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【TOKYO HEADLINEの本棚】 | TOKYO HEADLINE - Part 18
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あらゆる立場の人が読んでもためになる社会人必読の書

2014.11.24 Vol.631

「終身雇用」「年功序列」「大企業=安定」という図式が崩壊した最近の就職事情。大卒の新入社員は3年で3割辞めるなど、社会情勢や働くスタンスは大きく変化している。しかし、チームのマネジメント方法は昔から変わらず、旧来のパワーマネジメントがそのまま受け継がれているのが現状で、それでは今の20代の部下・スタッフはついてこないと著者はいう。同書は、そんな最近の時流の中で実践的にあらゆるリーダーの中で育まれた「ソフトマネジメント」という手法のリーダー本。より丁寧で、より個人的で、よりそばに寄り添うマネジメント法なので、内気で陰気な人でもリーダーになれる、リーダーシップは必要のない方法だ。具体的には、旧来型のパワーマネジメントとは、「自分目線の」マネジメントで、飲み会で自分の失敗談を話し部下を励まそうとしたり、育てるためにレベルの高い仕事を振ったりするというもの。それに対しソフトマネジメントとは「部下と同じ目線に立った」マネジメントで、部下の悩みを解決しようと思わないとか、仕事は小さいことから任せていくというもの。その大前提を踏まえ、コミュニケーションの仕方、部下への正しい仕事の任せ方、モンスター部下への対処法などをわかりやすく解説している。現在リーダーとして部下やスタッフを抱えている人やリーダーになったばかりで途方にくれている人はもちろん、部下の立場の人が読んでもためになる社会人必読の書。

願いと呪いは紙一重。あらゆる女が心にかくまう、黒い魔物–

2014.11.23 Vol.631

 京都の下鴨神社の近く、住宅街の一角に人知れずひっそりとたたずむ神社。その神社には言い伝えがあった。曰く、社に自分の血を吸わせて願い事をすれば叶うと。兄のように慕っていた先輩が、自分の大嫌いな女と結婚してしまった女。おまけに子どもまで授かったと聞いた女は、何を願ったのか(「安産祈願」)。裕福な暮らしをしている専業主婦の女の願いはただひとつ。息子が受験に成功すること。それで女の人生は完璧になるはずだった(「学業成就」)。仕事にやりがいを感じているアラフォーの女。妻子ある男性に心ときめかせているだけで十分幸せだったのに、その男が本性をあらわしてきて(「商売繁盛」)。植物状態になった父親を献身的に看護する女。周りからは自分を犠牲にして偉いと褒められ、家族からも感謝されている。そんな女の心に蠢く真実とは(「不老長寿」)。高校時代からずっと片思いをしていた相手と、2人だけ同じ大学に進学した女。同郷ということもあり、その距離は徐々に近づき、初恋の相手と結ばれた女は幸せの絶頂だった…はずだが(「縁結び祈願」)。優しい夫、素直で真面目な息子を持つ女。絵に描いたような幸せな家族に段々ほころびが。女は願う。仲のいい家族に戻れたら、それだけでいいと(「家内安全」)。6つの短編からなる同書。それぞれ満たされた人生だったはずなのに、ほんのちょっと欲張っただけで、坂道を転がり落ちるように、不幸になっていく。しかしその神社により彼女たちの願いは意外な形で叶えられる。

恋愛成就!悪霊退散? 彼の正体は貧乏神!?

2014.11.08 Vol.630

 2012年『おしかくさま』で第49回文藝賞を受賞した谷川直子の受賞第一作。主人公のエリカは、モデルのオーディションを受けていて、まったく働かないシュウくんに貢ぎ続け、借金まみれ。ついに、返済のメドがたたず、借金取りから逃げるように、地元の幼なじみさえちゃんの家に転がり込む。しかしそこでもさえちゃんに借金をしてまで、シュウくんのために金策に走り回るエリカ。そんな彼女はある日、全身黒づくめの女に、あなたの彼は貧乏神だと告げられる。その女は、BHK、すなわち貧乏神被害者の会だと名乗り、エリカに“貧乏を断つため”の会、段貧サロンに参加することをすすめる。シュウくんを信じたいエリカは、拒否するが、さえちゃんに付き添われ、取り敢えずサロンに行ってみることに。そこには、かつて貧乏神依存症で現在、断貧真っ最中の女たちがいて、過去の彼氏がどんな男だったか、またどうやって断貧をしたかについて、語り合っていた。彼女たちもイケメン、スタイル抜群、でも働かない男と付き合っていて、彼らはみな貧乏神だったという。シュウくんは貧乏神じゃないと信じたいエリカだが、サロンに参加するうちに、段々と疑惑が広がっていき…。シュウくんは貧乏神なのか!? そして、エリカはその愛を貫くことができるのか? 愛と金、究極の選択に女の気持ちが揺れ動く。

恋愛成就!悪霊退散? 彼の正体は貧乏神!?

