「まるでタイムスリップしたみたい……」
青森県八戸市の中心地から少し離れた場所にある「新むつ旅館」。訪れると、誰もが安直な感想を思わずポツリとつぶやかざるをえない。コメントとしては0点の感想。でも、時代のエアポケットに取り残されてしまったかのような圧倒的存在感は、冗談抜きで、明治、大正時代に戻ってしまったかのよう。無意識に冒頭の言葉を紡いでしまう。
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青森県八戸市の中心地から少し離れた場所にある「新むつ旅館」。訪れると、誰もが安直な感想を思わずポツリとつぶやかざるをえない。コメントとしては0点の感想。でも、時代のエアポケットに取り残されてしまったかのような圧倒的存在感は、冗談抜きで、明治、大正時代に戻ってしまったかのよう。無意識に冒頭の言葉を紡いでしまう。
そりゃもちろん、静岡市が誇る上写真のような茶畑越しの富士山を拝めるなら最高だけど、人生はそんなに都合よくはいかない。それに、「制約はイノベーションの母」とも言われているわけで、新たな発見につながることだってある(はず!)。というわけで、もしも富士山が顔を出さなくてもガッカリしなくて済む静岡市の魅力的なスポットを紹介したいと思う。
景勝地・三保松原にほど近い東海大学海洋科学博物館は、1Fが水族館部門、2Fが科学博物館部門の展示で構成されている、“エンタメ”と“教養”がつまったスポット。約400種類(深海生物も約50種類)6000尾の魚を展示する水族館でありながら、大規模な海洋科学博物館としての側面を持つ施設は、日本全国広しと言えどココだけ。あのさかなクンも絶賛する“学べる水族館”として、人気を博しているのだ。
中でも、10m×10m×6mの巨大水槽は圧巻。体長2mを超えるシロワニを始め、約50種1000個体以上の魚たちが優雅に泳ぐ姿は、「富士山なんて最初から見れなくても良かったんだ」と、妙な心の安らぎを与えてくれる。また、同施設の人気者・クマノミをフィーチャーした「くまのみ水族館」は、世界中のクマノミ約20種を展示するだけではなく、クマノミの仲間にエサをあげることができる水槽もあって子どもたちから大人気だ。「ニモ! ニモ!(ディズニー・ピクサーの名作アニメーション『ファインディング・ニモ』)」と気持ち良く魚を見つめて連呼している子どもに対して、「ニモのモデルはクラウンフィッシュだよ」などと野暮なことは思わないように。水族館を楽しむ、その気持ちが大事なの!
2Fの科学博物館部門は、駿河湾の地形や海に含まれる生物資源や鉱物資源、波や風のエネルギー資源など、海が持つさまざまな資源を展示している知的探求心が満たされる場。駿河湾は深海2500mまであるため、富士山山頂までの高低差は、なんと6000mを超える。地形のダイナミズムや、地形によって生み出される資源などなど、なぜゆえ駿河湾が豊かなのかを、「ギョギョギョ!」と驚きながら学ぶことができる。実験装置を動かしたりして、楽しみながら海そのものも理解できる「うみの研究室(コーナー)」もオススメ。単に“鑑賞する”だけで終わらないところが、水族館+海洋博物館、“二刀流”の東海大学海洋科学博物館の魅力だろう。
【東海大学海洋科学博物館】http://www.umi.muse-tokai.jp/
日本国内のレッサーパンダの繁殖計画を担っている静岡市立日本平動物園は、“レッサーパンダの聖地”と言われているほど、レッサーパンダの頭数が多い。動物の生態や能力を、自然な姿として動物園内で誘発させることで、来園者に飽きさせない工夫をするレッサーパンダの「行動生態展示」に優れ、屋内施設「レッサーパンダ館」では、高低差のある遊具でのびのびと動き回る愛くるしい姿を見ることができる。あの“立ち姿”で一世を風靡した風太くんも日本平動物園で生まれたOBだったりする。
「レッサーパンダ館」は、温度管理されているため、来場者もレッサーパンダも快適だ。暑さに弱いレッサーパンダたちは、夏日ともなればまったく動いてくれないが、屋内施設では無問題。四川省やネパールの山奥で暮らす動物だけあって、冬は大得意の季節なので、秋以降に訪れると屋外の展示スペースでも活発に動き回る姿が予想される。ちなみに、レッサーパンダの立ち姿は“威嚇ポーズ”なので、「かわいい!」とカメラを構えるよりも、嘘でもいいから「うぉっ!」と驚いてあげてからカメラを構えたほうが、レッサーパンダ的にはうれしいらしい。この愛らしい姿を見れただけで、「富士山が見れなかった」なんて後ろ髪は気持ち良く断髪できる。「富士山? なにそれ、美味しいの?」。もちろん、レッサーパンダ以外にも、「猛獣館299」、「ペンギン館」など見ごたえ十分です!
