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ペンギンプルペイルパイルズ『ベルが鳴る前に』

2012.02.06 Vol.540
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 多くの演劇人が一度は彼の脚本か演出で芝居をしてみたいと思っているのだろう。多くのプロデュース公演での活躍が目立つ倉持裕。2011年も3本のプロデュース公演で作・演出などを務めた。そんな倉持が、2年ぶりとなる劇団公演へ新作を書き下ろす。

 葬儀会場に放置された謎のマシンを見張る女、無数の身体検査をクリアしつつ十数層にも及ぶ地階の最深部を目指す科学者たち、機械技師と脱獄囚を乗せて夜道を疾走するワゴン…。どこかでつながっているであろう複数のエピソードがオムニバス形式で進んでいく。そこで描かれるのは大きな社会問題と小さな個人的問題の狭間で揺れる人々の姿。その姿を通じて、なかなか相いれない個人と社会のメリットについて考察するという。

 外部の公演では「さすがにここまでは…」といっても過言ではないほどの不条理かつファンタジックな物語が展開される。やはりホームグラウンドでの倉持の作品はキレ方がちょっと違う。

 昨年9月に行われたリーディングイベント「官能教育」シリーズで、倉持が演出した作品に出演した奥菜恵が本公演にも参加。“謎のマシン”を愚直なまでに守るヒロイン役を演じるのも注目。

【日時】2月16日(木)〜22日(水)(開演は平日19時、土日13時/18時。※22日(水)は15時開演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前から発売) 【会場】本多劇場(下北沢) 【料金】全席指定5000円/当日5200円 【問い合わせ】リトルジャイアンツ(TEL:090-8045-2079〔劇団HP〕http://penguinppp.com/) 【作・演出】倉持裕 【出演】奥菜恵、小林高鹿、ぼくもとさきこ、玉置孝匡、近藤フク、吉川純広、大浦孝明、大数みほ、小野川晶、田川可奈美、橘花梨、中尾僚太、春木美香、林笑子、春山優、裴ジョンミョン、皆戸麻衣


流山児★事務所『田園に死す』

2012.01.30 Vol.539
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 詩、小説、演劇、映画…さまざまな分野で活躍した寺山修司。死後29年たってもその作品たちは色あせることを知らない。なかでも自伝的な映画と呼ばれ「世界のテラヤマ」の名を決定づけたのが『田園に死す』。

 それまでも寺山作品を多く手掛けてきた流山児★事務所が2009年に舞台化し、大きな反響を呼んだのだが、その作品が待望の再演となる。

「母殺し」「家出」「蛍火」「恐山」といった寺山ワールドのファクターを内包した集大成ともいえるこの作品を、脚色・構成・演出を担った天野天街は単に映画を舞台化するにとどまらず、寺山テイストを残しながらも独自の作品に仕上げ、その年の第44回紀伊國屋演劇賞団体賞を受賞した。

 初演からたった2年しかたっていないが、我々を取り巻く環境は大きく変わった。作品から受け取るメッセージも違ったものになるだろう。

 14日には中屋敷法仁(柿喰う客)、15日19時の回には岩井秀人(ハイバイ)がアフタートークのゲストとしてやってくる。若い世代の彼らが流山児祥、天野天街とどういった“寺山話”を繰り広げるのか…というのも気になるところ。

【日時】2月9日(木)〜19日(日)(開演は平日19時、土14時/19時、日14時。15日(水)は14時の回あり。開場は開演15分前。当日券は開演1時間前から発売) 【会場】ザ・スズナリ(下北沢) 【料金】日時指定自由席(整理番号つき) 前売4200円、当日4500円/学生券3500円(要学生証提示 流山児★事務所、ザ・スズナリでの取扱のみ) 【問い合わせ】流山児★事務所(TEL:03-5272-1785〔HP〕http://www.ryuzanji.com/) 【原作】寺山修司 【脚色・構成・演出】天野天街 【出演】大内厚雄(演劇集団キャラメルボックス)、伊藤弘子、小川輝晃、木暮拓矢、深山洋貴(Studio Life)、さとうこうじ、流山児祥ほか


