半年ぶりにパラスポーツの日本選手権が帰ってきた。パラ陸上競技の日本一を目指す「第31回日本パラ陸上競技選手権大会」が9月5〜6日、熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で開催され、全国から集まったトップ選手たちが快走を披露した。
5月に開催予定だった本大会は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で9月に延期され、無観客での開催となった。選手やスタッフ、報道陣には大会開催まで2週間の検温・体調管理シートの提出が義務づけられたほか、用具の貸し借り禁止、感染で重症化のリスクが高い障害の重い選手のメディア対応は行わないなど、厳戒態勢での開催となった。
日本パラ陸上競技連盟の三井利仁理事長は「五輪パラリンピックを含め(感染拡大下で)初めての日本選手権。来年のパラリンピックを成功させるためのエビデンスを出す第一歩になる」と感染予防策の徹底を改めて説明。無観客とした理由は「選手に競技に専念してほしかったため。クラスターを出すということだけはしたくなかった」と理解を求めた。
昨年11月にドバイで開催された世界選手権で、日本選手団は金3、銀3、銅7個のメダルを獲得し、パラリンピック本番に向け弾みをつけた。新型コロナウイルスで春以降予定されていた国内大会が軒並み中止・延期となる中、東京パラリンピック内定の選手たちは「プレ大会」として、それぞれのパフォーマンスを発揮する機会を得た。
ドバイ選手権で金メダルを獲得した女子走り幅跳び T64クラスの中西麻耶(阪急交通社)は5m70のビッグジャンプでアジア記録を更新。コロナ禍の環境を跳ね返す強さだった。新たなコーチのもと「練習の質は絶対に落とさない」と決めた中西。2020年に照準を合わせた高い志を保ったまま、自粛期間中も公園や河川敷でトレーニングに励んだ。「パラリンピックがないから(ピークを)変えるのではなく、大会があると想定してこのまま試してみたい」と大会に臨んだ中西。「本当は(5m)80cm以上跳びたかった」と向上心をのぞかせる金メダリストは、逆境に負けない仕上がりの良さを見せた。