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ART | TOKYO HEADLINE - Part 6
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アートの生命力を感じるおすすめ展「加藤泉‒LIKE A ROLLING SNOWBALL展」

2019.09.21 Vol.722

 プリミティブな印象の人物像などで知られる加藤泉。原美術館では最新作69点を、群馬県のハラ ミュージアム アークでは初期作品から近作まで未発表作品を含む145点を展示。2館合わせてその全貌に迫る。

 加藤泉は、1990年代半ばより絵画作品を発表。2000年代に入ると木彫も手がけ、2007年のヴェネチアビエンナーレ国際美術展への招聘をきっかけに国際的な評価を獲得。国内外で活動の舞台を広げてきた。近年ではソフトビニールや石、ファブリックなど多様な素材を用いたダイナミックなインスタレーションを展開する一方で、新たに版画制作にも取り組んでいる。

 東京の美術館としては初の大規模個展となる原美術館では、新作の絵画、彫刻作品を一堂に展示。吹き抜けのギャラリー1では、加藤泉の新たな試みの⼀つである、ドローイング作品から発生した大型ファブリックを用いたインスタレーションがお目見え。ほか全館で絵画や彫刻など最新作を紹介する。もともとは個人邸宅だった原美術館の独特な建築空間を生かした構成にも注目したい。

アートの生命力を感じるおすすめ展「チェコ・デザイン 100年の旅」

2019.09.14 Vol.722

 ヨーロッパのほぼ中心に位置し、古くからさまざまな文化が交錯する舞台となってきたチェコ。チェコと日本の関係は、オーストリア=ハンガリー帝国の一部であった時代から、2つの大戦を挟んで現在に至るまで、意外と深いものがある。ボヘミアン・グラスや「ロボット」という言葉を生んだカレル・チャペック、もぐらのクルテクやチェコ・アニメーションは日本でもよく知られており、古都プラハやレトロかわいい雑貨なども人気が高い。

 チェコスロヴァキアとして1918年に独立宣言をしてから、2018年で100年を迎えたチェコ。本展は、アール・ヌーヴォーからチェコ・キュビスム、アール・デコ、さらに現在に至るプロダクト・デザイン、玩具やアニメまでを含む、独立前夜からほぼ100年のチェコ・デザイン約250点を、時代を追って紹介。会場は、時代を追った8つの章と、おもちゃやアニメーション原画を展示する2つの章で構成。アルフォンス・ミュシャの作品が登場する「第1章 1900年:アール・ヌーヴォー 生命力と自然のかたち」や、民主化にともない花開いたデザインの数々を紹介する「第8章 1990年から現代まで:自由化と機能の再発見」、チェコの伝統工芸の魅力にあふれた「第9章 チェコのおもちゃと子どものためのアート」など、それぞれの時代で生まれた多彩な表現と、チェコの文化に根付く魅力を感じて。

この夏は「自然」とともに。「今森光彦展 写真と切り絵の里山物語」

2019.08.28 Vol.721

 人と自然がともに生きる“里山”。その中で生み出される豊かな営みを見つめ続けてきた写真家・今森光彦の展覧会。

 世界各地をめぐり生きものの生態を追求し高い評価を得ている一方、琵琶湖を臨む田園風景の中にアトリエを構え、四季折々に移り変わる田んぼや里山に集まる生き物を撮り続けている今森。写真家であると同時に、蝶や鳥、植物をモチーフとした、精緻で生き生きとした作品を作る切り絵作家としても知られており、写真でもとらえてきた植物や昆虫の姿を、たった一本のハサミから生み出している。

 本展では里山に暮らす今森のライフスタイルの紹介を織り交ぜながら、臨場感あふれる写真と精緻で表現力にあふれた切り絵で、里山の魅力に迫る。展示は3部構成。第1章「里山物語」では湖西(琵琶湖の西方)を中心に撮影された美しく迫力あふれる里山の写真作品を紹介。第2章「里山の庭とくらし」では、今年3月に刊行された写真集『オーレリアンの庭』から、アトリエがある生きものが集まる庭で撮影された写真を、四季を追って展開。作家の自然に寄り添うライフスタイルや日々の活動についても紹介する。第3章「里山のアトリエ」ではモノクロやカラーなど、最新作を含む切り絵作品を展示。

今森光彦展 写真と切り絵の里山物語
【会場・会期】松屋銀座 8F イベントスクエア 8月28日(水)〜9月4日(水)
【時間】10〜20時(最終日は17時閉場)
【休】会期中無休
【料金】一般1000円、高校生700円、中学生500円、小学生300円
【問い合わせ】03-3567-1211
【交通】地下鉄 銀座駅 A12番出口直結
【URL】 http://www.matsuya.com