2014.11.07 Vol.630

 2012年『おしかくさま』で第49回文藝賞を受賞した谷川直子の受賞第一作。主人公のエリカは、モデルのオーディションを受けていて、まったく働かないシュウくんに貢ぎ続け、借金まみれ。ついに、返済のメドがたたず、借金取りから逃げるように、地元の幼なじみさえちゃんの家に転がり込む。しかしそこでもさえちゃんに借金をしてまで、シュウくんのために金策に走り回るエリカ。そんな彼女はある日、全身黒づくめの女に、あなたの彼は貧乏神だと告げられる。その女は、BHK、すなわち貧乏神被害者の会だと名乗り、エリカに“貧乏を断つため”の会、段貧サロンに参加することをすすめる。シュウくんを信じたいエリカは、拒否するが、さえちゃんに付き添われ、取り敢えずサロンに行ってみることに。そこには、かつて貧乏神依存症で現在、断貧真っ最中の女たちがいて、過去の彼氏がどんな男だったか、またどうやって断貧をしたかについて、語り合っていた。彼女たちもイケメン、スタイル抜群、でも働かない男と付き合っていて、彼らはみな貧乏神だったという。シュウくんは貧乏神じゃないと信じたいエリカだが、サロンに参加するうちに、段々と疑惑が広がっていき…。シュウくんは貧乏神なのか!? そして、エリカはその愛を貫くことができるのか? 愛と金、究極の選択に女の気持ちが揺れ動く。

ミステリー界激震! 国民的名探偵が迎える衝撃のラスト

2014.10.26 Vol.629

 テレビドラマでも人気の浅見光彦が、ついに最後の事件に挑む。構想6年、シリーズ最大の力作とあり、事件は戦前から現代、また舞台も東京、軽井沢、丹波篠山、神戸からヨーロッパまでワールドワイドに展開。謎の連鎖が光彦を、事件の真相に誘う。始まりは浅見家に届いた一通の手紙。それは本人が知らない間に企画された光彦の34歳のサプライズパーティーの案内状だった。発起人の一人、本沢千恵子はドイツ人ヴァイオリニスト、アリシア・ラインバッハと浅見家を訪れ、丹波篠山で行われる音楽イベントに2人が出演する際に、ボディーガードを頼みたいという。アリシアはドイツにいる祖母に、丹波篠山で「インヴェ」という男が持っているという楽譜を受け取ってくるように言われていた。

 しかし、そこに待ち受けていたのは殺人事件で、光彦は容疑者の疑いをかけられてしまう。そしてアリシアの頼みでドイツへと赴いた光彦は、丹波篠山の事件と、70年前に企てられた陰謀に繋がりがあるのではと直感する。綿密に組み立てられ、何十年もの間沈黙していた歴史の暗部が今暴かれる?! この事件を機に、探偵を辞め、人生を見つめ直す光彦。正義と大義の狭間で戸惑う名探偵・浅見光彦がたどり着いた究極の決断とは。

聖職者か、それとも稀代の犯罪者か–読後感強烈ミステリー!!

