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【TOKYO HEADLINEの本棚】 | TOKYO HEADLINE - Part 9
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サラリーマンは辛苦な稼業と来たもんだ『セミ』【著者】ショーン・タン

2019.07.11 Vol.Web Original



 セミ おはなし する。
 よい おはなし。
 かんたんな おはなし。
 ニンゲンにも
 わかる おはなし。(帯文より)

 どんよりした灰色の壁と床が囲む、まるで要塞のようなオフィス。そこら中に散らばった書類の間隙を縫うように、しわだらけのスーツ姿で一匹の「セミ」が立ち尽くしている。言い知れぬ不穏な気持ちを抑え読み進めると、どうやら彼はある会社で、勤続年数17年を数えるサラリーマンだという。どんなに理不尽な目に遭おうとも、不平不満を言わず真面目にコツコツと、ニンゲンの分まで仕事をこなす。時折「トゥクトゥクトゥク!」と声にならない声をあげながら……。

芸術は爆笑だ!?『永田町絵画館』【著者】福本ヒデ

2019.07.05 Vol.Web Original



 この度は「永田町絵画館」に、ご来場いただきありがとうございます。

 当館は、「日本の中心で起きている出来事」を描いた絵画を主に扱っております。(「ごあいさつ」より)

 ここは日本の政界を司る「永田町」の名を冠した絵画館。「おや、こんなとこにおかしいね。しかしとにかく何か絵画が見られるんだろう」と、『注文の多い料理店』のような台詞をつぶやきながら、絵画館の白い扉をうやうやしく開けてみる。すると、どこかで見たことのある有名作品がところ狭しと並んでいるではないか。いったいどうやってこんなにたくさんの作品を集めたのだろう。「文句の叫び」や「火に油を注ぐ女」……あれ?

孤独をまとう不思議な鳥『ハシビロコウのすべて』

2019.06.29 Vol.Web Original



 皆さんはハシビロコウという鳥をご存知だろうか。鋭い眼光、哀愁を漂わせる立ち姿、「動かざること山の如し」といった風情で微動だにしない。アフリカに生息し、ペリカン目ハシビロコウ科ハシビロコウ属を単独で構成する大型の鳥である。このハシビロコウが、アニメ「けものフレンズ」で擬人化されるなどした影響か、近年つとに人気を博しているという。上野動物園のスーベニアショップでは、パンダに次ぐ人気グッズとの話もある。

「令和」へと拓く遺言「平成の死 追悼は生きる糧」

2019.06.23 Vol.719

 平成に亡くなった200人超を取り上げた『平成の死』には、その時代を彩った多くの人生のリアルが描かれている。第一章「昭和の残照」では、「平成は女王と神様の死で始まった」とし、昭和の終わりと平成という時代の幕開けを予感させる美空ひばりと手塚治虫(ともに平成元年没)の死を取り上げている。第二章「ガンとの戦死」では逸見政孝や松田優作、中村勘三郎、小林麻央ら現在も死因のトップであるガンに倒れた著名人を。そして第三章では「自らを殺すという生き方」とし、自死を選んだ人の死を振り返る。その他、突然死や事件・事故など、我々は平成の間、さまざまな人たちの死に遭遇してきたのだと実感させられる。この世において平等なことは“人は必ず死ぬ”という事だ。生まれた時から人は死に向かってカウントダウンをスタートしている。“死”を思うことは“生”を考える事。同書に収録されている死にゆく者が残した言葉から浮き彫りになる“生きる”という事は、非常に尊く、とても重い。

【著者】宝泉薫【発行】KKベストセラーズ【定価】本体1600円(税別)

劇団EXILE 秋山真太郎が小説家デビュー! 3年書き溜めた掌篇小説集 EXILE TAKAHIROがほれ込む

2019.06.14 Vol.Web Original



 劇団EXILE 秋山真太郎が、小説集『一年で、一番君に遠い日。』(キノブックス、1700円+税)で小説デビューを果たすことが分かった。キノブックスが発表した。

 同作は、秋山が3年にわたり、書き続けきた小説をまとめたもので、掌篇20篇を収録。それぞれが現実世界から知らない間に異世界に迷い込んでしまったような、不思議な作品だという。
 
 秋山は「寝る前、出勤前、疲れた時、楽しい時、ふとした休憩のお時間などに気になる作品から読んで頂けるようになっています。日常に潜む、潜んでいるかもしれないファンタジーを楽しんで頂けたら幸いです」と、コメントしている。

 収録されている作品のひとつ「風をさがしてる」では、作品の中に出てくる手紙の一部を、作品にほれ込んだEXILE TAKAHIROが、直筆で書き起こしている。

 7月7日にはカリスマ書店員新井見枝香さんとの対談イベント、同14日には橘ケンチとの対談イベントを行う予定。

■秋山真太郎 コメント
この度、掌編小説集を出版する運びとなりました。
三年かけて書き溜めていた思い入れの強い二十本の掌編作品集です。第一回ショートショート大賞のアンバサダーを務めさせて頂いたのをきっかけに、自身でも書き始め、その中から今回二十本を選びました。寝る前、出勤前、疲れた時、楽しい時、ふとした休憩のお時間などに気になる作品から読んで頂けるようになっています。日常に潜む、潜んでいるかもしれないファンタジーを楽しんで頂けたら幸いです。

