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岸田戯曲賞受賞者による2本の作品 ままごと『わたしの星』

2014.08.03 Vol.623

 主宰で作・演出を務める柴幸男の岸田國士戯曲賞受賞作である『わが星』は人間が生まれてから死ぬまでの100年と地球が生まれてから死ぬまでの100億年を、団地に住む一家をモチーフに描いた作品で、その斬新な演出と合わせ、初演、再演ともに大きな話題を呼んだ。
 今回上演する『わたしの星』は『わが星』の世界観を引き継いだ新作。東京での本格的な公演は約2年ぶりとなる。

 舞台上はもとより、制作スタイルや発表の場など既成の演劇のやり方にとらわれずに活動を続けるままごと。今回は一般公募で選ばれた高校生をキャストばかりかスタッフにも起用する。

 現役高校生にしか持ちえない、作り物ではない感性や発想が作品にどのような影響を与えるのか、とても興味深い。

リピーター続出のメガヒットバレエ、豪華ゲストと共に来日!
マシュー・ボーンの「白鳥の湖」

2014.08.01 Vol.623

 世界を震撼させたバレエ公演『マシュー・ボーンの「白鳥の湖」』が再び日本に上陸する。

 この公演は、バレエファンでなくとも、タイトルやシーンの一篇を知っているなどバレエの名作中の名作『白鳥の湖』を斬新な解釈と男性ダンサーによるエネルギッシュな踊りで魅せるもの。男性の主人公と白鳥になってしまったヒロインとの悲恋の物語を、『マシュー・ボーンの「白鳥の湖」』では主人公・王子も白鳥(ザ・スワン)も男性が演じ、振り付けもクラシカルで格調高く、カチッとしているといった枠から飛び出したユニークな動きを取り入れ、質の良さとエンターテインメント性を見事に融合させた舞台を展開する。

 今回の公演では、ザ・スワン/ザ・ストレンジャー役のジョナサン・オリヴィエ、王子役のクリストファー・マーニーといった日本でもおなじみのキャストが出演。さらに、日本公演だけのキャストとして、アメリカン・バレエ・シアターのマルセロ・ゴメスがザ・スワン/ザ・ストレンジャー役で出演する。

 ローチケでは現在、心を揺さぶること間違いなしのこの公演のチケットを発売中! 

何か起こりそうで何も起こらない。そこに何を見出すかは見る人次第 東京乾電池『ゴドーを待ちながら』

2014.07.19 Vol.622

 舞台に映像にと活躍の場を広げる柄本佑と柄本時生。2人は2008年に兄弟ユニット「ET×2」を結成し、これまで3回の公演を重ねてきた。

 もともと「いつの日かゴドーを演じたい」という思いから結成したユニットだったのだが、今回ついに念願の『ゴドーを待ちながら』を上演することになった。

 物語はウラジミールとエスドラゴンという2人の浮浪者が「ゴドー」という人物をひたすら待っている情景を描いたもの。2人はたわいもない会話を続けながらゴドーを待つ。そこにやってくる主人と奴隷の2人組。その2人との奇妙なやりとりからウラジミールとエスドラゴンは「この人がゴドーなのでは」と思うのだが、さにあらず…。果たしてゴドーはやってくるのだろうか。そもそもゴドーとはいったい何者なのか!?

 不条理劇の傑作として世界各国で上演されるのはもちろん、その構造をモチーフとした作品も多く生み出した名作。日本でも多くの名優と呼ばれる俳優たちが演じてきたこのコンビ。2人はいったいどんなウラジミールとエスドラゴンを見せてくれるのか、とても興味深いところ。

何か起こりそうで何も起こらない。そこに何を見出すかは見る人次第 五反田団『五反田の夜』

2014.07.19 Vol.622

 劇作家、演出家、作家に加え、最近では映画監督としても活躍中の前田司郎が主宰する五反田団。

 彼らの作品を面白く紹介するのは困難を極める。

 なぜなら、特に彼らのホームであるアトリエヘリコプターで上演される作品は、ほとんど素舞台で、ストーリーも特段すごい事件が起こるわけでもない。日常の出来事だったり、ごく普通の人の頭のなかを割って見せたようなお話が淡々と続く。だけど面白い。それが五反田団。

 細かく計算された絶妙な会話と、過度なまでに自然体の俳優たちのたたずまいにいつの間にか引き込まれる。

 今回は、震災を受け “何かをしなければ”という思いにかられた五反田に住む主婦たちがボランティア団体「絆の会」を作るのだが、何をして良いか分からない、というお話。

 前田自ら「テーマもへったくれもない馬鹿らしいだけの演劇」という。深読みしたい人はしても構わないが、それはあまり意味のないことなので、見たまま感じたままで楽しむほうがいいだろう。

