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江戸瓦版的落語案内 | TOKYO HEADLINE - Part 2
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【江戸瓦版的落語案内】鼠穴(ねずみあな)

2018.04.26 Vol.705

 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

【江戸瓦版的落語案内】ぞろぞろ(ぞろぞろ)

2018.03.29 Vol.704

 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

【江戸瓦版的落語案内 】たがや(たがや)

2018.02.27 Vol.703

 旧暦五月二十八日は両国の川開き。当日は両国橋付近で盛大に花火が上がり、橋の上は見物人でごった返し。花火が打ちあがると、あちらこちらから、「上がった、上がった。玉やぁ〜〜っ!」の掛け声がかかる。そんな中、本所のほうから、お供の侍2名と槍持ち1名を従えた身分の高そうな武士が馬に乗って通りかかった。

 見物人であふれる橋を馬で通ろうなどとは、横暴の極み。すると、ちょうど反対側の広小路から道具箱と、割いた青竹のたがを丸めて輪にしたものを抱えたたが屋がやってきた。武士とたが屋が橋の中央ですれ違おうとしたまさにその時、見物人に押された拍子にたがを落としてしまった。落ちた拍子にたがを止めていた糸が切れ、青竹がシュルっと伸びると、馬上の武士の笠に当たりそれを跳ね上げた。笠は吹っ飛び、川の中へ。武士の頭には土瓶敷きの様な笠台だけが残り、鼻からは鼻血がツーッと…。武士はカンカンに怒り「この無礼者! 屋敷へ同道せよ!」。

 屋敷に行ったら首がなくなるとあせったたが屋。どうかお許しを。病気の両親が腹をすかせて待っているので、何卒ご容赦下さい」と必死のお願い。しかし、何度誤っても「ならん!」の一言。あまりの物分かりの悪さにたが屋も堪忍袋の緒が切れた。「血も涙もねえ、目も鼻も口もねえ、のっぺらぼうの丸太ん棒め。二本差しが怖くて飯が食えるかってんだ、こんちくしょうめ」「なにッ」「斬るなら斬りやがれっ!」と啖呵を切った。これを聞いた武士はたまらずお供に「切り捨てろ!」。

 刀を抜くお供だが、それがガサガサの錆び刀。稽古をさぼっていたため、刀を振り回すもへなちょこで、喧嘩慣れしているたが屋に、あっという間に刀を奪われた。次のお供は頭上から刀を振り下ろしたが欄干に刀が食い込んで抜けない。抜こうと焦っているところをさっき奪った刀でバッサリ。見物人からは、やんややんやの大喝采。いよいよ頭に血ののぼった武士が、馬から降り槍を構える。やぶれかぶれで振り回した刀で、突いてくる槍の首を切り落としたたが屋。武士が槍を捨て、刀に手をかけた一瞬のスキをつき、たが屋が一歩踏み込み、刀を横に払うと武士の首が宙天高くハネ上がった。

 まわりにいた見物人は声をそろえ「上がった、上がった。たがやぁ〜〜っ!」

【江戸瓦版的落語案内 】看板のピン(かんばんのぴん)

2018.01.23 Vol.702
 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 鉄火場で若い連中がサイコロのチョボイチを開帳。しかし、もうけた奴が先に帰ってしまい、さっぱり場が盛り上がらない。そこへ現れたのが土地の親分。「お前たち、まだこんなことをやっているのか。博打なんかやるもんじゃないぞ」と戒めた。しかし若い衆「親分だって若い時はやっていたじゃないですか。それより、しらけた場の流れを変えたいので、景気づけにひとつ胴をとってもらえませんか」と頼む始末。親分少しの間考え「訳あって42の時から博打はやめているが…俺ももう61。子どもに返ったつもりで、お前たちの相手をしてやるのもいいだろう」と承諾。昔取った杵柄で、壺皿を振ると、畳の上に鮮やかに伏せた。

「勝負は壺皿の中。さあ、張んな」。しかし見ると壺皿のわきにサイコロが飛び出しピン(1)の目が出ている。親分がボケてきたと思ったそこにいた全員がピンの目に張った。「おや、みんなピンなのか。勝負は壺皿の中だぞ。では、この看板のピンはこっちにしまっておいて、俺の見立てでは5だな」。そういって壺皿を開くと、親分の言った通り5の目が出た。「博打などというものは、こういう汚いものだ。これに懲りたら、お前らも博打なんてするんじゃないぞ。それに誰か一人でも俺にサイコロが外に出ていることを教えようってやつはいたか?

