落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。
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ダイノジ 大谷ノブ彦 カタリマス!(裏)第3回 サッカーってライフ!
W杯、盛り上がってますね。もちろん、僕も楽しんでいます。対コートジボワール戦は、浅草のホテルで息子と一緒に観戦。選手もそうですが、ザッケローニ監督も初めてのW杯で緊張してしまったのか策もブレてしまった。改めて、W杯って特別なんだなって感じました。
初戦敗退でいろんな論調でザックジャパンが語られましたが、『キキマス!』は全肯定、そしてポジティブにお伝えしました。特に16日は、キキマスター(曜日レギュラー)の松木安太郎さんと一緒に特にポジティブに。松木さんも何度も口にしていましたが、こういう時に大切なのが“ポジティブ”。ああだった、こうだったって敗戦の理由を分析するよりも、ポジティブに見る、考える、感じる、そして動ける環境を作っていくことの方が大事。ネガティブに行くのはいくらでもできますからね。
観戦していて改めて思うのが、すごいサッカーチームっていうのは、技術の高い選手が1人、2人いるからすごいんじゃなくて、スター選手を機能させることができるチームなんだってこと。劣性であっても、そこからポジティブな空気を作り出せる人、そういう環境があると、ある瞬間からがらりと変わる。試合が動いて、空気も支配するようになるですよね。
そんなことを考えていたら、サッカーがすごく実生活に即したスポーツだなって思いました。人と対する仕事をしていると、そんなふうにガラッと変わる瞬間に出会うことが多々あるんです。夫婦間でもネガティブな空気に支配されるときがありますよね、夫婦げんかとか。その空気を推進しようって思えばいくらでも推進できるんですが、そこで脇をくすぐったりとか、ちょっと道化をしたりすることで、空気が変わる瞬間が訪れる。お互いが機能するチームになっていくんです。
サッカーってライフ!ですよ。こんなたくさんの人が夢中になってサッカーを見ているのにも納得します。
話を戻すと、自分がこんなに楽しんでサッカーを見ていることにびっくりしています。この間、別の現場でW杯の話題になったとき言われたんですよ、「そんなにサッカー好きでしたっけ?」って。これも、『キキマス!』、その前に担当した『Good Job ニッポン』で、サッカーの知識のある人と話すチャンスをもらえたからです。海外組の選手名を眺めていただけだったのに、今は自分なりの楽しみ方も見つけちゃってます。
さあ、つぎはギリシャ戦。みなさん、ポジティブに行きましょう!
ダイノジ 大谷ノブ彦 カタリマス!(裏)第2回 ”楽しいことをやることで抵抗したい”誕生日
42歳になりました。
誕生日は6月8日。今年もイベントをやって過ごしました。イベントは、ここ10年ぐらい毎年やっていて、バンドを集めてロックイベントをしたり、DJしたり、漫才ライブだったりいろいろです。 なぜこんなイベントをやってるかというと、もちろん楽しいっていうのもある、でも本当は腹が立ってるからなんです。
この日は、2つの凶悪な事件*が起きた日。テレビをつければその話題になったりして、むかつくし、腹が立つ。子供が巻き込まれる事件は特にです。ただ、それに対して怒りをぶつけるんじゃなく、楽しいことをやることで抵抗したい。許しがたい、あってはいけない事件や事故、そして悲劇に対して、人が抵抗できるのは逆のイデオロギーで振り切ることだと思うんです。
なぜそう考えるようになったかというと、沖縄へ営業に行ったことがきっかけです。エアギターをみんなでやろうという参加型のネタだったんだけど、あんまり反応が良くなくて。スベったなあなんて思いながら帰ろうとしたら、お客さんが「良かった!」「面白かった!」って寄ってくるの。シャイな人ばかりが集まっちゃったのかなってスタッフに聞いたら、「沖縄の人はもともとすごくシャイなんですよ」って。楽しくお酒を飲んで歌って踊ってっていうのが、僕が持っていた沖縄の人たちのイメージでした。でもそれって「そうじゃないからこそ、意識してやってるんだ」って。それ聞いたら、なんかジーンとしちゃってね……。そうじゃないからこそ自分たちから乗ってく、能動的にやっていく——。シャイだからこそ見つけたやり方というか、生きていくための知恵のひとつだったんだって。