学びたい人も休みたい人も。春の新刊からおススメ本を2冊『SDGsの実践』『自由ネコ』

2019.05.28 Vol.718

『SDGsの実践 〜自治体・地域活性化編〜』

 Amazonの「地方自治」「社会と文化」の新着ランキングで1位を獲得した(社会と文化 3月13日調べ)SDGs書籍シリーズの第2弾。2018年9月発売した「SDGsの基礎」に続き、新刊では自治体職員や地域活性に取り組む地域企業の人々を念頭に、持続可能な地域社会の実現に向けてSDGs(持続可能な開発目標)をどのように理解し、取り組めばよいかについて整理し「地方自治体としてSDGsを理解・活用したい」「地域課題を解決する人材を育成したい」といったさまざまな課題に対して解決策を示すことを目指す内容となっている。「自治体SDGsガイドライン」を編集した村上周三氏(建築環境・省エネルギー機構・理事長)をはじめ、地域におけるSDGsの第一人者による共著。地域に根差したSDGsの実践を意識するなら必携の書。

【著者】村上周三(建築環境・省エネルギー機構・理事長)他【編集/発行】事業構想大学院大学 出版部【販売】株式会社宣伝会議【定価】1800円(税別)

たった一人になった。でも、ひとりきりじゃなかった。『ひと』【著者】小野寺史宜

2019.04.29 Vol.717

 全国の書店員が一番売りたい本を選ぶ「本屋大賞」の2019年ノミネート作品。

 交通事故で父親を亡くし、女手ひとつで育てられた柏木聖輔。母は学食で働きながら、聖輔を東京の私大に進ませてくれたが、ある日急死したという知らせが入る。20歳で両親を亡くした聖輔は大学を辞め、仕事を探そうと思うが、なかなか積極的に動く気持ちになれない。ある日、商店街を歩いていると、どこからともなくいい匂いが。その匂いに吸い寄せられ立ち止まった1軒の惣菜店。手元の現金は55円。ギリギリ買える50円のコロッケを買おうと思ったが、見知らぬお婆さんにそれを譲る羽目に。

 結局、コロッケを譲った事をきっかけに、聖輔はその惣菜店・田野倉で働く事になった。そこから、店主、同僚、仲間、同郷の友人と“ひと”との縁が少しずつつながっていく。ひとりぼっちで、未来に夢も希望も見いだせなかった聖輔だが、人と関りを持つたびに、夢が生まれ、喜びを知り、感謝の気持ちを持つ事ができるようになっていく。時には人に傷つけられる事もあるが、周りには守ってくれる人もいる。天涯孤独でも、貧乏でも、先が見えなくても、大丈夫。人が人とつながる事で、絆が生まれ、その絆から未来が開ける事もあると信じられる気がする。聖輔の成長とともに、その周りにいる人たちの大げさではない無償の行いに、胸がほっこりと温かくなる青春小説。

格闘技雑誌の老舗「ゴング格闘技」が2年の休刊期間を経て奇跡の復刊

2019.04.13 Vol.717

 2019年3月に老舗の格闘技雑誌「ゴング格闘技」が2年の休刊を経て復活した。

 出版業界ではよっぽどのことがない限り「廃刊」という言葉は使わない。商標登録や雑誌コードといった細かい問題はここではさておくが、その言葉はその雑誌を再び発行することをギブアップしたことを世間に意思表示することになるからだ。ゆえに多くの場合「休刊」という言葉を使うのだが、復刊する雑誌は少ない。そのまま「事実上の廃刊」という結果となる。

 2014年秋に新生K-1が立ち上がり、2015年の年末にRIZINが格闘技界恒例の年末のビッグイベントを再開させると徐々に日本の格闘技界に熱が戻ってきた。

 格闘技冬の時代といわれ、ライバル誌が次々と休刊する中、孤軍奮闘を続けていた同誌が2017年3月に休刊となった時は「これだけ大きなイベントが開催されるようになってきたのになぜ?」と業界内に衝撃が走った。どのジャンルもウェブメディアに押され、次々と紙媒体が消えていくご時世ではあったが、「1誌くらいは大丈夫だろう」と思っていた関係者は多かった。

 当時、そして現在も編集長を務める松山郷氏は「格闘技の多様な魅力を伝えるのに媒体側も変化する必要があった」と休刊当時を振り返る。その後、松山氏は格闘技関係の書籍の発刊、ゴング格闘技名義でのSNSでの発信を続ける中、虎視眈々と復刊のチャンスを模索。今回の復刊に至った。

 松山氏は「ウェブ版の立ち上げと復刊の告知に読者の大きな期待を感じた。ウェブの時事記事と雑誌の深読みを連動させたい」と復刊後の編集方針を語る。

 試合結果や会見といった速報はウェブで得る時代だが、その試合の前後の物語はじっくり本で読みたいというファンはまだまだ多い。また専門誌に掲載されることは選手の大きな励みにもなるだけに復刊した同誌への期待は大きい。