 ただ、平凡でつまらないと思っていた日常には意外に面白いことが転がっているんじゃないかな?ということには気づかされる。それが五反田団。

なぜ神保町花月はお笑い芸人にこんな過酷なことをさせるのか…「ト書き~即興芝居ライブ~」

2014.07.05 Vol.621

 吉本興業の数あるホールの中でも異彩を放つのが神保町花月。新喜劇とはまた違った形で、若手芸人を起用した「演劇」を中心としたプログラムが組まれているのが特徴なのだが、それ以外でも風変わりな企画が目白押しだ。

 5月には2020年に東京でオリンピックが開催されることから「日本のお笑いが世界で№1だということを証明するためにはどうしたらいいか」と考え、外国人のお客さんを集め、芸人がカタコトの英語だったりアクションを多用したコントなど、工夫を凝らした芸を披露するライブを行った。そんなスタッフが今回企画したのが「ト書き~即興芝居ライブ~」なるイベント。内容はゲストの映画監督から事前に3~4行程度のト書きをもらい、若手芸人がそれをもとにそれぞれタイトルと内容を考えたものを観客の前で披露。それに対してゲストが演出やダメ出しをしていくというもの。

 芸人は通常はネタを考え、合わせ、練ってから舞台に上げるから、ふだんとは全く違うことをやることになる。前述の外国人向けのライブといい、ここのスタッフは芸人さんにやけに厳しい!?
「新しい形で演劇・映画などの関係者とよしもと芸人がコラボできればいいな、と単純に思っていたんです。ゲストさんを探していくうちに、作品を作る上で、俳優、芸人関係なく常に面白い演者を探しているというお話をよく耳にしました。これはやるしかないと思い、映画監督さんと芸人さんの新しい出会いになる事を願ってこのイベントを企画しました」とはプロデューサーの武田さん。

 即興劇が終わった後は、ゲストと芸人のトークショー。ダメ出しされた芸人たちの反撃がここで見られるかも…!?

鴻上尚史作品を一気に2本!!

2014.07.05 Vol.621

『ビー・ヒア・ナウ』

 鴻上尚史の第三舞台時代の作品である『ビー・ヒア・ナウ』が24年ぶりに上演される。1990年の初演以来、今回が初めての再演。1990年だから成立していたものと2014年になっても成立するものを分け、鴻上が台本を改訂。そして演出は映画監督で、近年は舞台の演出も手がけている深作健太が担当する。

 男はある日、たった1行「お前を誘拐した」とだけ書かれた手紙を受け取る。その意味が分からないまま男はやがて得体の知れない者たちに追われていく。追っ手の狙うものは果たして…。

 出演者は鴻上の主宰する「虚構の劇団」の劇団員を中心に、客演として「柿喰う客」の七味まゆみ、「モダンスイマーズ」の津村知与支が出演。深作の演出のもと、若い俳優と経験豊富な俳優が組み合って、いつもの鴻上の作品とは一味違った世界が展開される。

【日時】7月10日(木)〜21日(月・祝)(開演は火木金19時、水土日14時/19時。21日(月)は14時開演。14日休演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)【会場】シアターグリーン BIG TREE THEATER(池袋)【料金】全席指定 前売り・当日共4500円【問い合わせ】日本劇団協議会(TEL:03-5309-4600=平日10〜18時 [HP]http://www.gekidankyo.or.jp/)【作】鴻上尚史【演出】深作健太【出演】小沢道成、小野川晶、杉浦一輝、三上陽永、渡辺芳博、塚本翔大、森田ひかり、木村美月/七味まゆ味(柿食う客)/津村知与支(モダンスイマーズ)

この脚本にこの出演者。面白くなかったら、多分事故 M&Oplays プロデュース『鎌塚氏、振り下ろす』

2014.06.22 Vol.620

 M&Oplaysと作・演出家の倉持裕によるコラボ公演の7作目。そして倉持が正統派スクリューボール・コメディーに挑戦し、高い評価を得た「鎌塚氏」シリーズの3作目となる作品。

 同シリーズは三宅弘城演じる、生真面目で融通のきかない執事・鎌塚アカシを中心に繰り広げられるドタバタコメディー。

 舞台は貴族制度が続いている世界。アカシが仕える貴族はなにやら問題を抱えている人たちばかり。今回は日本有数の名家・中之院公爵家での出来事。先代の当主が亡くなってしまい家ばかりではなく、国会の貴族院における一大派閥の長にもなってしまったレイジロウ。しかし放蕩息子で政治経済のことなどさっぱり分からないレイジロウは取り巻く環境の激変ぶりと父を亡くしたショックから神経衰弱に。経済的にも困窮し、さまざまな陰謀や困難が降りかかる中之院家をなんとか守ろうとするアカシなのだが…。

 アカシのアイドル的な存在で第1弾では恋愛模様を繰り広げた女中頭のケシキ(ともさかりえ)と「伝説の執事」とアカシが崇める父親役としてベンガルが登場。伝説の執事、ベンガル…もう面白すぎる雰囲気ぷんぷんだ。

