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BOOK | TOKYO HEADLINE
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“認知症のある人の世界”を旅するガイドブック『認知症世界の歩き方』

2021.12.02 Vol.747

 未曾有の超高齢化社会に突入する日本。団塊世代が後期高齢者となる2025年には、認知症高齢者数は約700万人、5人に1人が認知症になるといわれる。

 そんな中で発売された本書は、“認知症のある人には実際に世界がどんなふうに見えているのか”という視点から「旅のスケッチ」と「旅行記」の形式でまとめ、13のストーリーとして解説したもの。認知症世界には乗るとだんだん記憶をなくす「ミステリーバス」や、誰もがタイムスリップしてしまう「アルキタイヒルズ」などが存在し、その世界を旅する旅人はいろいろなハプニングを体験するのだという。

 驚いたのは、人間がいかにさまざまな情報や経験を組み合わせ、そこから判断・行動しているかということだ。大きな文字でビジュアルが多いので分かりやすく、ゲームの説明書や問題集のようなイメージでサクサク読める。いつか自分や身の回りの人が、認知症世界を旅する時のガイドとしてぜひ。

最新作140点収録の決定版!バンクシー作品集『BANKSY』の見どころは?

2021.10.18 Vol.746

 世界中の公共物にゲリラ的にアート作品を発表する覆面アーティスト、バンクシー。

 140点以上の作品を収録し、世界9カ国で出版される最新作品集『BANKSY』(新星出版社)について、編集部の新井大介さんは「バンクシーは社会風刺的な作風で知られる正体不明のストリート・アーティストです。一般的に認知されたのは、2013年にパレスチナ自治区の壁に描かれた『Flower Thrower(花束を投げる男)』あたりからでしょうか。さらに2018年に英サザビーズで落札直後に細断された『Love is in the Bin(愛はゴミ箱の中に)』が話題を呼び、日本でも相次いで展覧会が開催されるなど、急速に知名度が高まっています」と語る。

 出版のきっかけは?

「当社では学校法人や企業、公共機関などに販路を広げる目的で、書店外商部向けの翻訳出版を行っています。会社として画集を出版するのは初めてなのですが、世界的に著名なアーティストで、今後の展覧会情報などもあったバンクシーに挑戦しようという声が多く、今回の刊行に至りました」

 刊行してみて、書店からの反響は?

「美術館や美術大学の近隣、人流の多い大型書店での評価が高く、特設コーナーを設けて大きく展開していただきました。書店外商部でも多く採用されています」

 書籍の見どころは?

「バンクシーの作品集が日本で出版されるのは10年ぶりで、その間に発表された作品まで網羅しています。描き加えや消されるなど、以前の作品から変化しているものもあるのでぜひ見比べてほしいですね。大判で高級感のある体裁は、手元に置いて長く楽しんでいただけると思います」

 作品の楽しみ方は?

「反体制的などと言われますが、単純に面白い作品で、こんな作品が街中にあるんだということを楽しんでもらいたいですね。英国を拠点に活動していて、作品にもイギリスらしいブラックユーモアが感じられます。なぜこの場所でこの作品を描いたのかを含め謎に包まれていますが、ひょっとするとバンクシーは、そんな私たちを見てほくそ笑んでいるのかもしれません」

不可解な間取り図の「家」に隠された真実とは?異色の不動産ミステリー『変な家』

2021.09.21 Vol.745

 奇妙な間取り図から始まる異色のミステリーが売れに売れている。ウェブライターでホラー作家の雨穴(うけつ)による不動産ミステリー『変な家』(飛鳥新社)がそれだ。

 2020年にYouTubeで公開され、再生回数850万回を突破した人気コンテンツ「【不動産ミステリー】変な家」に書き下ろしを加えた完結編。オカルト専門のフリーライターとして活動している「私」。仕事柄よく耳にするのが「家」にまつわる怪談や体験談だが、その「家」の話はどこかが違っていた。間取り図に不可解な点があったのだ。

 一階には必要のない謎の空間、二階の二重扉、そこに続くのは窓が一つもない子供部屋、シャワー室とは別にあるやはり窓のない浴室……。

 間取り図を重ねることで見えてくる一つのストーリー。その家の話を「私」が記事にしたことで、予想外の事実が次々と浮かび上がる。謎が謎を、間取り図が間取り図を呼ぶ新感覚のミステリー。

衣がハゲ山に!?人気料理家・坂田阿希子が平野紗季子にもっとおいしい「揚げもの」指南

2021.09.19 Vol.Web Original

 代官山の洋食店「KUCHIBUE」の店主で人気料理家の坂田阿希子が、新刊『家で揚げるともっとおいしい』(リトルモア)を発売した。揚げる料理が好き過ぎて揚げものレシピを刊行した坂田と、新刊『味な店 完全版』(マガジンハウスムック)が好評なフードエッセイストの平野紗季子がオンラインイベント「揚げ揚げ夜話 偉大な揚げもの、たまらない揚げもの」を開催した。主催はジュンク堂書店池袋本店。

