2020年12月、本当だったら今頃は東京オリンピック・パラリンピックの「祭りの後」感が漂うまったりした空気が流れていたのかもしれない。しかし新型コロナウイルスの感染拡大で五輪は2021年に延期され、まだ始まっても終わってもいない。世界は新型コロナで未曽有の危機を迎えた。そんな中でも2020年もさまざまなニュースがあった。ここでは文筆家で評論家の古谷経衡氏に今年の重大ニュースを振り返ってもらった。
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愛国を生業にした“残念な”人びとの群像劇『愛国商売』
メディア出演も多い気鋭の若手論客、古谷経衡が初めて手がけた長篇小説作品『愛国奴』が、『愛国商売』に改題されて待望の文庫となった。主人公の南部照一は大学卒業後、茨城県取手市で私設私書箱サービスを営んでいる。飼い猫と車と読書を愛する在宅ワーカーだった照一が、SNSで出会った書店員に誘われて保守系言論人の勉強会に参加し、中堅警備会社の懸賞論文に入選したことで「愛国ビジネス」渦巻く保守論壇の世界に足を踏み入れて……。著者自身の実体験をもとにした小説とあって、トンデモ陰謀論を振りかざしてネット右翼に称賛される“残念な”人々のおかしくも哀しい姿がリアルに描かれている。
カンニング竹山と古谷経衡が「平成30年をぶった斬る!」
いよいよ平成が終わる年末、今年もさまざまなニュースが世間をにぎわせた。という事で、芸人のカンニング竹山と評論家、文筆家として活躍中で、今年初の小説も出版した古谷経衡が、平成30年を振り返るスペシャル対談を行った。ワイドショーでコメンテーターも務める2人が、社会、カルチャー、メディアなどについて語りつくす。
【インタビュー】古谷経衡 初の長編小説と新書を同時刊行
インターネットとネット保守、若者論、社会、政治、サブカルチャーなど幅広いテーマで執筆評論活動を行っている古谷経衡。最近ではテレビやラジオのコメンテーターとしても活躍中だ。そんな古谷氏が6月、新書と小説を2冊同時に刊行。『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『ネット右翼の終わり』『ヒトラーはなぜ猫が嫌いだったか』など、これまでの話題となった著書とはまた違ったアプローチとなった同書について話を聞いた。
「僕も“意識高い系”だからわかるんです」——古谷経衡
これまで、政治や社会、国際問題についての著書が多かった著者による新刊『「意識高い系」の研究』が好評だ。カフェでmacを広げ、流行のお店で食事をして、ブランド品を持ち歩く。グルメとオシャレでキラキラと輝き、仕事も順調…。そんな日常をSNSにアップする。そんな“意識高い系”を鋭く斬る!
「ひとつ言っておきますが、“意識高い人”は立派な人です(笑)。問題は“系”。これはもどきということですから」と古谷氏。
「“意識高い系”という言葉を世間に広めたのは、常見陽平さんの『意識高い系という病 ソーシャル時代にはびこるバカヤロー』という本。そこには言葉の意味と類別が書かれているので、“意識高い系”という言葉は大体正しく共通認識されていますが、それがなぜ発生したのかということまで踏み込まれていなかった。ですから、今回の僕の本では“意識高い系”が生まれた背景と、その気持ち悪さの正体を分析してみようと思いました」
その根底には何がある?
「彼らは、実力を盛っているばかりか、それを人に見せびらかしているんです。それは人に承認されたいという欲求によるもので、強烈なコンプレックスがその人たちの中にある。自分を盛っているだけの人は“意識高い系”ではなく、ただのウソつきです(笑)。それをあの手この手で、写真に撮ってアップロードして、自慢するのが“意識高い系”。そこに非常に大きな闇が潜んでいると思っています」
リア充との違いは?
「リア充な人は見せびらかしません。両者は対立の構造です。リア充は自明のことなので見せびらかす必要がない。そこには、これまで積み上げてきた時間の蓄積があり、そのおかげで余裕がある。そしてその余裕が洗練を生む。そこには、親から受け継いだ土地というものがあり…」
興味深い分析はまだまだ続くが、文字数がなくなり…。“意識高い系”の本質を知りたい人はぜひ!