この夏は「自然」とともに。「嶋田 忠 野生の瞬間 華麗なる鳥の世界」

2019.08.21 Vol.721

 カワセミ類を中心とした鳥獣の写真家として世界的に知られ、現在も第一線で活躍する自然写真家・嶋田忠の個展。
 圧倒的な存在感と神々しいまでの生命力をもったカワセミやアカショウビンを力強くとらえた作品から、湿潤な日本の風土に生きる鳥獣を、日本画の伝統である「自然から学ぶ」意識と感性に裏打ちされた目でとらえた繊細な作品まで、その多彩な表現は国内外で高く評価されている。

 本展では、作家の約40年におよぶ創作活動を振り返るとともに「世界最古の熱帯雨林」といわれるニューギニア島で撮影された、本展初出品となる作品も展示。秘境ニューギニア島の大自然に生きる色とりどりのフウチョウや、そこで自然と共生しながら独自の伝統文化や風習を守り続ける人々の暮らしを紹介する。

 カワセミやアカショウビン、シマフクロウ、そして嶋田の作品などからその愛くるしい姿が人気となった“雪の妖精”シマエナガといった、これまでの代表的作品で紹介されてきた鳥たちの魅力に改めて触れながら、神秘的な熱帯雨林の鳥たちに魅了される。初級者から自然写真ファンまで必見の個展。

嶋田 忠 野生の瞬間 華麗なる鳥の世界
【会場・期間】東京都写真美術館 開催中〜9月23日(月・祝)
【時間】10〜18時(木・金は20時まで。8/30までの木・金は21時まで。入館は閉館時間の30分前まで)
【休】月曜(ただし月曜が祝日・振替休日の場合は開館。翌平日休館)
【料金】一般700円 他
【問い合わせ】03-3280-0099
【交通】JR恵比寿駅 東口より徒歩約7分
【URL】 https://topmuseum.jp/

いつも、いのちが、そこにある「見える自然/見えない自然 ロイス・ワインバーガー展」

2019.07.13 Vol.720

 現在ウィーンを拠点に活動する国際的アーティスト、ロイス・ワインバーガーの展覧会。

 ワインバーガーは1947年、オーストリア・チロル地方の山間にある村の農家に生まれ、幼いころは植物や動物の絵ばかりを描いていたという。両親の農家を手伝いながら鉄骨工の仕事にも就いたという彼がアートの分野だけで仕事をするようになったのは30歳ごろからのこと。最初は、自身で荒野の植物や絶滅種の植物を育て各地に植えるというフィールドワークからスタートし、90年代後半にはアスファルトをはがして庭を作ったり、除草剤を取り除いて線路を庭にしたりと、都市において人間が作った“決まりごと”を開放し、独自の表現を展開。それらの活動は、生態や環境にも根本的な疑問を投げかけ、多くの人の関心や共感を得ることになる。

 同美術館が1999年に開催した「エンプティ・ガーデン」展に参加し、初めて日本に紹介されたワインバーガーが、それから20年の歳月を経て、改めて「見えない自然」という現在のテーマを発信する。絵画・ドローイングをはじめ写真や立体・彫刻作品、さらには壁画や映像作品など計120点を展示予定。

いつも、いのちが、そこにある「みんなのレオ・レオーニ展」

2019.07.10 Vol.720

 小学校の教科書に掲載された『スイミー』をはじめとする名作を手掛け、日本でも幅広い世代に愛され続ける絵本作家レオ・レオーニ(1910-1999)。イタリアやアメリカでグラフィック・デザイナーとして活躍した後『あおくんときいろちゃん』で、絵本作家としてデビュー。その後も、ねずみの『フレデリック』や、しゃくとりむしの『ひとあし ひとあし』など、小さな主人公たちが「自分とは何か」を模索し、学んでいく物語を、水彩、油彩、コラージュなどさまざまな技法を用いて描き、世界中でファンを生んだ。

 本展では、ヨーロッパとアメリカを移動し続けたレオーニの波乱の生涯を、作品と重ね合わせながら紹介。彼の、絵本作家やアート・ディレクターとしての仕事、絵画、彫刻など幅広い活動を紹介し、レオーニが子供の絵本に初めて抽象表現を取り入れるに至った道筋にも光を当てていく。『アレクサンダとぜんまいねずみ』や『コーネリアス』といった人気の絵本作品に加え、大人のファンも多い『平行植物』シリーズの油彩画なども展示される。さらに絵本『スイミー』の幻とされた原画(スロバキア国立美術館所蔵)も来日。絵本『スイミー』の絵とは少し違う計5点の原画をじっくり見る機会をお見逃しなく。