ヨーロッパ暮らしを実現する『海外暮らし最強ナビ【ヨーロッパ編】』

2021.08.22 Vol.744

 憧れのヨーロッパ8カ国を厳選し、ビザの種類や仕事、生活情報などをまとめた『海外暮らし最強ナビ【ヨーロッパ編】』(辰巳出版)。

 ドイツ在住経験のあるフリーライターの久保田由希さんは「私がベルリンで暮らしていた時、移住の相談を受けたりネットの投稿を読んだりして感じたのは、いきなり永住など高い目標を設定している人が多いこと。でもビザを取らず、もっと気軽に1〜2カ月くらい住んでみるだけでも全然違います。私は海外に住む人がもっと増えればいいなと願っているので、その間口を広げるような本を作りたかったんです」と語る。

 実際に海外で住居や仕事を探すのは大変ですか?

「住居探しはヨーロッパの大都市は特に難しくて、皆さんかなり苦労されているという話を聞きます。すぐに見つかると思わずに、最初はとりあえず3カ月住める場所を確保して、その間に次を探すという人が多いと思います。住宅に関する詐欺もあるので、焦って探すと引っかかってしまうことも……」

 現地在住者のリアルな声が多いのも大きな魅力。

「各国のことは各国のライターさんにお願いして、テーマにふさわしい方を見つけてもらいました。制作が始まった途端にコロナ禍になって、取材自体はオンラインでできるものの、先が見えなくてすべてが誰にも分からないことに苦労しましたね」

 久保田さんが感じるヨーロッパの魅力は?

「物事を長い目で見られるようになったことです。ヨーロッパは歴史を身近に感じられるので、時間の感覚がすごく変わりました。いろんな人種のいろんな人たちがいて価値観にも幅が出てきます。 『私はヨーロッパに行きたい』と思っている限り、いつかは何らかの形で行けると思いますから、まず行きたいと思い続けてほしいです。海外で暮らした経験は無駄にはならないので、どんな形でもいいから行ってみてほしいですね」

【インタビュー】吉村昭の哲学を食と酒を軸に描く『食と酒 吉村昭の流儀』谷口桂子さん

2021.08.16 Vol.744

 綿密な調査や徹底した取材に基づいた歴史小説、記録小説で知られる作家・吉村昭。没後15年となる今もなお愛される作家の素顔を食と酒、旅にまつわる作品を切り口にまとめたのが『食と酒 吉村昭の流儀』(小学館文庫)だ。著者で俳人でもある谷口桂子さんに聞いた。

「吉村昭さんの著書を読み返して、『食と酒』に関する作品がこんなにあることが意外だったんです。池波正太郎さんは、亡くなられたあと食を切り口にした本が何冊も出ていて、てっきり吉村さんもそうだと思って調べたら、まだ出ていないというので驚きました。お店の名前が具体的に出ているのでお店案内としても、地方への旅のガイドとしても成立します。たくさんの作品があって、なぜ今までこのテーマに誰も注目しなかったのかな、と不思議に思いましたね」

 読んでいくと吉村の飲食哲学が身近なものに感じられ、これは行ってみたい、食べてみたいという気持ちが沸いてくる。

「東京の下町はもちろんですが、吉村さんの味やお店へのこだわりが強く出ているのはやはり地方です。長崎の皿うどんを手放しで称賛していて、そんなにおいしいのかなと思ったり、田野畑村(岩手)のしぼりたての牛乳を沸かしてご飯にかけたグラタンのような料理などは、いったいどんな味がするのか聞いてみたいですよね」

 第三章の「下町の味」では、谷口さんが実際の記述に従って散策する場面も。

「80代、90代になってもお店に立つ女将たちが印象に残っています。話し始めると止まらなくて、誰に対してもそんな感じなんです。元気の秘訣はお客さんと会話することだとおっしゃっていて、人と触れ合って会話する人はこんなに元気なんだなと思いました。

 吉村さんの文章に『地酒というものは、その地の土壌にしかはえぬ茸のようなもの』という描写があります。それは人も同じで、吉村さんは下町の生まれで世間様のご迷惑にならないようにと言われて育ち、片や妻の津村節子さんは福井の打たれ強い女性です。2人を見ていると土壌というものを強く感じますね」

言語が消滅する世界を描いた傑作 筒井康隆『残像に口紅を』

2021.08.15 Vol.744

 夏の文庫フェアの季節が到来した。読む機会のなかった古典や名作に触れられるのは、文庫本の良さでもあるだろう。中でもロングで売れ続け、最近改めて話題を呼んでいるのが、1995年に刊行された筒井康隆の『残像に口紅を』(中公文庫)だ。

