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カルチャー | TOKYO HEADLINE - Part 114
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家の中には秘密(ドラマ)がいっぱい『我が家のヒミツ』

2015.10.25 Vol.653

『家日和』『我が家の問題』に続く奥田英朗の家族小説シリーズ第3弾。家族という、社会の中で最も小さな単位の組織の中で巻き起こる、日常のささいな出来事。しかし、ささいだけど、本人や家族にとっては特別な出来事を、ユーモアと愛しさをもって描く。31歳の敦美の悩みは不妊。そんな時、勤めている歯医者にずっとファンだったピアニストが通院するようになり…(「虫歯とピアニスト」)。

 同期のライバルの昇進が決まり、53歳で会社での出世レースに完敗したことが分かり意気消沈する植村。有給をとって妻と旅行に行っている時に、ライバルの父親が死んだという連絡が。(「正雄の秋」)。

 16歳の誕生日に、実の父親に会おうと決めたアンナ。いざ対面すると、ハンサムでお金持ち、そして一流演出家として芸能界でも顔が広い有名人だということが判明し…(「アンナの十二月」)。

 母が急逝し、憔悴しきった父親を心配し、実家に戻った息子。そのあまりの落ち込みぶりに、どうすることもできない息子に、会社の上司が何かと話しかけてくる(「手紙に乗せて」)。

 隣りに引っ越してきた夫婦が息を潜めるように生きているのが気になって仕方がない妊婦の葉子。犯罪者かスパイではないかと疑い出し、ついに行動を起こす(「妊婦と隣人」)。

 平凡な専業主婦だった妻・里美が突然選挙に立候補すると宣言。小説家の夫ははじめ、距離を置いてその様子を眺めていたのだが、選挙活動をする妻の姿を見ていると心境の変化が現れる(「妻と選挙」)。

 どこにでもありそうな家族の話が、切なく、ユーモラスに、そして優しく描かれたほっこり系の短編集。

やせたってアンタの心はデブのままよ。

2015.10.11 Vol.

マンガ、サイコー!『「美学」さえあれば、人は強くなれる〜マンガのヒーローたちが僕に教えてくれたこと〜』 著者:ケンドー・コバヤシ

2015.09.28 Vol.

人間存在を揺るがす驚愕のミステリー!

2015.09.14 Vol.650

 ある町で連続通り魔殺人事件が発生した。目撃者の証言から、グレーのコートの男が重要参考人として浮上。所轄の刑事・中島と捜査一課の女性刑事・小橋がペアを組んで捜査にあたることに。しかし、2人に与えられたのは、地域の聞き込み。犯人に迫るような情報がなかなか上がってこない中、2人は聞き込み中に不審な男を見つける。職務質問をしようとしたところ、逃げる素振りをしたその男を捕まえると履いていたスニーカーには血がつき、リュックの中からは血のついた包丁が発見される。これで連続通り魔は捕まったかと思われたが、中島と小橋は、その男が犯人だとはどうしても思えないでいた。しかし、犯人逮捕を焦る警察はその男の犯行だと断定しかけ…。

 という事件と誰かの小さい時の火事の記憶、そして模倣犯の登場など、先がまったく読めない展開で進む第1部。何か不穏な空気をまとう不安をかき立てるストーリーが第2部で突如として動き出す。そこに記された“コートの男”の正体、そしてそれが明かされたことで、ますます迷宮にはまりこむ事件が、第1部とはまったく別の顔で進展し、読んでいるものの頭を混乱させる。さらにバツイチ刑事の苦悩と脳天気に振る舞う小橋の心の闇も徐々に明らかに。そして驚愕の第3部では、それらの謎をすべて回収してくれる展開に。そこにある運命に翻弄される男と女の悲しい人生が事件の核心だった。家族だけではなく、世の中、果ては神にまで見捨てられた人間は救われることがないのだろうか。

 著者初の警察小説は、事件の真相の解明とともに、人間の心の深淵を描き出す。

「早死の祟り」に取り憑かれた居候は幽霊嫌い!? 

2015.08.23 Vol.649

 輪渡颯介の大人気の「古道具屋 皆塵堂」シリーズ第5弾。病で亡くなった人の家財道具はもちろん、首吊りや一家心中のあった家からでも平気で古道具を持ってくるという古道具屋皆塵堂。そのため、店には幽霊が出るという噂もちらほら。そんな皆塵堂に新たな奉公人がやって来た。その連助という男、幽霊や呪い、祟りを一切信じていない。そのため、幽霊が見える太一のことも敵視し、いつかその化けの皮をはいでやろうと、常に目を光らせている。

 いつものように皆塵堂に、やっかいな幽霊騒動が持ち込まれるのだが、なぜか店主の伊平次は連助には、幽霊を見せないようにしている様子。しかも、何やらコソコソと調べている。実は連助が幽霊などを信じないのは、彼自身が早死にをするという祟りに取り憑かれていたからだった。そのため、幽霊が出ると噂の皆塵堂にあえて乗り込み、幽霊や祟りの類がインチキだということが分かれば、自分の祟りも嘘っぱちだと証明されると思ったのだ。そんな連助の気持ちが分かるから、伊平次はじめ、魚屋の巳之助、地主の清左衛門らの皆塵堂に集まる人たちが、人知れず連助の祟りの謎を探り、どうにかそれを取り払おうと、動いていた。