つらくて悲しいとき、言葉を掛け合ったり、励まし合ったりしていくのも人の強さだし権利だと思う。それに加えて、周りを巻き込んで楽しい空気にしていくこともまた、人間に与えられた権利であり、武器なんじゃないかなって思うんです。僕は毎年3月11日に漫才イベントをやっているんだけど、これも笑い飛ばせっていうのじゃなくて、人は意図的にそうなろうとしたらなれるって、信じてるから。楽しいことをやることで抵抗したいんです。理不尽な不幸に対して。
そんな思いでイベントをした42歳の誕生日、息子が部屋に誕生日祝いのデコレーションをしてくれました。こんなふうに祝ってもらったことがなかったから、うれしかったなあ。その前日、一緒に銭湯に行っていろんなことを話したんだけど、「誰かを喜ばせる」ってことって大事だって思ってくれたのかもしれない。自分がどんな父親でありたいかなんてよく分からないし、思ってもそうなれないのも分かってます。ですけど、こういうことが一つひとつ重なっていったらいいんじゃないかなって思ってますね。
今週の「キキマス!」では、ゲストのみなさんにお父さまとのエピソードや心に残った言葉などを伺っています。今日11日はマラソンの高橋尚子さんと瀬古利彦さん、12日には島田洋七師匠も来てくれます。いつか僕もそんなふうに思ってもらえるのかなあ……。「父と子の感動ストーリー」、ぜひお聞きください。
*附属池田小事件、秋葉原通り魔事件
DANCEの道 第22回 なぜDANCEシューズというカテゴリーが無いんだろ?という想いから……
adidasの世界初となるダンスパフォーマンスシューズ『DP.01』が6月20日に全国発売となります。このシューズは、僕が2011年から個人的に始めさせていただいた『EXILEパフォーマンス研究所』、略してE.P.Iという活動の中で生まれました。E.P.IではDANCEを科学的に研究したり、いろんなスペシャリストの方々とお話をさせていただき、そこで得た経験や知識をEXILEや後輩たちのパフォーマンス力の向上に役立てるというのが目的なのですが、遂に『adidas x E.P.I』というコラボレーションで、構想から発売まで約2年の歳月をかけ、たくさんの熱い想いが詰まった靴を形にすることができました。
きっかけは、いろいろなスポーツを観させていただいたり、選手たちと接するなかで、バスケットボールシューズやサッカーシューズのように、なぜストリートDANCEというカテゴリーのシューズがあまりないんだろうと疑問が湧いたことです。そう思った僕はadidasジャパンの皆さんと一緒にドイツに行きました。なぜかというと、adidas本社の方たちに、自分の想いと自分の考えるストリートのDANCEシューズのあるべき形を伝えに行かせていただくためでした。
ドイツのヘルツォという場所にあるadidas本社はadidas村と言っても過言ではないくらいに広大で自然に囲まれた場所にあり、創始者アディダスラーさんの銅像がある敷地内のグラウンドには、休み時間の社員さんたちがワークアウトしに来ていて、スポーツブランドならではの健康的な雰囲気にあふれていました。本社の建物に入ると開放的な吹き抜けと3本線が僕を迎えてくれました。
本社の方々は日本からアスリート契約をしたアーティストが来ると聞いて、ウェルカムな対応で会議室に案内してくれて早速僕の話に耳を傾けてくれました。まずストリートダンサーの僕たちがどんな靴を履いているかをメモしながら、最高のパフォーマンスに必要な条件をインプットし始めました。英語が得意ではない僕は通訳していただきながら、EXILEがどんなDANCEをしていて、どんなシューズを求めているのかと細かい所までくまなく詰めていきます。つま先の固さ、ソールのグリップ性、軽さ、デザイン、3時間のパフォーマンスに耐えきれる耐久性など、今まで自分がEXILEとしての経験で感じたシューズへ求める機能やデザイン感を遠慮なく提案させていただきました。初めてのプレゼンに緊張や言葉の壁はありましたが、adidasさんの契約アスリートを大切にする姿勢と歴史あるシューズづくりに対する真剣な想いで『DP. 01』の開発はスタートしたんです。
日本に帰ってきてからも、デザインや機能性を何度も話し合いを繰り返し、約2年の月日を経て形となり、発売決定に至りました。完成品が手元に届いた時はまるで自分の子供のように愛おしく感じましたし、達成感からの感動は本当に大きかったです。
DANCEはもちろんですが、さまざまなパフォーマンスを長く楽しんでいただけるよう、心から願いを込めたシューズです。良かったら試してみてください。
ノッポン弟オススメ! from TOKYO TOWER vol.3
毎年人気の『天の川イルミネーション』がとうとうスタートしたよ!