2014.10.13 Vol.628

 第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作。選考委員の満場一致で受賞が決まったという同書の著者は、元お笑い芸人ということで、深刻な事件を語る文章の中に、思わずクスッと笑ってしまうユーモアがある。オープニングはお葬式の場面。68歳で突然亡くなった坪井誠造は、教育者としてその人生のすべてを捧げた人物。生徒や同僚の先生ばかりか、近所の人や退職後、経営していたアパートの店子にまで“神様のような人”と慕われていた。それを象徴するように、葬儀には大勢の弔問客が訪れ、故人の死を心の底から悼んでいた。葬儀には喪主である娘の晴美、坪井と喧嘩ばかりしていた次女の友美、後輩教師で教育方針をめぐって対立していたものの内心では坪井を慕っていた根岸、元教え子の斉木、不登校の過去を持つ元教え子の茉希、近所に住む広子、アパートの住人でお笑い芸人の寺島らが参列。それぞれが坪井との思い出を懐かしみながら、涙を流している。しかし、寺島のあるつぶやきがきっかけで、お互いが話を始めると、話は段々妙な方向へ転がっていく。針の穴ほどの疑問が、皆の告白で拡大していき、坪井の隠された犯罪の数々が暴かれ…。神様みたいな坪井の恐ろしい「裏の顔」とは!? 参列者の告白がつながっていくハラハラ感と、笑いと謎がほどよく散りばめられたテンポよく読める文章が、一気にラストまで読ませる新感覚ミステリーだ。その驚愕のラストには、想像もつかない結末が!

まったく普通の3人が叶えた夢とは……

2014.09.27 Vol.627

 赤面症の営業職サラリーマンがベストセラー作家に、ほぼプータローが100億円企業の創業者に、そして出版社に勤めるペーペー社員がサーフィンざんまいのネット界の敏腕プロデューサーになるまでのサクセスストーリー。といっても、ただの成功談とも自己啓発本ともビジネス指南書ともまた違う、おとぎ話のような本。いきなり大成功をおさめたことがおとぎ話ではなく、“世界一ふざけた”というころがポイントだ。書いていることはとてもシンプル。「仲間を作る」「夢をノートに書き、お互い励まし合う」「ポジティブな思考を持つ」など、そんなことで果たして成功するのかということ。でも実際に3人が出会い、励ましあい、共鳴し、2人はわずか1年で、もう1人も3年で最初に立てた目標を楽々クリアし、現在に至っている。もちろん、何もせず夢だけ語っていたわけではない。本の中には失敗も挫折も出てくる。しかし、同書は全体を通して “ワクワク”“ハッピー”“イケイケ”な空気感を醸し出しているため、悲壮感がないのだ。成功してからも彼らは、毎日の生活の中に幸せを見つけ、世界一カッコイイ大人になるべく、仲間とワクワクすることを追いかけている。「お前ならできる!」「オレ(わたし)ならできる」。この魔法の言葉の力を信じて、無名の3人が出会って始めた、世界一カンタンで、世界一楽しく、世界一ふざけた方法とは…。

街は、女たちが彩ってきた。男は、女たちが知っている。

2014.09.14 Vol.626

 写真週刊誌フライデーの専属カメラマンを経てフリーライターとして活躍する著者が、10年以上にわたり、日本国内外の売春街と娼婦たちを取材してきた渾身のルポ。プロローグで著者は語る。「娼婦は、常に日陰に生きている。その存在から漂ってくる危うさ故に、私は彼女たちを知りたくなってしまう。旅を続けていくうちに、売春の歴史も辿ることで、日本という国を普段とは違った角度から見られるのではないかと思った」。その言葉通り、日本の各地に色街はあり、決して表の歴史には残らない裏の歴史がそこにはある。例えば、横浜黄金町。今ではアートイベントを開催するなどおしゃれな街へと変貌しているが、以前は「ちょんの間」と呼ばれる売春施設が路地という路地にあった。そこで生きてきた娼婦たちの人生を知ることは、日本という国の別の顔を見せてくれる。また、著者は巨額の金を日本人から貢がせてその名を轟かせたチリ人のアニータへも会いに行っている。そもそもじゃぱゆきさんとして日本に来た彼女は、母国では成功した女、アメリカンドリームならぬジャパニーズドリームの体現者として、憧れの存在だという。彼女の目には日本がどう映っていたのか。売春の根底にあるのはかつて貧困だった。しかし、秋葉原でサラリーマンに簡単に声をかけたり、インターネットで気軽に援助交際を求めたりする女子高生など、売春が日常の中に溶け込むようになった。娼婦はこれからも姿を変え存在し続けるのかも知れない。

