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カルチャー | TOKYO HEADLINE - Part 106
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ココロ揺らせ、カラダ揺らせ。『W FACE〜inside〜』 倖田來未

2017.03.02 Vol.685

 倖田來未の最新作は彼女の魅力を堪能できる作品群だ。歌謡曲のいいところを踏襲し彼女の歌声を堪能できるエモーショナルな作品『W FACE?inside?』と、アグレッシブなサウンドを詰め込んだ『W FACE?outside?』を同時にリリースすることで、両作品を聞くことで1人のアーティストの二面性を体感できるのだ。また、倖田はこれまでに数多くの作品を世に送り出している。それだけに、エモーショナルな面、ダンサブルな楽曲が好きなどファンのなかでも好みが明確に分かれている人も少なくない。好きそうなほうだけ聞いてからもう片方は考えるといった選択もできそう。

[J-POP ALBUM]rythm zone 3月8日(水)発売 それぞれ AL+DVD3500円、AL+BD4200円、AL2600円(すべて税別)

ココロ揺らせ、カラダ揺らせ。『Dirty Projectors』 Dirty Projectors

2017.03.01 Vol.685

 米ニューヨークはブルックリン出身の人気グループが待望の最新作をリリース。これまでにアルバム7作をリリースしながらも今作がセルフタイトル作というのは渾身の作品ということだろう。前作ツアーを経て、フロントマンのデイヴは失恋し心身ともに疲弊、変化せずにはいられなかった。ポール・マッカートニーや、カニエ・ウェスト、ソランジュら他アーティストとの協業もあって、グループに新しい風を吹き込んでいる。すでに高い評価を集めている先行シングル『Keep Your Name』を始め、全9曲を収録。既存の枠を超えたアルバムになっている。必聴の一枚。

[ROCK ALBUM]Domino / Hostess 3月3日(水)発売 2400円(税込)

逃げ続けることが、人生だった。『罪の声』【著者】塩田武士

2017.02.28 Vol.685

 グリコ・森永事件をフィクションで描いた『罪の声』。多くの謎を残し終焉した昭和最大の未解決事件「グリコ・森永事件」を題材に物語は展開。2人の男による、ある意味執念の捜査により明らかになった事件の真相とそれに関わった人々の苦悩が綴られた長編小説だ。

「ギンガ萬堂事件」?その第一幕は社長の誘拐から始まった。その後、商品の菓子に毒物を仕込み企業を脅迫、身代金を請求するという、前代未聞の事件が世間をにぎわせた。それから31年後、新聞社の文化部の記者・阿久津は年末企画の“昭和・平成の未解決事件”という特集で、その「ギン萬」事件を担当することに。時効が成立し、証言者たちの記憶も大分薄れている事から、事件の真相に迫る調査は難航するが、“今だから言える”という真実の証言を得て、じわじわとその真相に迫っていく。同じころ、この事件を調べ始めたもう一人の男、京都でテーラーを営む曽根俊也。企業への身代金取引の電話には子どもの声が使われていたのだが、母の部屋で偶然見つけたカセットテープに、事件に使用されたと思われる脅迫文を読む子どもの声が録音されていた。しかも、その声は紛れもなく幼い頃の自分…。果たして、俊也の死んだ父親は事件に関係していたのか? さらに、自分以外の子供の声は一体どこの子供なのか? また、阿久津は事件の真相にたどり着けるのか? 事件の裏に隠された悲しい真実。そこには事件をきっかけに人生を翻弄された普通の人々がいた!? 