高畑勲監督の初の大規模回顧展『高畑勲展』

2019.07.05 Vol.720

「高畑勲展ー日本のアニメーションに遺したもの」は、日本のアニメーションの草分けとしてさまざまな作品を世に送り出し、宮崎駿、鈴木敏夫とともにスタジオジブリを設立してからも世界が感動に震える作品の数々を送り出し、昨年82歳で惜しくもこの世を去った高畑勲さんの回顧展。高畑さんは絵を描かない監督として、初めての長編「太陽の王子 ホルスの大冒険」から、「アルプスの少女ハイジ」「赤毛のアン」「じゃりン子チエ」、「火垂るの墓」、そして「かぐや姫の物語」まで、作品ごとに表現方法を追求してきた。たくさんの歴史の残るアニーメーションをどのように作り上げたのか、演出というポイントに着目し、多数の未公開資料とともに紹介。クリエイターたちとの交流や、共同制作のプロセスを通じて、高畑さんの仕事の秘密が明らかになる。

 会期中には記念講演会も行われる。

FUJIFILM SQUARE 企画写真展11人の写真家の物語。新たな時代、令和へ「平成・東京・スナップLOVE」Heisei – Tokyo – Snap Shot Love

2019.06.21 Vol.719

FUJIFILM SQUARE 6月21日(金)〜2019年7月10日(水)

昭和、平成、そして令和へ伝えられる“記憶” 特別企画「百段階段STORY展 〜昭和の竜宮城へタイムクルージング〜」

2019.06.10 Vol.718

同時開催:「未来へつなぐアート展from日藝」

写真が伝える“見えざる”ものを見る。「宮本隆司 いまだ見えざるところ」

2019.05.27 Vol.718

 建築空間を題材にした都市の変容、崩壊の光景を独自の視点で撮影した〈建築の黙示録〉や〈九龍城砦〉作品などで広く知られる写真家・宮本隆司の個展。

 写真家としてデビューして以来、建築や建築が創りだす都市の風景を捉えた作品を数多く発表してきた宮本だが、近年は、両親の故郷である奄美群島・徳之島でアートプロジェクトを企画、運営するなど、その活動は新たな展開を見せている。

 本展では、そんな宮本の初期の作品から、アジアの辺境や都市を旅して撮影した写真、徳之島で取り組んだピンホール作品などを展示。最初のパートでは、1980年代以降に撮影されたシリーズから、選りすぐられた作品を紹介。宮本の代表的シリーズを含め、都市を題材にした宮本作品の醍醐味を振り返ることができる。「共同体としてのシマ」を題材にしたパートでは、宮本が2014年に企画した「徳之島アートプロジェクト2014」から、自身も出品した作品を紹介。宮本の両親は徳之島出身であり、幼少の一時期に生活していたものの、それまで宮本が自身のルーツである徳之島について作品発表することはなかった。しかしプロジェクトを機に島へ通い続けることによって、島が共同体としてのシマの連なりであることに気づいた宮本は〈シマというところ〉シリーズを発表。本展では同シリーズから、宮本ならではのまなざしで共同体=シマに暮らす人々と場を見つめた作品を展示する。

写真が伝える“見えざる”ものを見る。写大ギャラリー・コレクション展 「うつくしきゼラチン・シルバー・プリントの世界」

2019.05.20 Vol.718

 発明以来、美術と複雑に絡み合い、科学技術とも深く関係しながら発展してきた「写真」。現在では、身近なコミュニケーションのツールであることはもちろん、アートの重要な表現手段の一つとなり、その表現の場や方法はさらに多様化。技術面から見ても、かつては銀塩だけでなく、プラチナ、鉄塩、顔料、染料など、さまざまな材料を用いて制作されてきたものが、デジタル技術が発達した今日では、インクジェット・プリントが主流になっている。技術の進歩によりさまざまな人が気軽に写真を楽しむことができるようになった反面、フィルムや印画紙といった材料の供給が狭まりつつあることも確か。

 本展では、写大ギャラリー・コレクションの中から、銀塩フィルムで撮影され写真用の印画紙に焼き付けられた写真=ゼラチン・シルバー・プリントの魅力を最大限に感じられる作品の数々を展示。他の技法では味わうことができない表面の質感やグラデーションの深みといったゼラチン・シルバー・プリントならではの魅力を、国内外の有名写真家の優れた作品を通して感じてみては。

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