サンプル『女王の器』

2012.01.30 Vol.539
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写真・青木司「ゲヘナにて」

 サンプルの芝居は、まず劇場に行って舞台セットを見た瞬間にあぜんとさせられる。果たしてここでどんな演劇が展開されるのか? 役者はどこで演技をするのか?とか。そしてここ最近の作品では「物事の境界線の内と外」、「フィクションと現実の緩衝地帯」といった題材を扱い、見る側をおぼつかない気持ちにさせ、翻弄してきた。

 そこでは毎年、定期的に女王というものが選ばれていた。それは生け贄としての存在であり、生まれ変わりという意味合いも含まれるものであった。物語はその女王になる人と周囲の人々を群像劇的に描かれる。

 ここはどこなのか? 果たして物語の中なのか? そして私たちは観客なのか…といった感じで、「境界線」という概念をよりいっそう意識せざるをえなくなる演出が施されるという。

 見終わった後に、いろいろ考えることが出て来ると思うので、2人以上で来て、帰りの小田急線でお互いに確かめ合ったり、語り合うのもまた良し。

 ハイバイの岩井秀人(19日)、鉄割アルバトロスケットの戌井昭人(21日)などアフタートークも豪華なメンバーが揃っている。

【日時】2月17日(金)〜 26(日)(開演は平日19時30分、土19時、日14時30分。22日(水)と25日(土)は14時の回あり。20日休演。開場は開演20分前。当日券は開演1時間前から発売) 【会場】川崎市アートセンター アルテリオ小劇場(新百合ヶ丘) 【料金】全席自由・日時指定 一般3500円/ユース(27歳以下) 3000円、高校生以下 2000円(ユースと高校生以下は公演当日に要証明書提示) 【問い合わせ】川崎市アートセンター アルテリオ小劇場(TEL:044-955-0107 〔劇団HP〕http://www.samplenet.org/) 【作・演出】松井周 【出演】古舘寛治、古屋隆太、奥田洋平(以上サンプル・青年団)/野津あおい(サンプル)、岩瀬亮、羽場睦子、稲継美保、川面千晶、菊池明明、とみやまあゆみ、師岡広明


野田秀樹『THE BEE』 2月24日東京凱旋

2012.01.23 Vol.538

1月ニューヨークを皮切りにワールドツアー敢行中

改修工事中の東京芸術劇場の芸術監督を務める野田秀樹は現在『THE BEE』を引っさげワールドツアー中。2月には東京に凱旋。日本の演劇史に残るこの作品は絶対に見逃せない。

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ニューヨーク ジャパンソサエティ内オーディトリアムでの初日の模様(Photo:Michel Delsol)

『THE BEE』は劇作家で演出家の野田秀樹が2006年にロンドンでNODA・MAPの番外公演として上演した作品。9.11の同時多発テロに衝撃を受けた野田が、筒井康隆の小説『毟りあい』を題材に、暴力に支配された日常をインプロビゼーションで何度も再現しながら創作したものだ。

 平凡なサラリーマンが妻子を人質に取られたことで、自らも犯人の妻と子を人質にとって応酬する心理戦が繰り広げられる――というこの作品。まさに9.11から続く“報復の連鎖”、現在の社会状況を鋭く描き出している。

 2007年には東京でも公演。英語によるロンドンバージョンと同時に日本語バージョンも上演された。今回は4年ぶりの再演となる。

 ワールドツアーは1月5日にニューヨークで幕を開けた。「Under The Radar Festival」のオープニングプログラムとして上演され、初日から満員御礼の観客を集めた。

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野田秀樹(Photo:Michel Delsol)

