今年で15周年を迎えるアジア最大級の国際短編映画祭『ショートショートフィルムフェスティバル&アジア 2013』(SSFF&ASIA)の授賞式が9日、都内にて行われ、イギリスのガブリエル・ゴーシュ監督(写真右)の『人間の尊厳』がオフィシャルコンペティション グランプリに輝いた。
オフィシャルコンペティションは、インターナショナル部門、アジア インターナショナル部門、ジャパン部門の3部門に分かれ、それぞれ優秀賞1作品を選出。その3作品のうち最も優れた作品にグランプリが与えられる。また、本映画祭は米国アカデミー賞公認の映画祭であり、グランプリ受賞作は、翌年の米国アカデミー賞ノミネート選考作品大賞となる。
インターナショナル部門優秀賞を受賞したゴーシュ監督作『人間の尊厳』は、失業した男を通してイギリスの社会問題を浮き彫りにする力作。審査員の森理世は「作品を見て、ただ楽しかった、感動しただけではなく、細部に至るまで才能を感じさせられた」と評価した。
アジア インターナショナル部門優秀賞を受賞したのは、イランのティナ・パクラバン監督作『私の街』。同じくイラン出身でもある審査員アミール・ナデリ監督は「イランの女性監督が受賞したことはとても重要なことですが、この作品が受賞したのはイラン人だからでも、平和を訴えるテーマだからでもありません。今のイランのすべてをワンショットで表現した、映画としての評価です」と絶賛した。
ジャパン部門優秀賞に選ばれたのは、シンガポールで映画製作を学ぶ田中希美絵監督作『寿』。審査員を務めた女優・成海璃子は「海外で映画作りを学び、自分の道を歩き続けている田中監督に敬意を表します」と称えた。
この3作品のなかから『人間の尊厳』が見事グランプリを受賞。ゴーシュ監督は「ショック状態で言葉がでてきません。初めて訪れた東京で作品を上映できてこんな賞を頂き、大変うれしく思います」と感激をあらわにスピーチ。審査員・宝田明も「すべての要素にすばらしいものがあった。申し分のない作品」と賞賛した。
また、この3監督には東京都の支援により、東京で映画製作する権利が与えられる。製作された作品は来年の映画祭で上映される予定。
原田眞人監督は総評として「審査回は紛糾しました。とくにインターナショナル部門とアジア インターナショナル部門は、アニメでも実写でも、米国アカデミー賞受賞作以上と思われる作品が何作かあり、審査員が違うメンバーだったら、また違う作品が選ばれただろうというくらいきっ抗しました」と述べ、海外作品のクオリティーを賞賛。同時に「ただ一つ、審査員の意見が一致したのは、日本映画がダメだということ。これは毎年のことのようで、他の映画祭でも感じたことですが、日本の作品が弱い」と、厳しいコメントで日本人監督たちを叱咤激励した。
最後に、映画祭代表を務める俳優の別所哲也は「15年前、私がこの映画祭を始めたとき、なぜ俳優がそれも短編の映画祭を作るのか、変わり者だと思われていた。15年経った今、共感してくれる人がこれだけ増えました。これからもショートフィルムの魅力を伝えていきたい」と語り、拍手に包まれた。
各受賞作品は、19日から7月15日まで、ブリリア ショート ショートシアター(横浜・みなとみらい)にて上映を予定。またWeb上の映画館『ネスレアミューズ オウチ映画館』(http://nestle.jp/ssff/)でも今後公開を予定している。
SSFF&ASIA 2013 受賞作一覧
グランプリ/インターナショナル部門優秀賞『人間の尊厳』(ガブリエル・ゴーシュ監督)
アジア インターナショナル部門優秀賞『私の街』(ティナ・パクラバン監督)
ジャパン部門優秀賞『寿』(田中希美絵監督)
「地球を救え!」部門優秀賞(環境大臣賞)/J-WAVEアワード『糸を紡いで』(メグナ・グプタ監督)
CGアニメーション部門優秀賞『夏と冬の間に』(オード・ダンセット&カルロス・デ・カルヴァーリョ監督)
「ミュージックShort」UULAアワード『ハヌル』(門馬直人監督)