 誰もが知る有名な事件を推理し、その事件に関わった人たちの波乱の人生を大胆予想した、エンターテインメントフィクション。

“こだわり”がハンパない作品 印象派NÉO vol.3『不思議の国の白雪姫』

2017.02.27 Vol.685

 ミュージシャン、アーティスト、俳優、演出家といったさまざまなフィールドで活躍する夏木マリが自らのクリエーションによるコンセプチュアルアートシアター『印象派』を立ち上げたのが1993年。2008年までに9作品を発表し、一度は区切りをつけたのだが、夏木自身、まだまだやりたいことは山ほどあり、ファンからの「もっと見たい」という声も多く、2009年に『印象派NEO』として復活。今回はそのvol.3で3年ぶりの新作となる。
『印象派NEO』以降の作品はおとぎ話をモチーフとしており、今回は「不思議の国のアリス」と「白雪姫」に想を得たもので、夏木曰く「私のナンセンスに、作品としてのインテリジェンスを加え、創造的にくすぐる作品に仕上げたい」とのこと。

 東京公演後は4月2日に京都、そして4月25日にはパリのルーヴル美術館オーディトリアムでも公演を行う。もともと宮廷画家たちに反抗したモネやルノワールといった画家たちの精神にインスパイアされ『印象派』というタイトルになったことを思うと、パリにもぜひ足を運んでみたい作品だ。

ココロ揺らせ、カラダ揺らせ。『Drunk』 THUNDERCAT

2017.02.27 Vol.685

 米出身のベーシストで音楽プロデューサー、自身がアーティストとしても積極的に活動するサンダーキャットの最新作。近年ブラックミュージックが盛り上がりを見せるなかで、ケンドリック・ラマーやカマシ・ワシントンといった顔になってきたアーティストとの仕事で成功を収めるなど、今や現在の音楽シーンにおいて欠かせない存在だ。本作は彼のジャンルを軽々と横断する音楽性、ポップさとそうじゃない要素とのバランスによって、一曲のつもりがもう一曲と聞き続けてしまう作品だ。ジャケットインパクトに負けず、ポチるなりレジに向かうなりすべき。

[DANCE ALBUM]Brainfeeder/Beat Records 発売中 2200円(税込)

ココロ揺らせ、カラダ揺らせ。『TROPICAL LOVE』 電気グルーヴ

2017.02.27 Vol.685

 石野卓球とピエール瀧からなる電気グルーヴが約4年ぶりに放つオリジナルアルバム。集大成、最高傑作と両人が口を揃える本作。カッコいいし心地いいサウンドに、ファンタジックというか不思議な言葉を乗せていく電気らしさに、リゾートのリラックス感、言い換えれば、いい感じのダラっとした感が加わってなんか楽しい。収録曲はタイトル曲の『トロピカル・ラヴ』を筆頭に、『ユーホリック』、『人間大統領』『Fallin’ Down』、などの全10曲。夏木マリ、KenKen(RIZE、Dragon Ash、LIFE IS GROOVE)、トミタ栞など豪華なゲスト陣も参加している。

[J-POP ALBUM]キューンミュージック 3月1日(水)発売 初回限定盤(CD+DVD)3600円 通常盤2913円(共に税別)

“こだわり”がハンパない作品 北九州芸術劇場プロデュース『しなやか見渡す穴は森は雨』

2017.02.25 Vol.685

 北九州芸術劇場では2008年から「地域色豊かな作品を北九州から全国へ発信する」同劇場のプロデュース公演を展開している。

 演劇界の最前線で活躍する演劇人を北九州に招き、約1カ月間滞在してもらい、地元の役者・スタッフとともに作品を創作する。作られる作品は時代とともに変わりゆく北九州の街やそこに住む人々の姿を描いたもので、とことん「北九州」にこだわった企画となっている。

 今回は2012年に「第56回岸田國士戯曲賞」を受賞したノゾエ征爾を作・演出に迎える。

 作品は“愛”というテーマに潔く真正面から向き合い、恨み、妬み、哀しみ、一色に染まり切れないさまざまな愛の色を描いた群像劇となっている。さまざまな“生きづらさ”を抱えた人々が“行きづらく”なっているという舞台美術にも注目だ。

 ノゾエは今回の作品について「北九州について語る作品ではなく、北九州の血が通う作品にしたい」と語っている。最近ではさいたまゴールドシアターの作・演出を手掛けるなど同世代の演劇人の中でも特に幅の広い活動をするノゾエが“北九州”という地で何を感じ、どんな作品に仕上げてくれるのか。