この脚本にこの出演者。面白くなかったら、多分事故 ハイバイ『おとこたち』

2014.06.22 Vol.620

 作・演出の岩井秀人が取り上げる題材は家族の問題、夫婦の問題、引きこもり、といった日常、我々の身の回りでありそうなことばかり。しかし登場人物の自意識過剰っぷりやトラウマなどを、その独自の視点で引っ張り出すことによって、決して普通の話では終わらせない。ただ、舞台上では “喜劇”という形にして見せているので、その場ではついつい笑って終わってしまうのだが、あとからじわじわと考えさせられるモノが出てきて、ついついもう一回見たくなる。 

 今回は2012年に上演され、岸田國士戯曲賞を受賞した『ある女』以来、約2年ぶりとなる新作書き下ろし。

 のんきな若者が社会に出てさまざまな困難にぶつかっていくさまを描く、青年期から老年期までの男性たちの群像劇。老老介護や貧困といった、「見ないふりをしていいのかな?」といった問題を取り上げ、舞台の上に乗せるという。

 キャストを見ると、ダメな男を演じさせたらはまりそうな俳優ばかりでワクワクするのだが、ハイバイの作品では男が女を演じることも普通にあるので、幕が上がるまでは予断を許さない!?

クセのありすぎる登場人物たちについつい没頭 新宿梁山泊『ジャガーの眼』

2014.06.08 Vol.619

 現在、演劇を上演するにあたって最もライブ感あふれる場所はテント公演だろう。

 大雨や雷が鳴る夜は雨音や雷鳴がBGMに。例え、街宣車が通って大きな音を鳴らしていても、それすらBGMになってしまう。究極のライブ。

 テントといえば唐十郎ということになるのだろうが、新宿梁山泊も多くのテント公演を手がけている。そして今回上演するのは唐による名作『ジャガーの眼』。新宿梁山泊旗揚げの原点ともなった作品だ。

「ジャガーの眼」と名付けられた、不思議な力を持つ眼をめぐる物語。その眼を求め、多くの人々が争う、そんな人々の間をくぐり抜けてきたジャガーの眼が見つめてきた物語とは…。移植された眼球をめぐり幻想の世界が展開する。

 唐の当たり役だった探偵・田口を息子であり、テント公演初出演となる大鶴義丹が演じる。

31歳の俳優たちがある兵士の手帳を手掛かりに作る「命と戦争」についての舞台

2014.06.07 Vol.619

 この夏、ちょっと気になる舞台作品が上演される。「サーティワンアイスクリーマーズ」というユニットの『LEYTE ! 〜祖父のレイテ戦記〜』という作品だ。

 サーティワンアイスクリーマーズは1982年度生まれの31歳の俳優5人が集まり結成されたユニット。メンバーはハイパーメディアフリーターの黒田勇樹、劇団『激団リジョロ』副団長の斎藤このむ、『仮面ライダー剣(ブレイド)』主演の椿隆之、俳優でミュージシャンの杉浦タカオ、劇団『ツラヌキ怪賊団』団長のウチクリ内倉の5人(写真左から)。

 もとをただせば、今年1月に黒田が舞台で内倉と共演した時の「同い年で集まってなにかしたいよね」という何気ない会話から始まった。だいたいこういった話は言うだけでなかなか実現しないものなのだが、そこに黒田が顧問としてかかわっている「劇団八幡山ほしがりシスターズ」のメンバーから「戦争に行った祖父の手帳がある」という話を持ちかけられる。この手帳を読んだ黒田は「戦争を知らない世代の僕たちがこの題材を扱うとどうなるのか?」と考えた。そして同世代の飲み友達の俳優たちに声をかけ、「舞台をやろう」ということになったという。

 6月1日に制作会見と公開稽古を行った。そこでは脚本の読み合わせが行われたのだが、祖父の手帳には当時何も分からないまま戦争に駆り出された若者の姿や、終戦間際の日本軍のシビアな状況が几帳面に描かれていた。作品は手帳の中身をほぼ全面的に生かし、「命と戦争」というテーマで送る。いわば時空を越えて1945年と2014年の若者が繰り広げるセミドキュメンタリーとでもいったところか。

「31歳の僕たちが思った戦争」をちょっと変わった切り口で、真面目に考えてみる。

クセのありすぎる登場人物たちについつい没頭 鵺的『毒婦二景』

2014.06.07 Vol.619

 あるときは実話をもとに、またあるときは非常にリアルなフィクションを組み立て、現代社会の歪み、そこを生きる人間の姿、新しい人間関係の在り様といったディープなテーマを追究していく鵺的。今回は「阿部定」をモチーフとした長編を2本同時上演する。

 定役に岡田あがさ、ハマカワフミエ。阿部定になんらかのシンパシーを覚える2人が作・演出の高木に阿部定への思いを語ったことからこの企画は生まれたという。

『定や、定』は、定を犯し、脅し、もてあそんではヒモのようにつきまとった女衒の男と定との生涯の腐れ縁を描いた二人芝居。

『昭和十一年五月十八日の犯罪』は、事件を起こし逮捕された定と、取調室で定を取り調べる刑事たちとの攻防を描く。

 各々の上演日は公式サイトなどで要確認。

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