【静岡市立日本平動物園】https://www.nhdzoo.jp/
「富士山が見えな~~いッ!」。“読めな~いッ”よろしく、ハズキルーペばりに曇天・雨天に発狂してしまいそうになっても、三保松原は見ておくことをオススメしたい。大正11年(1922年)、日本初の名勝に指定され、平成25年(2013年)には世界文化遺産の構成資産として登録された三保松原。たしかに富士山は見えないかもしれないが、海岸線を雲海のごとく覆う松林の光景は、ただただ美しい。
とりわけ、御穂神社と松原を結ぶ全長500Mの松並木「神の道」は、天候関係なしに歩いて損のないホーリースポット。樹齢200~400年と言われる老松に囲まれた厳かな松並木は、松の保全のため根を踏まないようボードウォークとして整備されているので、歩きやすさも抜群。また、ボードウォーク仕様になっていることで、能における橋掛かり的な舞台装置のような幽玄さを感じる点も面白い。歩いているだけなのに、背筋がピンと伸びるような厳かさが漂い、夜間のライトアップ時ともなれば、まるであの世とこの世を結ぶような幻想的風景が広がる。富士山の眺望関係なく訪れておきたい場所だ。
その「神の道」の先にある「みほしるべ」では、三保松原の背景や文化、松の生態などを知ることができる。2019年3月にオープンしたばかりとあって、館内もとても清潔感あふれる。三保の歴史、富士山信仰、猜疑心を恥じて人間の欲を捨て羽衣を返す物語“三保の羽衣伝説”……映像や展示物を通じて、なぜ人は松に魅せられ、松に気高さを感じてしまうのか、その謎が解明される歴史好きにはたまらないスポットだ。屋上から富士山を眼前に眺望できる好立地にあるため、晴れている日は絶対に訪れておきたい新名所だろう。
【静岡市三保松原文化創造センター「みほしるべ」】https://miho-no-matsubara.jp/center/
静岡市清水区に暮らす人にとって憩いの場であり、ソウルスポットとも言うべき場所がS-PULSE DREAM PLAZA(エスパルスドリームプラザ) である。館内には、さまざまなアミューズメントパークや食事処が集まり、「駿河みやげ横丁」に行けば、静岡市の名産品がズラリと並ぶ。中でも、館内で目を引くのが「清水ラムネ博物館」、「ちびまる子ちゃんランド」、「みんなの学校給食」。
「清水ラムネ博物館」は、辛子めんたいコーラ、カレーパンサイダー、うなぎコーラなど、「ッ!?」と思わず二度見してしまうサイダーを含め、50種類以上のバラエティ豊かなラムネ・サイダーを展開する、まさに気の抜けないスポット。すべての商品は、静岡県唯一の老舗ラムネメーカー・木村飲料のもので、戦後、全国に2000社以上あったラムネメーカーは時代とともに淘汰され、現在は100社ほどに激減しているという。「清水ラムネ博物館」では、激動の時代を生き抜いてきたラムネ・サイダーの歴史を振り返るとともに、大正~昭和初期の貴重なラムネビンや、当時使用されていた機械の展示なども行っているため、ラムネ・サイダーに詳しくなれるのも◎。美味なサイダーに加え、“怖いもの見たさ”ならぬ“怖いもの飲みたさ”なサイダーも購入して、あれこれ飲み比べるといいだろう。「清水ラムネ博物館」のお隣には、まぐろ類缶詰日本一のシェアを誇る静岡にちなんだ、さまざまな缶詰が揃う「清水かんづめ市場」もあるので、ここでしか目撃できないお土産をゲットしてほしい。
「ちびまる子ちゃんランド」は、作者のさくらももこ先生が旧清水市(現在の静岡市清水区)出身という縁で、1999年にオープンしたテーマパーク。劇中同様、昭和40年代をリアルに再現したセットや、まる子、たまちゃん、友蔵などなど、おなじみのキャラクターがパネルで勢ぞろいする。佐々木のじいさんなど、好きな人にはたまらないキャラクターも忘れていないところに、同テーマパークの完成度が表れている。「ちびまる子ちゃんグッズショップ」には、ステーショナリーやハンドタオルなど多岐にわたってオリジナルグッズが用意されており、気が付くとあれもこれも買ってしまうに違いない。だって、あまりにもちびまる子ちゃんの世界観を踏襲した郷愁を誘うデザインが秀逸なんだもの。雨だろうが雪だろうが、デザインで描かれた富士山とまる子を見れたら、ゆめいっぱい、です。
