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カルチャー | TOKYO HEADLINE - Part 117
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体感せよ!小説で味わう料理の感動『麒麟の舌を持つ男』

2014.08.31 Vol.625

 主人公の佐々木充は、絶対音感ならぬ、絶対味覚を持つ料理人。しかし、完璧ゆえに妥協を許さず、その結果自分の店を潰してしまい、今は死期が迫っている人のリクエストに応じ「最期の料理請負人」をやっている。この仕事は、高額な報酬と引き換えに、依頼人が人生の最後に食べたいという思い出の味を完璧に再現するというもの。おおっぴらに看板は出せないものの、それなりに依頼は舞い込んでいた。そんなある日、佐々木のもとに、楊と名乗る中国人から連絡があり、奇妙な仕事を依頼される。それは、第二次世界大戦中に満州で政府の特命を受けた料理人・山形直太朗が作ったという幻のレシピ『大日本帝国食菜全席』を再現するというもの。しかも、その春夏秋冬の4冊、計204のレシピが書かれている『大日本帝国食菜全席』を探すことから始めるという依頼だった。どこにあるかもわからないどころか、その存在すらも疑わしいものだが、これまでとは桁違いの高額な報酬と料理人としての好奇心から佐々木はこの仕事を引き受けた。それをたどっていくうちに彼はとんでもない事実を知るのだが…。『大日本帝国食菜全席』とは一体なんだったのか? そしてそのレシピに隠された秘密とは? 作者はTV番組「料理の鉄人」のディレクターで、同書がデビュー作だという。巻末の『大日本帝国食菜全席』のレシピ名と料理の描写が食欲をそそられる料理エンターテインメントミステリーだ。

外国人は日本の「ここ」を愛している。

2014.08.18 Vol.624

 著者のステファン・シャウエッカーは、スイスのチューリッヒに生まれ、20歳の時にカナダに留学するまで、日本や日本人にまったく興味がなかったという。しかし、留学先で日本人と接するようになると、どんどん日本人が好きになり、日本という国に興味を持つようになった。その後、日本を旅行して、すっかり日本が気に入った彼は、「ジャパンガイド」という外国人向けに日本を紹介するポータルサイトを開設。現在では、日本を代表するサイトになり、多くの外国人に利用されている。そんな彼が自分で見た、体験した素晴らし日本の場所や文化を紹介したのが同書。京都・美山の藁葺き民家など心を惹かれた街や自然、お花見や紅葉、祭りなど日本人の生活に寄りそった行事や習慣、そして居酒屋や露天風呂でのふれあいの旅など、日本人でも行ったことがないようなところ、またしたことがないような体験談が満載。例えば、もっと注目されていい名所として、北海道の大雪山を上げ、中でも夏山のシーズンを過ぎて、秋を迎えるわずかな時期をすすめている。そこは日本で最初に紅葉が見られる場所で、彼自身毎年大雪山訪問を楽しみにしているという。そのように、普段はまったく意識することがなく気がつかなかった日本の魅力や外国人が感じる意外な魅力も知ることができる日本再発見ガイドブック。大きなショックを受けたという東日本大震災にもふれ、東北の復興を世界に発信し続けることが使命だという著者の日本愛あふれる一冊。

おめえに教えてやるよ。人生の勘どころってやつを。『蔦重の教え』著者:車浮代

2014.08.02 Vol.623

 55歳のリストラ寸前の崖っぷちサラリーマン、武村竹男(タケ)がひょんなことから江戸時代へタイムスリップ。しかも、転がり込んだのがあの蔦屋重三郎の元だった。蔦屋重三郎は、吉原のガイドブック『吉原細見』ほかいくつものベストセラー本を出版したほか、写楽や歌麿を生み出し、世に出したことでも知られている天才プロデューサーだ。タケはなぜか、23歳の青年としてタイプスリップし、蔦重の元で働きながら、商売のこと、人との付き合い方、成功するための方法、ひいては人生の極意を学んでいく。同書は「時空を超えた実用エンターテインメント小説!」とうたっているように、蔦重の教えは現代に通じるばかりか、世の中の真理をついているものばかり。タケではなく、思わず自分の手帳に書き留めておきたくなる言葉が多い。また、浮世絵、料理、習慣など江戸時代の風俗が生き生きと描かれているので、時代小説としても楽しめる。そしてなんと言っても、浮世絵師たちばかりではなく、そこに登場する人たちが織り成す日常生活が興味深く、あらためて違う視点から歴史の勉強をしてみたくなる。平成の時代に戻ったタケのリストラに怯えやけくそになった人生が、蔦重の教えでどんなふうに変わっていくのか、いかないのか…。歌麿の浮世絵に隠された驚くべき真実とは? 蔦重を知っている人には興味深く、知らない人も楽しめる時代小説だ。

