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ミヅマアートギャラリー | TOKYO HEADLINE
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思いが伝わるアート展「筒井伸輔展 」

2020.06.07 Vol.729

 一貫してロウを用いて、身近で採集した虫をモチーフに表現を続けてきた作家・筒井伸輔の個展。今年2月に闘病の末、亡くなるまで本展に向けて制作していた新作や未発表の近作、インドネシア滞在中に制作された作品を展示する。

 2017年夏、インドネシアのジョグジャカルタで滞在制作を行った筒井は、現地の人々との文化的交流だけではなく、自身の制作においても大きな出会いを経験。インドネシアのバティック(ろうけつ染)と自身の作品に技法やイメージに類似点が多いことに気づき、バティックで使用されるチャンティンという器具に注目する。チャンティンは、温めたロウを入れて図柄を描く細い口金のついた銅製の器具。それまで筒井は、モチーフが描かれた型紙をパズル状に切り分けてキャンバスに配置し、紙を一片ずつ外してロウを流し込んで画面を構成していたが、チャンティンを使用することによって、型紙を使用する従来の工程ではなく、キャンバスの上に直接ロウで線を引くことができるようになった。色面で構成していた絵画を線で構成することができるようになった筒井は、より平面を意識した作品を手掛け、新作ドローイングもより絵画的表現への探求心が感じられるものとなっている。

 本展を目前にして2020年2月24日に筒井伸輔は永眠。昨年4月に食道癌が判明して以降、治療を続けながら最後まで気力を振り絞り大事な時間を制作に充てて本展のための新作を準備していたという。展示のレイアウトや額装など、可能な限り本人の意向に添った内容で行う。

新たな1年。見る者を、原点に立ち返らせてくれるアート 山本昌男展「BONSAI 手中一滴」

2019.01.18 Vol.714

 モノクロームの静謐で詩的な写真作品やインスタレーションで知られ、海外でも高い評価を得ている写真家・山本昌男の展覧会。

 山本は自らの写真作品を俳句に例えることがあるという。小さいものや些細な出来事を大切にすくい上げ、そこから丹念に光を探してきた山本にとって、最小限の要素を用いて無限の広がりを表すという点で、とてもよく似た表現方法なのだという。

 同じように、限られた空間上に自然や宇宙を凝縮した「盆栽」に対して山本が深い興味を抱いてきたのも、ごく自然なことだろう。日本を代表する盆栽家・秋山実氏と知り合った山本は、近年さまざまな盆栽と向き合い、その静謐にして雄弁なたたずまいを写真に収めてきた。

 曹洞宗の開祖道元は著書『正法眼蔵』に一滴の露にも全宇宙が宿ると記した。同シリーズでも山本は、これまで被写体として切り取ってきた路傍の石や木の根と同じく盆栽と真摯に向き合い、その“小さな宇宙”が発する光をとらえている。
“手の中の1滴”に宇宙の壮大な広がりを感じてみては。

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