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鈴木寛 | TOKYO HEADLINE - Part 7
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鈴木寛の「2020年への篤行録」第14回 話題沸騰 G型大学、L型大学

2014.11.10 Vol.630

 このたび文部科学省の参与に着任いたしました。東大と慶応大の教授を兼務していますので一度ご辞退申し上げたのですが、学識経験者として非常勤でも構わないということでした。それでも悩んでいたのですが、親しい大学のトップクラスの方々、小学校や中学校など信頼できる現場の皆様にご相談したところ、「文部科学省の中に入って政策の質を上げてほしい」「現場を知っているすずかんにこそ中に入るべき」との声に後押しされました。

 下村大臣からのオファーは、文科省の諮問機関である中央教育審議会(中教審)の安西祐一郎会長と、安西先生を脇で支える文科官僚諸君の「チーム安西」をサポートしてほしいとのことでした。大学入試制度改革やフリースクール・不登校問題などの課題に取り組んでいきます。

 さて、私の「文科省復帰」が公表された先月下旬、経営コンサルタントの冨山和彦さんが安倍総理に提起した今後の大学のあり方が経営者や教育関係者の間で大変話題になりました。プレゼン資料(我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性)によると、これからの大学は2つの方向性、すなわち情報産業や製造業等グローバルで勝負する人材を育てる「G型大学」、介護・外食・流通・観光など内需型経済で働く人材を育てる「L型大学」にカテゴライズされるべきとのこと。特に皆さんの注目を集めたのは「L型大学」では、「学問よりも実践力を養うべき」として学ぶ内容の転換を提言していることです。例えば経済・経営系の学部なら「ポーターの戦略論ではなく簿記・会計や会計ソフト」、あるいは工学部なら「機械力学や流体力学ではなく、トヨタ自動車で使われる最新鋭の工作機械の使われ方」というような具体例も示しています。

 私は世の中が求めている人材は3つの型があると考えます。このどれかというのではなく、下記のA、B、Cの要素を組み合わせて、それぞれの若者にあった人生設計を考えていく際の参考となる枠組みとしての話です。1つは人類に新しい価値を創造する「A型」。本田宗一郎さんのような先駆的経営者、山中伸弥さんのようなエポックメイキングな科学者が象徴例です。2つ目は日本で成功した技術やサービスをアジアに輸出する「B型」。こちらは技術力に優れ、異文化コミュニケーションが得意な人材。たとえば、製造業、コンビニ、学習塾、交番、専門学校、病院、鉄道、住宅など日本発祥で他国にも認められるものを、新興国の発展にそれを伝え、活かしていく人材です。「C型」は、高齢化するなかで、医療・介護・観光などソーシャルヒューマンサービスに適した人材、すなわち、世代や立場をこえて相手の立場にたってコミュニケーションできる人材が求められます。

 このA、B、Cのポートフォリオがそれぞれの大学・学部が、社会から求められる比率が異なるということだと思います。例えば、東大医学部も、A型の基礎研究でノーベル賞を目指す学生もいれば、B型の日本の臨床技術を薬や医療機器や病院の輸出の形で国際貢献することをめざす学生もいれば、C型で、将来、地域医療に従事し、また、地域ごとの医療政策に深く関与することをめざす学生もいますので、そのバランスが、それぞれの地域特性、社会状況によって、異なるということだと思います。A,B,Cいずれも大事な仕事です。

 そうなると、冨山さんが言うように「L型大学では六法を広く浅く学ぶ法学部の必要性は低くなる」ではなくて、私なら超高齢化社会を見据え、法学部ではなくむしろ地域医療福祉関係の学部をしっかり整備し、医療や福祉の知識や技能を磨き、合わせて、その学部のカリキュラムのなかで関連法も合わせて徹底して学ぶ体制づくりをし、C型人材の育成に注力すべきと考えます。

 少子高齢化、人口減少、労働生産性、地方創生——大学全入時代にあって、日本社会が直面する課題を解決する人材づくりをどうするか、グランドデザイン作成がいままさに求められています。このタイミングで文科省に復帰した私も、これまでの知識、経験をフル活用して取り組んでいくつもりです。
(東大・慶大教授、元文部科学副大臣、前参議院議員)

鈴木寛の「2020年への篤行録」 第13回 東京オリンピックのソフトレガシー

2014.10.13 Vol.628

 先日、神戸新聞から「関西で東京オリンピック・パラリンピックについてできることとは?」というテーマのコラムをオファーされました。私は神戸の出身で、その地元紙からのたっての願いということで喜んでお引き受けしました。しかし反面、そういった種類の原稿を書く依頼が来た背景を考えると、2020年東京オリンピック・パラリンピックに期待を寄せる「温度差」「地域差」を感じてしまいました。