業界最大のタブーからあなたと家族を守る

2014.07.20 Vol.622

 食のプロや業界関係者の間で「食品業界を知り尽くした」と言われる男が外食、中食産業の衝撃の「裏側」を暴露。ファミレスや居酒屋、回転寿司などのチェーン店に覆面調査に行き、リポートした結果なども掲載。例えば、某大手ファミレス・チェーン店のハンバーグにはリン酸塩、植物性蛋白、PH調整剤、乳化剤、着色料、グルタミン酸ソーダなどが入っているという。ビーフ100%と言いながら、ほかの肉も混ぜられているかも知れないと指摘し、さらに植物性タンパクを入れ、かさ増しし、そのせいで白っぽくなったものを着色料で肉の色に近くしていると言う。読んでいるだけで気分が悪くなってしまいそうだが、確かにコンビニ弁当のラベルを見ると、著者が指摘したようなものがたっぷりと…。コンビニ弁当などの場合は表示義務があるが、外食や中食ではそうはいかない。大手ファミレスや居酒屋では、専用のセントラルキッチンに食材が集められ、下ごしらえされ、加工調理し、各店舗に半調理済みメニューが運ばれている。それを各店舗で温めたり、解凍したりするだけで提供している。サラダなどは、カットしてから使用するまでに時間がかかるため、次亜塩素酸ソーダの液で洗浄・殺菌されたカット野菜を使用している店も多いとか。読後、外食や中食のメニュー選びが劇的に変化するだろう。ちなみに、「いい店」「おいしい料理」紹介や見分け方も解説しているので参考にしてみよう。

突然襲った不眠、幻聴、妄想−本当に精神疾患なのか?

2014.07.05 Vol.621

 目が覚めると拘束服を着せられ、ベッドに固定されていたスザンナ。頭にはプラスチックのワイヤーがつながれ、手首には「逃走の恐れあり」と書かれたビニールバンドが…。それはある朝突然だった。ニューヨーク・ポストで記者として働いていたスザンナは、24歳の時、体に異変を感じた。最初はダニに噛まれただけだと思っていたが、やがて体が痺れ、幻聴や幻覚を体験する。さらに口から泡を吹き、全身を痙攣させる発作にも見舞われるように。病院に行くと、精神疾患と診断され、てんかん、双極性障害、統合失調症などの治療をするも病状は悪化する一方。病名も分からず、原因も不明の症状に家族は疲弊し、医師らも打つ手なしの状態。その時、治療チームに加わったある医師が、入院していたニューヨーク大学では前例のない病気であることを発見。治療が施される。入院中の記憶がほとんど抜け落ちていた著者が、記者魂を発揮し、正気と狂気の境界線を行き来していた日々を、医師や家族への聞き取り調査、医療記録や家族の看病日誌、また病院のカメラで撮影されたビデオカメラの映像から記事にした完全ノンフィクション。217人目の患者となった彼女は、ニューヨークという大都会で、最新の医療をしても見つからなかったその病気でどれだけの人が精神病院などに入院させられ、治療の機会を失っているのかと危惧する。同書は、そんな患者や家族にとり、希望の光にもなるだろう。

スター俳優が大集合!!『利休にたずねよ』

2014.06.22 Vol.620

 利休の茶は、若き日の恋から始まった—。山本兼一の第140回直木賞受賞作を豪華キャストを揃えて映画化。日本文化の美を追求した映像と、今まで見たことのない斬新な利休像に、高い評価を得た一本。第37回日本アカデミー賞では優秀賞をはじめ9部門受賞、モントリオール世界映画祭では最優秀芸術貢献賞を受賞した。

 主人公の千利休役に市川海老蔵。利休に寄り添う妻・宗恩に中谷美紀。利休に惚れ込む織田信長役に伊勢谷友介。利休へに複雑な感情を抱く豊臣秀吉役に大森南朋。そして利休の師・武野紹鴎を海老蔵の父、故・市川團十郎が演じる。

 秀吉から切腹を命じられた茶人・千利休。その胸によみがえるのは、若き日に出会った、ある女との秘められた思い出だった。

父から息子への愛情を、いつも弁当が運んでくれた。

2014.06.21 Vol.620

 TOKYO No.1 SOUL SETや猪苗代湖ズで活躍する、ミュージシャンの渡辺俊美が、一人息子のために、作り続けたお弁当の写真をエッセイとともに綴る。

 離婚し父子家庭となった著者は、高校に合格した息子に「お金を渡すから自分で好きなものを買うか。それともパパがお弁当を作るか。どっちがいいの?」と聞くと、息子が「パパのお弁当がいい」と答えた時から、3年に及ぶお弁当作りがスタートした。「3年間、毎日お弁当を作る」ということを目標に交わした男と男の約束。

 二日酔いの朝も、ツアーから帰ったばかりの日の朝も、早く仕事に行く日の朝も、休むことなく作り続けた記録がこの本に詰まっている。地方に仕事に行った時には、その土地の名物や調味料を探すなど、お弁当を作っている時間以外も息子のことを思う父。ページをめくるごとに、お弁当の内容と盛りつけのクオリティーが上がっていくのが分かるのが微笑ましい。お弁当についての一言コメントとエッセイの他、お弁当作りのコツや調味料や道具、料理を学んだ本などのコラムも楽しい。高校生活を締めくくる、461個目のお弁当は果たしてどんなお弁当なのか。その目で確かめて見てほしい。親子の愛がいっぱい詰まったお弁当の写真を見ているだけで、心が温かくなるお弁当本の名著が誕生した。

