主演舞台『オーデュボンの祈り』が30日に幕開け
吉沢悠が大活躍だ。主演舞台『オーデュボンの祈り』が30日に世田谷パブリックシアターで初日を迎え、10月からスタートする話題のドラマ『南極大陸』にも出演。舞台に映像に、日々役者魂を刺激されているという。「この秋は、そして今年は自分にとって特別な年になると思う」と本人は目を輝かせる。
撮影・宮上晃一
「初めてご一緒させていただく方も多いんですけど、みなさん演劇を愛されている方ばかりで、どうしたらおもしろくなるかって建設的な話ができるメンバーなんです。頼もしくて心強い仲間が多いので、リラックスして現場にいられます」
現在、30日にスタートする主演舞台『オーデュボンの祈り』の稽古中。3年ぶりの舞台に向けて、演じることはもちろん共演者やスタッフとの関わりのなかで、さまざまな刺激を受ける「感動の毎日」を送っているという。
舞台は、人気作家の伊坂幸太郎による同名の小説が原作。エンターテインメントな舞台に関心を持っていたという吉沢にとってうれしい出会いだった。
「伊坂さんの作品はいろいろ読ませていただいています。個人的な話になるんですが、『ゴールデンスランバー』の映画化の話を聞いたとき、すごくやりたかったんです! 映画を見たら、やっぱり堺(雅人)さんでぴったりだったな、と思いましたけど(笑)。その時は縁がありませんでしたが、今こうして伊坂さんの作品に出会えたことがうれしいです」
吉沢が演じるのは伊藤という男。IT関連の仕事を突然辞めてコンビニ強盗、気づいたら不思議な島・荻島に連れて来られてしまう。島は長く鎖国状態にあって、不思議な人たちが暮らす。ファンタジックなのだが、言葉や作品の世界観がリアルに心に響く。
「伊坂さんの作家としての初期に生まれた作品だと思うので、ちょっと自分を投影しているところもあるのかな、伊坂さんの頭の中の話なのかな、なんて、みんなで話しています。不思議な世界観もあって難解な部分もあると思うんですが、世の中に出て悩んだり、壁にぶつかったときに誰もが感じることでもあるし、受け入れやすい作品だと思います」
面白くしたい。その一念で、キャスト・スタッフが一丸となり、稽古に取り組む。もちろん吉沢自身もだ。ただ、主演であることや伊坂作品への挑戦というところで不安もある。
「すでにたくさんのファンがいる作品ですけど、この世界観を知らない人も楽しめるものではなくてはならないと思います。だから今は、生身の人間による演劇という形で、この世界観をちゃんと成立させるための作業をしている段階ですが……難解です(笑)。僕だけではなくて、演出家のラサール石井さんも、脚本の和田憲明さんもすごく悩まれているみたいで、『難しいなあ』って声が稽古場でもよく聞こえてきます。台本もどんどん変わってよくなってきていますし(笑)。そうやって話し合いながら作り上げていくのが舞台の楽しさでもありますね」
演劇を愛し、作品を愛する人たちとの共同作業を楽しみながら、新たな発見をする。「映像でも舞台でも一生懸命取り組む気持ちは変わらないけれど、舞台ってやっぱり、僕には挑戦の場ですから」。この作品を経て、吉沢はまた新たな一歩を踏み出しそうだ。
舞台は、東京を皮切りに、北海道、大阪、宮城と地方を巡る。それと並行して、南極越冬隊員を演じたTBS系ドラマ「日曜劇場『南極大陸』」(日曜夜9時、10月16日スタート)も始まる。
「最近のドラマでは珍しい男くさいドラマになりました。越冬隊員という役どころもあって自然と結束が強くなって、主演の木村拓哉さんを始め、自分のシーンが終わっても、みんな控室に帰らない(笑)。食事も一緒だったんで、本当にずっと一緒でしたよ。そういう現場にいられたことが幸せですね。それに加えて、香川照之さんや堺雅人さんとも共演できたのも大きかった。現場では先輩ばかりだったから、『俺も、そういうことあったよ!』なんてアドバイスをもらったりして、またまた刺激的な現場でしたね」
現場に恵まれ、刺激のシャワーを浴びながら自分にますます磨きをかける。「この秋、もっと言うと、堤真一さんと共演した『孤高のメス』あたりから、この1年は自分にとって特別な年になると思ってるんです」。吉沢悠の胸は今、期待でパンパンだ。
(本紙・酒井紫野)
『オーデュボンの祈り』【日時】9月30日(金)〜10月12日(水)開演は月火木金19時、水14時、土13時/18時、日祝13時。10月4日(火)は休演 【会場】世田谷パブリックシアター(三軒茶屋) 【料金】前売りS席6800円、A席3800円(税込・全席指定)※当日券は開演の1時間前より劇場受付にて発売 【予約・問い合わせ】石井光三オフィス 03-5428-8736(平日12〜19時) |