2004年にノーベル平和賞を受賞したケニアの元環境副大臣ワンガリ・マータイさんが9月26日、がんのため亡くなりました。71歳でした。
本コラムの標題「MOTTAINAI」もマータイさんと無関係ではありません。05年に初来日したマータイさんは古くからの日本の美徳である「もったいない」という言葉に接し、その意味に感動。そのままの足で環境大臣室を訪問されたマータイさんが新発見に興奮しておられたのを覚えています。
2人で適当な英語訳があるかと議論しましたが、みつかりません。強いていえば、It is too precious to wasteでしょうか。結局、日本語のままがいいと、そのまま世界中に広める役をかって出られました。ニューヨークの国連本部での講演の際には、聴衆に「MOTTAINAI」の大合唱を促すなど、まさに伝道師でした。
マータイさんは日本のリサイクルシステム「3R」についても興味津津でした。3RはREDUCE、REUSE、RECYCLE(削減、再使用、リサイクル)と循環型社会を構築するためのコンセプトをまとめたものですが、マータイさんはRESPECT(尊ぶ)を加えて4Rにすべきと主張しました。モノを大切にする心が必要だと言うのです。
当時、日本の伝統的な風呂敷を活用して「レジ袋削減キャンペーン」に取り組んでいたこともマータイさんを刺激しました。江戸時代の画家、伊藤若冲の絵をモチーフに私がデザインしたペットボトルのリサイクル風呂敷を大いに気に入り、時折、ナイロビから追加注文が届いたものです。
マータイさんが環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したのは、アフリカの地で3000万本もの植林活動「グリーンベルト」を続けてきた功績によるものです。人口増と貧困で農地は荒れ、燃料代わりに木々が伐採される悪循環に陥るアフリカに希望をもたらすために、アメリカで生物学博士号も取得したマータイさんが考えた対策は女性と環境の組み合わせでした。
アフリカの女性たちを植林に従事させることで、地域の環境を守り、雇用を生み出したのです。
いつも笑顔を忘れず、いったん話し出すと周囲を魅了したマータイさんですが、政権批判のかどで幾度か投獄された経験もあります。大統領選出馬に妨害を受け、断念させられるなど闘いの連続でした。
日本人が何気なく使ってきた「もったいない」の言葉にあらためて魂を吹き込んでくれたマータイさんに心から感謝し、ご冥福をお祈りします。
(自民党衆議院議員)