そして、「ちびまる子ちゃんランド」のお隣には、あげパン、ソフトめん、冷凍みかんなど、給食の定番メニューを“あの頃の味のまま”楽しめる「みんなの学校給食」がある。「ちびまる子ちゃんランド」で昭和の郷愁を感じたその足で、「みんなの学校給食」に飛び込む……サウナから水風呂に飛び込んだときのような最適解が、S-PULSE DREAM PLAZAにはあるのだ。幻聴だと分かっていても、どこからともなく「キーンコーンカーンコーン♪」という鐘の音が聴こえてくる……ああ、そろそろ家路につかなければ。旅のフィナーレを飾るに相応しいエンタメ体験の数々が、S-PULSE DREAM PLAZAには詰まっている。
たしかに富士山を見れるに越したことはない。でも、見れなくても十分、静岡市は面白い。もし富士山が見えなくても、気を落とす必要はまったくない。
【S-PULSE DREAM PLAZA エスパルスドリームプラザ】https://www.dream-plaza.co.jp/
(写真・文 我妻弘崇)
「ちびまる子ちゃん」などで知られる漫画家・さくらももこさんが、昨年8月に53歳で亡くなってから約一年が過ぎた。そんなさくら先生のお膝元、静岡県静岡市清水区には、漫画(アニメ)の世界を閉じ込めたかのような「ちびまる子ちゃんランド」がある。
「え? 清水市じゃないの!?」と違うところに食いついてしまった人のために説明しておくと、2003年4月1日、静岡市との新設合併により、清水市は静岡市の一部となり、その後2005年に政令指定都市に移行する際に清水区として生まれ変わっている。さくら先生が作中で描いた清水市は、名称だけで言えば、今はもう存在していないということになる。
残り少ない夏から秋の行楽シーズンに車でロングドライブを考えている人も多いはず。長距離移動はもちろん、渋滞にはまった時にどれだけ車内で快適に過ごせるかが旅の成功を大きく左右する。ということでドライブ旅に必須の快適グッズを探してみました。
池袋から電車で30分ほどのアクセスの良い“川越”。夏の川越人気スポットを今回はあえて一泊二日で探訪。大人気縁結びのお守りも、お泊まりすることで確実にいただける。一日目の「part.1」に続き二日目をお届け。
池袋から電車で30分ほどのアクセスの良い“川越”。夏の川越人気スポットを今回はあえて一泊二日で探訪。大人気縁結びのお守りも、お泊まりすることで確実にいただこう。もちろん定番観光から隠れ家カフェなどをリポート。
この時期になると夏祭りのにぎやかな音があちこちから聞こえてくる。盆踊りや太鼓、おみこしなど、日本の趣ある伝統文化の良さを実感する機会も多いだろう。
個性豊かな祭りが各地に存在するなか、日本で最も古い伝統芸能に「神楽」があるのをご存知だろうか。名前は聞いたことはあっても、歌舞伎や狂言、能などに比べると知らないことも多い。そもそも神楽はどういったものか、どんな楽しみ方があるのか。全国でも有数の神楽どころ、島根県石見地方で、知られざる神楽エンターテインメントにふれてみた。
重さ20kgあるという豪華絢爛な衣装と表情豊かな面をつけて舞う「石見神楽」。島根県西部の石見地方で古くから伝わり、今年5月には日本遺産にも認定された。ひゅるる〜という独特の軽快な笛の音と、活気溢れる太鼓囃子にあわせて舞うのが特徴で、歌舞伎や能に比べると、動きは激しめ。かつては、地域の娯楽として秋祭りの前夜祭に演じられていたが、現在は130以上の団体が定期的に活動し、年間を通して見ることができる。
