『僕達急行 A列車で行こう』
松山ケンイチmeets瑛太。数々の話題作で唯一無二の存在感を築き上げ、現在放送中の大河ドラマ『平清盛』では主演を務める松山ケンイチ。最新主演作は、故・森田芳光監督作による“人生を楽しむためのエール”!
撮影・蔦野裕
電車という趣味を通じて知り合った青年、小町と小玉。“電車が好き”という気持ちが、しだいに彼らの世界を広げ、つながりを作っていく…。松山ケンイチと瑛太が、鉄道ファン、いわゆる“鉄ちゃん”を演じる注目の一本。共演の瑛太の作品は数多く見てきたと松山。
「本当にいろいろな役を演じられてるので、実際の瑛太さんがどんな人なのか想像できなかったんです。一見、無表情な感じがあるじゃないですか。でも中に熱いものを持っている気がして。独特な空気を持った方だな、と思っていたんです。実際に会ったら、すごく柔らかい空気感の持ち主で、話をしていてもすごく自然体で、人を緊張させないので、そんなところがいいなと思いました。あと、やっぱり面白い方だな、と。(演技に)ちょこちょこ面白い動きを入れてきたりするんです。森田監督は、あまりアドリブを許さない方なんですけど、今回はわりと許したほうだなとおっしゃっていましたね(笑)。監督も僕らのやりとりを面白いと思ってくれてたのかな、と」
出会いの一方、別れもあった。『椿三十郎』『サウスバウンド』で仕事をしてきた森田芳光監督との早すぎる別れ。
「昨年に森田監督が亡くなられて、監督の遺作になってしまったこともあり、本作には特別な気持ちを抱いてます。なるべく多くの方に見て頂きたいですね。森田監督のコメディーって、すごく独特なものがあるんですよ。笑わせようという、作られたコメディーではないというか。普段の生活のなかで“ニヤッ”とさせる笑いみたいなものがたくさんある。そんなところを、お客さんがどう反応するかを僕も映画館に見に行きたいです」
思えば、松山演じる小町と瑛太演じる小玉の関係や人物像は、コメディー映画のセオリーからするとかなりユニーク。
「そのあたりは監督のこだわっていたところでもあるんです。よくあるボケとツッコミという関係になると普通のコメディーになるんです。監督は、そうなることをかなり嫌っているところがあって。とにかく真面目に楽しんでくれればいいから、と言われたんです。真面目にやればやるほど面白くなってくるから、と」
小町にしろ小玉にしろ、もっとモテてもよさそうなのに…。
「でも僕だったら(彼女と2人で)電車に乗っている時に、1人で音楽を聴いたりなんてしないですね(笑)。イヤホンを片側だけでもあげればいいものを、小町は1人で聞いていましたからね、あれは相手も腹立つでしょ(笑)。2人とも“恋は鈍行”なんですよね」
同年代の同性から見た小町と小玉は?
「いい生き方してんな、とは思いますね。すごく充実している感じがする。僕ぐらいの年代になるとそろそろ地に足をつけてとか人づきあいも社交的にとか思うようになるんですけど、2人とも、そういうこともちゃんとできているし」
松山自身の趣味は?
「将棋とか、ゲームをよくやるんです。勝負することが好きで。でも、瑛太さんはオセロがめちゃめちゃ強いという情報が入ったので“オセロやろう”とは言いませんでした(笑)。でも将棋とかやっていても会話ないですからね。瑛太さんとは、普通に酒飲みながら話したいです」
小町と小玉の酒のつまみは電車。松山と瑛太の場合は、やはり役者について?
「打ち上げのときに、少しそういう話をしたんですよ。これからどんな作品やりたいかとか。僕も、これまでいろいろ面白い仕事をさせて頂いてきたと思っているんですけど、瑛太さんもそうだし。そういうことを話せる相手は大事ですよね」
好きなものがあること。同じ情熱を持つ人がいること。それは人生の必需品。
「森田監督は、いつも楽しみながら現場にいましたね。そんなところも小町や小玉に通じているのかな、と思います。そんな、人生を楽しんでいる感じが見ている人に伝わればいいですね」
松山ケンイチの“芝居が好き”という気持ちが、人生の楽しさを感じさせてくれる。そんな贈りもののような作品だ。
(本紙・秋吉布由子)
『僕達急行 A列車で行こう』
監督:森田芳光 出演:松山ケンイチ、瑛太他/1時間57分
/東映配給/3月24日(土)より丸の内TOEI 他にて公開 http://boku9.jp ©2012『僕達急行』製作委員会
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