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カルチャー | TOKYO HEADLINE - Part 110
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やはり彼らは只者ではなかった『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』

2016.11.29 Vol.679

 奥さんが現役藝大生という著者によるノンフィクション。きっかけは、書斎で巨大な木の塊から木彫りの陸亀を掘り出したり、体に半紙を張り、自分の型をとっていた妻を見たこと。そこにまったく別の世界に生きる人の気配を感じたという。さらにダメ押しとなったのが、台所に転がっていたツナ缶。ツナ缶だと思ったそれは実はガスマスクで、藝大の生協に売っているという。そこから藝大に興味を持ち、妻に案内してもらいながら、藝大という名の秘境に足を踏み入れたのだ。

 上野にある藝大は、駅を背にして左側が美術学部の“美校”、右側が音楽学部“音校”に別れている。その境界線に立った著者はまず、見た目の違いに気づき、数分も眺めていれば、歩いてくる学生が音校と美校のどちらに入っていくか、分かるようになったという。そこから、取材がスタート。ちなみに、大学受験最難関の1つと言われている東大理3の、平成27年度の志願倍率は4.8倍。対して藝大の最難関、絵画科の同年の倍率は、なんと17.9倍になるという。藝大全体でならしても7.5倍で、その昔は60倍を超えたことも。

 超狭き門の藝大だが、著者がインタビューした学生はことごとくユニーク。しかも特別おもしろそうな人だけをピックアップしたというわけではない。小さい頃から漆が好きで、工芸科漆芸専攻に入りながら、絡繰り人形の制作に没頭している人、口笛をきわめ口笛で藝大に入った男、刺青に興味を持ち、絵画科日本画専攻に学ぶ元ホストクラブ経営者など。藝大には、そういう人を受け入れる懐の深さと、自主性を重んじ、学生のやりたいようにやらせる校風があり、これもまた信じられないことばかり。著者は美校、音校、両方のさまざまな学科の藝大生に、入学から卒業後のビジョンまで丁寧にインタビュー。謎に包まれた秘境の秘密が少しは分かる!?

ぐうの音も出ない、名盤確実「リアル・ロイヤル・アルバートホール」ボブ・ディラン

2016.11.28 Vol.679

 ノーベル文学賞受賞、連絡取れず、授賞式は欠席!? と話題を提供し、既に知られた名前をさらに知らしめた、米シンガーソングライターのボブ・ディランの最新作品。今から約50年前、1966年のイギリスのロイヤル・アルバート・ホールでのライブパフォーマンスの音源を使った。『ミスター・タンブリン・マン』『女の如く』『ライク・ア・ローリング・ストーン』などを収録している。この頃のディランはアコースティックとエレクトリックの二つの構成でライブを行っていた時代。12月7日には最新ベスト盤『ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・ボブ・ディラン』も発売。

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ぐうの音も出ない、名盤確実「THE BADDEST〜Collaboration〜」久保田利伸

2016.11.27 Vol.679

 今年デビュー30周年のアニバーサリーイヤーを迎えた久保田利伸が他アーティストとのコラボレーション作品をまとめた。国内外に拠点を置いて活動してきただけに、タッグを組んだアーティストはもちろん、作品もインターナショナル。日本語歌詞編、英語歌詞編にディスクが分かれていて、それぞれに珠玉の楽曲が収録されている。日本語歌詞編にはKREVAとの『M☆A☆G☆I☆C』、ナオミ・キャンベルとの『LA・LA・LA LOVE SONG』、『Soul 2 Soul feat.AI』など16曲。英語歌詞編もアンジー・ストーンとの『HOLD ME DOWN』など聴きごたえたっぷりの14曲。

[J-POP ALBUM]SMEレコーズ 発売中 初回限定盤(2CD+特典DVD)4200円 通常盤3600円(ともに税込)

聞いとかないと“ヤバイ”!「These Systems Are Failing」MOBY & THE VOID PACIFIC CHOIR

2016.11.16 Vol.678

 米アーティストのモービーがこれまでにない側面でファンを驚かせる。前作から約3年ぶりとなる新作、新しいプロジェクトの最初の作品となる本作はロックでパンク、エネルギッシュ。溜まった何かを叩きつけるような印象の作品だ。メランコリックでロマンチックなサウンドのイメージとは違う。自身の存在を広く知らしめることとなった『GO』を筆頭にクラブフロアの住人としての側面がフィーチャーされがちだが、本作は彼にとって音楽と触れ合った原点へ回帰した作品なのかも。初期衝動とはきっとこのこと。

