「東京駅長に任命されたときはやはり責任の重さを感じました。初代から現在まで、民営化や分社化など会社としても大きく変わってきましたが、代々の駅長がつないできた東京駅100年の歴史を自分が継ぐのかと、まさに“緊褌一番”の心持ちでした」。初代の高橋善一氏(1914〜23年在任)から23代梅原康義氏(2010〜2014年在任)まで23人の駅長が指揮を執ってきた。「100年の間に、それぞれの駅長が多くのご苦労を重ね、今日まで東京駅を支えてくださったと考えています。例えば、第5代の天野辰太郎氏(1936〜48年在任)は、1945年5月に空襲を受けた際、燃え上がる駅舎をバケツリレーで必死に消火したという話を聞いたことがあります」。駅長室の隣“梅の間”には歴代駅長の写真が掲げてある。「考え事をするとき、判断に迷うときなど、その部屋で諸先輩方の前に立ち、自らの責務を再確認することもあります」。東京駅の歴史はこうして受け継がれ、新たな世代によって築かれていく。
「東京駅は首都・東京の玄関口であり、皇居の正面に位置するという点においても、他の駅に無い品格を備えた駅といえます。これまで100年の間、諸先輩方によってその歴史と伝統を今日まで引き継いできました。その先人たちが残してくれたものの上に今日の東京駅があるということに日々感謝し“縁”という言葉を胸に、一日一日・一瞬一瞬を大切にしたいと思っています。同時に部下たちには、東京駅で働く自覚と誇りを持って職務に励むよう伝えています」。今後の東京駅について「101年目を迎えるにあたり、次の100年に向けてどんな駅を目指していくか議論しているところです。今後は上野東京ラインや北陸新幹線、北海道新幹線の開業、そして2020年には東京オリンピック・パラリンピックと、東京駅はますます多くのお客様を迎えることになります。例えばバリアフリーの設備についてもより充実させたい。そして何よりも東京ステーションシティという一つの街として、東京の玄関口として、おもてなしの心をさらに実現していきたいと思っています」