興味深いのは、子供たちも楽しめる明快なストーリーだ。2019年3月に江津市にオープンした石見神楽専用の劇場「舞乃座」では、親子連れの観客も多いという。「鬼退治」や「大蛇退治」など、勧善懲悪のわかりやすいストーリーに加え、火花や煙などの演出で迫力も満点!初めて見る筆者も夢中になってしまう。鑑賞料も1000円というから、まさに地域の娯楽として身近な存在であることがわかる。
誰でも楽しめることで、石見では若い人も神楽に積極的だ。なんと石見には「神楽推薦」なるものが存在し、神楽を演じるために他の地域から学生がやってくる。島根県立浜田商業高等学校の郷土芸能部では、部員14名が所属し、年間30公演ほどを行なっている。代表作品「大蛇」の主人公・須佐之男命を演じた松井隆河さんは「小さな頃からあるのが当たり前で、神楽を見るのが好きでした。公演で皆さんから声援をもらえる瞬間がうれしいですね」と目を輝かせた。
演者だけではない。石見神楽に使われる面や衣装、道具はすべて石見の人びとによって作られている。神楽の顔となる面は、軽さを重視して、伝統工芸の石州和紙を貼り重ねて作られている。柿田勝郎面工房には、何百種類の面がずらり。ひとつひとつ要望を聞いて手作業でつくるため、ひとつの面を作るのには、1ヶ月ほどかかるそう。柿田勝郎さんが大切にしているのは、神楽団への敬意。「古きを重んじこだわるところ、新しい斬新なものを求めこだわるところ。それぞれの神楽団の要望に、白紙の気持ちで応えたい」と思いを語った。
神楽に迫力を生む大蛇の舞にはかかせない「蛇胴」も石見オリジナルだ。竹と石州和紙からなる蛇胴は、軽くて丈夫なのが特徴。長さ約17m、重さ約12kgもある蛇胴を植田製作所2代目の植田倫吉さんは、約一週間かけてひとりで作り上げる。冬に翌年分の竹を刈り、そこから骨組みとなる約5000本の竹棒を手作業でつくっていく作業は根気がいるという。「大阪万博で好評をいただいたときはうれしかったですね。お客さんと色の相談をしながら作り上げていくのが楽しい」と笑顔を浮かべた。
伝統芸能というと、堅苦しい印象があるが、私たちの文化は、伝統の延長線上にあると考えるとどうだろう。ぐっと身近に思えてくるのではないだろうか。神楽を支えてきた人々の営みと心意気にふれたとき、なにか大切な宝物を見つけたような、そんな特別な思いを胸に抱く。伝統が生活に溶け込み、その生活がまた伝統をつないでいく。オール石見の強さを垣間見た気がした。
「宿泊の概念が変わるかもしれない」。取材を終えて、そう感じたほどだった――。
皆さんは、シャレーという宿泊施設を知っているだろうか? 端的に言えば、山小屋風の宿泊施設。言葉そのものは、スイスのアルプス地方に存在する大きな屋根の突き出た住居、またはそれを模した山荘を意味する。
ややもすればロッジやペンションと混同しがちだが、実際にシャレーを訪れるとまったく似て非なるものだと気が付く。より私邸のようなたたずまいが強く高級感が漂う。国内にもいくつかシャレーが集うスポットがあるが、中でも“和田野の森”と呼ばれる長野県北安曇郡白馬村・和田野周辺は、外国人からも支持を集める人気のシャレーが並んでいる。
和田野にシャレーを構える、そのほとんどは外国人だ。白馬で休暇を優雅に過ごすために、土地を購入し、所有者それぞれが思い思いにリラックスできるようにデザインをしている。個性豊かなシャレーが、ぽつぽつと森の中に存在する光景は、まさに別邸という言葉が相応しい。この時点で、軒を連ねて密集しがちなロッジやペンションとは趣き異にする。解放感が桁違いなのだ。
当然、彼らは自国に戻らなければならない。そのため一年の大部分は主人のいない空き家となる。そこでシャレーの主たちは、自分たちが過ごしていない期間を、白馬ホテルグループに委託することで、旅行者に宿泊先として提供しているのだ。
上写真は、「フェニックスワン」というシャレー内部だが、その広さと内装デザインに目を丸くしてしまう。システマチックなファシリティに加え、空間のデザインが外国のそれである。天井の高さや開放感のある大きな窓、そしてテラス席や書斎など、生活のギアを変えられるようなスペースが備わっている。俗っぽく言うなら、とにかく“かっこいい”のだ。
