昨年「日本の生肉食と馬肉を守り、全国での馬肉食でのさらなる普及」を目指し、社団法人日本馬肉協会が発足。その活動のひとつとして同書が刊行された。プロの調理人、飲食店経営者向けに構成されているが、多彩なレシピ、馬肉に関する基礎知識や部位別の特徴、おいしい店の情報などが綺麗な写真とともに紹介されているので、普通に見ても楽しめてためになる本だ。馬肉は栄養価が高く低カロリーなので、美容や健康にもいいと最近人気の食材。それに何より、これからも継承していかなければならない日本の食文化でもある。馬肉だけではなく、肉好きなら手元に置いておきたい一冊。
カルチャーカテゴリーの記事一覧
BOOK この気持ちはロマンチックが見せた幻影、それとも本当の恋 !?
街ではロマンチックな気分にさせるウイルスが蔓延し、あっちでもこっちでも、ロマンチックなカップルが多発中。しかし、この本に登場する人たちはみんな、そんなロマンチックなどお断り!とロマンチックに浮かれている人を斜めから見ているような人ばかり。ずうずうしいクマ男のことが気になろうとも、ストーカー男に心が揺らごうとも、失踪した旦那を憎みきれなくても、ロマンチックなんて認めない! 果たしてそれは本当にロマンチックウイルスのせいなかの? そしてまた、このなんだか分からない気持ちは、ロマンチックが見せた幻想なのか? ちょっと不思議な恋愛小説集。
BOOK おいしさや値段だけで選んで大丈夫ですか?
子どもの口に入りやすい上位200以上の商品を完全網羅した、不安食品見極めガイドが発売された。子どもが大好きなジュースやお菓子、ファストフード、冷凍食品…。健康のことを考えると、なるべく食べさせたくないのが親心。しかし、そう言っていられないのも現実。だったら“より安全なほう”を選びたい。同書は、商品に含まれる成分を客観的に分析、その商品のどの原料がどんなふうに体に影響を与えるのか、もしくは問題があるのかを、二者択一でハッキリと指摘。食品を目次で検索し、そのページを開いただけですぐに“食べるならどっち!?”を判断できる便利本。
BOOK ここは女のザンゲ室。働く女性のリアルな悩みに理恵子ママが切り込みます
シリーズ12万部を突破した『スナックさいばら おんなのけものみち』の第2弾は、働く女性に捧げる応援歌。仕事に恋愛、人間関係に疲れ果てても、人生は笑って過ごしたい。くさくさして、やさぐれ気分になった時、ちょっとだけ愚痴を言ってみたくなることだってある。そんな顔で笑って心で泣きながら頑張っている女性に理恵子ママがエールを贈る。69人のセキララな人生に、「わかるわかる」と相槌を打ちながらも、「私も経験したよ」ともっと壮絶な人生を語る理恵子ママ。「立ち向かうな!バックレろ!」。逃げるが勝ちの人生もあるさと、優しく背中を押してくれる一冊。
演出の妙を感じさせる作品 世田谷パブリックシアタープロデュース『オセロ』
常に独創的な作品を発表する世田谷パブリックシアターが、またもや新たなる挑戦に乗り出す。
今回の題材はシェイクスピア四大悲劇のひとつとして知られる『オセロ』。そして白井晃が『オセロ』を現代の視線で再構成・演出する。白井がシェイクスピアを手掛けるのは遊 機械/全自動シアター時代以来となるから、それだけでもレアといえばレアなのだが、今回はなにやら演出がかなり特殊なことになっているという。
俳優は単にその役を演じるだけではなく、“素の俳優”と“俳優が演じている役”という二重構造の中で演じ、心情をシンクロさせていく。演出家は本来の意味の役割を越え俳優に関わろうとし、俳優は時として素の心情で共演者に嫉妬の目を向ける…。
例えば舞台に立つ仲村トオルは、その時「オセロ」なのか、「オセロを演じる俳優」なのか、それとも「素の仲村トオル」なのか…といった案配。
二重構造というと劇中劇を思い浮かべるかもしれないが、今回の場合は異次元というか異空間といった趣。劇場構造をも駆使した壮大なる挑戦ともいえる作品。
BOOK 人生って前に進むことしかできないから part1
6年付き合った恋人と別れ9歳年下の男性と交際中の歯科医師の桃。桃の親友の響子、響子の母親で、同棲中の恋人を残し急死してしまった和子。そして、そんな彼女たちの恋人、配偶者、元彼たち。誰かを求める思いに、あまりに素直な男女たち“はだかんぼうたち”が、約束も束縛も将来の展望もない恋愛に身をゆだねていく。
桃の親友・響子は4人の子持ち。元暴走族の旦那と子どもの世話に明け暮れながら家族のことを素直に愛している女性だ。そんな響子に桃の新しい恋人は惹かれていく。しかもそれを桃に隠そうともしない。その現実に違和感を持ちながらも、別れることも、彼らを責めることもしない。「彼と私は似た者同士だ」と桃は思う。
終わりもない、答えもない恋愛だが、登場人物たちは、小さな喜びや嫉妬、ときめきや寂しさといった感情を大事に抱えながら日々生きている。小さな嘘や本心を隠しながら。