ヒーローとヒロイン『Prisoner』Ryan Adams

2017.02.16 Vol.684

 米シンガーソングライター、ライアン・アダムスの最新作。エモーショナルな歌声で世界中からリスペクトを集めてきた彼。最新作も決して期待を裏切らない。本人曰く「自分の中にあるいろんな欲望を反映した」という本作。タイトルは自らが自分自身の欲望の囚人になることがどんなことなのかということを意味しているという。ソリッドにささやくように、スタジアムを震わせるほどの壮大なサウンドに載せた歌声で、欲望、そして自分にとって本当に大切なものを歌う。より磨きがかかったヴォーカルがリアルな感情を伝える。12月の来日公演は大成功のうちに幕を下ろした。すでに次の来日が待たれている。

ヒーローとヒロイン『私』大塚 愛

2017.02.14 Vol.684

 話題のドラマ『嫌われる勇気』の主題歌。シンガーソングライターの大塚愛の最新シングルで、過去や未来、他人の評価にとらわれずに「私をもっと生きよう」というテーマで制作されたという。カップリング曲「サクラハラハラ」「女子シェルター」も合わせ、デジタルなアプローチをしたシングルで、どの曲も前向きでポジティブ、真っ直ぐに前を向いて進んでいく姿が浮かぶリリックがのせられている印象。アップテンポ、しっとりとしたミドル、聞きごたえのあるシングルだ。CD+DVD、CDシングルのほかにも、CDとBOOK、CD+GOODSの4フォーマットでリリースされる。

ヒーローとヒロイン『foot of the Tower』藤井尚之

2017.02.14 Vol.684

 サックスを吹きまくる??。藤井尚之の最新作はテナーサックス奏者として本人が全編吹いたインストゥルメンタルアルバム。前作『My Life』がシンガーとしての作品だっただけに彼のサックス演奏を堪能できる内容だ。クラシック、ジャズ、映画音楽、ビートルズと、藤井が影響を受けたものはもちろん、世界中で愛され続ける楽曲の数々をジャンルレスにプレー。甘くて苦いラブソング、セクシーでロックなナンバーなどオリジナル曲も多数収録している。ムードたっぷりでセクシーさも漂わせ、シルキーかつスモーキーな作品。温かいドリンクでも飲みながら堪能したい。大人のリスナー、そして早く大人になりたい人たちへおすすめの作品。

みっともなくてもいいじゃないか。『私はいったい、何と闘っているのか』

2017.02.13 Vol.684

 つぶやきシローによる、妄想ワールドさく裂の、切なくおかしい家族小説。伊澤春男、45歳。地域密着型スーパーマーケット、スーパーうめや大原店のフロア主任。店長の右腕として、店を自分がまわしているという自負はある。

 そんなある日、店長が急死。密かに次の店長は自分だと思っていた。しかし、他の人に「店長になったんだって?」と言われると「僕なんて店長の器じゃないですから。それに店長になるのが目的で働いてないし」と返してしまう。その裏で、静かにさりげなく店の改革に臨み、その改革が功を奏し、革新的なアイデアを持つ店長としてテレビの取材に。次の日から帽子をかぶらないと町を歩けなくなり、通称“店長ギャル”が店に押し寄せ、店頭には店長関連グッズが…。と、現実と妄想の境が分からなくなる世界へと突入していく。家に遊びに来た長女の彼氏にいいところを見せるための“ヘネシー作戦”、そして息子を野球とサッカーの二刀流に育てるための秘策などしょうもない事、荒唐無稽な事を大真面目に実行する春男。

 だが、妄想ワールドでは完璧な作戦のはずが、ちっとも思うようにいかない。家庭の問題だけでもあたふたしているのに、新しい店長は店になじまないし、万引犯による被害も見過ごせないものになってきた。陰の店長(のつもり)としては、店の一大事をなんとかしなくてはならない。そんな時、万引犯の犯行現場を目撃してしまい…。つぶやき芸の極みのような妄想小説だが、滑稽さの裏にある温かさが、読後感をさわやかな気分にしてくれる。おもしろくて、哀しく切ない、そしてほっこりとする不思議な作品だ。

【定価】本体1500円(税別)【発行】小学館

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