 9.11から発想を得たとあって野田自身も初演のころからニューヨークでこの作品を上演したいという思いを持っていたという。終演後には「初日の芝居は非常によい出来で、今までやってきたことが間違いではなかったと確信できた」とコメント。しっかりとした手ごたえをつかんだようだ。また作品を見た若いニューヨーカーの女性は「この作品は今のニューヨークには必要な作品。最近のニューヨークではテクニカルなものによる作品が多いので。THE BEEのような役者の身体やシンプルなセットで見せる演劇的な芝居は絶対に多くの人が見るべきだと思う」という感想を野田に直接述べに来たという。

 好評のうちに15日にNY公演を終えた野田は24日からロンドンのSoho Theatreで2月11日まで3週間のロングラン公演。2月17〜19日には香港の「Hong Kong Arts Festival」に参加する。そして2月24日からは水天宮前の水天宮ピット 大スタジオで凱旋公演が始まる。こちらでは海外でも上演した英語バージョンを上演。そして4〜6月にかけては「日本語バージョン」で東京、大阪、北九州、松本、静岡と続くジャパンツアーを行う。

 日本語バージョンに目がいきがちだが、両方を見比べることによって、作品の理解度が深まり、文化的な差異もあぶり出されることになるので、ここは両方見ることをオススメ。

『THE BEE』〈English Version〉東京公演

【日時】2月24日(金)〜3月11日(日) 【会場】水天宮ピット 大スタジオ(水天宮前) 【公演に関する問い合わせ】東京芸術劇場 チケット担当(TEL:03-5391-3010=平日10〜18時 〔HP〕http://www.geigeki.jp/saiji/036/index.html)/『THE BEE』〈Japanese Version〉東京公演【日時】4月25日(水)〜5月20日(日) 【会場】水天宮ピット 大スタジオ(水天宮前) 【問い合わせ】NODA・MAP(TEL:03-6802-6681 〔HP〕http://www.nodamap.com/)※Japanese Versionのチケットは2月25日から発売。

〈ストーリー〉
平凡なサラリーマンが妻子を人質に取られたことから、復讐の鬼と化し、加害者の妻と子を監禁する。被害者が加害者に転身し、互いが互いの妻子を監禁して暴力を加えていく際限のない復讐劇。


テアトル・ド・アナール vol.1 『ヌード・マウス』

2012.01.23 Vol.538
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 劇団DULL-COLORED POPを主宰し、最近では翻訳家としても頭角を現す谷賢一は現在、最も注目を集める若手劇作家・演出家のひとりだ。昨年6月に自ら翻訳を手掛け、演出した『モリー・スウィーニー』でも高い評価を得たのも記憶に新しい。そんな谷がこの度立ち上げた新たなプロジェクトが「テアトル・ド・アナール」。このプロジェクトで谷は作品の創作過程に公開稽古やリーディングイベントなどを採り入れ、観客の反応を作品に反映させるということも試みている。

 物語は「情動と記憶の機能に役割を果たすとされているアミグダラ(扁桃体)を損傷した症例」に着想を得た家族劇の4人芝居。脳損傷から明らかになる〈私〉の不確かさ、人間関係や道徳律のあやふやさが描かれる。

 ちなみにタイトルの「ヌード・マウス」というのは突然変異種のマウスで、感染・免疫・ガンなどの研究に利用されるもの。モチーフとなっている「アミダグラ」は損傷すると恐怖の記憶がなくなってしまい、性的な行動を隠さなくなってしまう、という代物。もうこの辺から、好奇心をそそられる作品だ。

【日時】1月24日(火)〜29日(日)(開演は火水19時、木14時/19時、金13時、土14時/18時、日13時/17時。※木19時は貸し切り。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前) 【会場】赤坂RED/THEATER(赤坂見附) 【料金】全席指定5000円/プレビュー公演(24日)4000円 【問い合わせ】ゴーチ・ブラザーズ(TEL:03-6809-7125=平日11〜18時 〔公演HP〕http://www.nudemouse.jp/) 【作・演出】谷 賢一 【出演】増田俊樹、佐藤みゆき、大原研二、山本 亨