高さを生み出すことで白馬の自然をより堪能できるように、リビングは二階に作られている。一階はというと、ガレージ、トレーニングルーム、サウナ室……「渡辺篤史の建もの探訪」みたいになってしまっているが、誰かに伝えたくなるほど機能的かつ居心地がいい。バーベキューアリアを備え、システムキッチン完備、ベッドルーム4部屋、4バスルーム、5トイレ……広さにして実に283平方メートル(三階建て)、約170畳分の広さを誇る。
「でも、お高いんでしょ?」。
通販番組よろしく、誰もが気になるところだろう。ハイシーズンともなれば高騰かつ予約困難だが、レギュラーシーズンやオフシーズンとなれば、そうでもない。最大10人で宿泊できるため、人数が増えるほど割安に。仮に10人で宿泊するなら、シーズンと日数にもよるが一人当たり一泊10000円~20000円で収まるというから驚きだ。しかも夕食のBBQセット込みで、だ。
「先日は、ノートパソコンを片手にノマドワーカーのグループが宿泊されました。緑に囲まれた空間で仕事をして、夜はお酒を飲みながら仲間と自炊をして楽しむ。リラックスしたい方は、岩岳エリアや栂池エリアに行ってのんびり自然を眺める……そういった使い方をされる方もいます」
そう教えてくれたのは、白馬ホテルグループの末川さん。また、「恩師が喜寿を迎えたということで、先生を祝いつつ高校時代の同窓生が集うなんてケースもありました」というように、宿泊&滞在のスタイルは多岐にわたっているから面白い。
住んでいる場所がバラバラでも、シャレーという宿泊施設を利用すれば、現地集合、現地解散が可能。宿泊代表者が白馬にある窓口で鍵を受け取るだけなので、煩わしいチェックインやチェックアウトの手続きもない。シャレーの宿泊施設の類型は、旅館業法における簡易宿所営業に相当するため、民泊とは異なり、都道府県知事(または市長、特別区では区長)の許可を受ける必要がある。民泊のような自由性がありながらも、トラブルが散見する民泊とは異なる法律で括られているため安心感が高いこともポイントだ。「宿泊に関する相談などあればお気軽にご相談ください。料金設定など、なかなか分かりづらいと思いますので」と優しく説明してくれる末川さんをはじめとした、白馬ホテルグループのサポートも心強い。
「AMO54」にはキッズルームがある。このように和田野に集うシャレーは、一つ一つ特徴が異なる。ママ友が子どもたちとともに宿泊する、ビジネスマンが合宿感覚で宿泊する、気の合う飲み友達と思い出作りのために宿泊する……そういった十人十色の過ごし方が、ここではできるというわけ。言うなれば、同じ空間にいながらにして、気の合う友人たちと“休暇をシェア”しているようなものだ。
何より日々の暮らしの快適さを追求したかのような洗練された空間設計が、素晴らしい。周辺には大自然が広がり、深呼吸するだけで心が癒されるような風景が眼前に迫る。こういった場所で一呼吸置きながら仕事をしたら、実は都会にいるよりも効率的かつ生産的な労働につながるのではないかと想像してしまった。ここでは、驚くほどにゆっくりと、思う存分、自分の好きなように時間を使える快適さが備わっている。
昨今、働き方改革が叫ばれ、それにともなう休み方も注目を集めつつある。一方で、そもそもオンとオフの切り替えができない人も少なくない。「みんなに迷惑がかかりそうだから」という理由から有休を取得しない人は、いまだ一定数いる。オンとオフの切り替えが苦手な人ほど、オフになったときに思う存分羽を広げようとする。も、かえって疲れてしまうなんてことは珍しくない。
よくよく旅行というものを考えたとき、我たちは気が付くと、あれもこれもと詰め込んでいるような気がする。「せっかく来たんだから」、「ようやく休みが取れんたんだから」。まるで「バイキングに来たのだから限界まで食べないともったいない」という心理が働き、休みに来たはずなのに、休めていない状態に陥ってしまうなんてことは、“旅行あるある”だ。
