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STAGE | TOKYO HEADLINE - Part 12
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新境地に挑む『体夢 −TIME』劇団桟敷童子

2014.12.06 Vol.632

 桟敷童子といえば、劇場公演すらもテント公演かと思わせるようなスぺクタルな舞台セットと、社会の底辺で生きる人々を描いた群像劇が多くのファンの心をつかむ劇団だ。

 しかし今回の約1年ぶりとなる新作公演ではちょっと違った作風に挑戦するという。

 物語の舞台は世の終焉を迎えようという人類の末期。主人公の体夢は私生児。母は男たちに輪姦され沼に沈められた女、父はそのなかの一人。数奇な運命を背負って生まれた体夢は男たちに復讐しようとするが、男たちはすでに死んでいた。目的を失った体夢は放浪の旅に出るが、その先々には奇妙な人物や出来事が待ち受けていた…。

 過去にこだわり、物語を紡いできた彼らが初めて未来に目を向ける。底辺から這い上がってきた体夢が行き着く先にあるのは希望か絶望か?

 俳優たちのたたずまいから舞台上まで、変わるところと変わらないところも含めどんな世界を提示してくれるのだろうか。

ょっとシュールでちょっとミステリアス『運命の女』味わい堂々

2014.12.06 Vol.632

 2007年に宮本奈津美、浅野千鶴、岸野聡子という同世代の女子3人で旗揚げした劇団。客演を招いての本公演と劇団員3人のみで行うオムニバス公演という形態で昨年までコンスタントに公演を重ねてきたが、個性的なこの3人、最近では女優として外部から引っ張りだことあって、今回はお久しぶり約2年ぶりの本公演となった。

 その作品は、悲しい時ほど笑ってしまう、楽しい時ほど涙が出てしまう、ひねくれているけれどより人間らしい、といった複雑な心情を描いている。題材的にはコントっぽいものからシュールな話、戦争といったちょっと考えさせられる話——といったら脈絡のないものに見えそうだが、彼女たちの成長とともに分野が広がっていったという感じ。

 今回の物語の舞台は都内某所。主人公は友人を殺した女。しかし彼女はなぜ友人を殺したのか分からない。取り調べをする刑事もまた、彼女がなぜ友人を殺害しなければならなかったのか理解に苦しんでいた。2人の間には確かにそれっぽい理由はあった。しかし彼女が友人を殺さなければいけない本当の理由はまるで別のところにあったのだった。

 ある女に人生を翻弄された主人公が、彼女と決別すべく、もがき苦しむお話。ちょっとシュールでちょっとミステリアス? それでいてクスッと笑える作品。

ちょっと変わった一筋縄ではいかない作品
新国立劇場 2014/2015シーズン『星ノ数ホド(Constellations)』

2014.11.22 Vol.631

 新国立劇場が10月から上演している、シリーズ「二人芝居−対話する力−」の第3弾はイギリスの劇作家ニック・ペインの『星ノ数ホド』を取り上げる。

 登場人物は物理学者のマリアンと養蜂家のローランド。ある出来事の裏には実は数限りない別の可能性があるのでは…という発想から物語は組み立てられる。恋に落ち、やがて別れてしまった2人が再会するとき、男は別の誰かと婚約している。あるいはしていない? 違う受け答えをしていたら? 状況が全く逆だったら? といったさまざまなパターンを繰り返しながら物語は進行し、やがて2人に運命の日が訪れる。

 演じるのは鈴木杏、浦井健治という数々の話題作に出演する若き実力派の2人。そして演出には2012年に読売演劇大賞の優秀演出家賞を受賞した小川絵梨子。斬新で奇抜な戯曲をどのように料理するのかにも注目が集まる。

ちょっと変わった一筋縄ではいかない作品
イキウメ『新しい祝日』

2014.11.22 Vol.631

 フィクションとノンフィクションの間にある境界線をあいまいにし、事実と妄想を陸続きにしてしまう。そんな作品を発表し続けるイキウメ。

 作・演出の前川知大は今年、『スーパー歌舞伎㈼』の作・演出を手掛け、夏には2012年に発表した『太陽』が蜷川幸雄の演出により『太陽2068』として上演されるなど外部での話題作が続いた。

 一方、劇団では代表作である『関数ドミノ』の再演で、劇団としての成長も知らしめた。

 そんななかで、今回は約1年ぶりの新作公演。

“祝日”をキーワードに、どれも平凡で驚くほど似通っていながら、実は同じものが全くないという“人生”を描く。

 歌舞伎という異質なものとの出会いと、劇団の足場固めを行った後の、新たなる第一歩ともいえる作品だ。
 11日(木)の14時からは前川のトークイベントも開催。イキウメの不思議な世界観を知るいいチャンスかもしれない。