 そういう料簡になっちまうのもいけねえ。金は全部返してやるから、さっさと帰りな」と言い残し賭場を去った。これに懲りて博打をやめるのが賢い奴だが、この方法で一儲けしてやろうという男がいた。早速、別の賭場に行き「おい、お前ら博打はやめろ」と親分の真似。「なんだい、いきなり。お前だって博打をやっているじゃないか」「俺は42の時にやめた」「てめえはまだ26じゃないか!」「俺に胴をとってほしいというなら仕方がない。子どもに返ったつもりでお前たちの相手をしてやるのもいいだろう」「誰も頼んでねえよ」。しかし、無理やり胴をとると怪しげな手つきで壺皿を振り畳に伏せた。「勝負は壺皿の中。さあ、張んな」。見ると脇へサイコロが転がり出て、ピンの目が見えている。それを見た男たち、もちろん全員がピンに張る。「おや、みんなピンなのか。勝負は壺皿の中だぞ。では、この看板のピンはこっちにしまっておいて、俺の見立てでは5だな」。そういって壺皿を開くと「…ああ、中もピンだ」

【江戸瓦版的落語案内 】はてなの茶碗(はてなのちゃわん)

2017.12.05 Vol.699
 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 京都の清水寺境内、音羽の滝のそばの茶店で品のいい老人が飲んでいた茶碗に目を止め、なにやらひねくり回すと、“はてな?”とつぶやき首をかしげ立ち去った。それを見ていた茶店の主人と、たまたま立ち寄っていた大阪から来ていた担ぎの油屋が色めき立った。実は先ほどの老人は、京都に店を構える茶道具商・茶屋金兵衛、通称茶金。茶道具や茶碗の鑑定では京都一の目ききで、金兵衛が目を止めただけで、その価格が何百倍にも跳ね上がると言われている。そんな金兵衛が首をひねったのだから、さぞかし値打ちのある茶碗に違いないと考えた。譲ってくれと迫る油屋に、絶対に譲らないという茶店の主人。

 すったもんだの末、油屋が半ば強引に茶碗を手に入れた。翌日、油屋はその茶碗を手に、茶金の店へ。対応に出てきた番頭が一瞥しただけで、“値打ちがないのでうちでは取り扱えない”と門前払い。 “そんなことはない、ぜひ茶金に取次ぎを”と押し問答していると、騒ぎを聞きつけた茶金が何事かと出てきた。番頭同様、値打ちがないという茶金に油屋は“昨日、音羽の滝のそばの茶店で、この茶碗をひねくり回し首をかしげていたじゃないですか”と話すと、思い出した様子。“ああ…あの茶碗でしたか。いや、穴も傷もヒビもないのに、水が漏るんですわ。それで、どうしてやろう…はてな?と…首をかしげたまでのこと”。

 がっかりと意気消沈した油屋に茶金は私の名前に三両出してくれたのだからと、その二束三文の茶碗を三両で買い取ってやった。この話を聞いた近衛関白殿下は、茶金が持参した茶碗を見て「清水の音羽の滝の音してや茶碗も日々にもりの下露」と歌を詠むとその短冊を付した。すると茶碗の値段がぐんと跳ね上がった。さらに、その噂は広がり、時の帝の耳にまで届いた。帝はその茶碗を見ると、“はてな”と箱書きし、下げ渡した。それにより、“はてなの茶碗”として、国宝級に昇格。ついには鴻池家の耳に入り、なんと千両で売れてしまった。茶金は油屋を探し出し、それまでの顛末を話して聞かせると、千両の半分の五百両を油屋に分け与えた。大喜びで帰った油屋だが、翌日数人の男たちと一緒に、何やら大きな荷物を持って、茶金の元へ。一体何事かと問う茶金に、「十万八千両の金もうけです」「何がや?」「今度は、水瓶の漏るのを持ってきた」

【江戸瓦版的落語案内 】今戸の狐(いまどのきつね)