演劇実験室 万有引力『奴婢訓』

2012.01.23 Vol.538
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 寺山修司が主宰し、その死とともに解散した「演劇実験室 天井棧敷」を母体とする「演劇実験室 万有引力」。舞台そのものの表現が醍醐味であった「寺山演劇」の形式・思想を継承すべく結成された劇団だ。

 寺山の死後、今年で29年を迎える。その再評価が進むにつれ、多くの作品が上演されてきた。しかし、寺山演劇を寺山修司を知らない世代に広く知らしめ、後生に伝えていくという視点でみるとやや物足りないか…。というわけで、やはり天井棧敷が漂わせていた妖しげなたたずまいやスペクタクルな手法を求めると、この万有引力にたどりつく。

 今回は天井棧敷の世界的な代表作である『奴婢訓』を7年ぶりに再演。この作品はイギリスの作家ジョナサン・スウィフトが描いた召使の処世訓を装った諷刺文書を受け、寺山が戯曲化したもの。

 舞台は東北の寒村。物語は主人不在の邸で召使いたちがほんの束の間、順番に主人を演じるという形で展開する。テーマは「主人の不在」。後にこんな時代が来ることを予見して書いたわけではあるまいが、現代の日本を表しているかのようで、そんな意味でもちょっと興味深い再演だ。

【日時】2月12日(日)〜19日(日)(開演は12日17時、13・14・16・17日19時、15日14時、18日14時/19時、19日15時。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前) 【会場】シアタートラム(三軒茶屋) 【料金】全席指定 一般4200円/学生3800円(前売のみ、当日要学生証提示) 【問い合わせ】演劇実験室 万有引力(TEL:080-5008-8916=10〜18時 〔HP〕http://www.banyu-inryoku.net/) 【作・演出】寺山修司 【演出・音楽】J・A・シーザー 【出演】旺なつき、��田恵篤、伊野尾理枝、小林桂太、テツ、村田弘美、木下瑞穂、飛永聖、森ようこ、��橋優太、七生、賀来匡識、杉村誠子、米塚杏子、吉家智美、神田律音、岡庭秀之、森祐介、貞森裕児、岩瀬明日香、渡部みか、青森、神林和雄、曽田明宏、小見川千明、橋本有紗、前田文香、八木光太郎、谷藤遥、渡部剛己


ハイバイ『ある女』

2012.01.09 Vol.537
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写真・土谷朋子(citron works)

 主宰の岩井の実体験をもとに、家族を題材とした作品を通して、人と人との距離感や社会とのおりあいといった内面的に抱え込みやすい問題を、喜劇にくるんでさらっと提示するハイバイ。

 岩井は昨年はユースケ・サンタマリアが女役をやったことでも話題となった青山円劇カウンシルやドラマへの脚本提供など外部活動で大忙し。今回は2年ぶりとなる待望の劇団への新作書き下ろし。

 本作で取り上げるのは不倫をする女性。何人かの不倫をしている女性との会話のなかでヒントを得た岩井が、彼女たちの興味深い話を集めて一人の女性の話にしたという。岩井の言う「倫理的なコトって、誰もいないところ、いわゆる社会というものが存在しない場面では全く意味がながなくて、人生はそういう、ちゃんとした社会の中の時間と、ちゃんとしてない時間の狭間でウワーとなってるんじゃないか」といった切り口で、「社会」とはなにか?「大人」とはなにか?を笑いながら問い掛ける。