1日に行われた点灯式には、東京タワー観光大使の金ケ江悦子さんと、シンガーソングライターの森恵さんが来てくれました。もちろん僕も参加したよ!
3人で点灯スイッチを押した瞬間、展望台の中が青い光に包まれて、まるで天の川に浮かんでいるような気持ちになっちゃった。約2万7000個の青色LED電球の光が窓ガラスに反射して、フロア全体に青い星屑がちりばめられているみたいなんだよ。天井には織姫や彦星、天の川が輝いていて、流れ星の演出もあるんだ。点灯の瞬間、大展望台にいたお客さんからも大きな歓声が上がっていたなあ。この日は森さんがすばらしい歌声を披露してくれてさらにロマンチックな気分になったよ。
しかも今年は『天の川イルミネーション』10回目を記念して、今年初めて東京タワー名物の外階段にもイルミネーションが登場したんだ! 約600段の手すり部分におよそ2万5000個のLED電球が飾られていて、星屑の中を上っていく気分が味わえるんだよ。期間中は外階段開放の時間が夜間延長になるので、オレンジ色に輝く東京タワーのライトアップや東京の夜景と一緒に、特別なイルミネーションを楽しんでね。
そうそう、金ケ江さんと森さんと僕で、それぞれ短冊に願い事も書いたよ。僕の短冊は、お兄ちゃんにちょっと落書きされちゃったけどね。
今日も食べ過ぎ東京グルメ探偵 上越 やすだ(恵比寿)
おいしいものがあると聞けば、調査に行かずにはいられない「東京グルメ探偵」。メタボを気にしつつも食べ過ぎてしまうのがたまにキズ。さて、今日のタレコミは…?
小池百合子のMOTTAINAI クールビズ・山の日 ライフスタイルは自分で選択
関東地方もいよいよ梅雨入り。
6月1日には、群馬県館林市で36.3℃を記録し、早々に猛暑日の到来です。また、北京で40℃以上を記録した中国の熱波の影響で、北海道で真夏日が続くなど、予想できない動きが出ています。
では、今年の夏はいったいどうなるのでしょうか。消費税率アップ後だけに、気温が影響する景気動向も気になるところです。
様々な観測を総合すれば、今年は5年ぶりにエルニーニョ現象の発生が予想されています。
エルニーニョは、東太平洋の赤道周辺で海面水温が上昇する現象のこと。西太平洋では、逆に水温が低下することから、今年の日本は梅雨が長引き、冷夏となる予測もあります。
高知県四万十市で史上最高の41.0℃を観測するなど、うだるような猛暑となった昨年のことを考えると、冷夏は歓迎したいところです。88歳だった母も、体調を崩し、死期を早めましたし…。
今年は、私が環境大臣として始めた「クールビズ」導入から10年。先日も、東京で開かれた国際会議の会場で、多くのビジネスマンから、「小池さん、ありがとね」と声をかけられました。10年が経過し、誰が始めたかも忘れられるほど定着している中で覚えてくださっている方もおられるのか、と感激。
ただ、5月1日からの「クールビズ」、6月1日からのアロハもOKとする「スーパークールビズ」の仕分けはワタクシ的には、いまだにしっくりきません。
そもそも意識改革を起こし、一人ひとりのライフスタイルを見直しつつ、気候変動への配慮を呼び起こすことが、当初の目論見でした。「政府が個人の服装にまで口を出すのは気色悪い」と批判もありましたが、そうでもしなければ、地球温暖化対策が進まないことから始めた一種のショック療法です。
これまでの社会的呪縛から逃れ、暑ければ「クールビズ」「スーパークールビズ」にすればよいのであって、日にちを決めて、それに「従う」ではまだまだ呪縛からは解き放たれていないようです。
先日、2016年から、毎年「山の日」として国民の祝日とする法律が成立しました。「海の日」があるなら、「山の日」があってもよいだろうと、関係者が運動した結果だとか。法律の賛否を問う衆議院の本会議場を、実は私はそっと抜けだしました。
次は「陸の日」でしょうか。
そもそも日本の祝日は多すぎます。7月20日を「海の日」とする際も、違和感を覚えた私です。もっと自由に休む時は休んで、有給休暇もしっかり取って、自らのスキルアップに使うなり、家族との時間を活かしたりする。みんなでへとへとになるまで働いて、みんなで一斉に休んで、みんなで交通渋滞に巻き込まれ、さらにへとへとになる。
もういいじゃないですか。
一人ひとりが自信をもって、自らの選択で生きてほしい。そう願っています。
(衆議院議員/自民党広報本部長)
江戸瓦版的落語案内 Rakugo guidance of TOKYOHEADLINE 「ネタあらすじ編」
落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。
ダイノジ 大谷ノブ彦 カタリマス!(裏)
第1回 ネガティブなことばっかりいってないで、楽しくやろうよ!