体感せよ!小説で味わう料理の感動『麒麟の舌を持つ男』

2014.08.31 Vol.625

 主人公の佐々木充は、絶対音感ならぬ、絶対味覚を持つ料理人。しかし、完璧ゆえに妥協を許さず、その結果自分の店を潰してしまい、今は死期が迫っている人のリクエストに応じ「最期の料理請負人」をやっている。この仕事は、高額な報酬と引き換えに、依頼人が人生の最後に食べたいという思い出の味を完璧に再現するというもの。おおっぴらに看板は出せないものの、それなりに依頼は舞い込んでいた。そんなある日、佐々木のもとに、楊と名乗る中国人から連絡があり、奇妙な仕事を依頼される。それは、第二次世界大戦中に満州で政府の特命を受けた料理人・山形直太朗が作ったという幻のレシピ『大日本帝国食菜全席』を再現するというもの。しかも、その春夏秋冬の4冊、計204のレシピが書かれている『大日本帝国食菜全席』を探すことから始めるという依頼だった。どこにあるかもわからないどころか、その存在すらも疑わしいものだが、これまでとは桁違いの高額な報酬と料理人としての好奇心から佐々木はこの仕事を引き受けた。それをたどっていくうちに彼はとんでもない事実を知るのだが…。『大日本帝国食菜全席』とは一体なんだったのか? そしてそのレシピに隠された秘密とは? 作者はTV番組「料理の鉄人」のディレクターで、同書がデビュー作だという。巻末の『大日本帝国食菜全席』のレシピ名と料理の描写が食欲をそそられる料理エンターテインメントミステリーだ。

外国人は日本の「ここ」を愛している。

2014.08.18 Vol.624

 著者のステファン・シャウエッカーは、スイスのチューリッヒに生まれ、20歳の時にカナダに留学するまで、日本や日本人にまったく興味がなかったという。しかし、留学先で日本人と接するようになると、どんどん日本人が好きになり、日本という国に興味を持つようになった。その後、日本を旅行して、すっかり日本が気に入った彼は、「ジャパンガイド」という外国人向けに日本を紹介するポータルサイトを開設。現在では、日本を代表するサイトになり、多くの外国人に利用されている。そんな彼が自分で見た、体験した素晴らし日本の場所や文化を紹介したのが同書。京都・美山の藁葺き民家など心を惹かれた街や自然、お花見や紅葉、祭りなど日本人の生活に寄りそった行事や習慣、そして居酒屋や露天風呂でのふれあいの旅など、日本人でも行ったことがないようなところ、またしたことがないような体験談が満載。例えば、もっと注目されていい名所として、北海道の大雪山を上げ、中でも夏山のシーズンを過ぎて、秋を迎えるわずかな時期をすすめている。そこは日本で最初に紅葉が見られる場所で、彼自身毎年大雪山訪問を楽しみにしているという。そのように、普段はまったく意識することがなく気がつかなかった日本の魅力や外国人が感じる意外な魅力も知ることができる日本再発見ガイドブック。大きなショックを受けたという東日本大震災にもふれ、東北の復興を世界に発信し続けることが使命だという著者の日本愛あふれる一冊。

おめえに教えてやるよ。人生の勘どころってやつを。『蔦重の教え』著者:車浮代

2014.08.02 Vol.623

 55歳のリストラ寸前の崖っぷちサラリーマン、武村竹男(タケ)がひょんなことから江戸時代へタイムスリップ。しかも、転がり込んだのがあの蔦屋重三郎の元だった。蔦屋重三郎は、吉原のガイドブック『吉原細見』ほかいくつものベストセラー本を出版したほか、写楽や歌麿を生み出し、世に出したことでも知られている天才プロデューサーだ。タケはなぜか、23歳の青年としてタイプスリップし、蔦重の元で働きながら、商売のこと、人との付き合い方、成功するための方法、ひいては人生の極意を学んでいく。同書は「時空を超えた実用エンターテインメント小説!」とうたっているように、蔦重の教えは現代に通じるばかりか、世の中の真理をついているものばかり。タケではなく、思わず自分の手帳に書き留めておきたくなる言葉が多い。また、浮世絵、料理、習慣など江戸時代の風俗が生き生きと描かれているので、時代小説としても楽しめる。そしてなんと言っても、浮世絵師たちばかりではなく、そこに登場する人たちが織り成す日常生活が興味深く、あらためて違う視点から歴史の勉強をしてみたくなる。平成の時代に戻ったタケのリストラに怯えやけくそになった人生が、蔦重の教えでどんなふうに変わっていくのか、いかないのか…。歌麿の浮世絵に隠された驚くべき真実とは? 蔦重を知っている人には興味深く、知らない人も楽しめる時代小説だ。

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