大貫勇輔は世界で踊るダンサーだ。世界で活躍する日本人ダンサーのほとんどは世界に飛び出し才能を認められて日本に凱旋、言い換えるなら、世界で踊るが日本“でも”踊るパターン。でも彼は日本で踊り世界“でも”踊る。
彼が今、取り組んでいるのはNBAバレエ団の公演『Dracula』。ブラム・ストーカーによる同名の小説が原作で、アメリカでは歩くホラーショーとも呼ばれている。大貫は主演・ドラキュラを踊る。
「クラシック作品というよりはモダン。芝居の要素も強いんです。自分がやってみたいと思っていたタイプの作品ということもあって、やりすぎじゃないかってぐらい練習してます」
モダン、ジャズ、コンテンポラリー、ストリートダンス。さらに、アクロバット、体操、そして20歳で始めたバレエ。守備範囲はとにかく広い。さらに『キャバレー』『ピーターパン』などミュージカルの経験もある。芝居の要素が強いという本作に抜てきされたのも納得だ。
「ようやく自分のドラキュラっていうのが見えてきましたけど、みなさんがこれを読まれているころは、まったく違うものになっているんじゃないかな。振付のマイケル・ピンクが来日して稽古が始まると、今まで作り上げてきたものが全部ひっくり返るらしいんです」。そう言いながらフライヤーをめくる。『トワイライト』を思わせるビジュアルだが、公演では「頭がはげあがっていてすごいんです。脱ぎませんし」と、笑った。
「凱旋じゃなくて、日本から世界に出て行って踊る存在になりたい」と話す。2013年夏の『マシュー・ボーンのドリアン・グレイ』、ラスタ・トーマス率いるダンスカンパニー「BADBOYS」の世界ツアーへの出演もその一歩。最近ではストレートプレイにも興味があるそう。さらに表現の引き出しは増えていきそうだ。