マエストロたちの表現力に圧倒『風立ちぬ』

2014.06.08 Vol.619

 2013年、日本の興業収入100億円を超える大ヒットを巻き起こした、宮崎駿監督、5年ぶりの監督作。ゼロ戦の設計者・堀越二郎と作家の堀辰雄をモデルに、1930年代の日本で飛行機作りに情熱を注いだ青年の姿を描く感動のアニメーション。『エヴァンゲリオン』シリーズなどを手掛けた庵野秀明が主人公・二郎の声に抜擢されたことも、大きな話題となった。二郎と恋に落ちる美しいヒロイン・菜穂子の声を『てっぱん』の瀧本美織。他、二郎の親友役で西島秀俊、二郎に大きな影響を与えるイタリア人飛行機製作者・カプローニ役に野村萬斎。主題歌には『魔女の宅急便』以来24年ぶりのタッグとなる松任谷由実の『ひこうき雲』。切なくも爽やかな歌声とメロディーが映画の余韻を広げてくれる。大正から昭和へ。不景気、大震災、そして戦争…。生きるのに辛い時代を、当時の若者たちはどう生きたのか。巨匠・宮崎駿、渾身にして“最後”の作品。

腸内細菌70%日和見菌を味方につける!

2014.06.08 Vol.619

 最近“腸内環境を整える”とうたった商品や、その重要性を解く本などが多く出版されるなど“腸”は健康に大きく関わっているらしい…と認識されつつある。著者は腸や便の研究で知られ、メディアでも注目されている「うんち博士」こと辨野義己。腸には「第二の脳」があり、脳同様、感情や判断を司る非常に賢い臓器なので、腸内環境を良好にし、免疫力を高めることで健康につながると言う。同書では、正しい腸内環境の改善を行い健康的な生活を送る方法として、腸内細菌のバランスの整え方や、腸内細菌がよろこぶ生活習慣、がんやインフルエンザ、花粉症、老化、うつ病などの予防法、腸の常識・非常識について解説。大腸がんになるかは、「10年前の食事が決定づける」と言われている。それは「10年前の食事が、今の腸年齢を決めている」ということでもある。「10年前、ろくな食事を摂っていなかった」という人でも遅くはない。「今の食事が、10年後のあなたの腸の状態を決める」からだ。簡単に腸内環境を整える改善方法も多数紹介。今すぐ実践して“美腸”を取り戻そう。

日本がなくなってはじめて分かる、ここがスゴイ!

2014.05.24 Vol.618

 日本が消えたらどうなるのか? そんなことは考えたこともないけど、そんなに影響がないかも…と思った方、この本を読んだら、その考えが大きな間違いだとういうことに気づくだろう。日本はいろいろな分野で結構派手に、あるいはひたすら地道に世界への大きな影響力を持つ国なのだ。どんなに有能な社員が会社を辞めても、それでも会社は普通に回っていくように、日本がなくなっても別の何かがどこからか穴埋めしてくれるだろう。しかし、その穴はとてつもなくデカいと著者は言う。普段は取り立てて突出していると感じることのない事でも、実はすごいことをして世界の国々を支えているのだ。高級ブランド消費大国としての日本の経済力、ボーイング787の全体の3割を日本で作っているという技術力、漫画やアニメといった文化力はなんとなく分かる。それ以外にも身近すぎて意外に気がつかないことも多い。例えば、圧倒的にハイレベルな日本製の紙おむつ。これがなくなれば、世界中の赤ん坊は毎日泣き叫ぶことになるのではと心配される。モノ以外にも日本人や日本人気質が消えたらどうなるかなど、概念や事象からのアプローチも興味深い。

お前の人生も、破滅させてやる!『「ストーカー」は何を考えているか』

2014.05.11 Vol.617

 著者は、ストーカー問題をはじめDVなど、あらゆるハラスメント相談に対処するNPO法人「ヒューマニティ」の理事長で、これまで500人以上のストーキング加害者と向き合ってきた専門カウンセラー。ストーカーの心理と行動、思考パターン、危険度、実践的対応をこれまで手がけた事例とともに説明する。ストーカーをめぐるトラブルは年間2万件も起きているというが、殺人という最悪のケースに至るケースは後を絶たない。難しいのは、ストーカーは決して一括りには考えられないこと。人格も被害者と加害者の関係性も違うので、正解と言える対処法がない。また警察の対応もまちまちだ。厳しく対応しているところもあれば、民事不介入とばかりに逃げ腰のところもある。さらに、いったん収まったかに見える加害者の怒りや憎しみが、いつ何時牙を向いて襲って来るか分からないので、長期間にわたる緊張で、被害者のほうが精神的にボロボロになるケースも多い。同書では、具体的な対策や警察以外の民間相談所のこと、加害者をカウンセリングする必要性を説く。誰もが当事者になりうる問題だが、その闇は深い。

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