先日、久しぶりに呼んでもらった『ゴッドタン』が放送されて、ここ数日、いくところいくところで“ラジオスター”って呼ばれてます……。2日の放送は『ゴッドタン』放送後初の放送だったんですが、あの番組を見て、聞いてくれた人もいたかもしれなかったと思うと、“ラジオスター”っていうのを、ちゃんと“引き受け”てやるべきだったと、少し反省しています。もっと、アツくやらないと。注目してもらったのはうれしいけど、『キキマス!』そのものが浮かれないように引き締めてやっていきたいです。
さて、先週の話になりますが、『TOKYO HEADLINE』の一木広治社長に番組に来ていただきました。一木社長、映画『バブルへGO!』に出てくるキャラクターのモデルにもなっている方なんですけれども、今も漂ってましたね、バブルの空気。あの突き抜けた感!ネガティブなことばっかりいってないで、楽しくやろうよ!っていう。僕は、それって今、一番大事だと思ってるんです。
それで思い出したのが、いま注目を集めている音楽クリエイター、tofubeatsの言葉です。ももクロをはじめたくさんのアーティストのリミックスを手掛けたり、楽曲を提供したり、オリジナル曲も発表しています。以前、彼と話した時、音楽で何をしたいかって聞いたら「景気を良くしたい」って言ってましたね。
彼の作品に『水星』という曲があります。この曲の元ネタになっているのが、今田耕司さんとテイトウワさんのユニット、KOJI1200の『ブロウヤマインド』です。KOJI1200が活動していたのは90年代中盤から後半。バブルは崩壊してたけど、音楽業界は景気がよかった。ミリオンヒットが頻発してCDの販売枚数も上り調子で、業界全体が潤っていたんです。KOJI1200もそういうムードのなかで生まれてきたユニットです。お金が余って、予算が余って、そこから零れ落ちたものから生まれたもの、カルチャーって芳醇なんですよね。それ自体が時代のパワーになって発展して、時代も超えちゃう。tofubeatsくんがカバーしちゃうんです。
今は、深刻ぶることが重要視されすぎる時代になってきちゃって、深刻さがあふれすぎちゃっています。とにかく陽気に行こうよ、派手に行こうよ、そういう感覚、取り戻したいですよね。だから僕も、「景気を良くしたい」って思いながら、ラジオを含め、いろいろやっています。
とはいえ、バブル期の雰囲気なんて知らないだとか、そんなこといっても景気も良くないし、楽しくやろうよ!なんて思えないって人もいると思います。だけど、例えば、ディズニーリゾートのファンタジー感だとか、ファレル・ウィリアムスの『ハッピー』で世界中が踊ってる感じだとか、そういうのは感覚的に受け入れられるでしょう。ちょっとだけ無理して、楽しいことを一個足す、それを重ねてくってことなんじゃないかな。学校でも会社でも、家庭のなかでも。そこからきっと、芳醇なものが生まれてくると思います。
さて、9日からラジオはスペシャルウイーク。『キキマス!』では、「父と子の感動ストーリー」大特集として、ウエイトリフティングの三宅宏実選手と父でありコーチも務める義行さん、女子マラソン金メダリストの高橋尚子さん、マラソン界の第一人者、瀬古利彦さんなどなど、ゲストをお招きしてお話をキキマス! 日々、“デス馬券”と罵声を浴びせられている僕ですが、いろんなお話を伺いながら、楽しさを見つけていきたいです。
All the Best!! EXPG Report vol.14 久しぶりのEXPGでのレッスンで初心に帰る
今日のALL THE BESTはEXPG福岡校に行って来ました!!
