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萬斎が満を持して演出を手掛ける 世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演 『子午線の祀り』

2017.06.25 Vol.693

 世田谷パブリックシアターは今年開場20周年を迎えたことから、4月からさまざまな「開場20周年記念公演」を行っており、本作もそのひとつ。

 戦後の日本演劇界を代表する劇作家・木下順二の「平家物語」を題材とした不朽の名作で平家物語の一ノ谷から壇ノ浦までを平知盛と源義経を中心に描いている。

 1979年の初初演時は、総合演出者の宇野重吉のほか能の観世榮夫らさまざまなジャンルの重鎮が演出に名を連ね、ジャンルを越えて壮大な一本の作品を作り上げた。本作においてはこの時期を「第一期」、観世榮夫らが演出を務めた1999年の新国立劇場公演と2004年の世田谷パブリックシアター公演を「第二期」としているのだが、今回の上演は「第三期」の幕開けとなるものとも位置付けられるといえるだろう。

 野村萬斎は第二期から平知盛役を演じ、今回、満を持して演出も手掛ける。これまで古典芸能を現代劇に融合させ、新たで大胆な手法を用いてきた萬斎が伝説と化しているこの作品にどう挑むのか…。また、これまで狂言師・歌舞伎俳優といった古典芸能の俳優が演じてきた義経役を小劇場出身の成河が演じるなど大胆なキャスティングも大きな見どころとなっている。

親しい人を思う感情にこそ、犯罪の“盲点”はある。『血縁』【著者】長岡弘樹

2017.06.17 Vol.692

 タイトルにある通り“血縁”をキーワードにした7つの短編によるミステリー。連作ではなく、それぞれがまったく独立した短編で構成されている。「誰かに思われることで起きてしまう犯罪。誰かを思うことで救える罪」と帯にあるように、近しい間柄であるがゆえに、心の中に芽生えた憎悪が、お互いの人生をも狂わすような悲劇を生み出してしまう様を描く。

また、反対に相手を思う気持ちが、思いがけず救いになるという展開も。表題の『血縁』という作品は、ミステリーというより、ゾクゾクする読中感は、どちらかというとホラー。仲の悪い姉妹の幼い頃から、大人になりある事件が起きるまでの描写は、救いようがなく非常に不快な気分にさせられる。こんな姉妹が果たしているのか?!

 ちょっと想像ができないが、きっといるのだろうと思わせるリアリティーがあるところも怖い。最後にほんの少しホッとさせられるが、切なすぎるストーリーは、読んでいて若干つらく感じる読者もいるのでは。『苦いカクテル』は、同じ姉妹ものでも仲のいい姉妹の話。父親の介護疲れで心も体も疲弊していた姉が長らく別々に暮らしていた妹に助けを求め、一緒に介護をしてもらうことに。2人で分担し、負担は減ったはずだが…。姉妹の絆、親娘の絆が、それぞれの運命を同じ方向に導いていく。切ないが、姉妹のその後に、救いがありそうな一編だ。全体的にオチが“イヤミス”風な作品ではあるが、最後の『黄色い風船』は、どこかほっこりとさせられるラストになっている。まったく違う作風の7つの物語だが“血縁”という自分ではどうする事もできないものに翻弄されるという軸があることで、違和感なく1冊の本として読み通す事ができる。

