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点から線に、そして面にまで。女優、俳優、クリエイターの3人が紡ぎ出す世界

2012.09.03 Vol.564

 この「おかぼれ」は女優・安藤聖、俳優・尾上寛之、クリエイターの松居大悟の3人が、「70分の初期衝動」をコンセプトに衝動的に結成したユニット。

 共演や演出家と俳優という形で作品にかかわった後、別の作品でまた一緒に、とかお互いの出演作に足を運ぶ…といったことはままある。しかし、ユニットまで作ってしまうのはそうはない。

 安藤は舞台、テレビ、CMなど多岐に渡り活動中。舞台では岩松了、倉持裕、長塚圭史、前田司郎、福田雄一、福原充則といった演出家の作品で重要なポジションを担う。

 尾上は舞台『ロミオ&ジュリエット』『住転』、映画『愛のむきだし』『洋菓子店コアンドル』、TV『カーネーション』『ROOKIES』と多岐にわたり出演。

 松居は東京グローブ座、青山円形劇場などのプロデュース公演での作・演出はもちろん、映画『アフロ田中』で監督を務めるなど幅広い分野でクリエイターとして活躍中。

 こんな3人がお互いに共鳴しあって作る作品とあって、今からいったいどんなものが出来上がるのか期待は高まる。

 また元serial TV dramaの新井弘毅が、劇中での音楽を全面プロデュース、さらには自身も演奏者として出演する。このへんもどのように融合させるのかも気になるところ。

STAGE 今年はひときわ豪華な三鷹市芸術文化センターの名物企画

2012.08.27 Vol.563

 三鷹市芸術文化センターの名物企画である『MITAKA “Next” Selection』の季節がやってきた。今年で13回目のこの企画、今まで多くの若手劇団をセレクトしてきたのだが、今年は「マームとジプシー」の藤田貴大と「はえぎわ」のノゾエ征爾が今年4月に岸田戯曲賞を受賞、モナカ興業の演出家である森新太郎は「平成21年度文化庁芸術祭賞優秀賞」を受賞するなど、特に豪華な顔触れが揃った。

 1本目はマームとジプシー。その舞台はいくつもの異なったシーンを複雑に交差させ、同時進行に描く手法や、シーンのリフレインを別の角度から見せる映画的な手法などを用い、観客に大きな驚きを与える。音楽家や漫画家、美術家との共作を発表するなど多方面からのアプローチもあり、この世代の演劇人のなかでも最も注目されているといっても過言ではない。

 なお、はえぎわは9月28日〜10月8日、モナカ興業は10月19〜28日の日程で上演される。

 ここ数年、『MITAKA “Next” Selection』では口コミで後半にお客さんが押しかける状態が続いており、当日券を入手できない場合もあるので、早めの観劇がオススメだ。

STAGE 何の変哲もない物語の裏に流れる濃厚な人間ドラマ

2012.08.20 Vol.562

 ONEOR8の約1年3カ月ぶりの本公演。作・演出の田村孝裕が描く作品は、あらすじだけを追うとなんの変哲もない作品に見える。扱うのも親子、友人、隣人といったどこにでもある人間関係。奇抜な設定を用いることもめったにないのだが、登場人物たちの内面を深く描き、その感情と行動を丁寧に重ねていくことで他には出せない濃厚な物語に昇華させる。
 今回の舞台は姉妹(ともに30代)が営んでいる古めかしい喫茶店。常連客しかおらず、正直、経営は苦しい。父から継いだ喫茶店をどうするべきか、姉妹は悩んでいた。そんなとき、音信不通になっていた母が喫茶店へとやってくる。母は姉妹が幼少のころ、男を作って出て行ったきりだった…。

 ここ最近の公演ではお茶の間でも名の知れたタレントを起用する。田中直樹、ほっしゃん。、矢部太郎といったお笑い芸人を起用したときは、その新しい面を引き出した。山本裕典、柄本佑といった個性の強い俳優を起用したときも、その持ち味をうまく作品に取り込み、高い評価を得た。今回はタイトル通り「キレイになっていく」母役に高橋惠子を起用。あまりにハマリすぎのキャスティングに今から期待値は大きい。

リニューアル東京芸術劇場で「一期一会」の公演

2012.08.06 Vol.561

 今年9月にリニューアルオープンする東京芸術劇場では、芸術監督を務める野田秀樹作・演出によるNODA・MAPの新作公演をはじめ、新しい出発にふさわしい作品がラインアップされている。

 そのなかでも異色なのがこの『東京福袋』という企画。“さまざまなパフォーマンスを福袋のように詰めて届けたい”という野田芸術監督の発想のもと、劇団はもとより、作家・俳優・ダンサー・噺家とジャンルレスの才能が集結した。

“福袋”の中身は大きく分けて「パフォーマンス」「リーディング」「演芸」の3つ。1プログラムにつき持ち時間は25分。8日間の日替わりで一日に2〜4組の出演者によるオムニバス方式で行われる。1団体につき1回だけの公演となる。

