2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は1日、急きょ会見を開き、アートディレクターの佐野研二郎氏がデザインした公式エンブレムの使用を中止すると発表した。
会見した組織委の武藤敏郎事務総長によると、組織委は同日、佐野氏と、エンブレムの審査委員代表を務めたグラフィックデザイナーの永井一正氏から聞き取りを実施した結果、佐野氏自身が取り下げを申し出、組織委も「国民の理解が得られない」と判断したという。
エンブレムは7月24日の発表後、7月下旬にベルギー在住のデザイナー、オリビエ・ドビ氏によるベルギーのリエージュ劇場のロゴと似ていると指摘されたことをきっかけに騒動が勃発。8月5日には佐野氏が会見を開き、類似性を否定したものの、その後、佐野氏が手掛けたサントリービールの販促キャンペーンの商品となっているトートバッグや東山動植物園のシンボルマークなど盗用が疑われるデザインが指摘されるなど騒動が広がっていた。トートバッグに関しては佐野氏は30種類のうち8種類を取り下げている。
この間、組織委は終始「問題はない」との態度を取ってきた。疑惑を払しょくするために8月28日に会見を開き、選考経過を説明。佐野氏の原案も示した上で「発想は全く違う」との認識を示し、類似性を否定した。会見ではデザインの展示例画像や原案を公開したのだが、この展示例の画像に使われている写真がインターネット上の個人サイトなどから無断転用されたものであることが判明。また原案が2013年に銀座で開かれた「ヤン・チヒョルト展」のポスターとの類似が指摘されるなど騒動がさらに広がったため、一転この日の判断となった。
武藤氏によると、佐野氏はデザインのコンセプトなどの観点から「全く模倣はしていない」と説明し、永井氏も佐野氏の認識を妥当とした。一方、永井氏からは「(佐野氏の説明は)専門家としては分かるが、一般には分かりにくい」との指摘があり、佐野氏が「模倣を理由に取り下げることはできないが、昼夜を問わず誹謗中傷が続いている」と取り下げを申し出たため、最終的に組織委が「国民の理解が得られない」と判断し使用中止を決めた。
佐野氏は同日夜、自身が代表を務めるデザイン事務所のホームページに「模倣や盗作は断じてしていないことを、誓って申し上げます」とコメントを発表し、改めて疑惑を否定した。
エンブレムの展示例の画像に使われている写真がインターネット上の個人サイトなどから無断転用された疑惑については、佐野氏は組織委の内部資料として作成したものと説明し、公表する際に「権利者の了解を得るのを怠った」と話し、無断使用を認めたという。