ニィニィから教えてもらったたいせつなこと。映画『天国からのエール』
ギターを弾きながらマイクに向かう桜庭ななみの姿は、本当に楽しそうだ。この映画のモデルとなった仲宗根陽(なかそね ひかる)氏もこんな表情を見て、若者たちを応援したいと思ったのかもしれない。昨年『最後の忠臣蔵』で同年の新人賞を総なめにし、今年も公開作が続く若手女優の注目株・桜庭ななみが最新作を語る。
撮影現場には必ず素敵な“ニィニィ”がいるんです。
ヘアメイク:石原知世 スタイリスト:東野邦子 撮影:新妻和久
沖縄・本部町(もとぶちょう)にある〈あじさい音楽村〉は、近所で弁当屋を営んでいた仲宗根氏が高校生たちの夢を応援するため私財を投じて作った無料の音楽スタジオ。彼は“あいさつをすること”“人の痛みの分かる人間となること”などルールを設けて高校生たちを見守った。2009年に帰らぬ人となったが、スタジオからは数組のアーティストがプロとして巣立っている。本作では実際の〈あじさい音楽村〉などで撮影されている。
「手作り感満載のスタジオなんですよ。防音のため、壁に紙の卵ケースが張られているんですけど、撮影中にそのケースの中に虫が入ってしまって、虫の音で撮影が止まったりしました(笑)。でも、私もわりとアバウトなタイプなので、その手作り感が居心地良かったです(笑)。私は、スタジオを使っている高校生たちの演奏は聞いてないんですけど、彼らの姿を見ていて、きっと演奏も上手なんだろうなと感じました。本当に、礼儀正しいんです。私はテニスとバレーボールをやっていたんですけど、運動部でも、強いチームはあいさつがしっかりしているんですよ」
クライマックスのライブシーンは桜庭の演技によって最も感動あふれる場面となった。
「実は台本には“アヤ、歌う”しか書かれていなかったんです。それで監督に聞いたら“好きなようにやってみてください”と言われ…。ええーって思いました。見せ場なのにいいのかな!?って(笑)。どう演じたらいいのか撮影直前までずっと考えていたんです。でもステージに立って、アヤになったとたん、それまでのシーンを振り返ったらいろいろな思いがあふれてきて…。1000人のエキストラさんたちにも引っ張ってもらって、あのシーンはあの場にいた全員で一緒に作り上げたものだと思っています」
主人公・大城陽を演じた阿部寛は現場でもみんなの“ニィニィ”だったという。
「私は最初すごく緊張していたんですけど、阿部さんが“昨日、テレビ出てたね”とか何かと話しかけてくださって。撮影ではどの現場にも“ニィニィ”みたいな素敵な人がいるんです。今回も熊澤監督に“自由にやってみて”と言われて、自分なりに考えることができて、そのおかげで少しは成長できたかなと思います」
アヤは陽に叱られながら成長するが、そんなふうに怒られたことは…?
「いっぱいありますよ(笑)。事務所のスタッフさんにもよく怒られるし、学校の課題を貯めこんでしまって先生によく怒られたし。でもそれは私のことをすごく考えてくれている、ということだから」
作品を重ねるごとに成長目覚ましい。
「私生活や精神面にはデビューからあまり変わりがないような…(笑)。変わったのは、お芝居に対しての思いですね。もっとこうしてみたいとか、こんな役もやってみたいとか、以前よりももっとはっきり考えるようになりました。どんどんお芝居することが楽しくなってきているんです。成長していく人物を演じることが多いんですけど、私自身も役と一緒に成長できたらいいなと思っています」
クライマックスのフェスシーン、もしデビュー当時だったら…。
「たぶん、棒読みで歌ってます(笑)。今よりももっと緊張して、頭が真っ白になってたんじゃないかな。私、実はけっこう緊張するタイプで、しかも緊張するとすごくしゃべるんです。泣くシーンの前に“ななみちゃんは次、泣くシーンだからそっとしておいてあげよう”なんてなるともっと緊張しちゃってダメなんですよ。でも撮影前にしゃべっているって、見た目的には良くないですよね…撮影に集中してないみたいで(笑)」
本人はそう言うが、スクリーンから伝わってくるのは真摯な演技。8月にはガールズユニット“bump.y”の4thシングルを発表。10月スタートのドラマ「僕とスターの99日」や、ボイスキャストを務める主演作『ドットハック』(2012年1月公開予定)など活躍めざましい桜庭に、そんな一面があると聞くと、ますます応援したくなる。
(本紙・秋吉布由子)
© 2011『天国からのエール』製作委員会
『天国からのエール』
監督:熊澤誓人 出演:阿部寛、ミムラ、桜庭ななみ他/1時間54分/アスミック・エース配給/新宿バルト9他にて公開中 http://yell-movie.com
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