聞いとかないと“ヤバイ”!「guidebook」lyrical school

2016.11.15 Vol.678

 ガールズラップのパイオニアグループ、リリスクことリリカルスクールがメジャーデビュー作となる初めてのフルアルバムを完成させた。結成は2010年とそこそこのキャリアを持つ彼女たち。その存在に注目が集まったのはスマホで動画を視聴する習慣をミュージックビデオに取り入れて制作した『RUN and RUN』のタテに展開するビデオだ。日本どころか世界にその存在を知らしめた彼女たちが満を持して放つアルバムだけに、大江千里、韻シスト、GAKU?MC、かせきさいだぁ、サイプレス上野ら一癖も二癖もある豪華なアーティストが集結している。

迷惑、顰蹙、無理難題。人生、困ってからがおもしろい。『ヴァラエティ』奥田英朗

2016.11.15 Vol.678

 奥田英朗の新刊短編集。と言っても、作品自体はずいぶん以前に書いたもので、単行本初収録のものを集めた蔵出し短編集だ。脱サラで会社を興し奮闘する男の姿を描いた「おれは社長だ!」と「毎度おおきに」は連作の短編。奥田には珍しいショートショート、イッセー尾形、山田太一との対談が2本、ほか短編4本という、まさにバラエティーに富んだ、奥田ファン待望の一冊。形式も書いた年代も、扱うテーマも全く違う作品は、奥田らしいユーモアあふれたものや、読んでいると胸が締め付けられるような切ないものまで多彩。渋滞中の車に、妻が知らない人を乗せ、その人たちが夫をいらだたせ、最後にはとんでもないことに巻き込んでいく「ドライブ・イン・サマー」。オウム真理教の手配犯が逮捕されたニュースを見て、それをヒントに、温泉街のレストランに住み込みで働く謎の女を主人公にした「住み込み可」。高校生の娘が、クリスマスに友達の家に泊るという“嘘”を見抜いてしまい悩む母親の姿にハラハラする「セブンティーン」。そして著者が7歳の時に伯母さんが死んだ実話をモチーフにした、少年と少女の物語「夏のアルバム」。まったく雰囲気の違う物語が読める贅沢な本だが、まとまりがないわけではない。そこにはユーモアや、人間の滑稽さ、膝を打つようなリアリティーのある描写など、そこかしこに奥田節のようなものが見え隠れし、おもちゃ箱のような楽しい構成でありながら、1冊の本として完結している。また、作品の間に収録されたイッセー尾形と山田太一との貴重な対談では、奥田がうまく2人の本音を引き出しつつ、奥田作品の原点が見える。本人曰く、“まとまらなかった短編集”をまとめて楽しめる一冊。

聞いとかないと“ヤバイ”!「The Party’s Over EP」Prophets of Rage

2016.11.14 Vol.678

 噂のスーパーグループの音源がついに到着だ。プロフェッツ・オブ・レイジは、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、パブリック・エナミー、そしてサイプレスヒルのメンバーが結成したグループ。「危険な時期には危険な音楽が必要とされる。今、我々はパワーを取り戻す時なんだ!」と混沌とした社会に対して拳を振り上げた。タイトルトラックのほか、パブリック・エナミーの名曲『Prophets of Rage』のバンドバージョン、ライブで披露したビースティー・ボーイズ『No Sleep Till Brooklyn』のライブ仕様のカバーなどを収録している。

人はなぜ、罪を犯すのか?『犯罪小説集』【著者】吉田修一

2016.10.26 Vol.677

 人間の内面、特に犯罪を犯す者の心情を丁寧に紡ぎ『悪人』や『怒り』など映画化され大ヒットした作品も多い著者の最新刊。

 小学校の帰り道にある一本杉の前で消息をたった少女。直前まで一緒にいたため、10年を経ってもなお罪悪感を持ち続ける友人。そして当初から疑われていた無職の男と村人たちの張り詰めた関係を描いた「青田Y字路」。名門の家に生まれ、何不自由なく育った男がギャンブルにハマっていく姿をスリリングに展開する「百家楽餓鬼」。