街をダイナミックに使ったプロジェクト

2014.11.10 Vol.630

 流山児★事務所と豊島区、としま未来文化財団が2012年から続けてきた豊島区テラヤマプロジェクトがついにファイナルを迎える。このプロジェクトでは、その名の通り寺山修司の作品を上演してきた。そして数多くの市街劇を行ってきた寺山にならって「街と繋がる演劇」というテーマを掲げ、会場の豊島公会堂を飛び出し、目の前にある中池袋公園も使ったダイナミックな作品を発表。最近ではなかなかお目にかかれない上演形態は大きな話題を呼んだ。

 今回上演するのは寺山が魔術音楽劇と名付けた後期の代表作のひとつ『青ひげ公の城』。物語は『青ひげ公の城』という劇が演じられようとしている劇場を舞台に繰り広げられる。取り壊しが決まっている豊島公会堂で「廃墟となった劇場」を舞台とする作品を上演するという、プロジェクトのファイナルにふさわしい作品。

 青ひげ公の7人の妻を前進座の立女形・河原崎國太郎、毬谷友子、山崎美貴ら異色かつ実力派の女優たちが演じる。物語のナビゲーターとなる少女(第七の妻)には1979年の初演で初舞台を踏んだ美加里。この美加里をはじめ、寺山、もしくは作品に縁のあるキャスト・スタッフの名前が並ぶ。流山児★事務所ならではだ。

確かな脚本力で描かれた物語に引き込まれる

2014.11.10 Vol.630

 劇作家・長田育恵が主宰となって2009年に旗揚げた「てがみ座」は「戯曲を根本にして立ち上げる演劇」を基軸に作品を発表してきた。

 故井上ひさしに師事した長田の書く戯曲は綿密な取材に基づき、細部に至るまで丹念に描かれている。かといって史実に執着することなく独自の視点で創作された物語は、どこまでが事実でどの部分がフィクションなのか分からないほど。というかもうそんなことはどうでもよく、ただただ作品に引きずり込む力を持っている。

 昨年は『地を渡る舟』が岸田戯曲賞の最終候補にノミネートされており、その脚本力は推して知るべしだろう。

 これまでは江戸川乱歩、金子みすゞといった、ある特定の人物の心理描写を通して、主に大正後期〜第二次世界大戦までの時代を俯瞰し描いてきた。今回は新たな創作スタイルに挑戦。従来の人に寄り添う文体を解体し、特定人物ではなく「場」を物語の中心に据え、通り過ぎていく人物を通して「時の断層」そのものを描写するという。

 舞台はフィリピンと日本。フィリピンの沿岸でシラスウナギを密漁する兄弟とその家族を語り手に、日本とフィリピンそれぞれの視点から国境問題、遺恨、未来といった問題を描く。

大人の物語を真正面からと斜め後ろから
月影番外地その4『つんざき行路、されるがまま』

2014.10.26 Vol.629

 その時々に一緒にやってみたいと思った作家・演出家、そして共演者を集め、数々の話題作を発表し続け2006年に10本目の作品を上演。文字通り十番勝負も完結となったのだが、高田本人、他のキャストやスタッフの「まだ続けたい」という思いと、なによりもファンの「まだまだ見たい」という思いがあって、2008年に『月影番外地』として復活。今回はその4作目。高田が演じるのは夫の前から突如姿を消してしまう女・吹子。その夫婦は子供こそいなかったが、仲睦まじく幸せに暮らしていた。しかし吹子はある日突然姿を消す。驚く夫は吹子を探すのだが、その過程で吹子の秘密が明らかになっていく…。最愛の妻はなんと“口笛”だったのだ!?

 前回公演に続き脚本は福原充則、演出に木野花。福原は現在、あらゆるジャンルで注目を集める作・演出家。木野は十番勝負のころから何度も演出を務め、月影——の世界観を熟知した存在。追わせるストーリーでありながら、脚本上の仕掛けも気になる作品。

大人の物語を真正面からと斜め後ろから
M&Oplays プロデュース『水の戯れ』

2014.10.26 Vol.629

 岩松了が1998年に「竹中直人の会」に書き下ろした作品を16年ぶりに再演する。

 男女間のすれ違う思い、微妙な心の揺れを描く大人の恋愛ドラマ。チェーホフの『ワーニャ伯父さん』を意識して書かれたこの戯曲は、岩松作品の特徴でもある、人間の抱える裏側の狂気を、時にユーモアを交えて鋭く暴く。

 家業を継ぎ、仕立屋をしている男は長らく、死んだ弟の妻にひそかに思いをよせているのだが、生来のまじめな性格のため、告白できないでいる。そんな折り、海外で仕事をしていた無頼な兄が若い中国人の恋人を連れて帰ってくる。その2人を見て、男は女に思いを伝える決心をするのだが、なかなか行動に移すことができない。そのうちに微妙なバランスで成り立っていた人間関係に狂いが生じ始めるのだった…。

 今回は屈指の名バイプレイヤーである光石研を主役に据えた。“大人感”がハンパない作品となっている。

渋さ知らズと毛皮族がシェイクスピアをやるんだって!?