久しぶりのEXPGでのレッスンだったため、すごく楽しみにしていました!! 福岡校のみんなはすごくシャイで最初は緊張気味でしたが、レッスン後半には元気な笑顔で頑張って僕のレッスンに集中してついて来てくれたのでうれしかったです!! レッスン内容は新曲の『R.Y.U.S.E.I.』で、アップテンポ+振り付けも難しいため、ゆっくり丁寧にレクチャー!! レッスン後にはみんなと話したり質問を受けたりして和気あいあいしてました!! みんなフレッシュでキラキラしてたのでこのままの気持ちで頑張ってほしいです!!!!
ダンス始めたてのころの自分を思い出し、初心に帰ることができ、みんなからたくさんのパワーもらいました!!
もらったパワーを、6月13日から始まる“THE SURVIVAL”に向けてぶつけていきたいです!! 最高の10DAYSになるようにみんなで力合わせてリハーサルしているのでお時間ある方はぜひ遊びに来てください!!新しいエンターテインメントが待っています。
鈴木寛の「2020年への篤行録」 第8回 W杯の裏にある人々の思い
この3月からサッカー協会の理事に就任しました。去る5月12日、サッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会の日本代表メンバーが発表されました。かつて三浦知良選手や中村俊輔選手の落選が劇的に報道されたことがありましたが、毎度のことながら、選ばれた選手、選ばれなかった選手の明暗を分けてしまいます。
今回も、しばらく代表から遠ざかっていた大久保嘉人選手がサプライズ選出。昨年亡くなられたお父様の命日という奇遇も重なり、感動的に報じられました。大久保選手は前回のW杯に出場後、モチベーションが上がらず次第に代表の試合で出番が無くなっていきましたが、「もう一度、代表になれ」というお父様の遺志に奮起し、昨年は初の得点王を獲得。実力で代表復帰の機会をつかみ取りました。
一方で、川崎フロンターレの同僚である中村憲剛選手は2大会連続での代表入りは果たせませんでした。中村選手は悔しさの余り、ブログで「本当に一瞬、一瞬ですがどうでもよくなりました。ACLもリーグ戦も何もかも」と本音を漏らしていました。文字通り全身全霊をかけて目指した夢を絶たれた喪失感。私たちの想像を遥かに超えるものです。ただ、中村選手は「ボールがあれば、サッカーがあれば俺は前を向いていける」「今まで辿ってきた道は間違っていなかったと思うし、今までやってきたことに悔いは一切ない」とも綴っていて、予備登録メンバーとして準備をしっかり行う意向を示しました。私はこれを読んだとき、「ああ、本当のプロはこういう人のことなんだな」と心から尊敬しました。
今の若い人は、日本サッカーがW杯に出るのが当たり前のように感じているようですが、たかだかこの十数年のことに過ぎません。1993年にJリーグが始まる前の日本リーグの時代は、天皇杯の決勝等を除くと観客席はガラガラ。芝が張り巡らされた競技場も少なく、トップ選手が泥まみれになってボールを追いかけていました。先人たちが築き上げてきた歴史があっての今日だということを忘れてはなりません。
私の友人である藤田俊哉さんは、Jリーグのミッドフィルダーとして初の通算100得点を挙げる等、ずば抜けた活躍をされましたが、W杯出場はなりませんでした。しかし、彼のような名選手たちが切磋琢磨していたからこそ日本サッカーの層が厚くなり、競技力がアジアでトップクラスにいられるのです。現在、藤田さんはオランダに指導者留学をされていますが、新たな夢を追いかけられています。
以前、どこかの新聞で読んだ記憶なのですが、93年のJリーグの開幕戦「ヴェルディ川崎VS横浜マリノス」に出場した北澤豪さんは、「ピッチに立てなかった人たちの思いも背負って試合に臨んだ」という趣旨の話をされていました。これは今回のW杯の代表選手たちも同じ思いをお持ちだと思います。応援する私たちも、W杯の華やかな舞台の裏で、サッカー界の発展に尽くされてきた方々にも思いを巡らしていきたいものです。
(東大・慶大教授、日本サッカー協会理事、元文部科学副大臣、前参議院議員)