2017.11.09 Vol.699
 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 初代三笑亭可楽に弟子入りした良輔という若者。前座修行をしていたが修行は厳しく、寄席のくじ売りだけでは到底生活が成り立たない。背に腹は代えられぬと、師匠から禁止されていた内職を始めた。良輔が住んでいた今戸は、江戸庶民が日常用いる素焼き土器・今戸焼の一大生産地。人形、猫、福助と並び、江戸は稲荷が多いため、狐の需要もまた多く、狐の彩色の内職をすることに。もともと器用な良輔には、仕事が舞い込み、毎日寄席が終わってから、せっせと内職に精を出していた。それを見ていたのが、良輔の家の筋向かいに住む小間物屋の女房。もとは千住(通称コツ)の女郎上がりで、近所では「コツの妻(サイ)」と呼ばれている。家計の足しに内職をしたいと思っていた女房、良輔に手ほどきを受け、狐の彩色の内職を始めた。一方、師匠の可楽は当時飛ぶ鳥を落とす勢いの人気落語家。寄席がはねたあと弟子は、その日の売り上げを持って可楽亭に行き、売り上げを数えるのが、日課となっていた。夜もふけて、外がシーンとしている中、可楽亭からはチャリーンと小銭を数える音。たまたま通りかかったやくざ者が、可楽亭で賭場が開帳されているとにらみ、強請ってやろうとほくそ笑む。翌朝、可楽のところに押しかけ「お宅で賭場を開帳し、サイコロの狐 (博打の一種)をしていることは知っているんだ。これを世間にバラされたくなかったら、金を出せ」とすごんだ。しかし、大の博打嫌いの可楽は「何かの間違いでしょう」と相手にせず、家の中へ入ってしまった。しかし「隠れて狐をやっていることはお見通しだ。口止め料を出しやがれ」と騒いでいると弟子の一人が「隠れて狐? はて、狐ができているのは良輔という兄弟子の所です」と教えた。やくざに乗り込まれた良輔。内職がばれたと焦り狐を戸棚に隠すと「時々寄るから、少し(金を)こさえてくれ」というやくざに「少しでは困るんです。(注文は)多いほうがいいので」 「そいつはありがてえ」と会話が微妙にかみ合ってしまった。
「今、静かだが(賭場が)できているのか」、「できてます」「どこで」「戸棚の中に」「戸棚? ちょっと見せてもらおうか」といって開けると泥の狐がずらり。「なんだ、こりゃあ?」「狐です」「馬鹿野郎、オレが探してんのは、骨の寨だっ」「コツのサイなら、お向こうのおかみさんです」。

【江戸瓦版的落語案内 】もう半分(もうはんぶん)

2017.10.07 Vol.698
 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 千住の永代橋のほとりに、老夫婦が営んでいる小さな酒屋があった。流行らない店で、一年中貧乏暮らし。その夜も客は常連の棒手振り(ぼてふり)の八百屋の爺さんだけ。60歳半ばと思われるその老人、酒の注文を一度に頼まず、半分ずつする。まず茶碗に半分の酒を注文して、それを飲み干すと「もう半分」。理由を聞くと、注文を2度に分けて注いでもらい何度も飲むことで、量を多く飲んだ気がするという。

 結局「もう半分。へえもう半分」と何杯もお代わりをするのだが…。ある日、いつものように何杯か酒を飲み帰った後、店を閉めて主人が片づけをしていると、さっき老人が座っていたところに汚い風呂敷包が。持つと、ずっしりと重い。不審に思った店主が包みを開けると50両もあろうかと思う金が出てきた。貧しい身なりをした老人がこんな大金を持っているわけがない。きっと何か理由のある金なんだろうと思い、届けてやろうとするが、それを女房が押しとどめた。

「忘れる奴が悪いんだ。この金があれば、大きな店が出せる。もらったってバチは当たりゃしないよ」と主人を説得。そのすぐ後に、忘れ物に気づき慌てて戻ってきた老人が「頼む、返してくれ。あの金は娘が吉原に身を売って作ってくれたもの。頼む…」と涙を流して懇願しても、夫婦は知らぬ存ぜぬで、店から追い出してしまった。老人は悔し涙を流し、居酒屋夫婦を恨みながら大川へ身を投げてしまった。悪銭身に付かずというが、どうして。猫ババした金で大きくした店が大繁盛。奉公人も雇い、夫婦は悠々自適。さらに、あきらめていた子どもも身ごもり、月満ちて出産。

 しかし、この生まれてきた子がなんと、浅黒くやせ細り、眼光鋭くわし鼻。おまけに白髪まじりと、あの「もう半分」の老人の生き写し。それがギョロっとにらんだから、女房は衝撃のあまり気が触れて、そのまま死んでしまった。母親がいなくなったので、仕方なく乳母を雇うが、みな一晩で逃げ出してしまい、居つかない。何人目かにわけを聞き出すと、赤ん坊が夜な夜な行灯の油をペロリペロリとなめるのだという。その晩、主人が隣室からのぞいていると、丑三ツの鐘と同時に赤ん坊が立ち上がり、行灯の油さしから茶碗に油を注ぎうまそうに飲み干した。「おのれ、迷ったか!」と部屋へ飛び込むと、赤ん坊が茶碗を差し出し、「もう半分」。