「ゴング格闘技」
【発行】アプリスタイル【価格】1200円(税込)

愛、信仰、運命—。この世界を生きる意味。『その先の道に消える』

2019.03.16 Vol.716

 アパートの一室で発見された、ある“緊縛師”の死体。重要な参考人として名前があがった桐田麻衣子は、捜査を担当している刑事・富樫がひかれていた女性だった。富樫は良心の呵責にさいなまれながらも、他の捜査員の目をそらすために、彼女の指紋を偽装し、捜査対象から外してしまう。

 しかし、それがほころびの第1歩となり、富樫は次第に追い詰められていく。そしてついに、同僚の葉山が富樫の前に現れ、富樫に詰め寄った。どこまで知られているのか分からないながらも動揺する富樫。そして、事態は意外な展開を見せ、葉山や麻衣子、そして姿の見えない犯人らがじりじりと交錯していく。その複雑で異様な人間関係を文字通り結んでいるのが、緊縛に使用される“麻縄”。単なる道具というだけではなく、日本人の宗教心や古代からなる日本人の思想にまで及ぶ展開は壮大な広がりを見せる。縄によって分けられた結界は、何を守り、何を破壊してきたのか。

 ミステリーでありながら、緊縛という非日常の行為に魅せられた男女の悲しみと破滅へ向かう真実は、誰にとっての救いなのか。登場人物の心の揺れや告白者が綴る闇も含め、文章からあふれ出る言葉のひとつひとつが胸に突き刺さる。中村文学の真骨頂ともいえる作品だ。

『その先の道に消える』
【著者】中村文則
【定価】本体1512円(税込)
【発行】朝日新聞出版

愛すべきバブル世代に斬りこむ、自虐的(?)新・世代論『駄目な世代』

2019.02.22 Vol.715

 書名の「駄目な世代」というのは、いわゆるバブル世代に青春を謳歌した人たちの事。著者自身もその世代にずっぽりと当てはまる。平成の最後に、「最後の昭和人」であり「昭和の最下級生」ともいえるバブル世代を、自虐を込めて独自の視点でぶった切っている同書。

 1966年、丙午生まれといえば、多くは平成元年がちょうど就職1年目の時代。昭和の最後を“レジャーランド化”した大学で過ごしたバブルの申し子たちは、就職してからも、そして中高年と呼ばれる年代になっても、バブルを引きずっている。その世代の功罪を、メディア、ファッション、名付け、ITなど現在進行形の事象と合わせて分析。

 例えば“美魔女”。あのころに、“若さは売れる” と気づいたバブル世代の女たちは、今でもその呪縛にがんじがらめになっている。消費する事に躊躇がないが彼女たちは、バンバンお金を使って、必死で若くあろうともがいているのが、現在の“美魔女”ブームだ。と言った上、それが若い世代から“イタい”と思われているという冷静な視点も忘れない。そのように、全体的に“イタい” “ダサい”“時代遅れもはなはだしい” といったバブル世代の現状を嘆きつつ、根底では“そんな時代に生まれてしまったけど、結局楽しかったよね”という雰囲気が流れているように感じているのは、ノー天気なバブル世代だからだろうか。時代とともに埋もれていくであろう、そんなバブルな世代を生きてきた人たちの行く末を見守りたい。

『駄目な世代』
【著者】酒井順子【定価】本体1400円(税別)【発行】KADOKAWA

僕たちは双子で、僕たちは不運で、だけど僕たちは、手強い『フーガはユーガ』【著者】伊坂幸太郎

2019.01.30 Vol.714

 伊坂幸太郎の1年ぶりの新作長編は、双子の兄弟の不思議な物語。常盤優我と常盤風我は物心がついた時から、親の虐待を受け育ってきた。2人がその事に耐えてこられたのは、時間を、そしてその苦しみを“共有”できたから。学校の友人には、家庭での虐待の事実は悟られまいと気を使っていたため、本当の自分をさらけ出せないのは当然だが、それを差し引いても、2人の間には特別な結びつきがあった。

 それは誕生日に起こる謎の現象。2人だけで守り続けてきたその大きな秘密を、ある男が嗅ぎつけて真相に迫ってくる。仕方がなく、常盤優我は仙台市内のファミレスでその男に語り出す。双子の弟・風我の事、幸せではなかった子ども時代の事、そして兄弟だけの特別な“アレ”の事。にわかには信じられない出来事だが、逆にほかに説明のつきようのない証拠を前にとまどう男。そうこうしているうちに、話は思わぬ方向へ進んで行き、風我が事故死をした事が明かされる。すると、そこまでの優我の語りからは想像がつかないスピードで物語は展開し、息もつかさずクライマックスへ突入する。

 風我のいない世界で危険にさらされた優雅の運命はどこに向かうのか。そして2人の秘密を知ってしまった男は一体何者なのか。SFともミステリーともアクションともくくれない、伊坂ワールドの真髄がここに。読みながら表と裏の顔を巧みに使い分ける2人で1人の人生を体験できる。

『フーガはユーガ』
【著者】伊坂幸太郎【定価】本体1400円(税別)【発行】実業之日本社

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