『残像に口紅を』はある「ことば」がひとつ、またひとつと消えていく世界を舞台にした実験的長篇小説。たとえば「あ」が使えなくなれば、文中の「愛」も「あなた」も消えていく。評論家の津田は言う。

「そして当然のことだが、ことばが失われた時にはそのことばが示していたものも世界から消える。そこではじめて、それが君にとっていかに大切なものだったかということが」

 2017年にも「アメトーーク!」でカズレーザー氏が絶賛してブームが巻き起こり、今回はTikTokで紹介されたことをきっかけにヒット。言語が消え、表現が消える不条理な世界で何が残るのかを描いた傑作は、新しい読者によって何度でもよみがえるのだ。

その書店には“謎”がいっぱい!?新宿に新たな物語体験に出会える「謎専門書店 らんぷ堂」オープン

2021.08.08 Vol.Web Original

 新宿区歌舞伎町の体験型ゲーム・イベントが集うテーマパーク「東京ミステリーサーカス」内に、ユーザーが新たな物語体験に出会えるセレクト書店「謎専門書店 らんぷ堂」がオープンした。「リアル脱出ゲーム」などの体験型イベントを手がけるSCRAPがプロデュースし、丁寧にセレクトした書籍や雑貨を扱うほか、同店でしか遊べない体験型イベント「書店に眠る謎からの脱出」が楽しめる。早速、本紙のBOOK担当が同書店をチェックした。

渋谷・新宿・銀座・上野…80年代と現在を定点観測『東京タイムスリップ1984⇔2021』

2021.07.19 Vol.743

 雑誌「平凡パンチ」特約フォトグラファーだった著者が、写真専門学校の卒業生有志で行った展覧会のために撮影した1984年の繁華街。コロナ禍でネガフィルムの整理をはじめたことで、時空を超えて現在の同位置・同角度からの写真を新たに撮影し、対照的に並べて比較した写真集が本書である。

 いつの時代も若者の街だった渋谷や新宿が、37年を経るとこんなにも変わるものなのか。著者がモノクロ撮影を主戦場としていたこともあって、経過した年月以上に失われた時間や風景を思わせる。当時を知る人には懐かしさやノスタルジーが、今の若い人には目新しさが感じられる構成。写真の下に添えられているキャプションにも、思わず「そうそう」とうなずいたり新たな発見があったり。

 現在の街並みは2020〜2021年にかけて撮影されているが、このコロナ禍の風景もきっと数十年後に懐かしむ日が来るのだろう。

料理家・谷尻直子と建築家・谷尻誠が夫婦でトーク『HITOTEMAのひとてま 第二幕』ができるまで

2021.07.09 Vol.743

 スタイリストを経て料理家となり、現在は渋谷区の予約制レストラン「HITOTEMA」を主宰する谷尻直子。新刊『HITOTEMAのひとてま 第二幕』(主婦の友社)の刊行を記念し、夫で「HITOTEMA」の空間設計に携わった建築家の谷尻誠氏と同店から配信イベント「HITOTEMAのいま」を行った。主催は六本木 蔦屋書店。

“現代版のお母さん料理”をコンセプトに、週に一日だけ開店する「HITOTEMA」のレシピをまとめた書籍の第2弾。谷尻は「一作目から2カ年を経て、特にお客様に喜んでいただけたレシピをまとめたいなという思いで出版を決めました」といい、誠氏に「私が料理に興味を持ったのはかなり小さな頃ですが、それを仕事にするという思いはまったくなかった。誠さんに出会って『お店をやったらいいんじゃない?』と言ってくれて、この人が私を信じてくれるから、私にその力があるんじゃないかと自分を信じることができたんです」と感謝を述べた。

作家・辻仁成が息子に伝えるための渾身の家庭料理集『父ちゃんの料理教室』

2021.06.25 Vol.742

 息子が小学生の時に離婚し、シングルファーザーとなった芥川賞作家の辻仁成。本書はフランス在住の著者が、現在高校生となる息子にロックダウン下のパリの台所で始めた料理教室がベースとなっている。だが、いわゆる料理本を想像してページをめくると、予想外の構成に驚いた。

 たとえば、冒頭の「フランス風イカめし」の書き出しからしてこうだ。「あのね、なぜ生きるのはこんなに大変なんだろうって、思うことあるだろ?」本書は数字を順に振って、調理工程を説明しているといったレシピではない。親子の会話を通し、生きるとは、食べるとは、料理とは何かが描かれているのだ。工程の文章が文学的、会話調といったレシピ集はあるけれど、これはキッチンに救われたという作家が息子に伝えるための渾身の家庭料理集である。

 ひとつの料理につき3〜4ページの読み物と、最後に材料の表記があり、料理に託された生活の知恵が自然と身につく。著者本人が撮影したという写真がまた、あたたかみがあってすこぶるおいしそうだ。

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