【江戸瓦版的落語案内 】干物箱(ひものばこ)

2017.09.03 Vol.697
 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 伊勢屋の若旦那、銀之助は大の遊び人。吉原の花魁にうつつを抜かし、毎日毎日遊び惚けている。さすがに堪忍袋の緒が切れた主人が、外出禁止令を出し、若旦那は謹慎中の身に。しかし毎日こう暑くっちゃたまらない。汗を流しに湯屋に出かけることだけは、なんとか許可してもらった。

 久しぶりの外出にウキウキしながら湯屋に向かう。しかしふとあることを思い出し、湯屋とは反対方向に進むと、そこは貸本屋の善公の家。実はこの善公、声色が得意だと評判の男。「おい、善公。お前、俺の声色はできるか?」「いよっ!若旦那。もちろんでございます。この前なんか、亀清での宴会でお前さんの声色をやったら、お宅の親父さんがあなたが遊んでいると勘違いして、怒ったぐらいですから」と言う。

 「そりゃ、好都合。実は俺がこれから吉原に行って花魁と遊んでいる間、家で俺の声色をして親父を安心させてほしいんだ」。一緒に遊びに行けると思った善公、残念がるも羽織一枚と小遣いをもらい引き受けることに。念のため、一緒に家に帰り外から善公が「お父っつあん、ただいま帰りました」「おお、今日は早く帰ってきたな。お帰り。早く寝なさいよ」。しめしめ、だまされた。銀次郎、安心して吉原に向かい、善公は玄関脇の梯子段を上り2階へ。「やれやれ、このまま何事もなく銀さんが帰ってきてくれればいいが…」

 しかし、そううまくは運ばない。「おーい、銀次郎。銀次郎や」と階下から親父の声。「今朝方届いた干物は、何の干物だった?」「(えーーっ、そんなの聞いてないよ)えっと、お魚の干物です」「ばかやろう、魚に決まってるだろう。じゃ、それはどこにしまった?」「あの、あの…干物箱に」「なんだい、干物箱って。とにかくそのままだとネズミがうるさくて仕方ないから、下に持ってきておくれ」「それは…。無理です。えっと、イタタタタ。お腹が痛くて」とごまかすが、様子がおかしいと思った親父が2階に上がってきてしまった。

 「やや、お前は善公。さてはせがれに頼まれたな」。その時、外から銀次郎の声が聞こえてきた。「善公、ちょっと窓を開けてくれ。実は財布を忘れちまって。引き出しの中に入っているから、そっと上から落としておくれ」。すると親父「この罰当たりめ。どこを歩いてやがる」その声を聞いた銀次郎「あはは、善公は器用だな。親父にそっくりだ」

【江戸瓦版的落語案内 】七段目(しちだんめ)

2017.08.28 Vol.696
 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 芝居道楽な若だんな、日常の些細なことまで芝居口調になり見得を切ったり、家業そっちのけで芝居小屋に入り浸ったり。今日も今日とて朝から芝居見物に出かけ、なかなか帰ってこない。夕方意気揚々と帰ってきたところ父親である旦那が呼びつけていろいろ意見をしても、当の本人はどこ吹く風。

 逆に「遅なわりしは拙者が不調法」と忠臣蔵・三段目の定番のセリフで返してくる。そんな息子に旦那も我慢の限界。2階へ追い払い、軟禁状態にした。しかし、そんなことでへこたれない若旦那は、相変わらず芝居の世界に没頭。「とざい、とーざーい!」と奇声を発し続けている。これにはさすがに閉口した旦那が、小僧の定吉に申し付けて、芝居の真似をやめるように命じた。

 だがこの定吉、若旦那に負けないぐらいの芝居好き。ついつい「やあやあ若だんな、芝居の真似をやめればよし…」と芝居調子で部屋に行くと若旦那、一緒に芝居をする仲間ができたと大喜び。『かな手本忠臣蔵』の七段目・祇園一力の場面をやろうと言い出した。自分が平右衛門、定吉をお軽に芝居をしようと思ったが、小僧の身なりでは気分がでない。