 東京公演では、主役の女性を岩井本人と菅原永二がWキャストで務める。どちらがいつ出演するかはHP参照。

【日時】1月18日(水)〜2月1日(水)(開演は平日19時、土14時/18時、日14時。25日(水)と31日(火)は14時の回、29日(日)は18時の回あり。1日(水)は18時開演。23・27日休演。開場は開演20分前。当日券は開演40分前) 【会場】こまばアゴラ劇場(駒場東大前) 【料金】整理番号付自由席 前半割引(22日まで)前売3000円、当日3300 円/通常料金 前売3200円、当日3500円 【問い合わせ】キナダ(TEL:080-6562-4520=10〜20時 〔劇団HP〕http://hi-bye.net/) 【作・演出】岩井秀人 【出演】上田遥、坂口辰平、永井若葉、平原テツ、吉田亮(以上ハイバイ)、小河原康二(青年団)、猪股俊明/菅原永二・岩井秀人(Wキャスト)


劇団鹿殺し『青春漂流記』

2011.12.19 Vol.535
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 もともと関西で旗揚げした劇団鹿殺し。東京に進出した当初は小規模な劇場での公演だった。しかしそのころから彼らのエネルギーは舞台からはみだし、早くから大きなステージで思う存分暴れまくる姿を期待されていた。

 その後、順調にスケールアップしてきた彼らは来年1月、紀伊國屋ホール初進出する。

 今回は神戸元町高架下に連なる寂れた商店街を舞台に、全国にPRするために結成され、一世を風靡したものの落ちぶれていったチャイドルグループの生きざまを通して、人生をうたいあげる「音楽劇」。オリジナルの音楽が激しいビートを刻むなか、実はしっかりとした厚みのある物語が展開される。

 最近は豪華な客演を迎える彼らだが、かといってビッグネームに寄りかかることなく、むしろいつの間にか自分たちのペースに乗せ、客演たちの意外な一面を引き出している。今回は劇団新感線の高田聖子、ナイロン100℃の廣川三憲らが出演。どんな姿を見せてくれるのかにも注目。

【日時】2012年1月19日(木)〜1月29日(日)(開演は平日19時、土日14時。28日(土)は19時の回あり。24日休演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前から受付開始) 【会場】紀伊國屋ホール(新宿) 【料金】全席指定 前売・当日共5000円/学生3500円(劇団鹿殺しHPのみ受付)/プレビュー公演(19・20日)4000円 【問い合わせ】オフィス鹿(TEL:03-6804-0064 〔HP〕http://shika564.com/) 【作】丸尾丸一郎 【演出】菜月チョビ 【出演】菜月チョビ、丸尾丸一郎、オレノグラフィティ、山岸門人、橘輝、傳田うに、円山チカ、坂本けこ美、山口加菜、水野伽奈子、鷺沼恵美子、浅野康之、峰ゆとり、近藤茶(以上、劇団鹿殺し)、富山恵理子/高田聖子(劇団☆新感線)、廣川三憲(NYLON100℃)、村木仁、谷山知宏(花組芝居)


舞台『8人の女たち』が上演中 23日には「WOWOWライブ」で生中継も

2011.12.12 Vol.534
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   各々が主演を張れるだけの人気と実力を備えた8人の女優が一堂に会した舞台『8人の女たち』が9日から銀座のル テアトル銀座で上演中だ。

  本作はフランスのヒッチコックといわれたロベール・トマが1961年に発表した作品。2002年には8人のフランス大女優の豪華絢爛な競演により映画化された。

 今回は浅野温子、荻野目慶子、加賀まりこ、大地真央、戸田恵子、マイコ、牧瀬里穂、南沢奈央の8人が競演。

   雪に閉ざされた大邸宅にクリスマスを祝うために家族が集まるのだが、その朝、一家の主人がナイフで背中を刺された姿で発見される。外から侵入した形跡はなく、犯人はこの8人の中に…。おまけに雪で外部との連絡も絶たれてしまい、8人はお互いに疑心暗鬼にとらわれていく。