ともすれば、きっちり休むという快適性を重視した旅行があってもいいはずだ。あえて予定を詰め込まず、のんびりと滞在する……昔でいうところの長逗留のような過ごし方があっていい。でも、何もないとつまらない。だから、多くの人は旅先でせっせせっせと動き回る。そして、疲れる。
白馬のシャレーは、新しい宿泊をイメージさせるものだ。雄大な自然に加え、ともに過ごす友人や仲間がいる。書斎に籠って仕事をしたい人は、すればいい。昼間からビールを飲みたい人はテラス席で鳥のさえずりを聞きながら飲めばいい。絶景を見たい人はゴンドラに乗って北アルプスを眺めに行けばいい。しかも、それらの行動は気分次第ですぐに方向転換できてしまう。「いいアイデアが浮かばない! だったら、山でも見に行こう」。そんなウルトラCの休み方。休暇をシェアするという宿泊スタイル。夜は、今日一日のそれぞれの行動を報告しながらワイワイと飲めばいい。これはもう“逗留2.0”だ。
今年7月には、岩岳エリアにある“天空のカフェ”『白馬マウンテンハーバー』の隣に、屋外Wi-Fiシェアワーキングスペースが誕生する。
Aさん「今日はどんな予定?」
Bさん「天気が良いから、 白馬マウンテンハーバーで昼食を食べて、そのまま標高1300メートルで仕事しようと思う」
Aさん「オッケー。俺たちはまずはリビングでビールを飲んでから考えることにするよ。もしかしたら合流するかも」
Bさん「はいよ~」
Cさん「私は昼過ぎまでテラスで本を読むことにする」
白馬のシャレーは、そんな働き方と休み方ができる。新しい旅行の形、いや、これは旅行なのか? 旅行に非日常を求めない。暮らしの延長線上に、いつもとは違う光景――“異日常”を求めたい方は、きっとハマると思う。
(取材と文・我妻弘崇
縁結びの神様をまつる聖地、出雲大社。毎年良いご縁を願って多くの旅びとが訪れるが、パワースポットは、出雲大社だけにあらず。観光地だけじゃつまらない、というあなたにおすすめなのが、広大な自然と歴史文化の宝庫・石見地方。少し足を伸ばせば、驚くほど美しい海と世界遺産の街並みがあなたを迎えてくれる。さあ、自然と歴史のパワーあふれる石見の旅に出かけよう。
「あれ、ここは南の島?」と思わせるようなエメラルドグリーンのビーチ。出雲大社から車で25分、出雲から石見へ向かう境に広がる岐久海岸、通称・キララビーチだ。夏の間は海の家がオープンし、晴れた日には、思い切り海水浴が楽しめる。近くにたたずむ道の駅「キララ多伎」からはビーチ全体を見渡せ、ベンチに座って地元の名産いちじくソフトクリームを片手に、潮風に吹かれるのも心地いい。石見に向かう旅のスタートに、ぜひ立ち寄ろう。
キララビーチから西へ車を走らせ35分、今度は16世紀にタイムスリップ。日本の歴史と産業にふれてみよう。戦国時代から江戸時代初頭まで、約400年のあいだ銀生産が行われていた石見銀山。ここで採れた銀は東アジアやヨーロッパへ渡り、最盛期には、世界の銀産出量の3分の1を占めていたというから驚き。
2007年には「石見銀山遺跡とその文化的景観」が鉱山遺跡としてアジア初の世界遺産に登録され、その名が広く知られるようになった。銀山がある大森町には今も人々が暮らし、趣深い街並みを大切にしながら、歴史を上手に伝え残している。豊かな山々とどこか懐かしい気持ちになるレトロな街並みも、心を穏やかにしてくれる。
日本の銀産業を支えた人々の営みは、こんな場所にも残されていた。銀山へと続く道の入口にたたずむのは、採掘の安全と銀山の繁栄を願う氏神をまつる「城上神社(きがみじんじゃ)」。天井には、色鮮やかな「鳴き龍」が描かれていて、この龍の下で手をたたくと不思議な体験が。まるで龍が鳴いているかのように、リンリンとたたいた音が耳に響き渡る。静けさの中で、思わず天井に見入ってしまう。かつての人々も、こんな風にして安全を願っていたのだろうか。
