り口であり、入国が認められない者たちにとっては引き返さなければならない“終着点”であった。JRは、廃墟となり閉鎖されていた移民局病院の壁に、過去の患者や職員のポートレイトをペーストしたインスタレーションを展示。さらに自身も移民だった祖先を持つ俳優・デニーロを主演にした同名フィルムも撮影した。

 他、“2005年パリ郊外暴動事件”をテーマに制作されたパフォーマンス「レボスケ」をもとに作られた作品や、フランスのル・アーブル港からマレーシアを目指す船に乗せられたコンテナに2600枚の紙をペーストし女性の目を浮かび上がらせたプロジェクト「リヴァージュ」も紹介。

その“時”を切り取って「Re: play 1972/2015—「映像表現 ’72」展、再演」

2015.10.11 Vol.

現代アートで芸術の秋 オススメARTを2選

2015.09.27 Vol.

時代と、向き合うART展2本

2015.09.13 Vol.650

ニキ・ド・サンファル展
国立新美術館 9月18日(金)〜12月14日(月)

 戦後を代表する美術家の一人、ニキ・ド・サンファル。昨年パリで約60万人を動員した大規模回顧展を軸に、日本とニキとの関わりにも光を当てて、100点を超える作品や貴重な資料とともに、半世紀にわたって時代と向き合い続けたアーティスト・ニキの軌跡に迫る。10代のころに雑誌のモデルを務めていたニキは、1961年に発表した“射撃絵画”で一躍、注目を集めた。絵具入りの容器が埋め込まれたレリーフや彫刻をライフルで撃つことで完成させる射撃絵画は、絵画と彫刻の両方の要素を兼ね備え、また制作行為そのものがパフォーマンス・アートの先駆例として美術史上高く評価されている。その後もニキは、少女時代を過ごしたアメリカや母国・フランスの抽象絵画の影響を受けながらも独自のスタイルを作り上げ、戦争や人種差別、社会における女性のあり方などを主題とした作品を数多く残した。

 ニキの生誕85年目に開催される本展では、初期から晩年の創作活動をたどりながら、日本との関わりにも光を当て、その個性的で豊かな芸術世界に触れてみよう。

【時間】10〜18時(金曜は20時まで。入場は閉館の30分前まで)【休】火曜(9/22、11/3は開館)、11/4【料金】一般1600円、大学生1200円、高校生800円【問い合わせ】03-5777-8600(ハローダイヤル)【交通】地下鉄 千代田線 乃木坂駅 6番出口(美術館直結)【URL】http://www.niki2015.jp/

アートの秋は新宿から始まる!

2015.08.23 Vol.649

新宿クリエイターズ・フェスタ2015
新宿駅周辺各所 他 開催中〜9月6日(日) 

 学生のアートイベントとしてスタートし、学生から著名アーティストまで多くのクリエイターが参加する、新宿のアートイベントとして定着した新宿クリエイターズ・フェスタが、開催中。

 今年は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え「国際観光都市・新宿」を世界に発信すべく、海外からの観光客にも楽しんでもらえるような企画を用意。アートファンはもちろん、いつもの気分で新宿に足を運んだ人も、自然にアートと出会い、発見を楽しめるフェスタとなっている。

 その1つが、映画『ピクセル』(9月19公開)とコラボした懐かしのゲームキャラをレゴで再現した作品が街中に出現するというもの。日本人初のレゴ認定プロビルダー・三井淳平が、劇中に登場するパックマンやドンキーコングなどのピクセル的なビジュアルをブロックアートで再現。他にも、この春、実物大頭像がビル屋上に登場し、歌舞伎町に特別住民登録も行ったゴジラをモチーフに、砂像アートで知られる彫刻家・保坂俊彦が作品を制作。

 現代アート界を代表する国内外のアーティストによる展覧会や、子供が参加できる“こどもアート”、若手作家を発掘するコンペティションなど多彩なアート体験ができる。

各イベントの開催日時・会場はホームページにて確認のこと【URL】http://www.scf-web.net/

生涯をかけて見つめ続けたもの「エリック・サティとその時代展」

2015.08.09 Vol.648

 20世紀を代表する作曲家、エリック・サティ。彼は、芸術家たちが集い、自由な雰囲気をたたえるモンマルトルで作曲家としての活動を始め、その後、生涯を通じて芸術家との交流を続けた。

 パブロ・ピカソとはバレエ・リュスの公演《パラード》を、フランシス・ピカビアとはスウェーデン・バレエ団の《本日休演》を成功させるなど、さまざまな芸術家とともに大規模な舞台作品に携わった。その一方でアンドレ・ドラン、ジョルジュ・ブラック、コンスタンティン・ブランクーシ、マン・レイ、そして数々のダダイストたちがサティとの交流から、作品を生み出していったことも知られている。

 本展では、サティの直筆手稿など貴重な資料の他、サティが携わった舞台作品を描いた有名画家たちによるポスター、知人の画家たちが描いたサティの肖像画などを紹介。サティの活動を芸術家との交流のなかでとらえ、刺激し合った芸術家たちの作品を通して、作曲家・サティの新たな側面を浮かび上がらせる。

涯をかけて見つめ続けたもの「非戦70年 ちひろ・平和への願い」

2015.08.09 Vol.648

 子供を生涯のテーマとして描き続けた画家・いわさきちひろ。日本全体が戦争へと突き進むなかで青春時代を過ごし、生命だけでなく人の心もむしばむ戦争の現実を目の当たりにした彼女は戦後、画家となり、生涯を通じて子供たちを描くことで本当の豊かさや優しさ、美しさとは何かを問い続けた。