 どうしても東京との距離が心理的にあるのでしょう。加えて、私も半分は関西人の気質があるので、よく分かるのですが(笑)東京に対する関西独特の対抗意識も影響しているのかもしれません。しかし、改めて言うまでもなく2020年の大会は、東京だけでなく、日本を挙げてのプロジェクトです。都民だけでなく、全国民が一体となった機運が生まれなければ、世界中に大会の熱を伝えることはできません。

 心の距離を埋めて、オリンピック・パラリンピックを「自分事」にしてもらうには、どうすればいいのか、私なりに思案しコラムを書いてみました。東京の読者の皆さんが、神戸新聞を読む機会はほとんどないでしょうから、概略を説明しましょう。関西の方々が今一つ乗り気になれない要因として、国際的なスポーツ大会開催の意義を、インフラや経済効果のような「ハードレガシー」でしか位置付けられないような、高度成長期の価値観にとらわれているのではないかと指摘しました。そこで私は、大会がもたらす「ソフトレガシー」にもっと目を向けるように提案しました。ソフトレガシーとはスポーツを通じた社会教育基盤や、心身の健康を保つためのコミュニティのことです。

 1964年の東京オリンピックに際し、日本中に誕生したのが日本スポーツ少年団でした。野外活動やレクリエーションを通じて、子どもたちの健全育成をしてきました。あれから半世紀が経ち、Jリーグ創設があって地域の総合型スポーツクラブが各地に誕生し、スポーツ基本法制定による後押しも加わって、スポーツのコミュニティが着々と増えてきました。今度は2020年大会を機に、ライブでリアルタイムに各国選手団の活躍を見ることができますから、そうしたソフトレガシーの基盤はさらに整う流れになります。キャンプ地は、全国1700の自治体どこにでも可能性はあります。2002年のサッカー日韓W杯では、カメルーン代表のキャンプ地となった大分・旧中津江村が話題になりました。

「見る」だけでなく、「する」レガシーもあります。コラムでは関西の事例として、元ラグビー日本代表の平尾誠二さんが理事長を務めるNPO法人「スポーツ・コミュニティ・アンド・インテリジェンス機構」(神戸市)を紹介しました。この法人は名門・神戸製鋼ラグビー部の人材や地域のリソースを総動員して、ラグビーの指導から指導論・人材育成の座学まで幅広い層の人たちに展開しています。

 開催地である東京でもソフトレガシーの意義を見落としています。多摩地区ではしばしば「オリンピックの効果が実感できない」という声を聞きますが、キャンプ地に関していえば地方よりも立地条件は恵まれています。選手団との交流は街の歴史に誇るべき出来事になり、触発された子どもたちの視野を大きく広げるきっかけになるのです。
(東大・慶大教授、元文部科学副大臣、前参議院議員)

鈴木寛の政策のツボ 第一回「コンクリートから人へ」ついに実現!!

2011.03.07 Vol.500

 

「コンクリートから人へ」ついに実現!!

 皆様、こんにちは。参議院議員の鈴木寛です。

 このコーナーでは、政策に関するお話、特に、マスコミ等ではあまり触れられることのないお話をさせていただければと思っています。

 早速ですが、政権交代により予算配分構造が劇的に変わったことは、ご存知でしょうか。政権交代後の二度にわたる予算編成で、社会保障関係は16%増、文教・科学振興関係は6%増、公共事業関係は30%減と大幅な組み替えを行い、平成23年度一般会計予算では、文部科学省の予算も平成23年度には5兆5428億円となり、初めて国土交通省の予算5兆193億円を逆転しました。

 これまでは、予算をはじめ政府の重要政策は実質「事務次官会議」で決められてきました。同会議では各省全会一致主義がとられており、予算額を減らされる側の省庁の事務次官は反対するため、各省の予算額の順位が変わることはありませんでした。しかし、政権交代により、「事務次官会議」は廃止され、国民主導の政策づくりが行えるようになりました。

 文部科学省予算が国土交通省を上回ったのは、国民の皆様の声を政治家が直接受け、それを政治主導で予算編成したからです。今回の予算編制においては政策コンテストを行った結果、国民の皆様から全体で36万通のメールが寄せられました。そのうち、「教育や研究予算を充実してほしい」という28万通もの切実な声をいただきました。その結果、30年ぶりに小中学校の一学級の人数を40人から引き下げる「35人以下学級」の実現に小学校第1学年から着手することとなりました。

 また、大学については、法人化後削減され続けてきた国立大学の基盤的な経費の削減をストップするとともに、国・私立大学の授業料減免は9000人増の7万5000人、科学研究費補助金は一部基金化するとともに、制度創設以来最高となる633億円(32%)増の2633億円を計上するなど、大学の教育・研究活動を支える予算を充実しています。

 我が国のこれまでの発展を支えてきたのも、また今後の発展の礎となるのも「人と知恵」です。資源小国である我が国においては、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化芸術の振興を通じたソフトパワーの増進こそがまさに国家戦略そのものであることを念頭にさらに邁進してまいります。

(参議院議員/文部科学副大臣)


※政策について触れてほしいテーマやご質問がございましたら、編集部までご一報ください。

 

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