東京五輪パラリンピックの感染症対策を話し合う専門家ラウンドテーブルが28日、都内で開かれ、選手村の感染症対策についての講評や、医療体制、関係者の行動管理についての取り組みなどが話し合われた。その中では、日本に暮らす人たちの人流が課題となっていることも示された。
ラウンドテーブルに先立ち、東京大学大学院経済学研究科・公共政策大学院の仲田泰祐准教授らは「五輪開催の感染への影響・定量分析」を公表。海外からやってくるアスリートや大会関係者10万人の来日における感染への影響は、限定的ではないかとの分析結果を示した。
この日、ラウンドテーブルに出席した仲田氏はその理由の1つとして、「分析に当たっては、悲観的な仮定をおいた。例えば、海外からアスリートや大会関係者が入国して、次の日から東京に出て日常を過ごすという仮定や、10万人のうちワクチン2回摂取を完了したのは5割など、想定される現実より悲観的・低い数字で試算している。“海外から10万人”という数を聞くと、大きな数字だと思われるが、東京都の人口約1400万人のうち、相対的には1%未満。さらに、この方々は、おそらくその時点で日本に暮らす人よりもはるかにワクチン接種が進んでいる人たちということを考えると、僕たちが出した数字は、ある程度、確信的なものだと見込んでいる」と話した。
一方で、「五輪パラリンピックの開催に伴って全国で人流が活発になってしまうことは、感染拡大につながりかねない」と、国内での人流拡大には懸念があることを示した。「人流が活発になると感染が拡大するというのは、これまで何度も経験していること。年末年始の会食、3月の花見・歓送迎会のシーズンには、やはり日本国内で感染が拡大した。もちろん分析では、これからワクチン接種が進むことも考慮しているが、それでも、五輪パラに関わらず、夏の花火やお祭りで人流が活発になると、感染が拡大してしまうことが予想される。開催方法については、しっかり議論しないといけないと思う」と、意見した。
組織委の中村英正ゲームズ・デリバリー・オフィサーは「“日本居住者の人流の影響”はきちんと分析すべきとのご指摘をいただいた。これは観客だけではなくて、ライブサイト等のイベントや、街中のスポーツバーなども含まれる。トータルで人流がどのように動いていくのかを見なければいけない」と分析を受け止めた。