M&Oplays プロデュース『鎌塚氏、すくい上げる』

2012.07.30 Vol.560

 2011年に上演された『鎌塚氏、放り投げる』は、生真面目で融通の利かない執事・鎌塚アカシ氏の奮闘と女中頭との淡い恋の顛末を描いた作品。主役を務めた三宅弘城の絶妙な“鎌塚氏っぷり”も相まって高い評価を得た。

 作・演出を務める倉持は前作で初めて自らの作品に「コメディー」と銘打った。戯曲の巧みさは周知のところだが、そこに加えて類いまれなコメディーセンスを披露、間口の広さを見せつけた。今回はその“鎌塚シリーズ”の第2弾。再び「鎌塚氏」を中心に、新たなヒロインを迎えてロマンティックなコメディーが展開される。

 現在、由利松家に仕えるアカシは由利松家の長男モトキと一緒に豪華客船「レッドジンジャー号」に乗っていた。これは単なる観光のお供ではない。エーゲ海を渡るこのクルーズの間にモトキと花房家の令嬢センリとの見合いを成功させること……これが主人から言い渡された任務であった。しかしすんなりと事が運ぶわけはもちろんなく……。

 ヒロインを務める満島ひかりは約3年ぶりの舞台出演。この間、2年連続で日本アカデミー賞の優秀助演女優賞を受賞するなど、活躍が目覚ましい。久しぶりの舞台でどんな姿を見せてくれるのか、興味は尽きない。

CBGK PREMIUM STAGE ミュージカル 『Bitter days,Sweet nights』

2012.07.30 Vol.560

 ミュージカルというと大規模な劇場で大オーケストラがあって、主要メンバー以外にもたくさんの出演者がいて…という場面が頭に浮かびそうだが、この作品は出演者は4人だけ。中規模な劇場とあって、前出の大規模な仕掛けは多分ないだろう。しかし、ミュージカルの魅力はそんなところにあるわけではないということを教えてくれる作品。

 作・演出のG2は6年前に初めてミュージカルを演出して以来、オリジナルのミュージカルを作ることを考えていたという。この作品については「等身大の、今の時代のミュージカルを作りたい」と語っている。

 お話は四人の男女が織りなす小さな愛の音楽劇。最愛の妻を亡くした酒浸りでぼろぼろとなった男の前に妻そっくりの女が現れる。2人の奇妙な同居生活が始まるのだが、そこで巻き起こる衝突と笑い。彼女は誰? そして何故ここに現れたのか…。

 ミュージカルへの主演も多く、スケールの大きな作品で活躍する橋本さとしと新妻聖子は今までのミュージカルでは外国人役ばかり。今回のように等身大の日本人を演じるのは初めてとあって、今までの作品とどんな違いが見られるのかも見どころ。

 あらゆる意味で、今まで日本で行われたミュージカルとは一線を画した作品となる。

パルコ・プロデュース『露出狂』

2012.07.16 Vol.559

 小劇場界で今最も注目を集める存在といっても過言ではない中屋敷法仁がパルコ劇場に初進出する。

 中屋敷は2004年に「柿喰う客」という劇団を旗揚げ。歌舞伎や狂言のような特徴のある動き、スピード感のある台詞回しと物語の展開といった作風と、その虚構性の高い演出法は、当時(今でも)隆盛を誇る「現代口語演劇」とは一線を画したもので、「反・現代口語演劇」の旗手ともいわれている。

 本作は2010年に「オール女性キャスト」で上演された作品。再演にあたり「オール男性キャスト」に変換。部活という閉塞的社会で巻き起こる男同士のプライドをかけたスポ魂活劇が繰り広げられる。

 舞台は強豪校として名をはせる高校サッカー部。この部ではチームワークを維持するための「部員は年度ごとに1年間、他学年の先輩・後輩とペアを組み、恋人関係を築かなければならない」という”鋼の掟”が存在していた。ただ引退・卒業する時にはすべての関係を解消しなければならなかった…。

「男14人だけの芝居」と聞くと、昨今の流行から「イケメン芝居」とイメージしがちだが、そんなところにはとどまらない作品。

あひるなんちゃら『ニアニアフューチャ』

2012.07.16 Vol.559

 あひるなんちゃらの公演は「待ってました」というのはちょっと気恥ずかしいが、なきゃないで物足りない。ただでさえぼんやりしてしまう暑苦しい季節に、肩ヒジ張らずにぼんやり楽しめるのが、彼らの芝居。

 舞台は西暦2017年。主人公の女の子は同居人と一緒にずいぶん長いこと同じ部屋に住んでいる。この間、世界はそんなに変わってなくて、変わったことと言えば、最初は、女子の二人暮らしだったけれど、もう女子っていう年齢でも無くなったってことくらい。はっきり言って、そんな生活が楽しい。残念ながら、楽しい。楽しいからやめる気がしない。というようなことを思っている主人公のお話。

 こんなあらすじを読むと、中谷美紀みたいなおしゃれでいい感じの女優さんが出てきて、「ふーっ」てため息をついている場面が頭に浮かぶが、多分そんなおしゃれな感じではないと思われる。あえて言うなら「けだるい」ではなく「だるい」って感じ!?

