このTOKYO HEADLINEでのコラムは2015年6月に始まったので、なんと今月で7年目に突入ということになる。体感として、さすがに2~3年よりは長くやってきたような気もするけど、まあ4~5年くらいかなと思っていたので、思ったよりも長かった。自分、よく頑張ってる。
と言っても連載の最初の頃は「脱・こじらせへの道」というタイトルで、当時担当していた女性向け動画サイトGIRL’S CH( http://girls-ch.jp/ )の中でとったユーザーの皆様へのアンケートをもとに、編集部の方にご協力いただいて記事を作成していた。その後はアンケートの内容だけでなく、女性向けアダルトのことや性のことで、自分が感じたこと考えたことなどを、自分の言葉で幅広く書かせていただいていている。いつも好きなように書かせてくれるTOKYO HEADLINEの編集部の皆様には感謝だ。
2015年当時どんな記事を書いていたっけな……と当時の記事を見てみると、意外にも今よりエロやAVに直結した題材が多く、「イク・イカないにとらわれるべきではない」とか「女性同士でエロの話どこまでできる?」なんていう話題も。出会い系サイトをテーマにした回では、「男は課金でチャンスを買っていたが、女の場合は課金で安全を買う」とも言ってて、自分の意見の根本や運営しているサービスの基礎ってあんまり変わっていないなとも思った。
少し横道にそれるが、女性向けアダルトの歴史を振り返ると、SODグループとしては2006年にananのSEX特集のDVD監修を行っており、2008年にSILK LABOという女性向けAVメーカーを立ち上げた。私が女性向けアダルトに関わり始めたのはそのもっとあとで、2013年GIRL’S CHの立ち上げの時から。
女性向けに関わる前は男性向けAVの売上予測や分析などを行う部署におり、上司から声をかけられて女性向けに異動したのがきっかけ。だからもともと「女性の性を解放しよう!」というような強い意志があったわけではない。自分はこういうところが視野が狭いのだが、AVは見たいと思ったら見るし、だから自分自身は困ってないし、見ていない人は見たくない人なのだろうという考えで、特に女性向けのアダルトを広げていきたいと思って入社したわけではなかったのだ。
自分自身は困ってないしという考え方は、先日フェムテックについての記事( https://www.tokyoheadline.com/546337/ )を書いたときにも触れたが、悩みや問題が潜んでいる可能性をつぶしてしまう、危険な考え方だ。我々は可視化されることで、そこに悩みがあること、問題があることに気付くことができる。たとえば生理の悩みも、様々なアイテムで快適に過ごせることを知らなければ、それまで我慢してきたことはわからない。性欲もアダルトビデオなどを通して意識することで、「自分に性欲があるかどうか」について考えることができるはずだ。
このように可視化することはとても重要で、私たちの会社が女性向けのAVや風俗など様々なサービスを提案していくことは、女性の欲求や潜在的な要望を可視化するひとつのツールになり得ると思うのだ。
連載を始めた頃と大きく違うのは、SNSなどで性について発信している女性が非常に増えたということ。
AVを紹介する人、グッズを紹介する人、カップル向けのサービスを作る人、性教育を広めようとする人、性の悩みや性被害の救済に取り組む人、など挙げればきりがない。私のように企業でそういった取り組みをしている女性もいれば、個人で発信するパワフルな女性も多い。また、直接的なアダルトではないが、テレビドラマを通して性をカジュアルにしていきたいとチャレンジングな作品を作り続けている女性もいる。
そして何より、大々的に発信はせずとも、日々のツイートで少しずつ意見を言う女性はもっともっと多くなった。女性が自分の性について考えることは当たり前だし、性や性教育のことで悩みを持っていること、もっと知りたいと思っていることが、SNSを通して可視化されたと言える。
取材を受けたときによく言っていたことだが、GIRL’S CHが成長を遂げた理由のひとつがスマートフォンの普及だ。それまでは家のテレビやパソコンで見るしかなかったAVが、誰でももっているスマートフォンで、誰にも知られずこっそり視聴することができるようになった。それに伴い、女性は家族を含むまわりの人の目を気にせず、AVを楽しむことができるようになり、多くの女性たちにサイトを利用していただくことができた。
私たちはスマートフォンとSNSで、「女性が性のことを大っぴらに語ったり楽しむべきではない」という偏見をかいくぐって、アダルトのエンターテインメントを楽しみ、可視化された悩みや問題を認識し、同じように問題を抱えている女性同士で連帯することができるようになった。
この10年ばかりの女性の性の歴史は、まさにスマートフォンとともにあると言っても過言ではないだろう。
一方で、この間女友達と会ったときにこんな会話があった。
「まだ周りの男の人は、女性に性欲がないって思ってるよ」
「ありますよーって言っても、それは〇〇さんが特殊なんでしょって」
私自身この6年間、文章を通して女性の性についてさまざまなことを書いてきたし、社会的にも女性の性の悩みを解決するサービスが多く生み出され、世界はガラッと変わったような気がしていた。
ではなぜそのような意見が出るのだろうか。それはまだ「女性向け」が「女性のため」にしか機能しておらず、「男女のため」「すべての人のため」へ向かう途中であることを示しているのかもしれない。