ミステリー仕立てのストーリーにエレガントな女優たちが華を添える。

東京公演は25日まで。年が明けると大阪と名古屋で公演がある。

なお23日午後5時30分からは「WOWOWライブ」で生中継される。

チェルフィッチュ『三月の5日間』

2011.12.12 Vol.534
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 2004年に初演され、2005年には第49回岸田戯曲賞を受賞した代表作が待望の再演。

 これまでの劇構造覆す革新的な試みで日本の演劇シーンに衝撃を与えたこの作品は、初演以降、13カ国27都市で上演され、今回の公演中に100回目を迎える。

 物語は2003年のイラク戦争開戦時に六本木のライブハウスで出会った男女が、そのまま渋谷のラブホテルに行き、そこで5日間を過ごすというもの。登場する7人の俳優たちの台詞は物語の当事者としてのものではなく、聞いた話を観客に説明するというスタイルで発せられる。いわゆる“代話”。

 事件らしい事件は何も起こらないこの作品で、作・演出の岡田は「現実的な表現」への真摯な模索を試みた。そして「戦争」という巨大な出来事と些末といえるリアルな日常を巧妙に対比させ、日本の若者たちの抱く、とらえどころのない現実感を構造化した。

 初演から7年経って、世界も若者もずいぶんと変わった。ずっと見続けている人、初めての人とさまざまなとらえ方が出てくるだろう。

 17・18日は韓国語と英語の字幕付き。

【日時】12月16日(金)〜23日(金・祝)(開演は平日19時30分、土日14時/18時。月曜休演。※千秋楽は13時/17時開演。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前) 【会場】KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ(日本大通り) 【料金】全席自由 入場整理番号付き 前売一般3500円/当日一般4000円 【問い合わせ】KAAT神奈川芸術劇場(TEL:045-633-6500 〔HP〕http://www.kaat.jp/) 【作・演出】岡田利規 【出演】山縣太一、松村翔子、武田力、青柳いづみ、渕野修平、鷲尾英彰、太田信吾


クロムモリブデン『節電ボーダートルネード』

2011.12.12 Vol.534
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 3・11の東日本大震災の直後に上演された前作は、あたりまえだが震災とは無関係の内容だった。ゆえに公演中から作・演出の青木秀樹は現実とフィクションとのギャップに悩み、戸惑ったという。そして、次回公演では震災をテーマとした作品を作ろうと思った。しかし不謹慎なストーリーばかりが浮かんでは消える毎日。なぜそんなストーリーばかり…と悩みながらも、あえてそういう作品を作ることが災害に対する自分なりの素直なリアクションと確信。出来上がったのがこの作品だ。

 舞台は大きな竜巻に襲われた町。破壊された町では多くの噂が流れ、秩序は乱れ、流言が飛び交う。警察官の雪村のもとへはさまざまな人々がやってくるのだが、彼らの証言はみないちいちおかしかった。

 今までも列車脱線事故や拉致事件など重いテーマを深刻なまま扱うのではなく、エンターテインメントに昇華することで、違った角度から現代社会を切り取り、提示してきた。今回も不謹慎ギリギリ。しかし彼らにしかできないカタルシスを生む応援歌のような作品になっている。

【日時】12月20日(木)〜30日(日)  (開演は20・21・26・27・29日19時30分、22日20時、23日14時/19時、24日14時/18時、25日14時、28日15時/20時、30日13時/17時。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前) 【会場】赤坂RED/THEATER(赤坂見附) 【料金】全席指定 一般:前売3500円、当日3800円/学生:前売2500円、当日2800円 【問い合わせ】office crome(TEL:03-5310-1738 〔HP〕http://crome.jp/) 【作・演出】青木秀樹 【出演】森下亮、金沢涼恵、板倉チヒロ、奥田ワレタ、久保貫太郎、渡邉とかげ、幸田尚子、小林義典、武子太郎、花戸祐介/七味まゆ味(柿喰う客)


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