 本展では、広島の原爆で被爆した子供たちの詩や作文に絵を描いた絵本『わたしがちいさかったときに』や、ベトナム戦争を背景にゲリラ兵の母とその帰りを待つ子供を描いた絵本『母さんはおるす』など、ちひろが手がけた戦争をテーマにした絵本のほか、「つば広帽子の少女」のような、子供たちの命の輝きをとらえた作品の数々を展示する。

 第二次世界大戦が終結して、今年で70年。「世界中のこども みんなに 平和としあわせを」という言葉を残したちひろが、絵筆に託した願いを改めて見つめ直す展覧会。

 また会期中にはアニメーション作家・高畑勲による講演会も開催予定(9月27日 参加費:入館料+500円。要申し込み。8月27日より受付開始)。

アジアのアートスピリッツ「アーティスト・ファイル 2015 隣の部屋—-日本と韓国の作家たち 」

2015.07.26 Vol.647

 いま最も新鮮で充実した活動を行っている現代美術家を“個展の集合体”という形で紹介するグループ展「アーティスト・ファイル」。これまで過去5回にわたって国立新美術館が企画してきた。2015年は、日韓国交正常化50周年の記念すべき節目の年として、アジアを代表する美術館のひとつである韓国国立現代美術館と共同で開催される。

 本展では、日本からは小林耕平、南川史門、百瀬文、手塚愛子、横溝静、冨井大裕の6名。韓国からはイム・フンスン、キ・スルギ、イ・ヘイン、イ・ソンミ、イ・ウォノ、ヤン・ジョンウクの6名。合計12名の現代美術家が参加。顔ぶれは、国際的に高い評価を受けている作家から、頭角を現しつつある作家までが揃い、また表現形式も絵画、彫刻、写真、映像、インスタレーションなど多彩。世代やジャンルなどを限定せず、それぞれの国で際立った活動を行っている注目作家を紹介する。

 地理的にも、文化的にも隣り合う日本と韓国。それぞれの作品の美学や表現が、緩やかに呼応しながらも、一人ひとり個性豊かな才能が光る。

アジアのアートスピリッツ「ディン・Q・レ展:明日への記憶 」

2015.07.26 Vol.647

 ディン・Q・レは1968年、ベトナムのハーティエンに生まれ、10歳の時にポル・ポト派の侵攻を逃れるため家族とともに渡米。その後、写真とメディアアートを学んだ後、ベトナムの伝統的なゴザ編みから着想を得た、写真を裁断してタペストリー状に編む作品『フォト・ウィービング』シリーズで一躍注目を集めた。また彼は、綿密なリサーチとインタビューに基づき、人々が実体験として語る記憶に光を当てる作品も制作している。国際舞台への出世作となった映像インスタレーション作品《農民とヘリコプター》(2006年)では、自作のヘリコプターの開発に挑むベトナム人男性を中心に、ベトナム人と戦争との複雑な関係を巧みに描き出した。

 本展では、これら代表的作品に加え、日本のいまをとらえた新作の映像インスタレーションも紹介。

 ベトナム戦争終結から40年、日本にとっては戦後70年の節目を迎えたいま。本展ではディン・Q・レの作品とユニークな活動を通して、アートが語る名もなき市井の人々の物語の数々、そしてアートと社会の関わりの意義を感じ取ることができる展覧会。

見つめ続けたくなる作品たちに出会える展覧会を2つ

2015.07.11 Vol.646

オスカー・ニーマイヤー展 ブラジルの世界遺産をつくった男
東京都現代美術館 7月18日(土)〜10月12日(月・祝)

 ブラジルのモダニズム建築の父、オスカー・ニーマイヤー(1907-2012)の日本における初の大回顧展。

 1950年代、オスカー・ニーマイヤーはブラジルの一大プロジェクトである首都・ブラジリアの主要な建物設計にたずさわり、荒涼とした土地に創造性豊かな都市を作り上げた。それがいかに偉大な仕事であったかは、ブラジリアが1987年に世界遺産に登録されたことからもよく分かる。104歳で亡くなる直前まで、多くの建築設計を手掛け続けたニーマイヤー。その有機的でダイナミックな曲線と、モダニズムの幾何学の調和を特徴とするデザインは、今なお多くの建築家に影響を与えている。

 本展では、オスカー・ニーマイヤーの代表的な建築物をさまざまなサイズの模型で展示。中でも、アトリウムの大空間でダイナミックに展開される代表作の一つ〈イビラプエラ公園〉30分の1模型はインパクト満点。他、彼の日常や仕事を物語る貴重な資料も公開。2016年にはリオ・デ・ジャネイロでオリンピック・パラリンピックが開催。今年は日伯外交樹立120周年。この機に、リオが生んだ偉大な建築家の軌跡をたどってみよう。

【時間】10〜18時(7〜9月の金曜は21時まで。入場は閉館の30分前まで)【休】月曜(7/20、9/21、10/12は開館)、7/21、9/24【料金】一般1100円、大学生・専門学校生・65歳以上800円、中高生600円、小学生以下無料【問い合わせ】03-5777-8600(ハローダイヤル)【交通】地下鉄 半蔵門線 清澄白河駅B2番出口より徒歩9分【URL】http://www.mot-art-museum.jp/

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