痛みを引き受け、温もりを受け入れ、折り合いをつけながら、愛を求める姿は切ない。しかし心に大きなものを秘めながら、淡々と日常を生きる彼女や彼らに共感できるのはなぜか? さざ波のような小さなザワザワを感じながら、大波にのみ込まれないように静かに生きることが、自分を守ることだと知っているから。
BOOK 人生って前に進むことしかできないから part2
作家、コピーライター、漢字セラピストのひすいこうたろうと、企画プロデューサー石井しおりの共著の、常識にとらわれず人生を切り開いた先人たちの名言とエピソード集を集めた本。心理カウンセラー資格を持つひすいは、『3秒でハッピーになる名言セラピー』がベストセラーになり、名言やセラピー本を多数出版。無料配信中の『3秒でHappy?名言セラピー』には、2万7000人が登録。人生をハッピーにする名人なのだ。
目次のあと、1番最初のページにはアインシュタインの「常識とは18歳までに培った偏見のコレクションである」という名言が。この言葉から著者は、「常識は国が変われば非常識になりえます。常識は時代が変わっても非常識になりえます」と説明。そこから自分が常識だと思うことを疑うこと、そして疑うことで、自分の思い込みや価値観に気づくことができると言う。
名言を発した人の言葉を解説し、成功エピソードを紹介することで、より名言の意味を理解することができるのだ。選択に迷った時、無難なほうを選択しがちな気弱な人に勇気を与える一冊。
BOOK 耳を澄ませば、彼らの声が聞こえるはず
テレビや舞台、音楽などさまざまな分野で活躍するいとうせいこうが、16年ぶりに新作小説『想像ラジオ』を発表した。同作は2013年の『文藝』春号に掲載されると、すぐに話題となり、品切れになる書店が続出、入手困難に。さらに、インターネットやレビュー、ツイッターなどにも多くのコメントが寄せられ、発売前に重版になるという異例の事態となった。
物語の主人公はDJアーク。彼は海沿いの町の高い杉の木のてっぺんに引っかかりぶら下がりながら、「想像ラジオ」という番組を発信している。アークの発信する電波が“想像”であるなら、リスナーも“想像”の中で受信する。軽快におしゃべりを続けながら、時には音楽を流しながら、リスナーに語りかけたり、リスナーからの手紙を読んだりするアーク。
いつどこにいても受信できる「想像ラジオ」は、広島、長崎、東京、神戸、そして3.11以降の東北など、生きるものと死ぬものの世界がつながるところに流れてくる。死にゆくものが語りたいこと。生きるものが知りたい死者の思い。そうやって、私たちは「想像ラジオ」の中で、会話をすることで、悲観、絶望感、深い悲しみといった感情を整理していくのかも知れない。
DJアークはなぜ、そんな所で「想像ラジオ」を発信しているのか。彼が待っている〈声〉はいったい誰の声なのか。大切な人に伝えたい、大切な人の言葉をもらさず聞き取りたい。そう願えばあなたにも「想像ラジオ」がきっと聞こえてくるはずだ。
歌舞伎俳優の”タレント本”
四代目市川猿之助襲名を記念し「僕は、亀治郎でした。」が発売された。亀治郎時代の歩みを写真と文章で丁寧に紹介。140年間1日も絶えたことのない「猿之助」という名前を襲名するということについての思いを率直に語ったエッセイ。そしてその襲名公演の舞台裏も余すところなく披露している。さらに、梅原猛、三谷幸喜、蜷川幸雄による亀治郎へのメッセージほか、佐々木蔵之助や市川染五郎との対談、福山雅治とのツーショット写真まで! 譲れない美学を持つ亀治郎の哲学「カメテツ」ベスト28、歌舞伎のことからプライベートなことまで答えた100問100答など、亀治郎の魅力が凝縮された歌舞伎フォトブック。
「雪と珊瑚と」
「雪と珊瑚と」
【著者】梨木香歩 【定価】本体1500円(税別) 【発行】角川書店
鋼鉄のロボットに託された、親子の絆『リアル・スティール』
人間によるボクシングがすたれ、ロボット同士を戦わせる格闘技が世界を熱狂させている近未来を舞台に、試合を通して絆を取り戻していく父と息子の姿を描く、この冬イチオシの感動大作。スティーブン・スピルバーグとロバート・ゼメキスという巨匠2人の製作のもと、『ナイトミュージアム』シリーズを大ヒットさせたショーン・レヴィ監督がメガホンをとった。かつては才能あふれるボクサーだったが今では落ちぶれたロボット格闘技のプロモーターとして暮らすチャーリー役に『X-メン』シリーズのヒュー・ジャックマン。息子・マックス役を演じた新星ダコタ・ゴヨは、本作の熱演で天才子役として一躍注目を集めている。2人を見守る女性・ベイリー役にドラマ「LOST」シリーズのエヴァンジェリン・リリー。CGと実写で登場するロボットのリアルな迫力に、一見SFアクションかと思われがちだが核となるのは親子の成長物語。スクラップ同然のロボットで試合に勝ち進んでいくうちに、絆を深めていく親子の姿が感動的。日本のロボットアニメへのオマージュが見て取れるのも楽しい一本だ。