 今回もおしりがそろそろ痛くなりそうな絶妙なタイミングで終わる、カラダに優しい70分の駄弁芝居。

STAGE パッと見はポップ、内容は実はシビア

2012.07.09 Vol.558

 この劇団の作品には近年に起こった事件や出来事を思い起こさせる台詞やシーンがよく現れる。今回は阪神淡路大震災と東日本大震災の間に我々はどのように変化したのか?という視点から、現代のコミュニケーションの新たな形について描くという。
 感情に乏しい少年が医者の勧めで小説を書き始める。主人公は何事にも感動のできない青年。書き進めるうち、少年に才能を感じた作家の指導によって内容はどんどん過激になっていき、主人公の青年は逃亡犯になってしまう。少年が街に出ると、刑事たちがなにやら捜査中。物語が現実にリンク? それとも…。
 一見ポップなストーリーとスピーディーな台詞回し、そしてパッと見で目をひく個性的な役者たち…。こう書くとずいぶんと軽〜い感じの劇団というか作品のように思われるかもしれないが、実はその裏に結構シビアな題材を潜ませている。虚構と現実を行き来する演出、奇抜なステージングなど、どこにひっかかるかによって、ずいぶんと印象が変わるかもしれない。

劇団の代表作が待望の再演 ハイバイ『ポンポン お前の自意識に小刻みに振りたくなるんだポンポン』

2012.07.02 Vol.557
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© 曳野若菜

 脚本を担当したNHKBSのドラマ『生むと生まれるそれからのこと』で向田邦子賞、ヒューゴ・テレビ賞を受賞した作・演出家で俳優の岩井秀人が主宰するハイバイ。  今回は2005年、2007年に上演された人気作の待望の再演。  ゲーム好きの少年は恐ろしいゲーム屋で違うゲームを買わされたことから、おしっこを漏らしたり、兵隊さんたちの妄想に襲われたりといった超常体験を経て、家族や友人のありがたみを知る。一方、お母さんは町内新聞の記者として、市民劇団の取材に行き、演劇の恐ろしさを知る。  ファミコンのあるなしで生まれる小学生の間でのヒエラルキー、嫁ぎ先が裕福か否かで環境が分かれた元同級生の母親の繊細な機微などを通して描かれるのは、残酷でありながらもなんとなく笑えちゃう現実だ。  荒川良々が昨年の「その族の名は『家族』」以来の岩井作品に出演。注目を集める作品への出演が続いている安藤聖がハイバイ初出演する。

【日時】7月18日(水)〜8月1日(水)(開演は平日19時、土14時30分/18時30分、日14時30分。火木は14時30分の回あり。※1日(水)は18時30分開演。24日(火)は休演。開場は開演20分前。当日券は開演40分前から発売)【会場】こまばアゴラ劇場(駒場東大前)【料金】整理番号付自由席 前半割引(23日まで)前売3000 円、当日3500 円/通常料金(25日から)前売・当日 3500円/学生 前売・当日2500円【問い合わせ】キナダ(TEL:090-9393-0809 〔劇団HP〕http://hi-bye.net/)【作・演出】岩井秀人【出演】荒川良々、安藤聖、岩井秀人、岩瀬亮、川面千晶、坂口辰平、永井若葉、平原テツ、師岡広明

ままごと+三鷹市芸術文化センター 太宰治作品をモチーフにした演劇 第9回『朝がある』

2012.06.25 Vol.556
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 太宰治は晩年を三鷹で過ごし、今は三鷹市芸術文化センターの近くにある禅林寺に眠っている。  三鷹市芸術文化センターでは太宰を偲び2004年から「太宰治作品をモチーフにした演劇公演」を実施している。これは文字通り、太宰の作品をモチーフに演劇作品を作り、上演するというもの。これまでもさまざまな作家・演出家が独自のアプローチで斬新な作品を発表してきた。  今年は柴幸男。柴は2009年にここで上演した『わが星』で岸田戯曲賞を受賞。昨年の再演では入りきれないほどの観客が押し寄せた。今一番「見とかなきゃいけない」と思わせる存在だ。  柴が今回選んだ作品は『女生徒』。太宰が女の人からもらった日記をまとめた短編だ。  太宰はある少女の一日の思考、世界をこの短編に閉じ込めた。柴はこの作品では、ある朝の一瞬をテーマに、そこに存在するものすべての思考、世界を舞台に閉じ込めようと目論む。  常に今まで見たこともないような作品で見る者を驚かせる柴。劇団としては初めての一人芝居ということも合わせ、今回も間違いなく「見とかなきゃいけない」作品だ。

【日時】6月29日(金)~7月8日(日)(開演は平日19時30分、土15時/19時、日15時。4日(水)は15時の回あり。月曜休演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前から発売) 【会場】三鷹市芸術文化センター 星のホール(三鷹) 【料金】全席自由 日時指定 整理番号付 前売一般3000円/当日一般3500円/高校生以下 前売・当日とも1000円 (要学生証) 【問い合わせ】三鷹市芸術文化センター 星のホール(TEL:0422-47-5122 〔劇団HP〕http://www.mamagoto.org/) 【作・演出】柴幸男 【出演】大石将弘

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