【定価】本体1500円(税別)【発行】集英社

ガツンと来る曲が聞きたい!『Melodrama』Lorde

2017.06.15 Vol.692

 デビュー作『PURE HEROINE(ピュア・ヒロイン)』で全世界を震撼させたニュージーランド出身の歌姫、ロードが放つニューアルバム。前作でグラミー賞を受賞した時は弱冠17歳だった彼女も20歳。本作では新しいドラマを唯一無二の歌声と楽曲で体感させてくれる。本作のレコーディングは、ジミ・ヘンドリクスが設立し、ジョン・レノンやローリング・ストーンズらレジェンドミュージシャン、レディー・ガガも使用したエレクトリック・レディ・スタジオで行われている。ファーストシングルで、ダンサブルなビートとピアノが印象的な曲『グリーン・ライト(Green Light)』を含む全12曲を収録した。ロード自身が「これまでとは違う、ある種予想外の曲」だというこの曲は親友のテイラー・スウィフトや、ケイティ・ペリーらも絶賛している。本作でもまた彼女はその美声で世界中を魅了してしまうだろう。本作を携え、ロードはこの夏、フジロックフェスティバルで再来日する。彼女のパフォーマンスは必見。

[ROCK ALBUM]ユニバーサル 6月16日(金)発売 2500円(税別)

ガツンと来る曲が聞きたい!『Harry Styles』Harry Styles

2017.06.14 Vol.692

 ワン・ダイレクションのメンバーとして世界を魅了してきた、ハリー・スタイルズが満を持して放つソロ作第1弾。これまで親しんできたハリーの魅力に加えて、1Dでは見たり聞いたりすることができなかった彼の一面を感じられる。デビューシングル『Sign of the Times』はエモーショナルなボーカルが映えるドラマティックなロックアンセム。ハリー自身が手掛けた曲で彼自身も誇りに感じているそうで、本人もアルバム収録曲のなかで最も気に入っている曲だという。エド・シーランやブルーノ・マーズのジェフ・バスカーがプロデューサーとして参加。

[ROCK ALBUM]ソニーミュージックジャパンインターナショナル 発売中 2400円(税込)

ガツンと来る曲が聞きたい!『Green Twins』Nick Hakim 

2017.06.13 Vol.692

 米ブルックリンを拠点に活動するシンガーソングライターのニック・ハキムのデビュー作。マックス・ウェル、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルなどのサポートを務めたり、すでにEPを自主リリースしており、日本でも早耳のリスナーの間では話題になっているアーティストだ。さまざまなジャンルをブレンドしたサウンドが特徴で、本作からもマーヴィン・ゲイやシュギー・オーティス、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインなどからの影響が感じられる。ブルージーなギターと甘く美しい歌声に酔う『Bet She Looks Like You』など全12曲を収録している。

[ROCK ALBUM]ATO / Hostess  発売中 2100円(税込)

ガツンと来る曲が聞きたい!『All Time Best ハタモトヒロ』秦基博

2017.06.13 Vol.692

 シンガーソングライターの秦基博のキャリア初となるオールタイムベストアルバム。ポップなナンバーからエモーショナルなバラード曲まで10年間にわたって多彩な曲を世に送り出し、多くの曲が多くの人に愛されてヒットしてきた。それだけにオールタイムベストは“ベストヒッツ”でもある。初回限定はじめまして盤、通常盤、そして初回盤のタイプがあり、はじめまして盤は収録曲全15曲がタイアップ楽曲のみで『ひまわりの約束』『グッパイ・アイザック』などを収録。他は前述の楽曲を含み、代表曲は全網羅。いい曲ぎっしり。

[J-POP ALBUM]オーガスタ 6月14日(水)発売 初回限定はじめまして盤2500円、DVD付初回限定盤5500円、Blu-ray付初回限定盤6500円(すべて税別)

ガツンと来る曲が聞きたい!『今日までそして明日からも、吉田拓郎 tribute to TAKURO YOSHIDA』

2017.06.12 Vol.692

 日本のポップス界のパイオニアである吉田拓郎を、彼の背を見ながら現在J-POPシーンの最先端で奮闘しているアーティストたちがトリビュート。同じ広島出身で高校の後輩でもある奥田民生『今日までそして明日から』、chay『結婚しようよ』、ポルノグラフィティ『永遠の嘘をついてくれ』など全12曲を収録。寺岡呼人 feat.竹原ピストルの『落陽』、THE ALFEE『人生を語らず』などクレジットされた名前も見るだけでも迫力が伝わってくるラインアップ。また、井上陽水『リンゴ』、高橋真梨子『旅の宿』徳永英明『やさしい悪魔』などすでに発表住の音源も収録。

[J-POP ALBUM]Virgin Music 発売中 2800円(税別)

「自分が楽しい!」が一番大事! 夏フェスの選び方 Choose the best for yourself!