 そして鳴り物入りでプロに入団。華やかな経歴を誇りながら引退したが、その後もそのきらびやかだった生活が忘れられない元プロ野球選手の転落人生「白球白蛇伝」ほか5編を収録。

 それぞれ、犯罪に無関係だった人々が陥った闇と、その闇があぶり出す世界を表現した。きっかけは、執着だったり、嫉妬であったり、自暴自棄であったり、好奇心であったり、感情のすれ違いだったりと日常にありがちな些細な事。普通ならもつれることのないその些細な感情が、意図せず交錯し、やがてほどけないほどに絡まりあった時、悲劇への入り口が扉を開く。それに気づかずに踏み込んでしまった人々。最初から悪意があったわけではない。むしろ善意の人もいたはずだ。しかし、そこからは転がるように落ちていき、自分ではどうすることもできなくなっていく。この本を読むと、犯罪を憎む気持ち、人の弱さを笑う気持ち、転落する人生を憐れむ気持ちなどは起こらない。なぜなら、自分の身にいつ降りかかってもおかしくないと思えるから。そこにあるのはただ、壮絶で哀しい5つの物語だ。

ゲームでいつでもどこでも音楽の秋!「バンドやろうぜ!」

2016.10.10 Vol.676

食欲の秋、勉強の秋、運動の秋、ファッションの秋。この秋あなたは何をして過ごす? まだ決めていないのなら音楽の秋はいかが? 楽器が弾けなくても歌えなくても、楽譜が読めなくたって、ぼっちだって、「バンドやろうぜ!」は、いつでもどこでもバンド気分が味わえる青春リズムゲームアプリだ。

 ゲームにはそれぞれ独特な魅力を持つ4つの4ピースバンド。バンドにはそれぞれ何か問題や悩みを抱えながら、バンドの頂点を目指す。バンドごと、キャラクターごとのシナリオが用意されている。ストーリーパートと対戦式のライブパートで構成。シナリオは、試合形式のリズムゲームで戦うライブパートで増やしていく。

 ストーリーに彩りを加えるのは、生き生きとした映像などさまざまな演出。そして、キャラクターに命を吹き込む声だ。それぞれ人気声優たちが担当し、劇中の楽曲もキャラクター自らが歌っている。ゲームの世界観はぎゅっと固められていて、遊び始めたらバンドをやりたくなってしまうこと間違いなし。

アドバイスなのかバカの図鑑なのか…『バカざんまい』著者・中川淳一郎

2016.10.09 Vol.676

 ネットニュース編集者の中川淳一郎氏の週刊新潮での連載コラム「この連載はミスリードです」が本になった。

 日本中にあふれる「バカ」な人たちや現象を「コメンテーター編」「社会編」など大きく8分野に分け、そのならではの視点でツッコミ、そして切り捨てる。

 仕事柄ネット上のニュースをくまなくチェックし、ネット界隈の有象無象に絡まれる日々を送る中川氏だけにバカを見極める選球眼にはさすがなものがある。

 ただバカをあげつらうだけではなく「こういうことをするとバカにされますよ」というアドバイスが込められているようにも思えるし、その一方でひょっとしたらただひたすらにいらっとしているだけかもしれない…とも思わせるのが中川氏の巧みなところ。相変わらずの底の丸見えの底なし沼テイストに今回も手の平の上で泳がされる。

 最近バカな話が多すぎて忘れかけていた話題も思い出させてくれるというありがたい側面もある。

【LIVE REPORT】9.19/20 TOKYO DOME “BABYMETAL”

2016.10.09 Vol.676

 国内はもとより世界中で旋風を巻き起こしている女性3人組メタルダンスユニットBABYMETAL。そのBABYMETALが日本人アーティスト初となる英国ウェンブリーアリーナでのワンマンLIVEを皮切りに3回目のワールドツアーを開催。そのファイナルとして、9月19、20日に東京ドームでの初ワンマンライブ『BABYMETAL WORLD TOUR 2016 LEGEND ― METAL RESISTANCE ― RED NIGHT & BLACK NIGHT』が行われ、両日で自己最多の約11万人を動員、新たな伝説を築いた。

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