大学も夏休みシーズンに入りましたが、私の方は相変わらず東奔西走しております。その一つが、中高生、大学生たちが「生きた学問」を身につける場づくり。この8月2〜4日には、「OECD生徒国際イノベーションフォーラム2017」が開催され、会場の代々木オリンピックセンターには、世界9カ国から300人の高校生と教員が集結。少子高齢化、移民社会、環境問題など2030年に直面する世界的課題を見据えて、議論・交流しました。
この企画は、私が代表を務める「OECD日本イノベーション教育ネットワーク」が主催し、文科省や福島大学、教育やITなど各企業の協力を得て実現にこぎつけたものですが、もともとは東日本大震災後に私がOECDに提案して始まった、東北の中高生たちのプロジェクト学習「OECD東北スクール」が原点になります。2014年夏には、パリで集大成となるイベント「東北復興祭〈環WA〉in PARIS」を開催し、東北の魅力を世界に発信して15万人の来場者を集めるなど、世界的に注目されました。
今回の「イノベーションフォーラム」も、かつてのパリと同じく生徒たちが自分たちで企画から実行まで主体的に運営。日本からは、震災復興やまちづくりを模索する東北の学生チームなど6つのクラスターが参加しました。私も開会挨拶に立ち、プレゼンテーションや、展示ブースでのポスターセッションをみたときには、その熱気に感銘を受けました。1、2日目の夕食後には交流会もあり、地域や国の枠、言葉の壁を超えた絆、見識を深めたことでしょう。
一方、フォーラムに先立つ8月1日は、広島へ飛びました。こちらは広島県東部の神石高原町(人口9400人、福山市の北隣)と、慶應SFCが地方創生に関する連携協力協定を結ぶことになり、その発表記者会見でした。
2カ月前の本コラムでも紹介しましたが、こちらはSFCが自治体とコラボレーションし、地方創生の研究・実践に励む大学院生なと゛の人材を、各地に送り出す「地域おこし研究員」の取り組みの一環です。神石高原町では、高校の統廃合による若者転出を抑制するための、地元高校の「魅力化」が重要プロジェクト。記者会見では、生徒たちがドローンの使い方をマスターして、災害や鳥獣被害対策を調べるといった構想が披露されていましたが、SFCで学んだ若者たちが地域の現場で、どういう実践をしていくのか非常に楽しみです。
実践の場を通じて、学問で学んだ知識が血肉となります。その積み重ねが「正解のない時代」を生き抜くスキルを高めます。この夏休み後半、学生の皆さんには「生きた学問」を身につける機会を得ていただきたいものです。