 幽霊騒動と平行して、祟られている連助を救う算段をする彼らは、無事に謎を解明し、祟りを解くことはできるのか!? シリーズを重ねるごとにパワーアップしていく怪談騒動は意外な方向へ向かう。巳之助と猫のほのぼのエピソードも健在なので、猫好きな人にもおススメ。

[STAGE]よみがえる名作を2選

2015.08.23 Vol.649

日本の30代『ジャガーの眼2008』

 2012年に上演された松尾スズキ作・演出の『ふくすけ』に出演した役者たちが集まって、昨年、この「日本の30代」を結成した。

 10年を超えるキャリアを重ねるなか、所属劇団でも重要なポジションを占めるようになり、それに伴い外部への客演も増えてきた。しゃにむに突っ走ってきた20代を過ぎ、役者としていろいろなことを考える余裕が出てきた。そして「これまでの作品からはみんなが想像できないような、もっと違った芝居がしたい」と思った者たちが自然に集まり、できたユニットだ。

 もともと松尾スズキのテイストに近い彼らではあったが、そんな思いもあったため、旗揚げ公演では文学座の鵜山仁に演出を依頼し、シェイクスピアの『十二夜』を上演。普段は見せない顔で、よそではあまり見ない十二夜を作り上げた。

 今回は木野花を演出に迎え、唐十郎の『ジャガーの眼2008』を上演する。“唐十郎”という絶対的な個性と“テント芝居”という幻想的なキーワードがついて回るこの作品は古くからのファンも多い。唐以外が上演するときも、割と近い関係の人やテイストを持つ人が手がけてきた。世代もテイストも違う彼らは果たしてどんな形のものを提示してくれるのだろうか…。

【日時】8月28日(金)〜9月7日(月)(開演は28・3日19時、29・7日17時、30・1・4・6日14時、2・5日14時/19時。31日休演。開場は開演30分前。当日券は開演45分前)【会場】駅前劇場(下北沢)【料金】自由席 前売3300円、当日3500円/指定席 前売3800円、当日4000円/高校生 前売1800円、当日2000円(日本の30代webのみ取扱い・当日身分証確認)【問い合わせ】リトル・ジャイアンツ(TEL:090-8045-2079=平日12〜19時[HP]http://www.nihonno30.com/)【作】唐十郎【演出】木野 花【出演】井内ミワク、井本洋平、延増静美、少路勇介、鈴真紀史、竹口龍茶、羽鳥名美子、平岩紙、町田水城、富川一人

ぶちギレる5秒前の知恵

2015.08.09 Vol.648

 精神科医による、感情的にならない極意がつまった本。会社でたまったマイナス感情が爆発する前にビジネスマンが読んでおくべき一冊。人間関係や仕事のストレスが原因で、心のバランスを崩す人が増えている現代。その症状が出る人もいれば、実は笑顔で働きつつ、大きなストレスを抱え、心が悲鳴をあげている人も。特に働き盛りと言われている40歳代の人にその傾向が多く見られるという。40歳代は上司と部下の板挟みとなる中間管理職とうい立場の人が多く、また激変するビジネス環境も、彼らを追い詰めている。

 その結果、鬱や引きこもりになる人もいれば、些細なことで感情のコントロールを失う、いわゆるキレてしまう人も。キレても状況は好転するどころか、ますます悪化し、自分自身も自己嫌悪に陥るというまさに悪循環。それにはストレスの正体を見極め、感情をコントロールして平常心を取り戻すことが必要だと著者は言う。マイナス感情が生まれる理由や会社の人間関係にイライラした時の対処法、感情的にならないための習慣、相手のマイナス感情をコントロールする技術など、精神科医が原因から解決法まで詳しく分析。具体的な体験談も豊富なので、あの時の自分はそうだったのかも…と思い当たる節がある人も多いのでは。「もう感情的にならない」極意を学んで、充実の40代、50代を迎えよう!

すべての猫が虹の橋で愛する人と再会できますように–

2015.07.25 Vol.647

「猫の世話をするだけの簡単なお仕事—喫茶虹猫」そんな求人募集を見て、獣医大学一年生の玉置翔はある古ぼけた喫茶店を訪ねた。医学部を目指していたのにすべて不合格で、浪人して挑んだ次の年もダメ。投げやりな気分で獣医大学を受け、たまたま合格したために、不本意に通っている彼はサークルにも興味がない。そこで学生課でなんとなく見つけた張り紙を見て、猫カフェだと思い応募したのだ。しかしそこで待っていたのは、「猫バカ」で引きこもりの宝塚的イケメンの美しきオーナー・鈴影サヨリと里親募集中の捨て猫たち。そして早速任された仕事は、厄介な婆さんが住む猫屋敷の掃除と店の猫に生涯愛してくれる飼い主を探してやること。軽い気持ちで始めたアルバイトは、重労働かつ非常に困難を極めるのだった。

