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STAGE 今回から新劇団員も2人入団。舞台上はよりいっそう華やかに!!

2013.02.25 Vol.584

 近年起こった事件や出来事をそっと作品に織り込むクロムモリブデン。今回モチーフとなっているのは「レンタルフレンド」。なにやら最近よく耳にするようになってきた、文字通り依頼を受けて友人の代わりを務めるサービスだ。ちなみに「レンタル彼氏」とか「レンタル彼女」とは違うんで、念のため。

 物語はレンタルフレンドを派遣している会社が最近業績が伸び悩んじゃったことから始まる。社員たちの強引な“おともだち勧誘セールス”が多くの“おともだち被害者”を生むことになる。被害者たちはなんとかレンタルのおともだちと手を切ろうと四苦八苦する。そこに現れたのはボランティアでおともだちになろうとする“メンタルフレンド”という人たち。そしてレンタルフレンドとメンタルフレンドの抗争が始まる!!

 フィクションの世界のものと思われていた「レンタルフレンド」がリアルな世界に現れてしまったところで、それをもう一回フィクションの世界に引きずり込んで徹底的に遊んじゃおう、といった感じの作品。

STAGE 東京芸術劇場でなかなかお目にかかれない作品を上演

2013.02.18 Vol.583

 昨年リニューアルオープンした東京芸術劇場では、ルーマニアを代表する劇場である国立ラドゥ・スタンカ劇場の『ルル』を招へいする。これは芸術監督を務める野田秀樹が2011年に同劇場で行われたシビウ国際演劇祭を訪れ、ルーマニア演劇界の巨匠シルヴィウ・プルカレーテの代表作を連日観劇。その常識を超えたスケールと俳優の魅力とパワーにほれ込み、今回の招へいにつながった。

 この『ルル』はドイツの劇作家フランク・ヴェデキントの代表作である『地霊』と『パンドラの箱』の二部作をまとめた作品。多くの人々の人生をからめ捕る魔性の女・ルルの波乱の人生を描く。ルルは貧民街で拾われた男の愛人を振り出しに結婚、再婚と流浪の人生を送る。その随所で展開される愛と嫉妬と、そして死。その転がり落ちるような人生の最後にやってくる結末は…。

 ルルを演じるのはラドゥ・スタンカ劇場を代表する女優オフェリア・ポピ。ちなみに過去、日本では大竹しのぶ、秋山菜津子らが演じた。なかなかお目にかかれない作品だけに必見の一本となる。

STAGE 2004年初演の衝撃作の再演…といっても限りなく新作!?

2013.02.11 Vol.582

 今回の公演は「結成20周年記念企画第一弾」と銘打たれている。この20年間、彼らは主宰のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)を筆頭に、日本の演劇シーンの先頭グループを形成してきた。

 この間、多くの劇団が解散したり誕生したり…。そりゃ長いことやれば、飽きもすればマンネリになることもある。しかしナイロンの作品はメンバーの顔ぶれはほとんど変わらないのに、そういったものは感じられない。そう考えると、改めてすごい人たちなのだと思わされる。

 今回は2004年に上演した『男性の好きなスポーツ』の再演とのこと。この作品はナイロンの中でも異色の艶笑劇で「エロ」を真正面から取り上げたもの。見終わった後に、ついついセックスがしたくなる人が続出したというある意味衝撃的な作品だった。まあ再演といっても大きく改訂されるとのことで、そのテイストはそのままに、限りなく新作に近いものになるようだ。

 なるほど、客演陣もセクシャルな雰囲気を漂わせる顔ぶれが揃っている。

STAGE 自信作をキャストもそのままに3年ぶりの再演

2013.02.04 Vol.581

 ペンギンプルペイルパイルズ1年ぶりの公演は2009年の本多劇場初進出時に上演された『cover』の再演。作・演出の倉持裕自身が岸田戯曲賞を受賞した『ワンマン・ショー』と並ぶ自信作であり手ごたえを感じたという作品だ。

 描かれているのは30年ぶりに再会する姉弟と、逆に30年のつながりが絶たれようとしている姉弟の物語。初演では、この対になる2組の姉弟のうち、生き別れた姉弟のほうに重きが置かれていたのだが、今回はもう一方の姉弟のドラマを厚くした。再演といっても、限りなくリニューアル。2つの対照的なドラマを通して「血」とか「家族」とか「他人」とかいろいろな関係性について考えさせられる。

