取材当日は試合の10日前。減量もピークに入りピリピリしているのでは…と思ったのだが。
「ピリピリはしないです。腹ペコでぐったりはしていますけど(笑)」とイケメンスマイルで登場してくれて一安心。
「減量はだいぶ楽になりました。階級を上げて適正体重になったのと、長くやっているので落とし方も分かってきた。でもこの辺(ジムのある三軒茶屋)は、飲食店が多く誘惑がいっぱいあるので、練習が終わったらすぐ帰るようにしています(笑)」
埼玉県出身の塚越が、そもそも現在のジムに入ったきっかけはあの人。
「格闘技をやるならここって決めていた感じですね。昔からK-1が大好きで、ずっとテレビで見ていました。アンディ・フグとかが活躍している時で、そのあとに魔裟斗さんが出てきたんです。それで魔裟斗さんに憧れて、最初は魔裟斗さんが練習していた代官山の伊原道場に行ったんですけど、その後独立して現在のジム・シルバーウルフができるという事でここに来ました」
塚越といえば、2015年11月、Krushー67㎏王者への挑戦者決定戦で渡部太基と対戦、判定負けを喫して王座挑戦権を逃す。渡部はそのチャンスをものにし、2016年1月、牧平圭太を破り王座奪取に成功。その間、塚越は再び挑戦者決定戦に挑み、挑戦権を手にすると昨年10月に行われたタイトルマッチで、王者・渡部と対戦。その死闘は伝説になっている。
「渡部さんに挑戦したあの試合は、無我夢中であまり覚えてないんです。とにかくやり切った。デビュー以来ずっと練習を見てもらっている大宮司トレーナ―に、練習中に言われたことを出す事だけを考えて試合をしました。その結果、判定勝ちでベルトを取ることができた。もうその日は、歓声がすごすぎてセコンドの声も聞こえなかった。何も聞こえない中、ただ練習の事を思い出してやり続けた感じでしょうか。勝った瞬間は、泣くかなと思っていたんですけど、なんかぽかんとしちゃって(笑)。悪夢とかも見ていたし、どれだけ解放されるのかと思ったら、出し尽くしちゃって魂が抜けていた。だからその時の写真を見たら、全部ポカーンって口が空いている写真ばっかりでしたね(笑)」
2月18日(土)には、後楽園ホールで初防衛戦を行う。相手は激闘派と名高いモハン・ドラゴン。
「激闘派と言われ、すごく派手な試合をする非常にパワフルな選手。多分、他の団体のベルトを巻いたことがあったと思う。とても手ごわい選手だと思います。僕は対戦相手の事を細かく分析して、対相手の対策を必死で考えるというより、トレーナーと一緒にやって来たことを試合で出し切ろうと思うタイプ。試合が決まった時に、トレーナーと1回だけ相手のDVDを見て、方向性を決めたら、あとはそっちの方向を見て、練習をやり続けるだけですね。僕、ベルトを巻いたのが、去年の10月で初めてだったんです。人生で初めて。それも1回負けているK-1にも出ている渡部選手からもぎ取った。だから、このベルトを持った事の責任みたいなものをすごく感じるんです。下手な試合はできないし、せっかく渡部選手から引き継いだんだから、恥ずかしくない試合をしなければいけないと常々思っています」