 しかし、気が弱く小心者の翔は、なかなか「辞めます」の一言が言えず、ズルズルとバイトを続けていた。厄介な婆さんだけでもうんざりなのに、サヨリさん目当てにやって来る相田アニマルクリニック院長、子どもが猫に引っかかれたと怒り狂う榎田さんと、泣きじゃくるだけの奥さん、地域猫活動家の伊澤さん、白猫のアイをいつも膝にのせ佇んでいる美少年のヒカル君…などなど次々と面倒な事情を抱えたお客さんが現れる。寂しがり屋の人間たちと愛くるしい猫の日々を綴った9つのチャプターからなる長編小説はほっこりする物語であり、殺処分など現代日本のペットに関わる問題にもスポットを当てた問題提起の本でもある。

アフリカのジェントルマンシップ!

2015.07.12 Vol.646

 ピシッとしたスーツ、ネクタイにハット。ぶっといシガーはまるでアクセサリー。本作は、いわゆるファッションフォトをまとめたものとは一線を画する、アフリカのコンゴで息づく『SAPEURS(サプール)』という文化を写真で切り取ったものだ。

 エレガンスこそすべて。高級な服を着る人間はそれに見合う高貴さを備えていなければならない。おしゃれが好き! 着飾るのが好き!というのとは異なる、ひとつ生き方の選択をした人々の姿が収められている。

 ファッション文化ではかねてから注目されていた彼らだが、日本では、NHKのドキュメンタリー番組が取り上げたことで大きな反響を集めた。それがきっかけとなってこの話題の写真集の日本版が敢行されることになった。それぞれの生き方がにじみ出るショット、精神性が伝わるフレーズの数々に心を揺さぶられる。コーディネート、カラーの合わせ方など既成概念を覆されることしかり。ピシッと決めることの格好よさにしびれる。

人はなぜ、マツコ・デラックスを見てしまうのか?

2015.06.20 Vol.645

 テレビを語る上で、必ず話題になるのが視聴率。同じ時間帯に、同じようなキャスティングで、同じような内容であっても、視聴率が全く違うというのもよく聞く話。テレビマンは視聴率を上げるのに日々奮闘している。そんな視聴率及び、テレビの秘密を経営学の視点から徹底分析しているのが同書だ。著者は東京大学教養学部、米コロンビア大学経営大学院を卒業後、NHK、ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局を経て独立、現在は執筆とコメンテーターとして活躍している佐藤智恵。テレビ局内部にいた経験と、コンサルティングをする外部の目を持って鋭く突っ込みつつも、例を挙げ分かりやすい視点で解説している。

 マツコ・デラックスが出演すると視聴率が上がる理由や、テレビ東京に学ぶべき弱者の戦略、また、「半沢直樹」後継番組はなぜ視聴率が「半沢直樹」に及ばなかったのか、また池上彰はなぜ“最強”なのかなど。国内外のテレビ事情を知り尽くしているからこそなされる分析には思わず膝を打ってしまう。視聴率を分析し、その競争の勝者と敗者を知ることはヒットのセオリーを見つけること。「最近のテレビはつまらなくなった」と嘆く人、「なぜ同じ人が同じような番組に起用されるのか」と疑問を抱く人におススメ。テレビについて深く考えたことがない人でも、業界の裏のカラクリがわかるので、読み物としても楽しめる。もちろん、視聴率に悩んでいるテレビマンは必読!

アイドルになりたかった。ただそれだけだったのに。

2015.06.07 Vol.644

 こんなに女性アイドルグループがいる時代は珍しい。モーニング娘。辺りから大人数の女性アイドルグループが増えてきたが、なんといっても、会いに行けるアイドルとしてAKB48がデビューしたのが現在のアイドル戦国時代を作っているような気がする。なぜなら、テレビの向こうにいるアイドルは、会えないからこそアイドル。普通の女の子が簡単になれないから、あこがれの存在だったのだ。

 高校生ぐらいの若い登場人物の描写には定評がある朝井リョウの現代のアイドルを主役にした『武道館』。今のアイドルに課せられた、恋愛禁止、スルースキル、炎上、特典商法、握手会、卒業…など題材に、ただ歌って踊るのが大好きだった女の子が、悩み傷つき、何が一番大切なのかを考え、成長していく様子を描く。

 いつかは武道館ライブを目標に活動しているアイドルグループ「NEXT YOU」。そのセンターの杏佳がグループを卒業するとメンバーに打ち明けた。寝耳に水のメンバー真由、碧、波奈、るりか、そして愛子。言葉にならない子、泣きじゃくる子、引き止める子がいる中、その様子を撮影しているカメラのように、レンズを通し冷静に見ている子がいる。この様子ですら、撮影され何かの特典映像かファンサイトのネットへあげられ、商売に使われるのだ。ただアイドルになりたかった。それだけだったのに、人気が出て目標の武道館が近づくにつれ、自分が望むものが分からなくなってくる。アイドル側からアイドルを見つめた意欲作。

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