 3年半ぶりの再演なのにキャストも全く同じ。この間にさまざまな作品に出会い、また取り巻く状況も大きく変わった者もいる。そんなこともひっくるめて、より厚みのある魅力的な登場人物たちを演じてくれるに違いない。

STAGE フェスのテーマにもっともふさわしい組み合わせ

2013.01.28 Vol.580

 現在注目を集める若い劇団が共通のテーマのもと作品を上演する「演劇村フェスティバル」も今年で5回目。今年は「女性が創る演劇」がテーマ。そして最後を飾るのは宝船の2年ぶりとなる新作公演。

 脚本はもちろん、女をこじらせた主人公を描けば天下一品の新井友香。そして今回は演出にブス会*のペヤンヌマキを迎える。ちなみにペヤンヌマキは外部の作品を演出するのは初めて。

「女」ということに対してはこだわりのアプローチを見せる2人が組むと、いったいどんな作品が出来上がるのか…。なんとなく今回のフェスのテーマに最もふさわしい組み合わせではある。

 主人公は38歳の女性ふたり。仕事を続けた先に何があるのか、いささか頼りないこの恋人と一生添い遂げる決断をするべきか。結婚したらしたでその先、子どもを持つ人生を選択するかどうか、そもそも持てる可能性はあるのか——。40を前にした女性が、さまざまな〈期限〉を迎える前にあれこれと葛藤し、策を巡らす物語。

 観劇の前に劇団ブログで展開された2人の対談に目を通しておくのも良し。

STAGE 2006年初演の初期の作品が待望の再演

2013.01.14 Vol.589

 本作は2006年に「青年団若手自主企画」というカテゴリーで初演された。翌年からサンプルはユニットとして独立。その後、作・演出の松井周は「フェスティバル/トーキョー09秋」への参加、2010年には岸田戯曲賞受賞など、次々と話題作を発表し続ける。松井にとっては初期の作品といえるのだが、当時からすでに現在のスタイルを確立しており、改めてその完成度の高さ、一貫した方向性には目を見張るものがある。

 舞台は東京の環状線と高速道路に挟まれた場所にある小さな自然食品の店。そこには店長と息子、店員たちが住んでおり、小さな共同体を形成していた。彼らは「水」や自然食品を販売し、自給自足の暮らしをしている。「水」を作っているのはその店の地下に住む息子。ある日、一人の女の子が働きたいと店にやってきた時から彼らの生活に変化が訪れる。

 描かれた状況は7年経って、受け取り方もずいぶん変わっているだろう。そんなことも踏まえて、改めてコミュニティや信じるということについて考えさせられる作品だ。

STAGE デスロック4年ぶりの東京公演で僕たちは何を感じ取れるのか

2013.01.07 Vol.578

 東京デスロックと名乗っておりながら、2009年より東京公演を休止。主宰の多田淳之介が芸術監督を務める埼玉県富士見市民文化会館キラリ☆ふじみのレジデントカンパニーとして、同所を中心に「地域」という概念をテーマに活動を続けてきた東京デスロックが4年ぶりに東京公演を再開するという。
 彼らはこの間、韓国、フランスといった国外、国内では青森、北九州といった地の劇団や団体と作品作りにとどまらない、演劇の可能性を追求する活動を行ってきた。その中で導き出されたものは、地域も世界であり、世界は地域なのかもしれないということ。そもそも日本というものは地域の集まりであり、地域という言葉も、地方という意味ではなく、作品の中における地域を表すものでしかない。
 東京ノートは劇作家・平田オリザが1994年に書いた作品で、2024年の近未来の美術館を舞台に、家族や人間関係の緩やかな崩壊を描いている。戦争という大きな背景を前に、日々の生活を送る日本人の姿が克明に描写され、現代社会のさまざまな問題点と危機があぶり出された作品だ。平田の提唱する現代口語演劇の原点ともいわれる作品なのだが、多田の手にかかるとどんな作品に仕上がるのか…。

STAGE 新国立劇場演劇公演『音のいない世界で』

2012.12.17 Vol.576

 新国立劇場というと、海外作品の翻訳劇とか、日本の作品でも演劇をよく見る人をうならせるような作品を多く上演しているイメージがある。いや実際そう。そんな新国立劇場がこのクリスマスから新年にかけては趣を変えて、演劇部門では初となる「大人も子どもも楽しめる」作品を上演する。
 ある冬の日、大切なカバンを盗まれてしまったために「音」を失った貧しいセイはカバンを取り戻そうと、ひとり旅に出る。カバンを盗んだ男の足跡を追って季節をまわるセイ。セイがいなくなってしまったことで、夫もまた「音」を失ってしまう。夫はセイを追って旅に出る。この2人の夫婦を軸に綴られる不思議な一夜の物語。
 出演はダンス集団コンドルズの近藤良平、バレエからストレートプレイへと活動の幅を広げる首藤康之。この2人の顔を合わせだけでも結構レアなのに、加えて作・演出も兼ねる長塚圭史に今年も舞台に映像に大活躍の松たか子。
 演劇を基本にダンスのような動きが加わり、切なくも心あたたまる物語が展開される。親子で楽しみたい舞台だ。