2017.06.12 Vol.692

 2017年の夏フェスシーズンがスタートする。フジロック、サマーソニック、ロックインジャパンフェスといった人気フェスを軸に、全国各地で毎週末なんらかのェスが開催されて、よりどりみどり選びたい放題……ただ問題は、その選び方だったりして? 

出世作を16年ぶりに再演 青年団第76回公演『さよならだけが人生か』

2017.06.12 Vol.692

 今でこそ青年団とか平田オリザという名を知らない演劇関係者はいないだろうし、演劇ファンでもその作品を見たことがなくても名前を知らない人はほとんどいないだろう。そんな青年団にも名前が知られていない時代というのはもちろんあるわけで、大きく知られるきっかけとなったのがこの『さよならだけが人生か』という作品。1992年のこと。当時は「そのとき日本の演劇界が青年団を発見した」といったセンセーショナルな言葉で表現された。

 その後、2000年にリニューアル上演し、今回は実に16年ぶりの再演となる。

 舞台は東京都内某所の雨が続く工事現場。ただでさえ遅れがちなところに遺跡が発見され、工事は遅々として進まない。そんななか工事現場の人々、発掘の学生たち、ゼネコン社員や文化庁の職員などさまざまな人間たちがだらだらと集まる飯場ではユーモラスな会話がいつ果てるともなく繰り広げられていた。

 青年団史上最もくだらないとされる人情喜劇だ。

本作をもって劇団を「変態」サンプル『ブリッジ』

2017.06.12 Vol.692

 青年団の若手自主企画公演を経て2007年に劇団として旗揚げした「サンプル」が今回の公演をもち、いったん劇団としての活動を休止。今後、その名称は主宰を務める劇作家で演出家、そして俳優の松井周の個人ユニットを指すこととなる。

 サンプルは結成当初は通常の演劇公演を中心に活動してきたが、時が経つにつれ、劇場ではない場所での作品作り、サンプル・クラブに代表されるコミュニティー作り、そして松井の好奇心を形にした雑誌作りなど活動が多岐に渡ってきた。

 劇団という枠ではくくり切れなくなった今、劇団の展開を試行するなかで10周年の節目を契機に劇団を「変態」させ、第二形態を目指すこととなったという。

 今回の作品のテーマは「宗教」。コスモオルガン協会という架空の新興宗教団体の信者たちを描く宗教劇。彼らを通じて集団と宗教、現代という時代に宗教に何ができるのか、といった問題があぶり出される。

 今後、サンプルに所属していた劇団員たちが松井の作品に出演することもあるだろうが、多分今まで通りではない。また過去の公演は1つとして映像化はされていないだけに、これまでのサンプルを感じる最後のチャンスとなる。

クセありキャラにハマる!『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』

2017.05.30 Vol.691

 絶世のオンチであるにも関わらずカーネギーホールを満員にした“伝説の歌姫”の実話をもとに描く愛と笑い、感動の物語。大女優メリル・ストリープが、美声を披露した『マンマ・ミーア!』から一転、本作では完璧すぎるオンチっぷりで観客をとりこに。マダムの夢を叶えるため奔走する夫シンクレア役には“ロマコメ界の帝王”ヒュー・グラント。

 ニューヨークの社交界のトップ、マダム・フローレンスの夢は、ソプラノ歌手になること。しかし彼女は自分の歌唱力に致命的な欠陥があることに気付いていなかった…!

販売元:ギャガ  6月2日(金)発売 ブルーレイ4800円(税別)

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