エネルギー政策のリアリズム〈その2〉
この夏の電力不足は、企業や家庭の努力の結果、最大1000万キロワットという節電により回避された。しかし、早くも冬の電力需給が心配されている。昨冬のピーク需要は、2月14日に記録した5150万キロワット。原発の再稼働がなければ、安定供給に必要な供給力を確保するのは難しく、「何らかの需要制限が必要になるかもしれない」(電力業界関係者)情勢だ。また、原発の代役である火力発電の燃料費がかさんでおり、発電コストは3兆円以上増加。産業全体で年間7兆7000億円の新たな負担が発生する見通しである。このままでは円高や高い法人税などに苦しむ企業に対して、世界的に高い電気料金が更に値上がりし、産業空洞化に拍車をかける恐れがある。よって、短期的には、フクシマの教訓を網羅した日本版ストレステストを実施して、クリアした安全な原発を再稼働するしかない。しかし、地震大国・日本に原発を立地することの危険性の高さを考慮すると、中長期的には「脱・原発依存」であることは間違いない。では、「脱・原発依存」をリアリズムに基づき進めるための処方箋はどのようなものだろうか。
まず実施すべきことは総電力量の50%を原子力で賄おうとした現行のエネルギー計画を大胆に転換する政治決断だ。現行計画では、2020年の発電電力量に占める再生可能エネルギー目標がたった5.8%なのだが、独35%、英30%に比べても、お話にならない低さだ。再生可能エネルギーは、CO2の問題もあるが、エネルギー安全保障の観点から極めて重要だ。なぜなら再生可能エネルギーは、基本的に自給自足型で純国産エネルギーだからだ。すなわち、現在ある54基の原発すべてが廃炉になるまでの40年の間に、日本の国情に合った再生可能エネルギー(実は、日本の気候、地質条件からいうと、太陽光ではなく地熱、洋上風力、中小水力が有力だ)や、日本近海に膨大な埋蔵量のあるメタンハイドレードによる火力を猛烈に推進して行くのだ。このベストミックスが実現すれば、我が国のエネルギー供給はほぼ国産で賄えることになり、海外の化石燃料に依存する現在とは国家安全保障上まったく異なったポジションを獲得できるようになる。
次に実施すべきことは発送電分離による完全なる電力自由化だ。今日の10電力による地域独占・垂直統合システムを改め、成功している北欧のノルドプール(多国間共通電力市場)を参考に、発送電の分離によって全国の送電系統網の拡張を図り、発電自由化を促進し、値上がりの可能性が高い電気料金を押しとどめる(将来的には押し下げる)ことが必要不可欠である。
エネルギー政策は日本経済の基盤であり、安全保障の要諦である。したがって、リアリズムに基づく緻密な議論を行った上で、果敢な実行が必要不可欠である。
(民主党衆議院議員・長島昭久)