STAGE MCR『肉のラブレター』

2012.12.17 Vol.576

 作・演出の櫻井智也はちょっとばかり乱暴なところがある。しかしそれはシャイな部分の裏返しであり、その証拠に櫻井を「先輩」と慕う演劇の後輩は多い。その一方で、そう付き合いのない年配の人には「生意気」と思われちゃったりする、ちょっとばかり不器用な人であったりする。ついでにいうと、今年はMCRで2本、もうひとつの顔であるドリルチョコレート、小栗剛との「世田谷童貞機構」で1本ずつ、役者としても11月にブラジルで主演。合間にはNHKのラジオドラマの脚本などなど……これだけ忙しいから電話も止まっちゃう。人生に関してはホントに不器用。
 そんな櫻井の書く作品は、ふざけたお話や設定というオブラートに包んで、とても生々しい感情が描かれる。場面だけを切り取るとただひたすらにおかしいだけなのに、全体を眺めると割とウェットな話だったりして、見る側の油断を許さない。演劇に関してはホントに器用。
 今回は櫻井の父親がガンになったということで、ガンを題材に父親に捧げるお話になるという。ひとまずウェットな話題を振っておいて、舞台上ではいつものように巧妙な仕掛けを施すのだろうが、さてリアルに重いこのお話をどう料理するのか…。

STAGE 日本とイスラエルのユダヤ系・アラブ系の俳優がひとつの舞台に

2012.12.10 Vol.575

 日本とイスラエルの修好60周年を記念し、文化庁の国際共同制作事業として企画されたこの作品。日本での上演後はイスラエルで上演される。
 企画意図を表すように、キャストは日本とイスラエルのユダヤ系・アラブ系という3つの文化圏の俳優で構成される。日本からは白石加代子、和央ようかが出演。イスラエルからは国内最大規模のカメリ・シアター所属俳優を中心とした国民的俳優たちが顔を揃えた。
 この『トロイアの女たち』は、戦に敗れて愛する夫や息子を殺され、故国を追われる女たちの末路を描くギリシャ悲劇の傑作。常に国内に紛争を抱えるイスラエルの俳優たちにとっては、とてもシビアでハードな作品に違いない。
 舞台上では各々の母国語で台詞を発するため、日本語、ヘブライ語、アラビア語の3つの言語が飛び交うという。
 客席側から見ると、政治的には対立するユダヤ系とアラブ系の俳優たちが手を携えてひとつの作品を作り上げるという現実に、演劇の力と可能性を感じさせられる。蜷川幸雄が3年間に渡って取り組んできたプロジェクトだけあって、さまざまなメッセージがこめられた作品となったようだ。

STAGE シアターコクーン・オンレパートリー+キューブ 2012 『祈りと怪物 〜ウィルヴィルの三姉妹〜』KERAバージョン

2012.11.26 Vol.574

 ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の新作脚本をKERA本人と蜷川幸雄がそれぞれ別のキャストで演出をし、上演する。このスタイルはかつて野田秀樹と蜷川の間で『パンドラの鐘』という作品で行われ、大きな話題を呼んだ。
 KERAと蜷川は2009年に蜷川率いるさいたまゴールド・シアターの公演にKERAが脚本を書き下ろし、蜷川が演出という形で初タッグを組んだ。今回はKERAが蜷川に「『パンドラの鐘』のようなことをまたやりたい」と提案し、実現したという。
 バックボーンも世代も違う2人の演出家ということで、「どんな作品に仕上がるのか?」という注目が高まるが、『パンドラの鐘』の時にもあった比較から生まれる再評価や、相乗効果による新たなファンの広がりという副産物も期待したい。
 もちろん比較されるのは演出家ばかりではない。KERAver.では生瀬勝久が演じる町の権力者役を蜷川ver.では勝村政信が演ずるのをはじめ、キャストも含めて見どころ満載の公演となる。
 蜷川ver.は1月12日から上演開始。

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