石見の地には、心も身体も開放してくれるパワーがある。慌ただしい日常から抜け出して、たまには好奇心の赴くままに歩いてみるのも贅沢な時間。出雲大社に行ったら、石見へのショートトリップも旅のしおりに加えてみて。
夏休みが始まる――。
「今年の夏は、どこへ出かけようか」。そんなことを考え始めている人は多いはず。以下の写真を見てください。
山小屋? ……じゃない! ここは標高1300メートルにあるベーカリー&テラス『白馬マウンテンハーバー』。昨秋、白馬岩岳エリアにオープンした、ニューヨークで20年以上も愛される老舗『ザ シティ ベーカリー』の焼きたてパンと淹れたてのコーヒーを、北アルプスを眺望しながら楽しめる“天空のカフェ”だ。控えめに言って、夏山の魅力を最大限に楽しめる最高のスポット。東京からは、北陸新幹線を利用すれば、バスを乗り継いで約2時間半。高速バスの場合、バスタ新宿からで約5時間で行くことができる。
実は今、長野県・北安曇郡白馬村が劇的に変わりつつある。
白馬村と言えば、1998年の長野冬季五輪の際は、白馬ジャンプ競技場にてジャンプ競技が行われるなど、ウインタースポーツのメッカ。原田雅彦の祈るような名言「ふなきぃ~!」も、この地で生まれたほどだ。そんな“冬”のイメージが先行する白馬だが、「(雪を)脱いでもすごいんです!」とばかりに、現在グリーンシーズン(夏場)の白馬は、K点越え連発のコンテンツが揃いつつある。
先の『白馬マウンテンハーバー』は、麓からゴンドラに乗ればすぐにアクセス可能。つまり、サンダルやパンプスでもこの絶景を楽しめるというわけ。夏山と聞くと、「登るのが面倒」「装備を集めるのがイヤ」なんて声も聞こえてくるけど、白馬では心配無用。ゴンドラに乗れば、すぐさま冷たいビールと焼きたてのパンを片手に、大パノラマを満喫できてしまうのだ。最高すぎます。
しかも、『白馬マウンテンハーバー』の近くには、白馬村を一望できるウッドデッキや、ワンちゃんと一緒に遊べるドッグランも併設。下記動画のようにマウンテンバイク(レンタル可)を載せれば、山頂1272mから標高差521mを誇る全長3672mのダウンヒルコースを駆け降りる絶景のマウンテンサイクリングコースまで楽しめる。何度でも言いたい。控えめに言って、今や白馬は夏山の魅力を最大限に楽しめる最高のスポットなのだ。
なぜ白馬はグリーンシーズンに力を入れ始めたのか? その背景には、春から秋にかけた“オフシーズン”のコンテンツ不足による低稼働や、低迷する国内スキー・スノーボード参加率など、リゾート地として冬に頼りすぎる傾向が強かったことなどが挙げられる。
また昨今、「白馬はオーストラリアを中心としたインバウンド人気が高い」という話を聞いたことがある人もいるだろう。外国人観光客は、基本的に短期滞在はしない。白馬のようなマウンテンリゾート地ともなれば、最低2週間は宿泊する長期滞在も珍しくない。となれば、飽きられないためのコンテンツ拡充の創意工夫が必要となる。グリーンシーズンを拡充させることは、そのままウィンターシーズンにおける観光客の回遊率向上にもつながる。実際、『白馬マウンテンハーバー』は、冬場も開放しているほどだ。
白馬村と隣接する小谷村・大町市のスキー場は5年前から“HAKUBA VALLEY”と銘打ち、さまざまなプロモーションを展開中だ。2016年には共通自動改札システムを導入し、すべてのゲレンデを、単一チケットを利用して滑走できるようになり「日本最大のスキー場」として生まれ変わるなど、国内屈指のマウンテンリゾートとして再開発が進んでいる。前述した『白馬マウンテンハーバー』は、白馬の岩岳エリアに誕生……そう、白馬の進化は、これだけではない! その他エリアにも新しいコンテンツが、続々と誕生しているのである。