2014.10.25 Vol.629

 昨今、公共ホールはプロデュース公演や共催公演はもとより、ワークショップといった育成プログラムなど独自の方針を持ち、さまざまな活動を展開している。

 そのなかでも、演劇に限らず個性的なラインアップが並ぶのが池袋にある「あうるすぽっと」だ。

 あうるすぽっとでは今年、シェイクスピア生誕450周年を記念して「あうるすぽっとシェイクスピアフェスティバル2014」と題して2月から演劇、ダンス、落語とさまざまなジャンルでシェイクスピア作品を発信してきた。

 そろそろラストスパートとなる11月も注目の作品が並んでいる。

 まずは11月13日から始まる渋さ知らズ25周年企画『十二夜より十三夜』。渋さ知らズは日本が世界に誇る音楽集団。基本的にはジャズバンドというカテゴリーなのだが、古くから演劇における劇伴を担当することもあれば、バンドにダンサーも取り込むなど、ジャンルレスな活動を続けている。そんな渋さが今回は演劇をする。それだけでも十分びっくりなのだが、題材がシェイクスピアということで2度びっくり。25周年記念とうたうだけあって、脚本には4年連続で芥川賞候補となっている戌井昭人が名を連ねるなど、これまでに関わってきたさまざまなジャンルのアーティストが集結した。

 11月20日からは毛皮族との共同プロデュースで『じゃじゃ馬ならし』の上演が始まる。同作は数多いシェイクスピアの中でも、世界中のフェミニストたちから総スカンを食らう問題作。

 こちらも注目はキャスティング。鼻っ柱の強い深窓の令嬢「キャタリーナ」に異才のピン芸人鳥居みゆき、マッチョな上昇志向男「ペトルーチオ」に若手個性派俳優・柄本時生を起用する。そして小劇場界でも指折りの個性派たちが脇を固める。

 この2作品に共通するのは意外性と一回性。そしてそこからくる刹那感。唯一無二、見逃し厳禁の2作品となる。

意味深なタイトルの人間ドラマ
ONEOR8『世界は嘘で出来ている』

2014.10.12 Vol.628

 約1年ぶりとなる劇団公演は2年ぶりとなる劇団への新作書き下ろし。 

 舞台は、とある1DKのアパート。ある男が孤独死をした。警察の現場検証、遺体の引き取りも終わり、2人の清掃人がやってきた。これから特殊清掃が行われるのだ。実は死んだのは清掃人のうちの一人、滝口の弟だった。遺品を整理しながら、滝口は弟の人生を思い返す。

 いつもはどこにでも転がっているような、ありふれた日常を舞台に濃厚な人間関係が描かれるのだが、今回は特殊清掃の清掃人が主人公で、それも実弟の遺品整理をするという、なかなかにヘビーな設定。

 描かれるのはバカ正直に生きてきた兄と嘘ばかりついてきた弟の40年に渡る人生。兄は弟のことを内心どう思っていたのか、その死をどう受け止めたのか…なんてことを考えると、タイトルの意味もいろいろと解釈できて面白い。

 滝口役に甲本雅裕。最近では個性派俳優として映像作品にひっぱりだこで、久しぶりの舞台出演。そして田村作品に欠かせない存在となっているカラテカの矢部太郎も客演する。

“しがらみ”のない世代による寺山
レパートリー新作『奴婢訓』

2014.10.12 Vol.628

 舞台公演に留まらず、さまざまな実験的な試みを展開するキラリふじみ。作・演出家の多田淳之介が芸術監督の就任以降、レパートリーを創造するプログラムを作成してきたのだが、今回はその第3弾。

 これまで清水邦夫の『あなた自身のためのレッスン』、シェイクスピアの『ハムレット』ときて、さてお次はなに?と思っていたら、寺山修司の『奴婢訓』ときた。

 同作は天井桟敷が1978年にオランダで初演し、その後30カ国で上演された代表作。不在の主人が君臨する館の中で、奴婢たちが不在の主人役を入れ代わり立ち代わり演じながら主人の権力を手に入れようと結末のない闘争を繰り広げる物語。

 寺山の死後もその作品は多くの劇団、プロデュース公演で上演されてきたが、基本的には寺山の流れをくむ人たちや縁のあった人たちの手によるものが多かった。そういう“しがらみ”的なものからは無縁の世代からのアプローチでどのような作品に仕上がるのか、興味深いところだ。

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