 そこでやるからには衣装も整えようということで、箪笥から妹の赤い長襦袢を出し定吉に着せた。となると自分も気分を出すために、床の間から本身の刀を持ち出した。これに驚いた定吉「さすがに真剣はいけません。斬られたら死んでしまいます」と頼むも「決して抜きはせぬ。真剣のほうが、迫力が出るんでな。そんなに心配なら、ほれ、こうして刀の鯉口をこよりで結ぼう」と言うので、定吉は渋々了承。最初は楽しくやっていた2人だが、平右衛門が、妹・お軽が仇討ちを知ったことから、その本懐のために可愛い妹を手にかけるという場面で、どんどん気持ちが盛り上がる。「妹、命は貰った!」と叫んで真剣をつかむとじりじりと定吉の方に。

「若旦那、それを抜いちゃいけません」という声も耳に入らぬよう。こよりなど、とっくに切って、刀を振り回した。定吉、たまらず逃げ回り、そのはずみに階下へゴロゴロと転落。旦那が慌てて「定吉、大丈夫か?」と聞くと「私には勘平さんという夫のある身」とまだ芝居の続き。「馬鹿野郎。小僧に夫があってたまるか。変な格好をして、さてはあの馬鹿と芝居の真似をして、てっぺんから落ちたか」「いえ、七段目」

【江戸瓦版的落語案内 】湯屋番(ゆやばん)

2017.08.04 Vol.695
 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

 道楽の末、親許を勘当された若旦那が、出入りの大工・熊五郎宅の二階に居候をしていた。働きもせず、毎日ゴロゴロと寝ている若旦那に、熊五郎が奉公でもしてみたらと進めた。しばし考えてた若旦那、熊五郎の知り合い湯屋が奉公人を募集中と聞き、乗り気に。紹介状を持ち湯屋に行き戸を開けるなり、女湯に飛び込んだ。驚いた湯屋の主人、とりあえず外回りを頼むというと「いいですね。芸者を連れて温泉地の視察ですか」ととぼけた答え。燃料にするための木屑集めだと言うとキッパリと拒否。

「そんなことより、番台に座らせて」と図々しいことこの上ない。その強引さに仕方なく主人が昼飯をとる時間に、代理で座らせる事に。ところが、男湯には客がいるが、女湯は空っぽ。しかも男湯の客といえば、汚いケツで、おまけに毛がびっしり野郎ばかり。そんな現実から妄想の世界へ…。

そのうちに、いい女がやって来るんだ。その女がなんとこの俺に一目ぼれ。連れの女中に「あら、ごらんなさい。ちょいと乙な番頭さんだね」。うしし…照れるなー。ある日偶然その女の家の前を通りかかると女中が目ざとく見つけ、「姐さん、憧れの君、お湯屋の番頭さんですよ」って家の中に声をかけるね。すると女は、泳ぐように出てきて、「ちょっと上がっていって下さいな」って俺の腕をつかむんだ。

「いえ、それは困ります」「いいじゃないですか」「いやいや、それは…」と一人で手を引っ張ったり、引っ張られたり。「おいおい、番台に変な野郎がいるぜ」と、客が集まりだしてきた。そんなことにも気が付かず、一人芝居はエスカレート。家に上がり込むと、2人は盃をやったりとったり。その時ちょうどいいタイミングで雷が落ち、女は癪を起して気を失ってしまった。

そこで、盃洗の水を口移しで飲ませる。すると女は目を開き「今のは嘘」。ここでさらに芝居がかり、「雷様は恐けれど、二人がためには結ぶの神」「うれしゅうございます。番頭さーん」「馬鹿野郎、いい加減にしろ!」とうとう客がブチ切れた。「俺は帰る! 下駄はどこいった?」すると若旦那「はて? 見当たりませんね。じゃ、そちらの高そうな下駄を履いてお帰りなさい」「ほかの人の下駄じゃねえか。履いてったらそいつが困るだろう」「いえ、順に履かせて、しまいの人は裸足で帰らせます」

【江戸瓦版的落語案内】紺屋高尾(こうやたかお)

2017.05.22 Vol.691

 落語の中には、粗忽、ぼんやり、知ったかぶりなどどうしようもないけど、魅力的な人物が多数登場。そんなバカバカしくも、粋でいなせな落語の世界へご案内。「ネタあらすじ編」では、有名な古典落語のあらすじを紹介。文中、現代では使わない言葉や単語がある場合は、用語の解説も。

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