こちらは栂池高原エリア(標高約800メートル)に登場した、フランス発のアドベンチャー施設『白馬つがいけWOW!』。昨夏オープンから3か月で8000人の来場者を記録し、今年の夏も大注目のスポットだ。岩岳エリア同様、麓からゴンドラが発着しているのでご安心を。
エアチューブに乗って滑り降り、エアバックの上にジャンプをする絶叫系スライダー「トビダス」、ライフジャケットをつけてアスレチックや滑り台を満喫できる長野県初の水上フロートアクティビティ「ポチャダス」、その上には 地上10メートルの高さから片道約140メートルの湖上を往復する日本初の空中自転車綱渡り「コギダス」が備わる。これらを含む9アクティビティ・50種類以上のコンテンツが、標高約800メートルに集っているのである。適度に体を動かすからほどよく汗をかき疲れるんだけど、空気が美味すぎるので、いつもより疲れた気がしない!(きっと気のせい) 「子ども向けでしょ?」なんて思った方、とんでもございません。大人の方がハマってしまうと評判なくらい。
さらに驚くべきは、『白馬つがいけWOW!』のある地点からさらにゴンドラリフト(約20分)とロープウェイ(約5分)で上がると、手つかずの大自然に囲まれた栂池自然園(標高約1800メートル)に、らくらくと到着できるという点。
見よ、この美しい絵はがきのような景色を! ボードウォークが設置されているため、こちらもサンダルで散策することができてしまう。「夏山? トレッキングするくらいしかないじゃん。それに上まで登るの面倒だし」……なんて、もう言わせない。これほど選択肢が豊富で、自分に合った夏山の楽しみ方ができるなんて、夏山の概念を変えてしまうほどのインパクトだろう。
7月19日からは、国立公園内で動植物や自然について学べる教育プログラム『MIKKETA!(ミッケタ!)』も開始する。
例えば――。3世代で来た家族が、パパとママと子どもは『白馬つがいけWOW!』で思う存分遊んで、おじいちゃん、おばあちゃんは自然園へ動植物観察に出かける。「3時間後にゴンドラ前で待ち合わせね」なんて具合に、家族の中でも違う楽しみ方ができれば、誰かに負荷をかけることも少なくなる。
友だちグループ数人で来たとして、「本当は気が乗らないけど、みんなが賛同するから仕方ない……」なんて考えていることがバレないように作り笑いをして、無理に合わせる必要もない。それぞれが、白馬の絶景に囲まれながら、好きなアクティビティを満喫すればいいのだ。
魅力を最大限に活かすということは、それだけ選択肢が増え、何人で来ても満足度が高くなるということ。そんな夏山の魅力を最大限に開放した白馬のコンテンツ作りは功を奏し、昨年のグリーンシーズンの来場者数は過去5年で最高を記録したほど。
なお、こちらは八方尾根エリアにある「八方池」。さらに7月下旬には、1400mに位置する白馬八方尾根のうさぎ平テラスの屋上に、ビーチリゾートをイメージした絶景リラクシングテラス「HAKUBA MOUNTAIN BEACH(白馬マウンテンビーチ)」をオープン予定……「どんだけコンテンツが豊富なんじゃい!」と突っ込みたくなるほど、白馬は自然スポット、アクテビティスポットが充実しつつある。
今年は、昨年を超えるグリーンシーズンの来場者を目指しているそうだが、もはや射程圏内にあると言っても過言ではないだろう。その魅力は、「行けばわかるさ、バカヤロー!」である。
夏の白馬の進化は、まだまだ止まりそうにない。夏山の魅力を知らない人にこそ訪れてほしい。きっと、そこには見たこともない景色が広がっているはずだから。
(取材と文・我妻弘崇)
結婚記念日や誕生日などの大切なアニバーサリーは、どんな贈り物がふさわしいか、あれこれ思いを巡らせてしまうもの。物を贈るのもいいけれど、大切な人と過ごす特別なひとときもまた、かけがえのないプレゼント。この夏、大人の贈り物として、トワイライトクルーズはいかが? 浜風に吹かれながら眺める夕陽や夜景、洗練された横浜の街並みに、きっと心ときめくはず。特別な日は、大切な人と上質な船旅へでかけよう。