作・演出の桑原裕子は緻密に練られたプロットと台詞で重層的な作品を描く。かといって出来事としてのドラマに傾倒はしない。登場人物の内面を丁寧に描くことによって見る者にドラマを感じさせてくれる。
2014年に上演されたこの作品で桑原は「第18回鶴屋南北戯曲賞」を受賞し「第59回岸田國士戯曲賞」の最終候補となった。新たな代表作。待望の再演だ。
物語はある嵐の夜に起こった中年男の自殺未遂と幼い少年のひき逃げ事件が発端となる。少年は川に落ち、行方不明に。その2つの事件を目撃したバーテンダーの男は直後の落雷で目を負傷する。それから10年の時が経つ。ガンを患い余命を悟った少年の母は、最後の捜索を始める。協力を申し出た男はその模様をドキュメンタリーとして撮影しようとし、彼女を心配する元義妹も無理やり同行を申し出る。母はその過程でさまざまな者たちに出会う。そのなかにはもちろん目撃者も。一見関わりのないように見える人々の人生が交差したとき、10年前に起きた2つの事件の真相があぶり出される。
「罪」とか「秘密」とか、そして「真実」とか。日常ではあまり気に留めないさまざまな単語が頭の中をぐるぐるめぐりそうな作品。